今回からスタートする新コーナー「トップランナー」。1人の選手にスポットライトをあて、その選手を約1年間に渡りインタビューで追いかけます(全5回予定)。記念すべき1人目は脇本雄太選手。競輪界を代表する徹底先行選手として多くのファンから絶大な支持を得ています。しかし、2013年の新たなシーズンを迎えてからは思うような結果を出せず、本人にとっては不本意な3ヶ月間であったかもしれません。その原因とは何か?今回のインタビューでは、本人の口から意外な言葉も飛び出しました。
─2013年が明けて3ヶ月が経ちましたが、年頭に何か目標は立てていたんですか?
「去年は獲得賞金額が10位でKEIRINグランプリに出場することができなかったので、今年はグランプリ出場を目標にしていこうとは思っていたんですけど、自分で思っていた以上の成績を残すことができなかった3ヶ月ではありましたね。年明け一発めのFIで優勝して、『これはいいスタートが切れたな』と思ったんですけど、その後は大きい着が目立ってしまいましたからね(苦笑)…」
─苦戦の原因というのはどこにあるんでしょうか?
「言い訳にするつもりはないんですけど、ナショナルチームに入ってから、日程的に忙しくなってしまったのはあるかもしれないですね。もちろん、自分で選んだ道ですから、責任を持って両立させていかないといけないですからね。ただ、ナショナルチームに入ったことで、自分がやりたい練習が出来なかったりしたのは事実ですね。とくに、ダービー前は調整が全く出来ないまま、開催に入ったっていうのがあったので、正直、厳しいものはありましたね。やはり、あれだけトップクラスの選手を相手にする開催で、調整なしで臨むとなると、どうしても難しくなってしまいますからね。ダービーに関しては体調も良くなかったんですよ。ダービー前にナショナルチームとしてアジア選でインドに行ったんですけど、そこでの食事が合わなくてお腹を壊してしまっていたんです。そういうのもあって、この3ヶ月は苦しい感じになってしまっていますね。でも、ナショナルチーム関連でいえば、次の大会まで日程的にはかなり空いているので、そろそろ巻き返していきたいなとは思っているんですけどね」
─この3ヶ月、心配しているファンの方も多かったと思います。
「そうですね。車券的にも貢献できなかったですからね。勝ち上がりではそれなりの成績を残せてきたかなとは思うんですけど、1着数が少ないですしね。その原因のもう一つとしてギアの問題がかなり大きくあって。去年の12月から3・92にしているんですけど、それをまだ使いこなせていないこともあります。まだまだ課題は山積みですね。レース運びが狂ってしまっているんですよね。これは村上(義弘)さんに言われたことなんですけど、『落ち着きがない』と。ギアが重くなったせいで、テンポが狂っているということを指摘されまして。それは自分でもそう思っているというか、自分の中で『重いギアを踏んでいる』という意識があるせいで、焦って早めに踏んでしまうんですよね。そうなると、ゴール前で失速してしまうってことになるので、もうちょっとどっしり構えられる様になれば、最後の粘りに繋げられるのかなと思うんですけどね。ただ、これも村上さんに言われたことなんですけど、『先行にこだわって焦って踏む必要はないし、俺が後ろで何とかするから、お前は勝ち上がれる様にしろ』と」
─それに関して、脇本選手自身、先行へのこだわりについてはどう思っているんですか?
「もちろん、先行で勝っていきたいという気持ちもありますし、ファンの方が僕に対して逃げ切りへの期待を持ってくれているというのも分かっているので、そういう期待には応えていきたいとは思います。ただ、勝ち上がり段階とかで『ここ1番』みたいなレースでは先行だけにこだわらず、結果を意識して組み立てていかなくちゃいけないのかなっていうのも意識の中にはありますね」
─では、今年の脇本選手は去年までの徹底先行スタイルから少し変化があると。
「そうですね。勝ちにこだわるレースっていうのも時には必要になってくると思うので、そこまで先行に縛られなくてもいいのかなと。『先行できたからいいやっていう逃げ道を作るな、お前はもう勝たなきゃいけない選手なんだから』と村上さんにも言われましたし、GIとか実力が拮抗したところではそれだけ先行一本で結果を残していくのは難しくなってくるので、時と場合によっては先行よりも勝ちを優先させるっていう柔軟な考えっていうのも大事になってくるのかなっていう感じですね」
─今後は「ニュー脇本」が見られるかもしれないということですね。
「うーん、『ニュー脇本』と呼ぶにはまだ早いかもしれないですね(笑)。ただ、一歩ずつ着実に進化に近づいていければという感じではいますね」
─4月から巻き返していくにあたって、当面の目標を教えて下さい。
「それはやっぱり、地元福井で開催される共同通信社杯(4月26日~29日)ですよね。この開催が決まった時から、ここに照準を合わせていこうと思っていましたし、とくに今回は市田(佳寿浩)さんが(いわき平記念で落車し)長期欠場中なんですよね。なので、市田さんがいない分、僕がやらなきゃいけないっていう気持ちは強いです。今までの地元記念だと、『市田さんと2人で頑張ります』って言えたんですけど、今回ばかりはそれがないですから、僕が地元を背負っていかないと。当然、プレッシャーもありますけど、自分ではプレッシャーには強い方なんじゃないかなと思っているので、緊張感を楽しめる様に、気持ちが空回りしない様にしないといけないですね(笑)」
─地元バンクとの相性はどうですか?
「悪い成績を取ったことがないので、相性はいいと思います。なので、ここでいい成績を残して、中盤戦から後半戦に向けていい弾みをつけたいなと。そして、同じ近畿地区の岸和田競輪場で開催される高松宮記念杯(6月13日~16日)へと繋げていきたいですね。そうやって、年頭に掲げたグランプリ出場に近づいていければ最高ですね。タイトルを獲れば文句なしですけど、まだまだ獲得賞金でも間に合いますから」
─GI決勝やGPの舞台で、ライバル・深谷知広選手との直接対決を期待しているファンも多いと思いますよ。
「そうですね。期待されている以上はそれを実現したいですね。ただ、それにしても最近の彼は強すぎますよね(笑)。去年は僕の方が一歩リードしてるかなと思ったりもしたんですけど、一気に追い抜かれて、さらに差を広げられてしまいましたね(苦笑)。もちろん、負けたままっていうのは悔しいので、必ず追いついて、追い越したいと思います!」
─最後にファンの方へのメッセージをお願いします。
「まずは、地元で大きな大会があるので、地元ファンの皆さんの期待に応えられる様に、全力で頑張っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」
地元福井の共同通信社杯に向けて巻き返しを誓う脇本選手。新たなギアを踏みこなし、得意の徹底先行はもちろん、より勝ちに拘る競走で特別競輪決勝の舞台に帰還することだろう。また、「責任をもって両立させる」とした自転車競技での活躍も注目される。
月刊競輪WEB編集部では今後も脇本選手の動向を追いかけます。お楽しみに!