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直送!競輪場便り
野口裕史 千葉 S級1班
単騎で「ぶっカマシ」
ハンマー投げの第一人者、室伏広治が直前の怪我で不参加だったが、2015年に71.98メートルを投げて、日本選手権の王者になっている。競輪選手としても、あの馬力を活かした、ド・先行でS級1班まで登りつめた。存在感プラス相手への脅威もあるが、不思議とFIの決勝で勝てなかった。初日、準決とピンピンと勝ち上がっても、決勝になると後ろに食われてしまう負の連鎖。それが、1月2日の奈良競輪場で初優勝。すぐに、SNSで選手からも称賛の声が上がり、あの新山響平までが「野口さん、かっこいい!」と呟いた。レースは近畿が分かれて元砂勇雪、三谷竜生、栗山俊介の地元勢が2段駆け態勢。岡崎智哉に同郷・神田紘輔が付け3番手は渡辺十夢と言う布陣。これに、単騎で果敢に挑み、赤板から、単騎で「ぶっカマシ」を決める。ペースを落とさず一気に駆け、後ろからの反撃を許さず、難なく押し切ってしまった。昔、B級だと大ギヤを使い、この手のベテランの名物先行選手がいたが、それを彷彿させる動き。緻密さと戦略が大事になっている近代競輪で、ガムシャラにもがく姿は、感動さえ覚えた。師匠の武井大介は、まだ手厳しく「アスリート臭が抜けないので、力勝負をやらないと気が向かない性格。競技でないから競輪は勝ちに徹する事が大事だと言っているんだけどね。誘導を切る時の、ボートレースで言う、タッチスタートも苦手。そう言う小技も覚えていかないと、FIや同格戦なら良いけど、Gの付くレースだと厳しいと思う。ただ、脇本とは違うブン回しだけど、あれはあれでファンも多いからね(笑)」。
競輪学校時代(現・養成所)から妻子がおり、嫁さんには苦労をかけたと言う。高級外車を乗り回し、美味いもんを食い、高級ブランドを身につけるとか、全く興味がないと言う庶民派レーサー。スピード競輪に反骨心をむき出しにして、今年はGI戦線でも活躍して欲しい。


奈良競輪場より