自転車競技

2016ジャパン・トラック・カップI&II レポート
2014年から始まった国際トラック競技大会「ジャパン・トラック・カップ」。今年も伊豆ベロドロームを舞台に7月8日(金)に「ジャパン・トラック・カップ I」、9日~10日(日)に「ジャパン・トラック・カップ II」として2大会連続で開催された。

これまでW杯の出場権を獲得するために大きな位置づけとなっていたUCIクラス1の国際トラック競技大会だが、今季からレギュレーションが変更になったことと、リオ・オリンピック直前という日程もあり、今回は例年に比べ海外勢の出場が少なく、少々淋しい印象となった。

そんな中でも、シェーン・パーキンス(オーストラリア)やサイモン・バンベルトーヘン(ニュージーランド)といった実力者に加え、マット・アーチバルド(ニュージーランド)、ルイス・オリヴァ(イギリス)ら強豪が参戦し、世界の走りを見せた。

日本勢は短距離、中距離ともにトップ選手が顔を揃えた。中川誠一郎、渡邉一成、脇本雄太らオリンピック代表組も全員参加。オリンピックを控えた選手たちにとって、これが本番前の最後の大会となり、調整も含め、実践レースで感触を確かめた。脇本は2大会目のケイリンで落車し、ひやりとさせたが、幸い大きな怪我はなく、今後のコンディション等に影響はなさそうだ。また、渡邉はケイリンで優勝を果たすなど、順調な仕上がりを感じさせた。
 

2016ジャパン・トラック・カップI

■男子エリートケイリン
1回戦、敗者復活戦を経て2回戦を勝ち上がったのは、第1ヒートからシェーン・パーキンス、マット・アーチバルド、渡邉一成、第2ヒートから脇本雄太、新田祐大、サイモン・バンベルトーヘンの6名。
決勝は渡邉、アーチバルド、パーキンス、バンベルトーヘン、新田、脇本の並びで周回を重ねる。ペーサー退避から脇本が前に上がり、脇本先頭で残り2周へ入ると、バックで渡邉の後輪にアーチバルドがハスって落車。影響を受けた渡邉も後退。残り1周のホームでパーキンスが脇本を交わして先頭に上がると、番手にバンベルトーヘンが入る。最後の直線で逃げるパーキンスを追い込んだバンベルトーヘンが1着。粘ったパーキンスが2着、バンベルトーヘンを追走した新田が3着に入った。
結果
1位 VAN VELTHOOVEN Simon(ニュージーランド)
2位 PERKINS Shane(Dream Seeker)
3位 新田祐大(Dream Seeker)

残り1周ホーム

ゴール

表彰式
■女子エリートケイリン
3着上がりの1回戦は石井貴子が1着、前田佳代乃が2着で決勝進出を決める。
日本2車、中国勢4車となった決勝は前田、チャン・リンイン、チャン・ウェイ、石井、リュウ・リリ、ハン・ジュンの並びで周回。ペーサー退避のタイミングで石井が前に上がるも、残り2周のホームで外から上がってきたチャン・リンインが石井を交わして先頭に立つ。先行するチャン・リンインの後ろは内に石井、外にチャン・ウェイが併走する形で残り1周へ。最終バックでコースが空いたところを捲って出た石井が1着、2着は後方から追い込んだハン、3着に前田が入線。
結果
1位 石井貴子(日本)
2位 HAN Jun(Holy Brother Cycling Team)
3位 前田佳代乃(日本)
優勝の石井貴子選手コメント
「優勝はやっぱり嬉しいですね。スプリントのほうは対戦で少し失敗してしまって勝ち上がれなかったぶん、ケイリンで取り戻したいなと思っていたので、しっかり走れて良かったです。(決勝は)結構接触したりしながらだったんですけど、番手を取り切った時点で外の選手は苦しい展開になっているのは分かっていたので、落ち着いて脚をためることができたと思います。4年後の東京オリンピックではケイリンを走りたいので、普段の競走も含めて基本的な脚力を上げることに取り組んでいるところです。今回はハロンで自己ベストも出たし、ケイリンも安定して走れているので、これからもこの調子で続けていきたいなと思っています」

残り1周ホーム

ゴール

表彰式
■男子エリートスプリント
上位12名が1/8決勝へと進む予選は、ルイス・オリヴァが唯一の9秒台となる9秒975をマークし1位、2位アーチバルド10秒007、3位中川誠一郎10秒071、4位バンベルトーヘン10秒158、5位河端朋之10秒214と続く。
1/4決勝で中川、新田祐大ら日本勢が敗れる中、河端がバンベルトーヘンに勝利。準決勝となる1/2決勝へ駒を進めた河端は、オリヴァにストレートで敗れ、3-4位決定戦回りとなるも、対戦相手のアーチバルドが落車のため棄権し、3位が確定。
オリヴァとフィルダウスサーロム・ムハマドシャーの対戦となった1-2位決定戦は、オリヴァがストレート勝利し優勝を飾った。
結果
1位 OLIVA Lewis(イギリス)
2位 MUHAMMADSHAH Firdaus Sahrom(マレーシア)
3位 河端朋之(日本)

1-2位決定戦

3位の河端朋之

表彰式
■女子エリートスプリント
上位8名が1/4決勝に進む予選は1位、2位を中国勢が占め、3位に11秒359の自己ベストを出した石井、5位に前田、8位西島叶子(鹿屋体育大学)と続き、9位の大久保花梨(日本競輪学校)は敗退。
1/4決勝で日本勢は石井、前田、西島の全員が敗れ、5-8位決定戦で勝利した石井が最終順位を5位、前田6位、西島8位とした。
1-2位決定戦はチャン・リンインが勝利し、上位4位まで中国勢が独占となった。
結果
1位 ZHANG Linyin (Tian Jin Cycling)
2位 HAN Jun(Holy Brother Cycling Team)
3位 LIU Lili(Holy Brother Cycling Team)

1-2位決定戦

5-8位決定戦

表彰式
■男子エリートポイントレース
7名が2ラップするなど、混戦となった上位陣の中で、効果的にポイントを重ねた橋本英也が底力を見せて優勝を飾った。
結果
1位 橋本英也(日本) 2lap63p
2位 近谷涼(マトリックスパワータグ) 2lap57p
3位 渡邊翔太郎(朝日大学) 2lap51p

優勝の橋本英也

表彰式
■女子エリートポイントレース
残り15周を切って単独でラップに成功した上野みなみが優勝。
結果
1位 上野みなみ(Ciel Bleu Kanoya) 1lap27p
2位 塚越さくら(日本) 15p
3位 鈴木奈央(静岡県自転車連盟) 15p

優勝の上野みなみ

表彰式
■男子ジュニアケイリン
甲斐俊祐が先行逃げ切りで勝利。後手に回った荒川仁は4着。
結果
1位 甲斐俊祐(日本)
2位 CHOI Kwan Lok(ホンコンチャイナ)
3位 PAEKRATOK Warut(タイ)

残り1周ホーム

表彰式
■女子ジュニアケイリン
前を取った石井菜摘がそのまま先行で逃げ切り1着。番手の野寺が2着に入り、日本勢のワンツーとなった。
結果
1位 石井菜摘(日本)
2位 野寺楓(日本)
3位 LEUNG Hoi Wah(ホンコンチャイナ)

ゴール

表彰式
■男子ジュニアスクラッチ
残り1周で先頭に立った小原丈一郎が逃げ切りを図るが、ゴール前でサイ・キンラクに差され、惜しくも2着。伊藤歩登は4着。
結果
1位 CHOI Kwan Lok(ホンコンチャイナ)
2位 小原丈一郎(日本)
3位 LOHMOH Nimuhamadsulhairee(タイ)

残り1周ホーム

表彰式
■女子ジュニアポイントレース
接戦となった上位3名の争いを制した菅原朱音が優勝。
結果
1位 菅原朱音(日本) 15p
2位 MA Yin Yu(ホンコンチャイナ) 13p
3位 石井菜摘(日本) 12p

優勝した菅原朱音と3位の石井菜摘

表彰式
 

2016ジャパン・トラック・カップII

■男子エリートケイリン
2回戦を勝ち上がったのは、第1ヒートから渡邉、ムハマドシャー、脇本、第2ヒートから新田、河端、カン・シンフェンの6名。
決勝は河端、渡邉、カン、新田、脇本、ムハマドシャーの並びで周回。ペーサー退避から河端が先行し、番手に渡邉、脇本は3、4番手まで上がる。そのまま残り1周のホームを過ぎたところで脇本が落車。最後は直線で追い込んだ渡邉が1着でゴールし、粘った河端が2着、3着にカンが入った。
結果
1位 渡邉一成(日本)
2位 河端朋之(日本)
3位 KANG Shih-Feng(Taichung Cycling Team)

優勝の渡邉一成選手コメント
「絶対勝ちたいと思っていた(オリンピック前)最後の大会だったので、満足のいく結果です。作戦とかは何も考えずに、思った通りに動ければと思ったので、脇本くんがきた瞬間の(自分の)反応も良かったですし、その前の河端くんの動きもすごく良かったので、それをうまく利用できる形になって自分に勝利がきたと思っています。自分の長所を伸ばすことを考えてここまでトレーニングをしてきたんですけど、その結果が結びついているのと、自分の苦手だった部分もしっかり克服できてきているのかなと。でもまだまだ満足せずに、オリンピックまで1ヶ月を切っているので、もっともっと上を目指して頑張っていきたいと思います」

残り1周ホーム

ゴール

表彰式
■女子エリートケイリン
1回戦を経て決勝に勝ち上がったのは石井、前田の日本勢に、ハン、チャン、リュウの中国勢に、マレーシアのマハマドアドナン・ファリナシャワティの6名。
決勝はハン、リュウ、ファリナシャワティ、チャン、石井、前田の並びで周回。ペーサー退避から石井が動くと、中国勢が牽制し、石井を前に上がらせない。中国勢が先頭のまま残り1周に入り、石井は徐々に後退。ゴールは逃げ切ったハンが1着、2着にファリナシャワティ、3着にチャン。石井は5着、前田は6着に終わった。
結果
1位 HAN Jun(Holy Brother Cycling Team)
2位 FARINA SHAWATI Mohd Adnan(マレーシア)
3位 ZHUANG Wei(Tian Jin Cycling)

残り1周ホーム

ゴール

表彰式
■男子エリートスプリント
上位12名が1/8決勝へ進む予選は、オリヴァが9秒815で1位、2位パーキンス9秒929、3位バンベルトーヘン10秒064、4位中川10秒092、5位河端10秒117と続く。日本勢は1/4決勝で河端を下した中川のみが1/2決勝まで勝ち上がるも、オリヴァに敗れ、3-4位決定戦もバンベルトーヘンに敗れ表彰台を逃した。1-2位決定戦は3本目までもつれ込んだが、パーキンスがオリヴァを下して優勝。
結果
1位 PERKINS Shane(Dream Seeker)
2位 OLIVA Lewis(イギリス)
3位 VAN VELTHOOVEN Simon(ニュージーランド)

1-2位決定戦

3-4位決定戦

表彰式
■女子エリートスプリント
予選1位から3位までは中国勢、4位に石井11秒403、6位前田11秒456と続く。1/4決勝で石井、前田、西島の日本勢は全員敗れ、5-8位決定戦で1着の石井が5位、前田7位、西島8位となった。
1-2位決定戦、3-4位決定戦ともに中国勢の対戦となり、優勝はチャン・ウェイ。
結果
1位 ZHUANG Wei(Tian Jin Cycling)
2位 ZHANG Linyin (Tian Jin Cycling)
3位 LIU Lili(Holy Brother Cycling Team)

1-2位決定戦

5-8位決定戦

表彰式
■男子エリートオムニアム
スクラッチ3位、個人追抜き2位(4分29秒978)、エリミネーション1位、1kmタイムトライアル5位(1分04秒825)、フライングラップ3位(13秒384)、5種目終えてトップで最終種目のポイントレースを迎えた窪木一茂が逆転を許さず、優勝を飾った。
結果
1位 窪木一茂(日本) 199p
2位 倉林巧和(日本体育大学) 189p
3位 近谷涼(マトリックス・パワータグ) 186p

優勝の窪木一茂

表彰式
■女子エリートオムニアム
スクラッチ5位、個人追抜き1位(3分39秒631)、エリミネーション1位、500mタイムトライアル4位(37秒619)、フライングラップ4位(14秒948)、 5種目終えて2位の梶原悠未が最終種目のポイントレースで得点を伸ばし、逆転で優勝。
結果
1位 梶原悠未(日本) 206p
2位 鈴木奈央(静岡県自転車競技連盟) 194p
3位 塚越さくら(日本) 193p

2位の鈴木奈央選手コメント
「競輪のデビューに向けてずっとダッシュ力の強化をやってきたので、そこが今回のレースでは発揮できたので良かったです。フライングラップはベストが出たし、(あまり練習ができていなかった長距離種目も)最後のポイントレースではダッシュを生かすことで補えたと思います。(ケイリンへの挑戦は)中距離の中でもしっかり安定して順位を取れるようになってからと考えています。競技のケイリンは日本の競輪と違って1日に何本も走るので持久力も必要だし、(中距離を走ることは)今後ケイリンをやるうえでも絶対生きてくると思うので、今は中距離をしっかりやっていきたいと思っています」

優勝の梶原悠未

表彰式
■男子ジュニアケイリン
ペーサー退避から伊藤が先行、番手の小原が最後の直線で伊藤を交わし1着。粘った伊藤が2着に入り、日本勢のワンツー。
結果
1位 小原丈一郎(日本)
2位 伊藤歩登(日本)
3位 CHOI Kwan Lok(ホンコンチャイナ)

ゴール

表彰式
■女子ジュニアケイリン
石井が先行し、野寺が追走。ゴールは捲ったバ・エンロゥ(ホンコンチャイナ)が1着入線するも降格となり、優勝は石井、2位に野寺となった。
結果
1位 石井菜摘(日本)
2位 野寺楓(日本)
3位 LEUNG Hoi Wah(ホンコンチャイナ)

残り1周ホーム

表彰式
■男子ジュニアポイントレース
甲斐俊祐と荒川仁はラップされ、それぞれ4位、5位でレースを終えた。
結果
1位 CHOI Kwan Lok(ホンコンチャイナ) 23p
2位 PAEKRATOK Warut(タイ) 15p
3位 LOHMOH Nimuhamadsulhairee(タイ) 8p

4位の甲斐俊祐と5位の荒川仁

表彰式
■女子ジュニアスクラッチ
残り1周からスパートした菅原が逃げ切って優勝。追走の野寺が2着に入った。
結果
1位 菅原朱音(日本)
2位 野寺楓(日本)
3位 MA Yin Yu(ホンコンチャイナ)

ゴール

表彰式
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