2015ワールドカップ カリ大会レポート
カリのベロドローム。屋根がかかっているだけ。
山からカリ市内を見る。
リオデジャネイロオリンピックに向け、出場権を決める最終シリーズがいよいよスタートした。
その始めの大会が、2015ワールドカップ カリ大会である。
まず始めに簡単にオリンピック種目は、短距離が男女3種目(チームスプリント、ケイリン、スプリント)、中距離種目が男女2種目(チームパーシュート、オムニアム)である。短距離種目においては、チームスプリントで国1枠を取れると、ここに、ケイリン2枠、スプリント2枠が付いてきて、個人で獲得した枠は消滅する。
(出場枠についての詳細は月刊競輪WEB 自転車競技をご参照ください)
チームスプリントでの出場枠確保が各種目出場に一番近いことがわかると思う。
日本は、リオデジャネイロオリンピックはチームスプリントに主力を置き、まずは出場枠を取りに行く方針を今回は立てた。
そのリオデジャネイロオリンピック出場枠争いは昨シーズンから始まっており、昨シーズンはワールドカップ第2戦ロンドン大会で男子チームスプリントは反則を取られ降格、しかし第3戦のカリ大会では4位にはいる健闘をみせ、上位に食い込んだ。
女子短距離は上位に食い込むことができず、苦戦していた。
その昨シーズンの結果はオリンピックランキングでは男子チームスプリントが12位だった。確実にオリンピックに出場するためには、9位以内に入りアジアで1位になることである。
9位以上を目指し、今シリーズは奮闘せねばならないのである。
2015UCIトラックサイクリングワールドカップの幕開けは、コロンビア・カリからスタートした。期間は10月30日から11月1日の3日間。集約されたハードな日程がワールドカップの特徴でもある。
その中で日本勢がどのような活躍を見せるのか、期待が掛かった一戦だった。
日本に注目するのは当然だが、もう一つの注目は、トラックに復帰してきたブラッドレイ・ウィギンス(イギリス)だ。アワーレコード(トラックで1時間に走れる距離を競う競技)で世界新記録を出し、その実力を再度トラックで発揮できるのかに世界の注目が集まった。
初日は男女チームスプリント、男女チームパーシュート、クラス1のレースとして男子ポイントレースが行われた。
二日目は男女オムニアム初日、男子ケイリン、女子スプリント、またクラス1のレースとして、男子個人追い抜き、女子スクラッチレースが行われた。
三日目は男女オムニアム二日目、男子スプリント、女子ケイリン、クラス1としてマディソンが行われた。
日本の出場選手は、男子はチームスプリントに雨谷一樹、渡邉一成、中川誠一郎、ケイリンに脇本雄太、渡邉一成、スプリントに雨谷一樹、中川誠一郎、オムニアムに橋本英也。
女子はチームスプリントに石井貴子、加瀬加奈子、チームパーシュートに上野みなみ、塚越さくら、鈴木奈央、梶原悠未、スプリントに石井貴子、前田佳代乃、ケイリンに加瀬加奈子、前田佳代乃、オムニアムに塚越さくら、スクラッチに上野みなみとなった。
男子チームスプリント
まずは日本の状況から。ここはとにかく頑張らなくてはならない今シリーズのスタートダッシュを決めなくてはならない一戦だったのだが、結果は散々なもので成績から言えば、19カ国中17位。タイムは45秒660。
予選のトップタイムはドイツの43秒545と2秒以上離れてしまっている。
ちなみに4位までが43秒台であった。
また、今年1月に行われた先シーズンのワールドカップ第3戦・カリ大会では、今回と同じメンバーで挑み、44秒416のタイムで4位となっている。
これを今回と比べると8位のタイムである。同じタイムを出せればよかったのだが。これを見ても今シーズンは各国のレベルが大幅に上がっているのがわかるだろう。
また、中国が今回44秒430を出して7位となっている。このままで推移すると日本は韓国、中国に後塵を拝しオリンピック出場は難しくなる。
しっかり立て直すことが喫緊の課題だ。
チームスプリント
男子チームスプリントには1走雨谷一樹、2走渡邉一成、3走中川誠一郎で臨んだが、結果は45秒660のタイムで17位となり予選敗退した。
予選トップタイムはドイツの43秒545。2位はポーランドで43秒781だった。
意外だったのが、ニュージーランド。予選では隊列が崩壊し45秒463と16位となった。またフランスも大きくタイムを落とし11位となっている。
結果
優勝 ドイツ 43秒095
2位 ポーランド 43秒748
3位 オランダ 43秒106
17位 日本 45秒660
日本チーム
ドイツチーム
ポーランドチーム
オランダチーム
表彰
女子チームスプリントは1走石井貴子、2走加瀬加奈子の新メンバーで挑んだ。
しかし、結果は15組中15位の35秒471。
単純に前回のワールドカップ第3戦カリ大会のタイムと比較すると34秒975で15位。この時の組み合わせは1走前田佳代乃、2走石井貴子であった。
優勝したのは中国(ゴン・ジンジ、ゾン・ティアンシ)。予選ではオーストラリアのチームジェイコ(ステファニー・モートン、アナ・メアーズ)がトップタイムで32秒546。2位中国が32秒644だった。
結果
優勝 中国 32秒311
2位 チームジェイコ 32秒588
3位 ラスヴェロ(ロシア) 32秒605
15位 日本 35秒471
日本チーム
中国チーム
チームジェイコ(オーストラリア)
ラスベロチーム(ロシア)
表彰
チームパーシュート
男子は日本参加せず。
しかし、この種目の注目はSir ブラッドレイ・ウイギンスが入っているイギリスチームに世界の注目が集まった。しかし、ウイギンスの力は斗出しており、チームが崩壊寸前まで行ってしまった。そのためか予選4位4分01秒507でフィニッシュとなった。
予選1位はロシア。ただ1チームだけ4分台を切り3分59秒924というタイムだった。予選2位はスイスの4分00秒339。
一回戦も順位は変わらず、決勝はロシア対スイスとなり、僅差でロシアの勝利となった。
結果
優勝 ロシア 4分01秒064
2位 スイス 4分01秒972
3位 オーストラリア 4分01秒060
ロシアチーム
スイスチーム
オーストラリアチーム
表彰
女子のチームパーシュートは予選でカナダが4分21秒359で1位通過
2位はイギリスで4分21秒736、3位アメリカ4分23秒923、そして4位が中国4分31秒400だった。日本は塚越さくら、鈴木奈央、梶原悠未、上野みなみで挑み、4分39秒226の14位。予選通過はならなかった。ちなみに予選を突破した8位のオーストラリアのタイムは4分35秒229。日本は4分35秒を目標にし、予選突破を目論んでいたのだが、届かなかった。
優勝はカナダとなった。
結果
優勝 カナダ 4分20秒139
2位 アメリカ 4分25秒826
3位 イギリス 4分26秒662
14位 日本 4分35秒229
日本チーム
カナダチーム
アメリカチーム
イギリスチーム
表彰
ケイリン
男子は渡邉一成、脇本雄太が出場。
脇本は敗者復活戦で勝ち上がり2回戦に進出。
さらに、2回戦も3位で勝ち上がり決勝へ進出した。
渡邉は、敗者復活戦で敗退となった。
決勝は脇本、ジョシム・エイラース(ドイツ)、マシュー・グレッツア(オーストラリア)、エドワード・ドーキンス(ニュージーランド)、フランソワ・ペルビス(フランス)、マシュー・ブランスキ(アメリカ)の対戦となった。
優勝はペーサーが離れると同時にドーキンスが仕掛け、それに乗ったエイラースが残り1周過ぎから先頭に立ちそのまま押し切った。
結果
優勝 ジョシム・エイラース
2位 マシュー・グレッツア
3位 エドワード・ドーキンス
6位 脇本雄太
渡邉一成
決勝戦を走る脇本。
男子ケイリン決勝ゴール
表彰
女子は加瀬加奈子、前田佳代乃が出場し、前田が1回戦を上手く勝ち上がり、2回戦進出。しかし、2回戦は勝ち上がれず7-12位決定戦へ。
加瀬は敗者復活戦でも勝ち上がれず敗退となった。
決勝はクリスティナ・フォーゲル(ドイツ)、ゴウ・シュワン(中国)、エカテリーナ・グニデンコ(ロシア)、ヴァージニ・クリフ(フランス)、ゾン・ティアンシ(中国)が進出。
クリフの後ろをとったフォーゲルが追い込んで1着、優勝となった。
結果
優勝 クリスティナ・フォーゲル
2位 ゴウ・シュワン
3位 エカテリーナ・グニデンコ
11位 前田佳代乃
17位 加瀬加奈子
7-12位を走る前田。
加瀬加奈子
女子ケイリン決勝ゴール。
表彰
スプリント
男子は中川誠一郎、雨谷一樹が出場。この種目は年々、予選の200mFTTのタイムが上がっていて、9秒台をマークしないと本戦に進んだときに厳しい戦いになることは間違いない。本戦進出は24位まで。
その予選、雨谷は10秒322で40位予選敗退。中川は10秒122で24位、辛うじて本戦進出した。
トップタイムはジェフリー・フォグランド(オランダ)の9秒789。9位までが9秒台でやはり9秒台をコンスタントに出す実力が欲しい。
1/16決勝では、中川はフォグランドと対戦し敗退となった。
決勝は日本でもおなじみのデニス・ドミトリエフ(ロシア)がフォグランドと対戦し2本先取し優勝を飾った。
ドミトリエフの予選タイムは、10秒025で13位だった。
結果
優勝 デニス・ドミトリエフ
2位 ジェフリー・フォグランド
3位 マックス・ネイダーラング(ドイツ)
24位 中川誠一郎
40位 雨谷一樹
雨谷一樹
中川誠一郎
1/16決勝に進んだ中川。
男子スプリント決勝ゴール
表彰
女子は石井貴子、前田佳代乃が出場。こちらも厳しい現実を突きつけられている。予選200mFTTのトップタイムはゴウ・シュワンの10秒676。10位までは10秒台、予選突破の24位のタイムは11秒281。確実に10秒台が求められる時代となっている。
前田は11秒302で27位、石井は11秒636で36位。ともに予選敗退となった。
決勝は中国同士の対戦となった。
ゾン・ティアンシ対ゴウ・シュワンはゾンが2本先取し優勝。
3位-4位決定戦はクリスティナ・フォーゲル(ドイツ)対リー・ワイジー(香港)となりリーが2本先取して3位となった。
アジア勢が表彰台を独占した形になった。
ここで特筆すべきところは、中国のテクニックの向上だろう。ゾンが1/2決勝でフォーゲルを破ったときはパワーではなくテクニックだった。これも中国に新しいコーチを招いた結果が目に見えて出たものだ。
パワーに加えテクニックも身につけた中国は当分表彰台の真ん中にいることだろう。
結果
優勝 ゾン・ティアンシ
2位 ゴウ・シュワン
3位 リー・ワイジー
27位 前田佳代乃
36位 石井貴子
石井貴子
前田佳代乃
女子スプリント決勝ゴール
表彰
オムニアム
オムニアムは6種目の順位に付けられたポイントの総合ポイントを競う競技で行われる順番に列挙するとスクラッチレース(男子15km、女子10km)、個人追い抜き(男子4km、女子3km)、エリミネーションレース、1kmTT(女子500mTT)、フライングラップ、ポイントレース(男子40km、女子25km)である。ポイントレース以外の種目は各種目1位が40ポイントが与えられ2点刻みで下がる。21位から24位までは1点となる。
最後に行われるポイントレースでは、獲得したポイントが得点に加わり、総合的な優勝が決まる競技だ。24名が出場する。
男子には橋本英也が出場した。
橋本の持ち味は、ゲーム系(スクラッチレース、エリミネーションレース、ポイントレース)の強さだ。タイム系の種目で如何に落とさないかがポイントになった。しかし、肝心のゲーム系の種目が振るわず、総合で19位に終わった。
橋本の成績を見ていくとスクラッチレースでは16位、個人追い抜きは4分36秒893で17位、エリミネーションレースは20位、1kmTTが1分05秒073で16位、フライングラップは13秒567の15位、最後のポイントレースでは得点を取ることが出来ず、結果19位に終わった。
優勝はコンスタントに上位に入っていたビクター・モロコフ(ロシア)だった。
結果
優勝 ビクター・モロコフ 182点
2位 ロジャー・クルジェ(ドイツ)178点
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)173点
19位 橋本英也 42点
橋本英也
最後のポイントレースを走るビクター・モロコフ。
表彰
女子は塚越さくらが出場。塚越の持ち味はダッシュ。これを如何に活かせるのかがポイントとなる。また、タイム系の種目でもフライングラップ、500mTTでポイントを稼ぎたいところだ。
塚越の成績を見ていくとスクラッチレース14位、個人追い抜き3分50秒256で22位、エリミネーションレース14位、500mTTは35秒847で5位!この記録は素晴らしい!この調子がほしい。フライングラップは14秒641で14位。最後の種目のポイントレースで5点獲得し総合15位となった。
優勝はローラ・トロット(イギリス)。ぶっちぎりのポイント差で、最後のポイントレースに臨んだのだが、通常であれば、積極的に攻めず、追い上げてくる選手をマークし守勢に回るのだが、ガンガン攻めて最終ラップでは2着に突っ込んできて場内を大きく沸かせた。
結果
優勝 ローラ・トロット 213点
2位 ローリエ・バートン(フランス) 160点
3位 サラ・ハマー(アメリカ) 153点
15位 塚越さくら 80点
塚越さくら
ローラ・トロット
表彰
ここからはワールドカップではないが行われた種目を取り上げる。
女子スクラッチ
上野みなみが出場し12位となった。
結果
優勝 アリエニス・セラ カンデラ(キューバ)
2位 ロッタ・コペッキー(ベルギー)
3位 ジェニファー・バレント(アメリカ)
12位 上野みなみ
上野みなみ
表彰
男子個人追い抜き
結果
優勝 ドミニク・ウエンステン(ドイツ) 4分20秒069
2位 アンドリュー・テナント(イギリス) 4分22秒095
3位 ドミトリー・ソコロフ(ロシア)4分22秒141
ドミニク・ウエンステン
表彰
男子ポイントレース30km
結果
優勝 チェン・キンロー(香港) 58点
2位 エロイ・テルエル ロビラ(スペイン) 55点
3位 エドウィン・エビラ ヴァネガス(コロンビア) 52点
チェン・キンロー
表彰
男子マディソン
結果
優勝 ドイツ 6点
2位 スペイン 4点
3位 スイス 19点 -1lap
表彰
今大会のワールドカップ獲得国はドイツでした。
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