インタビュー

 今回の闘将列伝は、豪快な先行まくりで競輪界を牽引する小嶋敬二選手の登場です。数々の記録を打ち立ててきた小嶋選手が現在目標に掲げているのは「通算700勝」の金字塔。「モンスター」と称されたその走りは、今後もファンを魅了し続けます。
「ファンの方が喜んでくれるレースをしていきたい」
-今年でプロ生活は22年目(94年8月にデビュー)に突入しますが、ここまでの競技生活を振り返ると?
「長くはやっていますけど、正直いってまだS級1班にいられますし、走っている子たちの年齢が僕よりも若いので、レースを走っているときはあまり年をとったと感じられないんですよね。でも練習の疲れだったり、調整がうまくいかなかったりと、最近はケガも多かったので、そういったことを感じるようにはなってはいます。20年という長い間には良いときも、悪いときもいろいろあったなとは感じます。それでも、良いときがあっただけましかなとは思いますけどね(笑)」
-2012年には通算600勝を達成しました(2012年5月5日平塚競輪場)。
「勝たないと応援してくれているファンに何のお返しも出来ないですからね。いくら応援してもらっても、車券に絡まないと応援してもらっている人は嬉しくないですから。ただ単にギャンブルとして競輪を買われる方もおられると思いますが、そういった意味では僕の車券を買ってくれることも応援だと思いますし、1着を取れるように常に心がけてはいます」
-しかし最近は、ご自身でも触れていましたが落車によるケガが多いですよね……。
「そうですね。大きいケガが多かったです。その辺がなかったら、もっと勝てるとは思うし、全員が全員ルールを守っていれば、こういうこともないんでしょうけどね。落車が続いたりすると、やっぱり怖いですから」
-小嶋選手はそういったケガから、何度も復活を遂げてきています。
「昔はすぐにタイトル戦があったので、モチベーションを上げていかないと怖くて走れなかったんですけど、今はケガもあって、実力も落ちてきているので、そんなに気を負わないでいけるので、良い意味でリラックスしてはいると思います。長く休んでもそこまで変わらないだろうし、頑張れる範囲で頑張ろうと。実力差があると勝てないレースもありますし、昔は先行したりして自分の中での課題を持ってレースに挑んで、それをちゃんとクリアしていきましたが、今はそういうわけにもいかないですから。今までは、こういうレースをこうやって、こういうタイムで上がらないといけないなという思いもありましたが、今はそこまでではないし、ある程度を自分で組み立てて、うまくいけばいいなという感じですね。良い意味で、今の自分は分かっていますから(笑)」
-でも小嶋選手クラスになると、お客さんが求めるものも大きくなりますよね。

小嶋敬二選手(石川・74期・S1)
「そうですよね。自分の中では、まだ先行して逃げて勝ちたいという部分もあるんです。でも、いろいろな人の応援を聞いていると、まくりで豪快に後ろをちぎってほしいという方も多いんです。僕の思っているところと、ファンの思っているところは違うんだなというのは考えるところでもありますし。先行で勝とうとすることよりも、うまく勝ってくれた方がファンとしても良いんだなとは思うようにはなりましたね」
-「豪快さ」は常に求められますからね。
「実際、まくりになるとまだタイムは出るし、そういうところをこれからも極めていきたい、磨いていきたいです。そういうファンの方が喜んでくれるレースができたらいいなと思いますね。僕はけっこうファンサービスが苦手なんですよ(笑)。愛嬌をふりまくのが苦手で、照れてしまうんです。だから応援してくれる方には、レースをスポーツとして応援してもらって、僕の中で車券はレースへの代価だと思っているので、それに見合うようにレースで返していければいいなと思っています」
「ライバルたちが、自分を弱くする暇を与えてくれなかった」
-ここまで1738回ものレースに出走されていますが、思い出に残っているレースは何ですか?
「一番、思い出に残っているのは青森の親王牌(寬仁親王牌)決勝で逃げ切ったレースですね(05年7月)。特別競輪の決勝はどれも印象深いですけど、中でも青森の決勝です。あれは自分でも逃げ切れると思っていなかったので、まさかまさかでした。あのときのイメージは常に持っていますが、どうしても体が付いてこないのが現状なので、その辺は難しいですね。昔は全部が全部、全力投球で、展開が悪いときでも力でいっていました。展開も関係なく、最終バック7番手でも勝てるなと思っていましたから。でも今は、若い子も昔と違って目一杯いくわけでもないですから、展開が向いたときはしっかりとチャンスをものにできるようにしていますね」
-それでも、今なお一線で活躍し続ける強さの秘訣は?
「選手としてライバルが周囲にいるので、その存在のおかげです。それしかないと思います。あいつも強くなっている、こいつも強くなっているとなれば、自分も頑張らなくちゃいけないという気持ちは強くなりますね。デビューしたときは、吉岡(稔真)や神山(雄一郎)さんがいましたし、そのあとは太田(真一)や伏見(俊昭)が出てきて、そのあとは村上(義弘)も出てきて、自分が弱くなる暇を与えてくれませんでした。それからも武田(豊樹)、山崎(芳仁)、それに深谷(知広)も出てきて、自分が老け込む時間がなかったということはありがたいと思いますね」
-もちろん、それはこれからも続いていきますよね。
「そうですね。今も冬場は伊豆に来て練習していますけど、たまに一緒に練習する(早坂)秀悟も刺激になっています。自分のモチベーションを上げていく上でもいいですね」
「視野に入ってきたので700勝を目指したいと思います」
-今年からギア規制(ギア倍数を4.00未満とする)が始まりましたが、小嶋選手への影響はいかがですか?
「当初は、ギア規制が足かせになるかなとは思っていました。でも走ってみると、そうでもない気はします。もう少し、ギアが欲しいと思うところはありますけど、僕は最近FIばかりなので、そこではいらないかなと。GIを走るなら、ギア倍数はあったほうがいいかなと思いますけどね。どうしても厚くなるラインがあるので、そこに対しては今のギアでは足りないし、(ギア倍数が)あれば勝てるかなとは思いますね」
-昔の競輪に比べれば、3.92や93もまだまだ大きいとの話もありますよね。
「でも今はレース形態が違いますからね。昔は早めに先頭員が退避して、そこからスピードが一回落ちてから、先行するので先行する距離が長かったのですが、今は先頭員の早期追い抜きが出来なくなったのもあり、先行する選手の先行距離が短くなったのですが一気にスピードに乗るレースになったので、以前と比べても比較にならないと思います」
-こういった変革があるときは、選手によっては「チャンス」になることもありますよね。
「そうですね。復活してくる選手もいれば、逆にこれが機会になって悪くなる選手もいるとは思いますけど、僕はあまり変わらないような気はします。今はFI戦が中心だし、そこまで苦にはならないです」
-では今後の目標はどこに置いていますか?
「やっぱり地道に700勝することですね。今年に入ってからも7勝して、視野に入るところまで来ているので(3月22日現在で658勝)。まずは身近な目標として、中野(浩一)さんが666勝しているので、それをまず抜いて、700勝いけたらなと思います。現役選手だと、700勝しているのは神山さんしかいませんからね。神山さんの数字を抜くのは程遠いことですし、ルールが何回も変わる現代競輪の中で、それだけの数を勝つというのは難しいと思いますが、700勝を目指せたらいいなと思いますね」
-最後になりますが、応援してくださるファン並びに読者にメッセージをお願いします。
「昔ほど活躍はできないかもしれませんが、地道に頑張っていきたいと思いますので、これからご迷惑をおかけするかもしれないですが、これからも応援をよろしくお願いします」