参加枠獲得の条件と道のり
2014年5月にUCI(国際自転車競技連合)より発表された、トラック競技のリオデジャネイロ・オリンピックへの参加条件は下記のようになります。
ポイント取得期間内の対象大会における成績によりランキング付けされ、そのランキングにより各種目の参加枠が決定します。
■UCIオリンピックポイント取得期間
2014年7月15日~2016年3月6日
■ポイント対象大会
ワールドカップ(2014-2015シーズン、2015-2016シーズン)
世界選手権(2015、2016)
アジア選手権(2015、2016)
今後予定されているポイント対象大会の日程は以下の通り
2015-2016シーズンワールドカップ(全3戦)
第1戦カリ大会(コロンビア) 2015年10月30日~11月1日
第2戦ケンブリッジ大会(ニュージーランド) 2015年12月5日~6日
第3戦ホンコン大会(香港) 2016年1月16日~17日
2016アジア選手権
日本・伊豆 2016年1月26日~30日(トラック競技)
2016世界選手権
イギリス・ロンドン 2016年3月2日~6日
■種目別参加枠
オリンピック種目はチームスプリント、チームパーシュート、スプリント、ケイリン、オムニアムの5種目(男女共通)。
それぞれの種目別に参加枠の条件がつけられている。
参加枠は、選手個人ではなく国に与えられる。
チームスプリント
★大会参加枠…9チーム(9カ国)
★国別最大参加枠…1チーム
★大陸別最大参加枠…ヨーロッパ5カ国、アメリカ2カ国、アジア2カ国、オセアニア2カ国、アフリカ1カ国
★UCIオリンピックポイント・ランキングの上位9チーム(9カ国)に出場権が与えられる。なお、9位以内でも大陸別最大参加
枠数を超えている場合は、その大陸別最大参加枠数を超えた大陸の国は除外され、ランキング順に別大陸の国が繰り
上がりとなる。
スプリント
★大会参加枠…27名
★国別最大参加枠…2名
★大陸別最大参加枠…ヨーロッパ5カ国、アメリカ2カ国、アジア2カ国、オセアニア1カ国、アフリカ1カ国
★チームスプリントで出場権を取った9カ国は、チームスプリントのメンバーの中から2名出場させることができる(計18名)。
残りの9名はチームスプリントで出場権が取れなかった国の中から、UCIオリンピックポイント・ランキング順に参加枠が
与えられる。なお、この場合は大陸別最大参加枠が適用されるため、大陸別最大参加枠数を超えた大陸の選手は除外
となり、ランキング順に別大陸の選手が繰り上がりとなる。
ケイリン
★大会参加枠…27名
★国別最大参加枠…2名
★大陸別最大参加枠…ヨーロッパ5カ国、アメリカ3カ国、アジア2カ国、オセアニア1カ国、アフリカ1カ国
(女子はヨーロッパ5カ国、アメリカ2カ国、アジア2カ国、オセアニア1カ国、アフリカ1カ国)
★チームスプリントで出場権を取った9カ国は、チームスプリントのメンバーの中から2名出場させることができる(計18名)。
残りの9名はチームスプリントで出場権が取れなかった国の中から、UCIオリンピックポイント・ランキング順に参加枠が
与えられる。なお、この場合は大陸別最大参加枠が適用されるため、大陸別最大参加枠数を超えた大陸の選手は除外
となり、ランキング順に別大陸の選手が繰り上がりとなる。
チームパーシュート
★大会参加枠…9チーム(9カ国)
★国別最大参加枠…1チーム
★大陸別最大参加枠…ヨーロッパ6カ国、アメリカ2カ国、アジア2カ国、オセアニア2カ国、アフリカ1カ国
★UCIオリンピックポイント・ランキングの上位9チーム(9カ国)に出場権が与えられる。なお、9位以内でも大陸別最大参加
枠数を超えている場合は、その大陸別最大参加枠数を超えた大陸の国は除外され、ランキング順に別大陸の国が繰り
上がりとなる。
オムニアム
★大会参加枠…18名
★国別最大参加枠…1名
★大陸別最大参加枠…ヨーロッパ8カ国、アメリカ6カ国、アジア5カ国、オセアニア2カ国、アフリカ1カ国
(女子はヨーロッパ8カ国、アメリカ5カ国、アジア5カ国、オセアニア2カ国、アフリカ1カ国)
★UCIオリンピックポイント・ランキングの上位18名(18カ国)に出場権が与えられる。なお、18位以内でも大陸別最大参加
枠数を超えた大陸の選手は除外となり、ランキング順に別大陸の選手が繰り上がりとなる。
トラック競技は男子短距離が最も参加枠獲得の可能性が高い。重点種目はチームスプリント
─まずはトラック競技について、リオデジャネイロ・オリンピックに向けた方針をお聞かせください。
「トラック競技は男子短距離を重点的に強化して、なんとかメダルを取りにいきたいと考えています。今回のリオ・オリンピックではチームスプリントで権利を取ると、スプリントとケイリンの出場枠が2枠ずつ入るということから、チームスプリントを中心に強化していく方針です」
─チームスプリントで出場権を得るための条件は?
「オリンピックポイント・ランキングで世界9位以内、かつアジアで2位以内というのが一つの条件になり、大陸ごとに最大参加枠が決められています。チームスプリントはアジアが2カ国、ヨーロッパ5カ国、オセアニア2カ国、アメリカ2カ国、アフリカ1カ国の合計13カ国になります。オリンピックに出場できるのはこの中の9カ国(9チーム)です。そのためて世界ランキングで9位以内であってもアジアで2位以内に入らない場合、出場権が取れない可能性があります。
ただ、次のような場合も想定されます。ヨーロッパは最大枠が5カ国ですから、9位以内に6カ国が入っていた場合、下位の1カ国分が削られて10位である国が参加枠を得られます。こういった繰り上がりということもありますが、やはり確実に出場権を手にするためには、世界の9位以内はもちろんのこと、アジアの2位までに入らないと安心はできません」
─現在の日本は、チームスプリントでどのような位置にいるのでしょうか?
「これは男子ですが、2015年4月現在、ポイント取得期間の半分が終わった時点で、日本は11位(591ポイント)です。韓国が10位(612ポイント)、中国が13位(483ポイント)で、日本はアジアで2番目の位置にいます。
現在のランキングで見ると、9位以内にヨーロッパが6カ国入っているので、10位の韓国は繰り上がって9位として出場権を得られますが、その下の日本は繰り上がっても10位で出場権を取れないことになります。日本は韓国を追い抜かないと、現時点ではチームスプリントでオリンピックの枠を得られない位置にあるわけですが、日本と韓国のポイント差はそれほど大きくないので、逆転は十分可能です。これから(ポイント対象大会の)ワールドカップ、アジア選手権、世界選手権と続きますが、特にアジア選手権は伊豆ベロドロームで開催ですし、ここでなんとか挽回できるだろうと考えています」
─男子チームスプリントの今後の戦略はどのように考えていますか?
「とにかく韓国、中国には必ず勝つこと。この2カ国よりも常に上位に入ることが必須だと言えます。その上で、ワールドカップでは6位以内、世界選手権でも同じくらいの順位が目標です。タイムとしてはやはりコンスタントに43秒台がほしいところですね。2015年4月現在、一番出場枠を取れる可能性が高いのがトラックの男子短距離ですが、まだ確実といえるところにはいないので、そこをなんとか確実な方向に持っていってもらいたいと思っています」
─女子の短距離についてはどんな状況ですか?
「2015年4月現在、チームスプリントが13位ですが、女子の場合は世界とのタイム差がありすぎて、ここから上位に食い込んでいくというのは非常に難しい状況です。チームスプリントで出場権を取ることは厳しいので、あとはスプリントとケイリンで個人枠を狙うしかないのかなと。チームスプリントで権利を取った9カ国(18名)が個人枠の中から削られていくので、女子は層が薄いこともありますし、繰り上がりの中でなんとか枠が取れる可能性があるということですね」
─中距離については?
「まずオムニアムについては、男子はランキング18位と枠に非常に近いところにあるので、強化次第では出場権が取れる可能性大だと考えています。女子に関しては、25位でかなり厳しい状況にあります。チームパーシュートについては、9チームしか出場できない中で、男子が17位、女子が14位。こちらは男女ともに現状ではオリンピックの出場権を獲得するのは難しいと言わざるを得ません。特に男子は2015年の世界選手権にも出場できなかったわけですし、今はまだ男女ともに世界レベルには程遠い状態です。ただ、中距離は現在学生中心のメンバー構成ですので、2020年の東京オリンピックでも十分戦力になり得ると考えていますから、仮にリオが無理だとしても、次の東京で花を咲かせてほしいというところですね」
─トラック競技以外のロード、MTB、BMXの現状も簡単に教えていただけますか。
「ロードは、男子については出場権獲得のためにはアジアランキングで4位以内に入る必要があります(2015年4月現在、日本はランキング2位)。アジアのライバル国もUCIポイントの付く国際大会をどんどん自国で開催してきますが、日本は自国開催が少ないので、そのあたりを考えると現時点ではギリギリのところにいると言えるでしょうか。女子は実質的に世界国別ランキングでは難しい状況にあり、個人ランキングで100位以内に入るか、2016年のアジア選手権で優勝して枠を取る方法に切り替える必要があります。個人ランキングは来年の5月31日までがポイント対象期間ですので、なんとか100位以内はいけるのではないかと思っています(2015年4月現在、萩原麻由子選手が140位、與那嶺恵理選手が170位)。
MTBは、男子は山本幸平選手が頑張ってくれていますが、国別ランキングでの出場権獲得はちょっと厳しいかもしれません。今年のアジア選手権で2位までに入れば1枠取れるので、そこに期待を掛けています。女子はさらに条件が厳しく、事実上アジア選手権で優勝するしか方法はないので、簡単ではありませんが、その可能性を狙っていくしかないですね。
BMXは、男子は現在ワールドカップにも参戦して頑張っていますので、枠が取れる可能性はあります。国別ランキングでは難しいと思いますが、個人ランキングのほうで、もしくは来年の世界選手権の国別順位で3位以内に入れば出場権が獲得できます。女子のほうはまったく成績が残せていませんので、残念ながら今回のオリンピックの枠は厳しいだろうという状況です」