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直送!競輪場便り
門田凌 愛媛 S級2班
瀬戸風バンクから坂の上の雲を見上げて
 アクシデントを乗り越え、今あるすべての力をぶつけた。21年6月10日からの地元松山のGIII「国際自転車トラック競技支援競輪」は1、1、8、1着で終えた。「戦った内容に悔いはないけど、目標だった決勝進出がかなわなかったので満足はしてない」と率直な感想を述べた。出場予定だった直前の2場所は近くでコロナの陽性選手が出たための自粛と練習中の事故の影響で休場を余儀なくされた。事故でメインフレームとシューズが壊れ、メーカーも違う新フレームで挑むことになった。
 初日は、自分のタイミングで仕掛けてラインで決まるまくり快勝。2日目はまくり追い込みが届いたが「ラインはばらばらになったし内容はなかった」と反省の弁が残った。準決は後ろに同じ四国地区で自力もある久米康平を連れて別線ラインを突っ張り切る堂々の先行勝負で「仕事はできた」と汗をぬぐった。最終日は鐘4からロングスパートで吉田智哉と地元ワンツーで締めた。
 17年7月に111期としてデビューから9連勝でA級2班へ特別昇班。同年12月にはS級への特別昇級も決めてS級にも定着した。順調に見える道程だが思わぬ試練を神様は与える。昨年は出場権を手中にしていたダービーと競輪祭と2つのGIに出られなかった。ダービーはコロナ禍で中止、19年久留米GIIIの決勝3着でつかんだはずの競輪祭は右手首の難病キーンベック病の手術で4カ月休んだ影響で出走数が足らずに出られなかった。手首はまだ痛みを抱えて重い物は持てない。
 ただこれまでも試練の連続だった。競輪ファンの父に連れられて見た競輪に憧れて自転車の強豪校の松山聖陵高校に入学。インターハイでケイリン3位に入る実績を挙げながら「もうしんどくて向いてない」と高校卒業後はアパレルメーカーに就職した。「自分が本当にしたいのはこれではないと気付いた2年間だった」と一念発起して高校の先輩だった橋本強を頼り鍛え直して選手養成所には一発で合格した。「もうしんどい、痛いと弱音を吐いてる場合じゃない」とS級初優勝とGI初出場という目標にまい進する。
 「S級を早く経験できたことでいい位置を取って仕掛ける勝ちパターンも確立できた。もちろん足の底上げも必要なのもわかってる。やるべき事がわかってるからこそ前に進めるし、やるしかない」。瀬戸風バンクから坂の上の雲を目指し、もがき苦しみながら次の試練を乗り越えてみせる。


松山競輪場より