インタビュー

 2013年最後の闘将列伝は04年のグランプリチャンピオン小野俊之選手。強気な発言を繰り返すなど「ビッグマウス」と呼ばれたこともありましたが、口にしたことはしっかりと行動に移し、結果も残してきた小野選手。その姿は本来の「ビッグマウス」という言葉が持つ意味とは遠くかけ離れていたのではないでしょうか。しかし、そんな小野選手もここ数年はスランプが続き、グレード戦線での活躍は少なくなってきているのも事実。来年こそはと再起を誓う小野選手の今後の活躍に期待したいところですね。
─まずは、競輪選手を目指したきっかけから教えて下さい。
「父親が競輪の大ファンで小さい頃から競輪場に連れていってもらっていたし、競輪選手は高い賞金を貰えるし、稼げるんだなって思って小学校3年生くらいの時には選手になることを決意してましたね。それから、競輪選手になるために部活を選んで入って、高校で自転車部に入って、その自転車部でも競輪選手になる為の競技しかしなかったですから。全ては競輪選手になる為にっていう感じでしたね」
─その自転車部でも優秀な成績を残して競輪学校にも技免(技能試験免除)で入学されていますし、もともと素質があったんですね。
「おかげさまで(笑)。そこまですんなりいけるとは思っていなかったけど、身体能力というか、運動に関しては自信があったのでね。もちろん、高校3年間で色々あったというか、練習していても頭打ちの時期があったりもしたんですけど、そこは練習量でカバーしたりして打破してきたので、中身のある3年間だったんじゃないかなと思います」
─そして、競輪選手としてのデビューは96年の4月で、ここまで17年以上の競輪選手生活を送ってきていますね。
「A級では3回特昇に失敗しているし、S級に上がって1年間は勝てなかったりもしたんですけど、比較的順調に歩んでこれたんじゃないかなと思いますね。もともと、慢性扁桃腺炎で練習して寝込むっていうのをデビュー当初から繰り返していて、肺炎になりかけたこともあったんですけど、それじゃこの世界で勝負していくのは厳しいなって思って、手術で扁桃腺を取ることを決めたんです。手術をしたのが22歳くらいの時だったと思うんですけど、そこからは全てが上手くいく様になっていったので、あの手術が自分にとって大きな転機だったことは間違いないですね」
─そんな順調な競輪選手人生の中で、思い出に残っているレースはありますか?
「自分はけっこうすぐ忘れるタイプなんでね(笑)。でも、自分の中で競輪界の頂点って位置づけていたグランプリを獲った時(04年)はやっぱり嬉しかったし、思い出にも残っていますよね。グランプリは選手になった時から目指していたレースでもあったし、もちろんタイトルも欲しかったんですけど、何だかんだ言ってグランプリが1番賞金高いし、賞金王こそ最強だと思っていたので本当に嬉しかったですね」
─あの04年はグランプリが出場が決まった時から、『僕、獲りますよ』って宣言していましたよね。
「そうですね。自信がありましたから。あの時は1年を通して自分が1番安定した成績を残していたし、その前の2年間もグランプリには出場しているんですけど、どの時もグランプリ前に佐世保記念に出ているんですね。佐世保記念で落車してグランプリっていう形だったんですよ(苦笑)。だけど、優勝した年は佐世保記念で落車することなくグランプリを迎えられて、体調万全だったので、今回こそはやれそうな感じが自分でもあったんですよね」
─当時はその強気な発言から「ビッグマウス」と呼ばれることもしばしば…。
「ビッグマウスっていうのはよく言われるんですけど、自分としてはやったことしか言ってないんでね。皆さん誤解されている部分があると思うんですけど、ビッグマウスって言ったことをやらない人を指す様な言葉だと思うんですけど、僕は言ったことは絶対にやっているんですよ。グランプリにしてもそうだし、コメントでどこどこに勝負しにいくって言ったら、必ずそこに攻めていってますからね。だから、ビッグマウスではないんじゃないかなと自分では思ってましたけどね」
─ビッグマウスというよりも、むしろ「有言実行の男」といったところですよね。そうやって強気な発言をすることによって、自分に対してプレッシャーを与えていた部分もあったんですか?
「それもあったのかもしれないですね。自分で言った以上はやらないとカッコ悪いじゃないですか。そういう人間が僕は1番嫌いなので絶対になりたくなかったし、自分からもう逃げられない状況、退路を断つことで自分の持ってる力以上のものが発揮できたりっていうこともあるんでね」
─ただ、グランプリを獲った小野選手ですが、未だにGIタイトルを獲ったことがないんですよね。
「そうなんですよね…、もちろんタイトルも欲しいんですけど、『今1番欲しいものは?』って聞かれると、2回目のグランプリ優勝なんですよね、僕の中では。タイトルはグランプリに出場する過程で獲るものであって、最終目標はグランプリだと思っているので、そこを目指していく中でタイトルを獲れれば最高なんですけどね。グランプリ獲ってるのに、タイトルが無いっていうのは自分だけみたいなんですけど、それはそれで俺らしいのかなとは思いますけどね(笑)。ただ、今は選手になって初めての低迷期なんですけど、そこを上手く立て直して、来年はグランプリに乗りたいなと思いますね」
─低迷期であるからこそ、セッティングやギアに関しては試行錯誤を繰り返していると。
「それはずっとしてますね。自転車と向き合ってる時間は選手の中でもかなり長い方だと思いますけど、自分の中でハッキリした答えみたいなものはまだまだ出ていないんですよ。それが出た時にはいい状態になっていくと思うので、来年にはある程度の形が見えてくればいいなと期待しているんですけどね」
─小野選手の復活に期待しているファンの方は多いと思いますよ。
「今はかなり期待外れな感じかもしれないですけど(苦笑)、こうやって苦しい時期があったからこそ今がある、って言えるくらい活躍する為の我慢の時期ですかね」
─高く飛ぶ為にはそれだけ深く沈みこまないといけないですから、今がその沈みこんでいる状態ということですね。
「言いこといいますね(笑)。まさにその通りですよ! だから、来年は『小野俊之』らしいレースを見せられる様に、主張すべきところは主張しつつ、ファンの方の期待に応えていきたいと思います。だから、敢えてファンの方へのメッセージはなしということにして下さい。自分が見せるレースこそがメッセージだと思っているので、いいレースが出来る様に準備だけはしっかりしていきたいと思います」