1年間を通して脇本選手を追ってきたこの「トップランナー」もいよいよ今回が最終回となりました。今年はナショナルチームに選抜され、競輪と競技の両立を図っている脇本選手。その過密スケジュールが影響したのか、競輪ではなかなか目立った成績を残すことが出来ないでいます。しかし、その類まれなる先行力は誰しもが認めるところで、今年最後の特別競輪、競輪祭や来年の活躍に期待したいところですね!
今年も残すところ2ヶ月を切った。昨年、獲得賞金ランキングで10位となり、KEIRINグランプリ出場まであと一歩と近づいた脇本雄太には初タイトル獲得への大きな期待が懸かった1年でもあった。しかし、いざフタを開けてみると、初タイトルはおろか、GIでの優出回数も0(競輪祭前時点)という寂しいものとなってしまった。
「今年に関しては、自分の中で、勉強することが多かった1年になった感じですね。去年の先行できる流れから、今年は先行できない流れになってきているので、それをいかに打開していくかっていうのを考えています」
こう2013年を振り返った脇本。確かに、昨年の活躍をみれば、対戦相手が警戒してくるのは必然の流れとも言えるだろう。
「まあ、それ(警戒)は去年からあったんですけど、今年は更に増しているなっていうのを感じますね。自分の思い通りのレースをさせてもらえないのはいつものことなんですけど(苦笑)、それが去年よりもキツくなっています」
なかなか先行させてもらえない中で、戦法にも徐々に変化が見られる様になる。直近の決まり手を見てもらえれば一目瞭然だが、2012年までの「ド先行」から捲りでの連対が目立つ様になってきているのだ。
「捲りもそうですし、外並走からそのまま仕掛けるっていうパターンも出てきたかなとは思いますよね。もちろん、先行はしたいんですよ。だけど、先行だけじゃ勝てなくなってきているっていうのも事実としてあるので、それ(戦法の変化)はしょうがないかなって思ってます。ただ、気持ちの中で先行をメインでやっていきたいっていうのがあるので、捲りの練習っていうのは基本的には、ほとんどしないですし、先行メインの練習をやりつつ、その応用じゃないですけど、たまに捲りの練習もやったりするっていうのが現状ですかね」
そんな脇本にとって、今年は大きな変化のあった1年でもあった。それはナショナルチームに選抜されたこと。それにより世界各地で開催される大会への参加と本業の競輪とを両立しなければならなくなったのだ。
「ナショナルチーム関連の日程は厳しいので、調整は難しいというのはありますよね。自分の中ではなんか噛み合ってないというか(苦笑)。今年前半に合宿はあったりしましたけど、大会自体はアジア選手権が1回あっただけなので、その他は日程も空いていました。だけど後半はドイツでのワールドカップ以降、日程がどんどん過密になってきているかなとは思いますね。地元福井に帰る時間がないっていうのが事実としてあるので、当然、プライベートな時間も持てないですし、その辺りが競輪の成績にも影響しているって思いたいところではあるんですけど、そこは何とか気合いでカバーしていければいいかなとは思いますね。ただ、こういう過密日程もどんどん経験を積んでいけば慣れていくのかなと」
このインタビューもイギリス・マンチェスターで開催されている2013~14・UCIトラックワールドカップ第1戦(派遣期間=10月28日~11月5日)の参加中にその合間を縫って行われたもので、さらにはメキシコ・アグアスカリエンテスで開催される同第2戦(同=11月29日~12月10日)への参加も決定している。脇本自身、競技についてはどの様に考えているのだろうか。
「(競輪も競技も)どっちも経験不足ではあるんですけど、個人的には競技の方ではケイリン一本でいきたいなと思っています。チームスプリントにも出られたら出たいっていうのはあるんですけど、自分の脚力というか、脚質には向いてないと思っているので、それならケイリンに集中していきたいと考えています」
一方、本業の競輪では、今年最後の特別競輪、競輪祭と来年に向けてそろそろ巻き返しを開始しなくてはならない時期に来ているといっても過言ではないだろう。
「とにかく、去年の良かった時期を想定しながら、脚力をそこまでに戻すっていうのは最大の焦点になってくると思うんですよね。結局、今年はGIの決勝に1回も上がってない(競輪祭前時点)ので、まずはそのレベルまで戻すことを目標にしていきたいなと思ってはいるんですけどね。まあ、今年、GIの決勝に上がれなかったのは落車の影響も若干はあったと思うんですけど、その辺もどんどん修正していければ。ただ、ギアの問題も今は色々と考えているところなので、もう少し時間がかかるかもしれないなっていうのが正直なところで。今は自分だけ3倍台で置いていかれてしまっている感じなので、4・08くらいには上げていきたいなと。まあ、(4回転以上は)まだまだ乗りこなせてないので、時間はかかるかもしれないですけど。どうしても(全力で踏める)距離が短くなってしまうので、その辺りをどうにか修正していきたいなと」
どうやら、今すぐの完全復活とはいかない様だが、必ずやビッグレースの決勝で暴れまわった2012年の様な活躍を見せてくれることだろう。多くのファンがその姿を期待しているはず。
「今は本業と競技の両立がなかなか上手くいかずに、ちょっと低迷してしまっている感はありますけど、それでも全力を尽くしてファンの皆様の声援には応えていきたいと思います。自分の中では脇本=先行っていうイメージは崩したくないと思っているので、周囲にどんなに警戒・マークされても先行していくっていうスタイルを貫いていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」