インタビュー

 隔月更新となった闘将列伝、今回は岡山の石丸寛之選手。08年の全日本選抜で準優勝、翌年のグランプリ出場と、「捲りのスペシャリスト」として、多くのファンを魅了してきた石丸選手。しかし、ここ数年は度重なる落車や不幸が重なり、現在はS級2班格付けと低空飛行ぎみ。それでも、ここ最近はFI中心ながら勝率・連対率が上昇傾向と、捲りの切れ味はかつての輝きを取り戻しつつあるようです。今後の石丸選手の巻き返しに期待しましょう!
─まずは、選手を目指したきっかけから教えて下さい。
「小さい頃からスポーツ選手になりたくて、最初は野球をやっていたんですけど、自分で(野球の)センスがないっていうことが分かったので(苦笑)、高校から陸上をはじめたんです。そしたら、たまたま、その高校の先輩で前野(智也・68期)さんっていう方がいるんですけど、その人が競輪学校に合格したっていう話を聞いて。それに、自分が住んでいた寮のすぐそばが競輪場だったし、身近な自転車を使うっていうのもあったので、やってみようかなと思ったのが最初ですね」
─76期としてデビューしたのが95年の8月(武雄競輪場)ですから、19年目に突入したばかりですが、ずっと上位戦線で戦ってきていますが、その秘訣は何なんでしょうか?
「もともと、トレーニング方法を考えるのが好きなんですよ。ウエイトトレーニングとか。体の動かし方とか、どうやったら力が付くのかっていうのを考えるのが楽しくて。ただ闇雲に練習するよりも、考えながら練習していった方が強くなるのかなという気はしますけどね。もちろん、若い頃は僕もガムシャラに練習したりもしましたけど、30歳を過ぎたあたりからはムダを省いていって、効率のいい練習をすることも大事ですからね。たまたま、僕はそういう(練習方法を考える)のが好きだったということですね」
─現在までの18年の選手生活の中で思い出に残っているレースはありますか?
「やっぱり、(三宅)伸さんと全日本選抜(08年・西武園)でワンツーを決めたことと、その翌年にS級S班になって、さらに年末のKEIRINグランプリに出場したことですかね。あとは、師匠(本田晴美・51期)と記念とかで一緒に走れたことも思い出に残ってますね。ただ、僕が特別競輪に出はじめたのがちょっと遅くて、師匠と特別競輪で一緒に走る機会があまりなかったのが残念ではありますけどね。その分、僕が出はじめる前の特別競輪で師匠を引っ張ってくれていた伸さんを全日本選抜で僕が引っ張って優勝に貢献して、なおかつワンツーを決められたっていうのは本当に感慨深いものがありました」
─ただ、欲をいえば、やはり(タイトルを)獲りたかったのでは?
「そうですね(笑)。なんせ、僕はあの時が特別競輪初優出だったくらいですから。まあ、今振り返ってみても、初優出のわりには堂々とレースできていたと思うし、満足のいく内容と結果だったと思います」
─そして、それが翌年のS級S班への決め手となり、さらにはグランプリ出場まで決めました!
「グランプリは本当にどの特別競輪とも違う独特の雰囲気というか、別空間でした。なんて言ったらいいのか…、走った人にしか分からない魅力というか、魔力みたいなものがあるっていうのは本当でしたね。だから、またあの舞台で走りたいという気持ちは今でも持ち続けています」
─しかし、2010年以降は、上位戦線での活躍が減ってきてしまっていますね…。
「ちょっとケガが続いてしまったというのもありますし、そのグランプリの後にトレーナーの方が脳梗塞で倒れてしまって、そのまま亡くなってしまったりと、悪いことが立て続けに重なってしまったんですよね。そこから立ち直るまでにかなり時間が掛かってしまって…。でも、この間の寬仁親王牌で金子(貴志・75期)がタイトルを獲ったのを見て、感動して。すごく刺激を受けたんですよね。金子とは一緒のレースを走ることも多かったし、同世代ですからね。その彼が苦労しながら初タイトルを獲ったわけですから、やっぱり負けてられないっていう気持ちにはなりますし、諦めなければ結果に繋がるんだということを証明してみせてくれたのが、嬉しかったというか」
─では、これから石丸選手の巻き返しが始まっていくという訳ですね。
「やっと、自転車が出始めてきてますからね。ただ、そうは言っても、良かった頃の捲りに比べると6~7割っていう感じだと思うので、あとの3~4割は位置取りを考えたりとかしながら上手く補っていければいいかなと。あとは、ギアやセッティングですよね。今も色々と試しているんですけど、(ギアの)かけすぎは良くないかなっていう気もしますし、かといって使ってるギアに慣れれば、その上のギアに挑戦した方がいい様な気もするし。その辺は、これから色々と試行錯誤していく中で、自分にとって最適なギアなりセッティングなりを見つけられればいいかなと思っているんですけど」
─いずれにせよ、石丸選手の代名詞でもある「捲り」にはこだわっていきたいということですね。
「『こだわり』っていうほどのことではないですけど、やっぱり、捲りやカマシは好きですからね。ただ、僕の中では後ろの人がしっかり付いてこれる様な仕掛けというか、ラインで決まる捲りっていうのを考えているんですよね。自分だけが届く捲りっていうのは誰でも出来ると思うんです。だけど、後ろに付いてくれる人がいる以上、その人にもチャンスがある様な仕掛けっていうのを考えながら、持ち味を出していけたらいいかなという感じですね」
─やはり、ファンの方は石丸選手の豪快な捲りに期待していると思いますよ。
「応援してくれているファンの方が1人でもいる以上、その期待には応えていきたいですね。今はS級2班まで落ちてしまいましたし(苦笑)、『どん底』はもう経験したので、ここからは這い上がっていくだけですから! もともと、『エリート』ではなくて、『雑草』の方ですし、まだ39歳で、このまま終わるには早過ぎますからね。何より、ビッグレースでの優勝経験がないので、その夢を実現させるまで諦めずに一生懸命頑張っていきますので、本場まで足を運んで応援してもらえると嬉しいです」
─まだまだ、『捲りのスペシャリスト』の称号は譲らないと。
「いやいや(笑)。今なんか、浅井(康太・90期)とかとは次元が違いますから。でも、彼らみたいな若い世代に負けない様な捲りを出せる様に、食らい付いていきたいと思います!」