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直送!競輪場便り
和田健太郎 千葉 S級S班
敗れても倦(う)まず
昨年の平塚「KEIRINグランプリ」で初出場初優勝。白のチャンピオンユニホームを着ることを許された男の2021年の戦いは、想像以上に過酷だった。2月の奈良記念から始まった「落車→復帰→落車」の負のスパイラル。追い込み型の宿命といえばそれまでだが、5度の落車はすべて「もらい事故」のようなもの。川崎「全日本選抜」準Vで存在感こそアピールしたが、ダメージは完全に癒えることなく、11月小倉「競輪祭」を迎えた。大会前の賞金ランクは12位だったが、S班の座を守るためには優勝あるのみという究極の勝負駆けに挑むこととなった。
一次予選2走は3、3着とまとめ、二次予選に進んだが、深谷知広(静岡)と共倒れの8着で勝ち上がりを逃し、グランプリ連覇の道は閉ざされてしまった。肩鎖関節の負傷でウェイトトレーニングができず、パワーの低下を招いたのは事実。だが本人は「自分だけが落車するわけじゃないしね。肩は正直可動域も狭くなって、ずっと痛いままだけど、自転車には乗れるから。これだけよくない反動がある、グランプリを取るってことはそれくらいのことなんだぞって、周りには言われてますよ」と、宿命を腐らず受け止める。
ただ、「競輪祭」は敗れたあとの2走でグランプリ覇者のプライドを見せた。5日目特選では、渡邉雄太(静岡)の4番手まくりに乗って、直線で諸橋愛(新潟)と神山拓弥(栃木)の中を鋭く突き抜けて1着。最終日の特別優秀は、再び渡辺とのタッグだったが、打鐘先行に出た渡邉が宿口陽一(埼玉)―平原康多(埼玉)に最終ホームでのみ込まれると、平原後位をさばいてスイッチ。好立ち回りで2着に入った。「5日目も最終日も、正直自分の好きなレースじゃなかった。周りは着がいいなりに評価はしてくれるんだろうけど」。年間通して納得いくレースができなかった悔しさが、言葉の端ににじみ出ていた。
傷んだ体を戻すには、競走を休んで治療に専念するしかない。あるいは白のユニホームの責任感が、それを阻んだのかもしれない。「競輪選手は走ってなんぼだし、走りながら治すしかないでしょ。同期の平原君だって落車してダメージがありながら、今年はGIを取った。すごいなと思いますよ。1年間グランプリ覇者として戦って、得るものはすごく大きかった。だから、来年もう一度あの舞台に立つために、自分が何をしなきゃいけないのか、何ができるかを考えて、自分と向き合っていきたい」。王者たるもの、言い訳などするものか。すでに復権に向けて動き出した和田の逆襲が、2022年の競輪を熱くする。


小倉競輪場より