月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
直送!競輪場便り
林慶次郎 福岡 S級2班 111期
九州地区を背負う先行選手を目指して
 2017年に111回生としてデビューし、昨年7月にS級へ昇級した。山崎賢人や松本貴治、南潤ら早々と出世していった同期が多くいるなか、やや遅い感はあったが、焦る事なく地道に脚を付けて上がってきた。「A級でしっかり先行をして上に上がりたいと思っていました」といい、先日の和歌山記念でも「林家の家訓はコツコツやること(笑)」と焦りなどまったく無かった。
 父、孝成氏(59期・引退)や祖父や伯父、そして兄、大悟(109期)も選手と競輪一家に育ち、脈々と受け継がれたテーマを徹底して踏襲した。
 地道に脚を付けたおかげでS級でも即戦力として通用し、10月の取手FIではS級初優勝。レースでは後続のもつれや落車などのアクシデント、日程的には裏で寬仁親王牌(前橋)が行われており上位陣の留守部隊だったなど様々な要因が味方したとはいえ、力強い先行策で後続をシャットアウト。持ち味を発揮した逃げ切りでの優勝には大きな価値があった。
 その後もコンスタントに決勝に乗り続け、12月には別府記念を走った。地元、九州地区初となるグレード戦は2、9、7、6着。2日目の二次予選Aは山田英明―大塚健一郎を背負い、潔い先行策で大敗したが、4日間ダイナミックな競走で存在をアピールし「2日目はいい経験だった」と大きな収穫を手にした。
 2020年走り初めとなった和歌山記念も3、9、2、1着と大健闘。3日目は武田豊樹や川村晃司らの格上位の技巧派たちを若手らしい走りで手玉に取り、最終日は職人・加倉正義の仕事を頼りにぶんぶんと先行して点数上位の野原雅也を不発に追いやった。
 九州地区は山崎賢人が登場するまでS級上位においては若手の自力タイプがおらず、他地区と違って層の薄さが嘆かれていた。
 だが破竹の勢いでのびのびプレーを連発する林は、久々に期待を持てる選手。役目を果たせるだけの力を秘めており、山崎とまたタイプの違った自力型として九州上位の一翼を担える可能性がある。別府記念で片鱗を見せ、和歌山記念で確信に、そう感じさせた。
 ただ、いかんせん、まだ経験不足。山崎の場合は元々から備える潜在能力の高さがあり、いわば勝手に強くなっていった感があるが、林はまだ粗削りと言ってよく、何より場数が足りない。良いように言えば伸びしろばかりともいえる。
 そういう意味では、林の能力を最大限に引き出せるかどうかは周りの先輩たちの手にかかってくる。
 献身的なアドバイスに加えて、仕事で応じる説得力。和歌山記念、最終日の加倉正義のような完璧な鬼仕事とまではいかないが、せめてギリギリのところまで番手の役目を果たしてほしい。
 九州地区にようやく出てきた待望の徹底先行タイプの成長が楽しみだ。


別府競輪場より