ジャパン・トラック・カップI、IIレポート
2014年1月24日にジャパン・トラック・カップI(以下「JTC1」という。)、25日から26日にジャパン・トラック・カップII(以下「JTC2」という。)が伊豆ベロドロームで開催された。
伊豆ベロドロームで初めて行われた国際大会。この大会のポイントは、2014-2015年のワールドカップへ出場するために重要になってくる。
ワールドカップ第3戦・グアダラハラ大会の直後とあって、疲れもあっただろうが、短距離エリート男子は、競輪選手が表彰台を独占した!
また、女子エリートでは日本競輪学校第3回生徒の小林優香と石井貴子が初めて大会に出場したにもかかわらず好成績を残した。(国体に参加したがエキシビジョンレースだったので、公式大会出場は今回が初めてとなる)まだ、自転車競技歴の浅い2人だが、そこは気持ちでカバーした素晴らしい走りだった。
また、女子ジュニアでは鈴木奈央が4冠。今後を期待させてくれる選手が何名かいた。
1月24日 ジャパン・トラック・カップI(初日)
■男子エリートケイリン
予選から激しいレースになった。
決勝戦に進出したのは、脇本雄太、新田祐大、渡邉一成、和田真久留、森山智徳、ヴェローチェ・ジョセの6名。先頭員退避後、まず和田が飛び出し先行も、その後ろに脇本が入り、残り1周から脇本が発進。それを新田が追走。その後ろにヴェローチェが続く。最終バックでは新田が脇本の後ろから抜け出したかと思われたが、後方から渡邉が捲り、追い込んできた。3人がゴール線でほぼ横一線になったが、新田がわずかに抜け出して優勝となった。2位は渡邉、3位に脇本。
新田祐大コメント
「決勝戦は、脇本君が行くのは予想していて、脇本君と一成さんの動きが勝負のポイントになると思っていました。僕の感覚では脇本君を抜けると思って仕掛けたんですけど、脇本君も力があるので、合わされるような形になりました。その外に一成さんがいたのはわからなかったです。ゴール前で一成さんの影が見えたんで、ゴールしたときは何着かわからなかったですね」
ゴール
表彰式
■男子エリートスプリント
決勝は中川誠一郎と河端朋之の対戦に。予選から中川が10秒274、河端が10秒297と他選手に差をつけていた2人の決勝戦になった。
決勝は、河端が2本連取し、優勝を決めた。
河端朋之コメント
「今まで全プロや全日本で中川さんと対戦したときも、ストレートで勝ったという記憶がないので、自分の中ではよかったと思います。ワールドカップでは予選落ちしているし、このタイムでは(ワールドカップで)予選落ちするタイムなので、結果的には優勝しているけど、まだまだ課題はあります。中川さんもお互いに疲れているので、それに今日は午後から(スケジュールが)タイトだったので、体力勝負という面では自分に有利だったと思います。ここでポイントを取って次に繋げていかないといけないので、一つでも上へと思っていました」
ゴール
表彰式
■女子エリートケイリン
スプリントでは悔しくも2位だった小林優香が、それをバネに、ケイリンは優勝を果たした。
決勝戦に進出したのは、石井寛子、エリクソン・ミッシー、小林優香、前田佳代乃、モハマド・ウミ・ハミマ、中川諒子。前田が先行するも、残り1周前で後方から上昇した小林が最終バックで前田を交わし先頭に、これにエリクソンが続き、エリクソンはゴール前で小林を交わしに掛かったが交わせず、小林が優勝を飾った。2位はエリクソン、3位に中川が入線。
小林優香コメント
「結果は優勝出来てよかったなと思うんですけど、大会に出ることが初めての経験だったので、一つ一つが勉強になっていくと思います。この優勝を次のステップにつなげていけるようにこれからも頑張っていきたいと思います。(決勝戦は)ダッシュで離れないように、前々から攻めることを意識しました。理想は先に出ることだったんで、そこは予想と違ったんですけど、冷静に行けたと思います。経験を得るためにも、一つ一つ勉強しながら頑張っていきたいと思います」
ゴール
表彰式
■女子エリートスプリント
決勝戦は、予選から危なげなく勝ち進んできたエリクソンと小林の対決になった。
エリクソンが先に2本奪取し、優勝を飾った。
エリクソン・ミッシー(アメリカ)コメント
「すごく幸せな気分です。ここに来られて、レースができてよかったです。試合前は緊張していましたが、そのために準備をしてきましたし、こういう結果を出せる自信もありました。小林さんは非常に怖い相手でしたが、でも、そういう相手と対戦することが大事なので、今回は戦えてよかった。日本の女子選手をリスペクトしています」
■女子ジュニアケイリン
決勝戦のみで行われた女子ジュニアケイリン。レースは、先行した鈴木奈央が逃げ切って優勝を決めた。
鈴木奈央コメント
「静岡出身で、ここがホームバンクなので、多くの人に応援してもらって、ここで優勝することができてすごく嬉しいです。東京オリンピックもあるし、こういう大会がすごくたくさんあればいいなと思います。ドームだと直線が短いので、早く駆けないとダメだとコーチから聞いていたので、作戦通りにいきました。海外の選手がどのくらい強いのかわからなかったので、少し不安でしたが、逃げるときは一気に逃げないと捲られると思ったので、一気に行きました」
ゴール
表彰式
■男子エリートポイント
窪木一茂、近谷涼も善戦するが、香港チームのレン・チェン・ウィン、チェン・キン・ロの脚力と駆け引きの上手さが勝り、レンが4ラップを決めて優勝。
レン・チェン・ウィン(香港)コメント
「優勝できてすごく嬉しいです。レースは、熱いレースになりました。そのレースで日本の選手を制して、香港チームで1、2位を取れたことはすごく意味があります。自分のペースで駆けた結果です。試合前にチームメイトとは、お互いに協力し合ってレースを進めていこうと話していました」
レース
表彰式
■女子ジュニアポイント
鋭いスプリント力を活かし、ポイントを重ねた鈴木奈央が11ポイントを取って優勝。2位の大久保花梨が10ポイントと接戦を制した。
鈴木奈央コメント
「ポイントレースを伊豆ベロドロームで走ったのは初めてで、自分でも優勝できると思っていなかったので、とても嬉しいです。まだ中距離を走る脚ができてなくて、1人で逃げることができないので、スプリントで勝つしかないと思っていました。でも、コーチには駆けられる脚を作らなきゃダメと言われたので、これから作っていけるように頑張りたいです。最後は自分で積極的に行けたけど、皆に抜かされちゃいました。でも、いい経験になりました」
■男子ジュニアケイリン
モハマド・ゾニス・ムハマド・フィルダウスが優勝。
モハマド・ゾニス・ムハマド・フィルダウス(マレーシア)コメント
「優勝できて嬉しいです。作戦もですが、精神的にいい状態で臨めたのがよかったです。自分にとって初めての日本での大会だったので、すごくいい新しい経験になりました」
ゴール
表彰式
■女子エリートポイント
ほとんどのポイント周回を1位で周回したディアオ・ヂャオジュアンが37ポイントを取って優勝を決めた。
ディアオ・ヂャオジュアン(香港)コメント
「今回、こんなキレイなバンクで優勝できてすごく嬉しく思っています。日本のチームは積極的に攻めてくる2人だったので、一緒に勝負できて嬉しかったし、勝利することができて嬉しかったです。また、香港のチームメイトもいたので、それが心強く、結果を出せてよかったです」
ゴール
表彰式
■男子ジュニアスクラッチ
レース途中に前団に1人で追い上げ、最後はスプリント力で制した松本憲斗が優勝。
松本憲斗コメント
「勝った直後はわからなかったけど、だんだん実感がわいてきました。(ナショナルチームの)あの2人なら逃げが決まると思ったので、追いかけました。追いついた後は、我慢して走りました。勝因は気持ちだったと思います。せっかく日本でやる大会だったので、優勝したいと思っていました。お客さんには自分の走りを見てほしかったです」
1月25日 ジャパン・トラック・カップII(初日)
■男子エリートケイリン
決勝戦は6名全員が競輪選手となった。メンバーは、脇本雄太、新田祐大、菅田和宏、渡邉一成、早坂秀悟、坂本貴史。
渡邉が先行、新田が捲り追い込み、新田が抜け出して優勝。2位は追い込んできた坂本。3位には渡邉が残った。
新田はJTC1に続き、ケイリン2連勝を飾った。
新田祐大コメント
「歓声の中で走ることができ、そのおかげで最後のひと踏みができたと思います。一成さんが強いのはわかっていますが、自分の力を信じ、行けるところで行こうと思って走っていました。しっかりポイントを取らないといけない大会なので、きっちりポイントが取れてよかったです」
■女子エリートケイリン
決勝戦に進出したのは前田佳代乃、中川諒子、加瀬加奈子、小林優香、エリクソン・ミッシー、石井寛子。先頭員が退避し、中川が前に出ると、残り2周前から加瀬が動く。エリクソンが加瀬を追走し、その番手から抜け出そうとするが、その上を小林が捲り切った。小林が優勝。2位は追い込んだ石井。3位はエリクソン。
JTC1と同じように、外並走から力強い捲りで小林が優勝し、デビュー戦から2冠を手にした。
小林優香コメント
「今日は予選で失敗をし、繰り上がりで決勝に上がれたけど、受身の競走じゃダメだなって改めて感じて、決勝では前々へ思い切っていこうと思いました。予選は気持ちが問題でした。後(の決勝)に脚を残したいと思ってしまったので、そういうこともいい経験になりました。昨日と同じように挑戦という気持ちを忘れないようにと思って走りました。(決勝は)アメリカのエリクソン選手を警戒していたので、彼女のその上をバックで叩けたのはよかったと思います。この結果に満足することなく、課題も見つかったので、もっとダッシュをつけて、思い切って一発で叩けるようになりたいです」
ゴール
表彰式
小林は、今大会がケイリンへの自信につながったそうだ
1月26日 ジャパン・トラック・カップII(2日目)
■男子エリートスプリント
JTC1のスプリントに比べ、渡邉一成、新田祐大らも参戦し、激戦となった。
2分の1決勝では、中川と河端の対戦は、中川がJTC1の雪辱を晴らした。もう一戦は、渡邉と新田が対戦し、予選のタイムは渡邉の方がよかったが新田がパワーで押し切った。
決勝戦は中川対新田。中川が2本先に連取し、優勝を飾った。
中川誠一郎コメント
「河端にはJTC1で負けているので、同じ相手には2回続けて負けられないのでよかったです。ハロンも、このバンクではベストに近いので、状態はよかったと思います。新田には東アジア大会の天津で負けているので、あの時の経験も活きていたと思うし、体力的にも二本で決めたいなと思っていました。(新田は)タイムよりも、外を踏むことができるので本戦の方が強いイメージあるし、ずっと外を踏ませたいなというのはありました。最近、ワールドカップでふがいない感じだったので、今日いいイメージがつかめたのでよかったです」
レース
表彰式
■女子エリートスプリント
石井貴子が決勝まで進出し、1本目は先着したが、降格を取られ、2本目はエリクソンに先着され、2位となった。初めての大会で決勝進出は十分立派だと思うが、本人はかなり悔しそうだった。
また、優勝したエリクソンはトラック競技を始めて1年半であるそうだ。今後、手ごわい選手になるだろう。
エリクソン・ミッシー(アメリカ)コメント
「最後に勝って大会を終えられるのはすごく幸せな気分なので、こうして最後を勝利で飾れてよかったです。日本は強い女子選手がたくさんいるので、彼女たちと走れていい経験になりました。今の一番の目標はワールドカップ出場ですね。そのためにもっと強く、もっと速くなっていきたいです」
レース
表彰式
■男子エリートオムニアム
ビアー・オリヴィエ、チェン・キン・ロ、橋本英也で最後までポイントを争っていたが、最後の種目1kmTTでビアーが2位を取り、これでビアーの優勝が決まった。
ビアー・オリヴィエ(スイス)コメント
「とても幸せです。相手は強く、香港チームの選手と最後までどちらが勝つかわからない状態でしたけど、勝つことができて本当によかったと思います。全種目で上位に入り続けられたことが勝因だったと思います。今回は、クラス1の大会ですし、何よりこの国の人たちが好きなので、ここに来られて試合ができてよかったです」
レース
表彰式
■女子エリートオムニアム
ほとんどの種目で上位に入ったディアオ・ヂャオジュアンが、優勝を飾った。JTC1ポイントに続き2連勝となった。
ディアオ・ヂャオジュアン(香港)コメント
「とても嬉しいです。2つ目の金メダルということで、とてもいい大会になりました。この大会を支えてくれたスタッフ、全ての人に感謝したいと思います。これまでもACCなど、何度か国際大会で経験をつんできました。ここ2、3年集中して練習した結果、ワールドカップにも出ることができましたし、今回みたいに国際大会で優勝することが目標だったので、結果を出せてよかったです」
レース
表彰式
■女子ジュニアケイリン
鈴木奈央がJTC1と同じように逃げ切って優勝を決めた。
鈴木奈央コメント
「地元で、お世話になっている方や色んな方の応援があり、この結果を出せたと思うので、皆に感謝しています。最初から先行したいと思っていたので、くじで1番を引いてラッキーだと思い、後ろから来る人に合わせて踏んで、自分のペースで逃げられたので、よかったです」
レース
表彰式
■女子ジュニアスクラッチ
鈴木奈央が残り3周から逃げ切って優勝。JTC1、2合わせて4冠達成!
鈴木奈央コメント
「積極的なレースを考えていたので1度しか駆けれなかったのは悔しいですが、ポイントレースでは逃げ切れなかったけど、スクラッチでは3周逃げ切れたので嬉しかったです。今は高校2年生で、まだ将来は大学かガールズケイリンか決めていませんが、オリンピックを目標に頑張っていきたいと思います」
レース
表彰式
■男子ジュニアケイリン
JTC1と同じメンバーが決勝にそろった。モハマド、簗田一輝、ジョン・ジェヒ、レン・カユ、野上竜太、オスマン・ムハマド・アフィク・ハズニ。
野上が先行、簗田が捲っていくが捲り切れず。そして、モハマドが捲って、JTC1に続き、優勝を飾った。
モハマド・ゾニス・ムハマド・フィルダウス(マレーシア)コメント
「2冠することができて嬉しいです。この調子で、今後ももっと勝てるようになっていきたいです。今回はとても楽しい大会でした。この大会のために日本にこれてよかったと思っています。これからも世界一を狙って頑張っていきたいと思います」
ゴール
モハマド・ゾニス・ムハマド・フィルダウス
■男子ジュニアポイント
レン・カユと阿部将大の2人がラップ成功。この2人の勝負になったが、最後のゴールスプリントを阿部が制して、優勝を決めた。
阿部将大コメント
「こういう国際大会に出るのは初めてだったので嬉しいです。とにかく前の集団に追いついて、ラップして、後は勢いでいけるかなと思いながらいました。負けていたので、(ゴール勝負で)絶対に抜くぞっていう気持ちで走りました。また、こういう大会に出られるように、そして、優勝できるように頑張りたいと思います」
ゴール
表彰式