インタビュー

 今月の闘将列伝に登場する新田康仁選手は39歳という年齢ながら、先行・捲り、そして追い込みと全ての戦法をこなすオールラウンドプレーヤー。そのレースの組み立ての上手さにはかなりの定評があり、多くのファンを唸らせ、当然、結果も残してきています。しかし、あと僅かのところでタイトルには手が届いておらず(1月末時点)、誰よりもタイトル奪取に闘志を燃やしています。さらに、今年1月1日にはテレビ東京アナウンサー松丸友紀さんとの結婚も発表。ノリにノッている新田選手の活躍から目が離せませんね。
─新田選手は1994年の8月にデビューなので、もう間もなく丸20年になるんですよね。この20年を振り返ってみていかがですか?
「自分としてはアッという間だったかなと。まあ、自分としてはこの20年っていうのも通過点としか思っていなくて、60歳まで選手を続けるつもりでいるので、ようやく折り返しが来たかなっていうくらいの感じですね。まあ、この20年間があっという間だっ たっていうことはそれだけその時間が充実していたっていうことにはなると思いますけどね。1つの目標に向かってやってきた中で、成し遂げることができずに、20年も経っちゃったなと(笑)」
─「1つの目標」というのは、当然。タイトル獲得ですよね。今まで手が届きそうで届かなかった理由を今考えるとすると、何か思い当たるところはありますか?
「20代のころは、正直なところいつでも獲れるくらいのつもりでいたんですけど、逆にそういう甘い考えがチャンスを逃してしまったのかなと。そのころは(タイトルを)獲りにいくっていうより、自分のスタイルの方にこだわってしまっていたんですよね。
ちょっとバカ正直に走ってしまっていましたから。だからといって、今、それを後悔しているっていうことではないんですけど、当時は結果よりも内容にこだわってしまったのが、チャンスを逃してしまった要因かなと。でも、今、そういう(タイトル奪取の)チャンスが巡ってきたら、どんな手を使ってでも獲りにいくつもりでいますけど」
─そういう意味では、その「1つの目標」を達成できなかったという点で、悔しい20年の選手生活ということになりますね。
「プロスポーツ選手で、自分に対して満足しているというか、何かを成し遂げている人ってそんなにいないと思うんで、みんな悔しい思いをしているんじゃないかなって思いますけどね。それこそ、満足したら、それは選手を辞める時っていうことでもあると思いますしね」
─逆にこの20年の中でいい思い出として残っていることはありますか?
「あるかなぁ(笑)…。やっぱり、地元記念を獲れたことですかね。静岡も伊東も地元選手が記念を獲ったのが25~26年ぶりっていう状況の中で優勝することが出来たのは、嬉しかったですね。地元記念は他地区の選手には渡したくないなっていうのはずっと思ってきましたから、その中でずっと他地区にもっていかれて悔しい思いをしてきた中で、ようやく地元選手として記念を獲ることが出来てホッとしたのと同時に本当に嬉しかったので、それはすごくいい思い出として残ってるかな」
─あと、サマーナイトフェスティバルでGIIの優勝経験はあるんですよね。
「もちろん、それもいい思い出の1つではありますね。ただ、こんな言い方をしたら失礼かもしれないんですけど、サマーナイトってあくまでGIIなので、自分の中では『ビッグを獲った!』っていう感覚は全くなくて、それよりも更に上のタイトルっていうのが欲しいですよね」
─この20年で戦法も変化してきましたけど、現在の新田選手のスタイルである「自在戦」はもう自分のモノに出来た感じですか。
「そうですね。年齢が年齢なんで(笑)、人の後ろを回ることもあるし、番組や展開次第では先行もまだまだ考えているので、とにかく『何でもやる』っていう感じですかね。自分の力が続く限りは、先行・捲りの自力勝負は捨てませんよ。ファンの方からすれば、レースが分かりにくくて、買いにくい選手かもしれないですけど(笑)、後手だけは踏まない様にどこかで必ず仕掛けて自分はもちろん、ラインにもチャンスを作るっていうのを大前提にレースを組み立てているので、その辺りに注目して、これからも車券を買ってもらえると嬉しいですね」
─ところで、新田選手といえば、つい最近おめでたい話がありましたよね。ご結婚おめでとうございます!
「ありがとうございます(笑)。なんか照れくさいですね…(苦笑)」
─結婚したことで変化などはありましたか?
「いや、僕としては何も変わらないんですよ(笑)。よく、『結婚して守るものが出来ると違う』なんていう話を聞いたりしますけど、そこまで結婚したっていうことを意識はしてないですね。結婚する前の、守るものがない時から常に全力を尽くしてきましたので、今さら何かを変えるっていうこともないですし、今まで通り、目の前のレースに全精力を注いでいくことに変わりはないですから」
─ただ、食事の面などでは大きく変わったのでは?
「確かに、奥さんに色々とサポートしてもらえる様になったことは大きいですね。ただ、まだ結婚したばっかりなので、まだその効果を実感できる段階ではないんですけど、これから徐々に実感することになるんだと思います。やっぱり、練習とレースに集中できる環境が出来たっていうことは、かなり今までと違うところなんじゃないかな。そうやって、奥さんにサポートしてもらえるからこそ、それを結果に繋げなきゃいけないなっていうのは強く感じますね」
─また、お相手がテレビ東京のアナウンサー・松丸友紀さんなだけに、新田選手への注目度も俄然増していくと思いますよ。
「そうですよね、恥ずかしいレースは出来ないですよね(笑)。とにかく、『結婚して弱くなった』っていうことは誰にも言わせないくらいの活躍をしたいと思います。だからこそ、これからも目標は変わらずただ1つ、タイトル獲得。そこだけはブレずに前を向いて進んでいきたいと思います」
─そんな中、現在の調子はいかがですか?
「ここ最近は(調子の)波も少ないですし、20年やってきた中で、自分の中での体調の整え方だとかっていうのが分かってきているので、うまく経験を生かせているのかなと」
─ギアに関してはどうですか? 新田選手の中で答えみたいなものは見つかりつつありますか?
「まだ色々と試行錯誤しながらっていう状況ではあるんですけどね。どうしても色々と問題点は出てきてしまうものなので、それに対してその都度セッティングなりをいじったりしながら、対応していっているっていう感じで。今は4・17、25、33の3つのギアを競輪場や対戦相手、自分の戦法に応じて使い分けているんですけど、それぞれの課題も見つかりつつあるので、あとはそこを修正して、上手く使いこなせる様になれば、結果も自然とついてくる様になると思うんですけどね」
─月末には地元記念も控えていますしね。
「去年、久々に静岡記念を獲ることが出来たので、今年は何とか連覇を達成してみたいですね!」
─新婚ということで、「お祝い車券」も売れそうですよ(笑)。
「どうですかねぇ(笑)。ただ、買ってくれる人がいる以上は、それに応えるために頑張りますよ」
─最後にファンの方へのメッセージをお願いします。
「今年は4月に伊東で共同通信社杯もありますし、来年の2月には静岡で全日本選抜と地元で大きなレースが続くので、その両方で優勝できる様に頑張ります。とくに全日本選抜はGIでもありますし、今まで表彰台の両サイド(2着&3着)は立ったことあるんですけど、真ん中だけがまだなので、そこに立てる様に一生懸命頑張っていきたいと思います」