自転車競技

UCI TRACK CYCLIG WORLD CUP II
New Zealand at the Avantidrome in Cambridge 2015年12月5日(土)~6日(日)
12月4日(金)
皆さんこんにちは。
ニュージーランド・ケンブリッジにて初めて開催されるUCI トラック サイクリング ワールドカップ第2戦のレポートをお届けいたします。
ケンブリッジにある自転車競技場は約2年前に建設された新しい競技場であり、場内にはニュージーランドを象徴するあのマークが至る所に掲示されており、地元ニュージーランドチームを応援しています。
大会期間中のチケットは前売りで既に完売状態、大声援の中選手達はどの様な走りを見せてくれるのでしょうか?



この競技場は日本に唯一ある伊豆ベロドロームと同じ設計者が設計しています。
場内のデザインはどことなく伊豆ベロドロームに似ていますが、トラックの特徴が少し違っているようです。
このトラックで練習した日本チームの選手にインタビューすると、伊豆ベロドロームより走りやすいと言っていました。
その理由はトラックの形状にあるようです。
トラックの周長は伊豆と同じ250mにかかわらず、直線区間が短い分、コーナー区間が長い、つまりカントが(角度)が緩いのです。
ニュージーランド入りする直前まで伊豆で合宿をしていた日本チームにとって、このトラックの違いが有利に働いてくれるのではないでしょうか。
ブラジルで開催されるリオ・デ・ジャネイロオリンピックへの出場に向け、本大会を除くと残り3大会(ワールドカップ第3戦@香港、アジア選手権@伊豆ベロドローム、世界選手権@イギリス・ロンドン)となりました。未だ来夏のオリンピックの出場枠を男女共に確定させるに至っていないジャパンチーム。リオでの勇姿を応援するためにも是非ともこの地で活躍を期待し応援しましょう!
12月4日(金)
この日は、男女団体追い抜き及び男女のチームスプリントの予選が行われました。
リオ・オリンピックを目指す日本チームにとって大事なレースです。
アジアの国の中でUCIオリンピックランキング(http://www.uci.ch/track/ranking/)が2位以内かつ総合順位で実質9位以内にいなくてはチームスプリント枠での出場ができません。現在日本(男子)は韓国を約50ポイント差で追っている状況です。このポイントを残りの大会で逆転してなおかつ総合順位で実質9位以内に入るためにはコロンビアを抜かなくてはなりません(9位以内にヨーロッパの国が6か国いるので、ヨーロッパ枠は5のため1か国分繰り上がります。)。
韓国を上回り、さらにコロンビアを上回るタイムを叩き出さなくてはならないプレッシャーの中でのレースを強いられるのです。
このような状況の中で行われたチームスプリントの予選は、第1走者雨谷選手、第2走者渡邉選手、最終走者中川選手のオーダーで臨みました。
早速、結果ですが予選10位の日本に対して、コロンビアは12位、韓国は14位とリオに向けての最低条件はクリアできました。これにより韓国に対してのポイントも約30ポイント詰めることが出来ました。ただし、日本チームの10位という結果(44秒427)は予選通過できず、トップタイムを叩き出したドイツチーム(43秒151)には遠く及ばない結果でした。この差を如何にして詰めるかが今後の課題になるようです。
女子の団体追い抜き及びチームスプリントに関しては、個々の競技力を底上げしなくては、世界で戦えるレベルではないのが現状です。このままでは2020年の東京オリンピック出場も危ぶまれる状況が続くことが予想されます。選手個々人がいまの状況を打ち破る勇気を出し、何か新しい事を受け入れる必要があるのではないでしょうか。
【主な結果】

男子チームスプリント(19チーム出場)

1.ドイツ 43.130(予選タイム:43.151)
2.ニュージーランド 43.419(予選タイム:43.401)
3.チーム・ジャイコ-AIS(AUS)43.733(予選タイム:43.542)
4.イギリス 44.039(予選タイム:43.848)
5.ロシア(予選タイム:43.833)
6.オランダ(予選タイム:43.932)
10.日本(予選タイム:44.427)



女子チームスプリント(14チーム出場)

1.中国 32.682(予選タイム:32.711)
2.チーム・ジャイコ-AIS(AUS(AUSトレードチーム) 33.200(予選タイム:32.852)
3.オランダ 33.433(予選タイム:33.107)
4.ドイツ 34.263(予選タイム;33.129)
5.カナダ(予選タイム:33.467)
6.スペイン(予選タイム:33.757)
14.日本(予選タイム:35.379)



女子団体追い抜き(14チーム出場)

1.オーストラリア 4:18.213(予選タイム:4:20.157)
2.カナダ 4:18.267(予選タイム:4:19.359)
3.ニュージーランド 4:23.011(予選タイム:4:23.382)
4.アメリカ 4:29.783(予選タイム:4:24.965)
5.ベラルーシ 4:28.458(予選タイム:4:30.547)
6.中国 4:29.069(予選タイム:4:30.818)
14.日本(予選タイム:4:38.429)



12月5日(土)
この日、ワールドカップ第2戦が開幕しました。
朝9時の女子オムニアムスクラッチ10㎞を皮切りに夜10時半まで長丁場のレースが始まりました。
日本チームからはこの種目に塚越選手が登場しました。
このレースは終始落ち着いて周回し、誰もアタックなど出来ずにゴール前のスプリント勝負になり、塚越選手は10位でゴールラインの通過となりました。
次に行われた女子スプリント予選には前田選手及び石井(貴)選手が登場しましたが、残念ながら予選通過はならず、前日の競技同様個々の競技力を向上させなくてはならない結果となってしまいました。
競技は続き、女子のオムニアム個人追い抜き3㎞ですが、塚越選手は好成績を残すに至らず(24選手中23番目のタイム)次の種目での巻き返しを祈る事となりました。
さて、ついに男子ケイリンの1回戦目のスタートです。
第4ヒートに脇本選手、第5ヒートに渡邉選手が出場しました。
1回戦の結果は脇本選手が序盤2番手の位置につけるが、残り2周半で誘導が退避すると一気に隊列が崩れ最後方に置かれる苦しい展開になってしまい、残り1周の鐘で巻き返しを図るが届かず4着となり敗者復活戦に進むことになりました。
第5ヒートの渡邉選手も周回中から最後方に置かれ、残り2周半の誘導退避とともに仕掛けるものの何もできずに、敗者復活戦まわりとなりました。
その敗者復活戦では、予期せぬことが起こりました。敗者復活戦第2ヒートで渡邉選手と脇本選手が同じ組に入り競走することとなりました。周回中3番手に脇本選手、4番手に渡邉選手が続きレースが進み、残り2周半で誘導が退避すると脇本選手が一気に仕掛けて、渡邉選手が続いた。脇本選手が集団からできると番手内側にSCHMID (JAY)外側に渡邉選手で並走となり残り1周を向かえるのだが、ここで残り1周を知らせる鐘が鳴りませんでした。速度が上がったまま1周すると鐘が鳴り更にもう1周することとなり、結局このレースは不成立となり、第6ヒート終了後再レースすることになってしまいました。
再レースとなった敗者復活戦は誘導の後ろに渡邉選手、最後方に脇本選手でまわり、残り2周半の誘導退避のタイミングで2番手のSCHMIDが飛び出すと渡邉選手は2番手に下がり上昇の機会を伺う。中国のXUの上昇に併せて渡邉選手は一気に集団のトップに立つと同時に脇本選手が後方から追い上げ、渡邉選手を交わし残り1周を駆け抜け1着でゴールし2回戦へ進むことができました。
渡邉選手はこの敗者復活戦敗退でワールドカップ第2戦を終えることになりました。
2回戦に進んだ脇本選手は連戦の疲れからか、精彩を欠き終始最後方に置かれ、本来彼の持ち味である積極的な競走ができないままレースを終えました。
7-12位決定戦においても、2回戦同様何も出来ないままレースを終え12位でワールドカップ第2戦を終える結果となりました。
走り終わった脇本選手からは「2回戦からは足が残ってなかった。」と一言。
その後話を聞くと、「ナショナルチームに入りたての頃は世界の強豪相手に競走についていくのがやっとだったが、今は競走に参加できるようになってきた。」との事。超ハイスピードで展開されるKEIRINでのさらなる進化を楽しみに今後のワールドカップ、世界戦を応援しましょう。
男子ケイリンの結果は前回ワールドカップ第1戦を優勝したEILERS(GER)が危なげなく勝ち上がり、決勝戦でもその力をまじまじと見せつけワールドカップ連覇を果たしました。
今回過去に日本の競輪に参加した選手たちはあまり活躍できず、アンドレイ・ビノクロフ(ウクライナ)の9位が最高で地元ニュージーランドのサイモン・バンベルトーヘン、マティエス・ブフリ(オランダ)、ミカエル・ダルメイダ(フランス)は2回戦に進むことが出来ませんでした。
【主な成績】

女子スプリント

1.VOGEL Kristina(GER)(予選タイム:10.858)
2.MORTON Stephanie(チーム・ジャイコ-AIS)(予選タイム:10.799)
3.KRUPECKAITE Simona(LTU)(予選タイム:11.006)
4.GUO Shuang(MSP(中国トレードチーム))(予選タイム:10.816)
29.前田 佳代乃(JPC(日本のトレードチーム))(予選タイム:11.498)
33.石井 貴子(日本)(予選タイム:11.653)





男子ケイリン

1.EILERS Joachim(GER)
2.LEVY Maximilian(ERD(ドイツレードチーム))
3.BARANOSKI Matthew(USA)
4.SHURSHIN Nikita(RUS)
5.KENNY Jason(GBR)
6.ENGLER Eric(TTB(ドイツトレードチーム))
7.KELEMEN Pavel(CZE)
8.WEBSTER Sam(NZL)
9.ビノクロフ アンドレイ(ウクライナ)
10.CANELON Hersony(VEN)
11.MAKSEL Krzysztof(POL)
12.脇本 雄太(JPC)
19.渡邉 一成(日本)






12月6日(日)
大会最終日は男子スプリント、女子ケイリンの短距離種目、オムニアムそしてマディソン(男子)及び女子のスクラッチが行われました。
朝1番に男子スプリント予選、200mタイムトライアルがあり、中川選手、川端選手、雨谷選手の3名がエントリーしました。
結果は予選25位の中川選手が最高に女子のスプリント同様全員予選落ちとなってしまいました。中川選手に関して言えば、前回コロンビア大会の予選とほぼ同タイムであり前回は24位で予選通過している状況なので、是非ともコンマ1秒のタイムアップを図ってもらい、安定して予選通過を目指してほしいですね。予選を通過すれば駆け引きに関しては経験を活かし必ずや活躍が期待できるのですから。
女子ケイリンには加瀬選手と前田選手が登場。
1回戦第1ヒートに加瀬選手が出場。このヒートで加瀬選手は中国のGUOや元女王KRUPECKAITE(LTU)など強豪との対戦。スタートで最後方に置かれ道中を進む。道中2番手をとっていたGUOが誘導退避とともに車間を開け後ろの動きを警戒しながら徐々に加速、残り1周の鐘を聞くや一気に前に出ると他を寄せ付けずゴールを駆け抜けた。道中最後方にいた加瀬選手は仕掛けることが出来ずに4着となり敗者復活戦に回る事になりました。
第2ヒートに出場の前田選手はMEARES(JAY)他との対戦となりました。
スタートで誘導の後ろを取り、残り2周半の誘導退避を迎えることとなる。
誘導退避とともに後方からGUERRA RODRIGUEZ(CUB)が仕掛けて来るが、この動きに合わせてMEARESも上がってきた。MEARESに続く選手たちも一気に加速されたスピードに付いて上がってきて、結局前田選手は後方に置かれて残り1周の鐘を聞くことになり、5着でゴールの加瀬選手と共に敗者復活戦まわりとなりました。
敗者復活戦第2ヒートに出場した前田選手は残り2周半で誘導が退避すると上昇し主導権を握り加速していくが、残り1周のホームを過ぎると他の選手が次々仕掛けていき万事休す。この地でのレースを終える結果となりました。
第4ヒートに出場の加瀬選手は序盤最後方に位置を取り周回、残り2周半で誘導が退避すると上昇をはじめ残り2周で主導権を握る。後ろの動きを警戒しながら徐々に加速していき残り1周の鐘でVARNISH(GBR)の動きに併せて更に踏み込んでいく、が両者最終バックで力尽き加瀬選手の番手にいたCALVO BARBERO(ESP)に交わされ敗者復活戦を3着でゴール、前田選手と共にこれが本大会最後のレースとなりました。
女子ケイリンはGUOが危なげなく予選を通過し、決勝戦でもMEARESが主導権を握り、逃げ切ったかと思われたところにGUOの豪快な差し足が勝りGUOの優勝で幕を閉じた。
【主な成績】

男子スプリント

1.GLAETZER Matthew(JAY)(予選タイム:9.698)
2.NIEDERLAG Max(GER)(予選タイム:9.715)
3.LEVY Maximilian(ERD(ドイツのトレードチーム)(予選タイム:9.958)
4.DAWKINS Edward(NZL)(予選タイム:9.934)
25.中川 誠一郎(日本)(予選タイム:10.119)
32.雨谷 一樹(日本)(予選タイム:10.201)
38.川端 朋之(JPC)(予選タイム:10.308)




女子ケイリン

1.GUO Shuang(MSP)
2.MEARES Anna(JAY)
3.SULLIVAN Monique(CAN)
4.BASOVA Liubov(UKR)
5.LEE Wai Sze(HKG)
6.LEE Hyejin(KOR)
17.加瀬 加奈子(日本)
21.前田 佳代乃(JPC)



本大会に向け坂本監督は「チームスプリントに照準を絞り臨んだ大会だったが思うような結果を残せなかった。シーズンに向けチーム作りを行ってきて、選手たちのレベルは確実に上がっているのだが、結果に表れない。選手に自信をもって競走に参加できる環境を整え、次回ワールドカップ第3戦香港大会に臨みたい。」と言っておりました。
今大会の短距離種目を見ていると、世界はおろかアジアの中でも差が付き始めて取り残され始めていると実感できます。隣国の韓国、中国の選手が勝ち上がっている姿を見ると同じアジア人として寂しくそして悔しくなってきます。
また、男女共にオリンピック出場を狙うオムニアムは男子窪木選手、女子塚越選手が出場し、窪木選手は14位、塚越選手は13位という結果に終わりました。
窪木選手はスクラッチ、ポイントレースでは積極的な競走で場内を沸かせる事があったもののレースでの波に乗り切れず悔しい思いのする結果に。レース終了後も厳しい表情で、「前回出場した時より順位が1つ上がっただけですね。」と一言。
また、塚越選手も得意の短距離系の種目でポイントを稼いだものの、エンデュランス系の種目はレースに参加させてもらえていなかった。本人も「短距離系の種目はポイントを稼げるので更に強化したい。エリミネーションやポイントレースは勝負所で攻める勇気がない。強気で競走することが目標です。」とレースを振り返っていました。
連日1500席強ある観客席は超満員でした。地元ニュージーランドの選手が出場すると一気に会場のボルテージがあがり、これぞTHE HOMEと言わんばかりの大歓声。勝てば歓喜の大声援、負けても惜しみない声援が選手達に送り、見ていて鳥肌が立ちました。
地元選手ではなくても、見ごたえのあるレースやタイムを競う競技で素晴らしい記録を出すとこれまた大声援。トラック競技にこれだけの観客が集まり、満員の観客が1つになって応援する姿が羨ましく見えました。日本に唯一ある伊豆ベロドロームでもこの様な光景を是非体験したいものです。2016年1月26日~30日まで伊豆ベロドロームで2016年アジア自転車選手権大会が開催されます。この大会はリオ・オリンピック出場のためのポイント獲得の重要な大会となります。是非観戦に行き、日本チームを応援しましょう!
2016年アジア自転車選手権大会の詳細は【http://cycling-championships.asia/】を確認下さい。
来年夏のオリンピックに向けて苦しい戦いを強いられていますが、残り3戦でポイントを加算し、リオへの切符を手中に収めるべく日本チームの奮起を期待しましょう!

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