自転車競技

2019 UCI トラック世界選手権 ポーランド大会 レポート
2月27日から3月3日までの5日間、ポーランド・ワルシャワ近郊のプルシュクフ、Pruszkow Arenaで2019UCIトラック世界選手権が行われた。
この大会に出場した競輪選手は、
男子チームスプリント
雨谷一樹(栃木・96期)
新田祐大(福島・90期)
深谷知広(愛知・96期)

男子ケイリン
脇本雄太(福井・94期)
河端朋之(岡山・95期)
新田祐大(福島・90期)

男子スプリント
深谷知広(愛知・96期)
脇本雄太(福井・94期)

男子オムニアム
橋本英也(岐阜・113期)

女子ケイリン
小林優香(福岡・106期)
太田りゆ(埼玉・112期)

女子スプリント
小林優香(福岡・106期)

以上の男子6名、女子2名。

日本選手団としては、計男子11名、女子7名となった。

今回の世界選は、東京オリンピック予選大会で、2018-2019、2019-2020と2シーズン続くオリンピック出場権獲得シーズンの前半戦の締めのレースだ。ここでの成績が、来シーズンに繋がり、東京オリンピックの出場権獲得に大きく前進する。

大会前日の取材では、全員が問題はなく、好調で大会に挑めるとのことだった。

2月27日初日。この日は男子チームスプリントに雨谷、新田、深谷が出場。タイムは44秒159で10位となり、予選敗退となった。


雨谷一樹
雨谷一樹
「自分の感覚的にはタイムはもう少し出ている感覚だったので、そこまで悪いところもなく、ブノワさんに言われたようにポイント、ポイントで、スタートや、そのあとのことも意識できたし、感覚的に悪い走りではなかったと思います。ただ、タイムが全てなので、タイムが出ず、チームのみんなに迷惑かけたかなと思います。悔しいですね。少し休んで来シーズンに向けて準備していきたいです。ワールドカップの反省を活かして、やってきたことを、ここで出して、世界選でいいタイムをと目標にしてきましたが、タイムが出せなかった時点で今回の収穫はないと言えます。一走という大事なポジションを任されているのにタイムを出せなかったことが全てだと思います」
深谷知広
深谷知広
「何かが飛び抜けて悪い感じじゃなく、全体的に低い感じします。自分的には納得するタイムではないですね。全体的なレベルアップをしないといけないです。個々の力を上げて、チームの力も挙げていくことが必要です。大きな失敗はなく、タイムが悪いので、まだまだ力不足。これで納得していたら終わりなので、またしっかり、皆で進化していきたいです!」





28日。二日目。男子ケイリンに前年2位の河端、脇本、新田が出場。女子スプリントに小林が出場。
今回から、男子ケイリンの勝ち上がりが変わり、オリンピックと同じ方式となった。1回戦5ヒート、2着勝ち上がり。敗者復活戦4ヒート2着勝ち上がり。準々決勝3ヒート4着勝ち上がり。準決勝3着勝ち上がり。決勝戦と最低3回勝ち上がらないと決勝に行けないのである。

1回戦、新田、脇本は勝ち上がり準々決勝へ進出を決めたが、河端は勝ち上がれず敗者復活戦へ回った。敗者復活戦ではしっかり勝ち上がり、日本は全員、準々決勝へ進出となった。
準々決勝は新田、脇本は同じ組合せになったが、しっかり勝ち上がり準決勝へ進出。河端は反則を取られ4着だったが降格され敗退となった。




準決勝は新田が3着で1-6位決勝へ、脇本は残り1周でアクシデントがあり、勝ち上がれず7-12位決勝となった。
7-12位決勝の脇本は、マレーシアのアワン・アジズルハスニに差され2着8位となった。
1-6位決勝に進出した新田は、マティエス・ブフリの後ろから差しに行ったが届かず2着となり銀メダル獲得となった。


脇本の7-12位戦。先行する脇本

1-6位決勝を走る新田

残り1周

ゴール

表彰。優勝マティエス・ブフリ 2位新田祐大 3位ステファン・ボティシャー
河端朋之
河端朋之
「予選はタイミングを失敗したと思いますけど、行かない失敗ではなくて行っての失敗だったので、そっちの方がよかったかなと思います。敗者復活戦は落ち着いて、自分の力を出せたかなと思います。クォーターファイナルは最後まで内に行くか外に行くか迷って、ほんの一瞬のブルーバンドだったんですけど、それで降格を取られたので…ルールと言われれば仕方ないですが、その点、自分にも責任があるので。悔しい負けです。
自分としてはブルーバンドに入った感覚はないので、もしかしたら外の動きでちょっと内になってしまったかもしれないです。(たくさんブルーバンドを走って失格になってない選手もいるのに。)
(ブノワが抗議してくれていて)いつでもセミファイナルに向けてアップできる状態にはしていたんですが。
コミッセールも、最終的にブルーバンドではなく、スプリンターラインを走っているアワンの内を差し込んでいるというようなことを言っていたのですが、でも、力で勝てなかった自分の責任です。
敗者復活戦を走った感じでは脚の感じもよく、落ち着いて走れていたので、このあともチャンスはあったと思いますが、結果は出てしまったので。
今まで以上にトレーニングをしていくというか、質を高めていくことが大事なのかなと思います。まだまだ詰められるところはあるので、頑張りたいと思います」
脇本雄太
脇本雄太
「準決勝は特に悔いが残るレースをしてしまいました。落車のにおいがして避けたのが全て。そこから追ったけど、前が遠かったですね。今まではチャレンジャーで臨めたけど、今回は挑まれる立場というか、自分のレースをなかなかさせてもらえないですね。準決勝の悔しさを7-12位決定戦にぶつけました。戦える脚はあるので、あとは気持ち次第。今までと違う緊張感で戦えたので、今後に活かして、オリンピックのメダルにつなげたいです」
新田祐大
新田祐大
「じわじわと嬉しさが溢れてきました。メダル獲得に、たまたま今シーズンからきっかけがあったのかなと思います。そのきっかけも1レースじゃなくて、色んなタイミングで1年間通してあったのかなと思います。
 決勝戦は、グラッツァの動きによってレースが動いていくだろうと思っていました。ブフリは自分の後ろにいるし、動いてきたら合わせてタイミングをみて行けばと思いましたが、思った以上に早い段階からスピードもあがって、ずっと並走になったので、そこが難しいところでした。ブフリも出るのに脚を使ったと思うし、僕はベストポジションだったと思いますが、問題は、残り半周でブフリが先頭に立った時に様子をうかがわずに踏み込むべきでした。
 昨年、河端朋之さんがメダルを獲った時に見ていた側で、チームメイトがメダルを取って力を証明してくれて嬉しい反面、自分がその立場にあったら金メダルが獲れただろうかって思っていました。そのためには日々の練習を欠かすことなく、集中して、そして何が大切なのか感じながら練習してきたことがここまでくることができたのかなと思います。
 でも、銀メダルの喜びと悔しさが半々で、すごく苦しいくらい練習で追い込んでいるのに金が獲れない悔しさがあって、それは金メダルが獲れた時に報われると思うので、来シーズンに向けての課題なのかなと思います」
ブノワ・ベトゥコーチ
ブノワ・ベトゥコーチ
「嬉しいです。でも、喜ぶまでに10分くらいかかりました。2年連続で、しかも昨年と違う選手がメダルを獲得したということは、それだけのポテンシャルがあるということですね。世界のレベルで戦える選手は3人いるということです。今日のレースを見てもらっていてもわかる通り、ちょっとのことでダメになることもあるし、河端のちょっとブルーバンドを2センチくらい走ってアウトになっているので、この喜びをしっかり味わわないといけないですね。(金メダルへの差は)小さな判断とか本当に小さいことで変わるので、自分ができるということを信じることですね。優勝した選手はずっと強い選手でしたが、今回初めての金メダルを獲ったということで、世界選を優勝するということはとても難しいことです。(準決勝へ2人へのアドバイスは)強くペダルを踏め! ということ。踏めば踏むだ強くなるので。来シーズンまで、メンタル、フィジカル、リカバリーの面、全ての分野で伸ばしていかないといけないです」
女子スプリントの小林は、予選の200mFTを11秒181で24位と1/16決勝に進出。1/16決勝でニュージーランドのナターシャ・ハンセンと対戦し敗退となった。
小林の総合成績は24位となった。

1/16決勝の小林
小林優香
小林優香
「結果的には悔しいですけど、次のケイリンまで3日あるので、しっかり気持ちを切り替えて、ケイリンではいい結果を出せるように頑張ります! 悔しさがバネになることはアジア選手権でもそうだったので、これをバネに頑張りたいと思います! 脚は問題ないです。ちょっと判断が迷ってしまったかなと思うので、それを活かして、次は判断を迷わないように走りたいと思います」





3日目は競輪選手の出場はなかった。

4日目、3月2日、男子スプリントに深谷、脇本。男子オムニアムに橋本が出場。
男子スプリント予選の200mFTは深谷が9秒816で21位、脇本が9秒952の25位で1/16決勝に進出。
1/16決勝で脇本はトリニダードトバゴのポール・ニコラスと対戦し敗退。深谷はスナメリのタジョンエンファ・ジャーと対戦し僅差で勝利し、1/8決勝へ進出したが、オーストラリアのマシュー・グレッツァーと対戦し敗退となった。
総合成績は深谷16位、脇本25位となった。


1/16決勝の脇本

1/16決勝の深谷

1/8決勝の深谷
脇本雄太
脇本雄太
「予選は、駆け方的には悪くはなかったですが、コース取りもそうですし、力の配分も間違えたかなと思います。スピードは悪くはないと思っているので、これからつみあげていかないといけないです。1/16決勝、勝負するにはダッシュ力がもう少しほしいですね。残り4分の1輪で勝負がついてしまうので、その4分の1出れるスピードをもう少しつけていきたいです。力勝負はできているので、あとはそこのスピード差だけですね。
(来シーズンへの課題)残りの車輪1個分のスピードです。そんなに差はないですが、の1個分のスピードで勝てるか勝てないかが生まれるので、そこをいかに埋めていくかというところですね。現状でいったらケイリンを勝つための糧の種目なので、トップスピードの中で相手の反応を見て自分がどう動けばいいかという戦略の部分で、そこを培っているので。でも、勝ち上がってからこそ得るものはあるので、もっと追及していきたいです」
深谷知広
深谷知広
「予選のタイムが悪かったので1回戦は勝てましたけど、2回戦でグレーツァーと当たってしまいました。予選からタイムが悪かったのでそこが反省点ですね。まずはタイムをあげていくしかないですね。最近ずっとタイムが悪いので、もうちょっとしっかり練習をしていきたいです。今シーズンはずっと走りっぱなしだったので、またしっかりつみあげて、今シーズン学んだことを復習しながら、来シーズンに向けて頑張りたいです」



男子オムニアムに出場した橋本英也は、第一種目のスクラッチは、時々アタックが掛かる展開でハイスピードな競走ではなかったが、残り7周でスペインがアタックに成功し1ラップアップ。これで1位を確保しそのままゴールスプリントへなだれ込み、橋本は7着となった。
第2種目のテンポレースでは、イギリスとフランスと橋本がアタックし1ラップアップに成功し20ポイントをゲット。その道中、2回先頭でゴールラインを通過し2ポイントを取って合計22ポイントで2位となった。しかし、ラップアップしてからの橋本はスタミナ切れで苦しくなり、集団から千切れ気味となってしまった。それを耐えて集団に入ってゴール。何とかゴールができたのが良かった。
これが終了し一旦ブレイク。後半2種目は夜の部からスタート。
第3種目のエリミネーションは、途中何度か除外されそうになるが、何とか持ちこたえて残り11番目にエリミネートとなった。
第4種目のポイントレース、橋本はここまでのトータル5位86ポイントでスタート。2回目のポイント周回で5ポイントを取るも、後半は全く点が取れずそのままゴール。順位を落とし総合7位となった。


最終種目のポイントレースを走る橋本
橋本英也
橋本英也
「世界選のオムニアムのポイントがこういう風になるのは想像できていなくて、ここまでラップレースになるんだと少しびっくりしました。前の3種目に関しては、よく走れたと思いますが、ただ、エリミネーションは切り替えるタイミングが遅くて失敗した部分もあります。課題としては有酸素系が足らないのは感じました。そこがテンポで他の選手よりも劣っているのを感じてしまい、有酸素系のレースにしないように走ると思ってしまったのかもしれないです。手応え自体は昨年よりも感じていて、世界選でも落ち着いて見れていました。あとは有酸素系が足らないので、ロード系で鍛えないといけないです」
5日目。女子ケイリンに小林と太田が出場。
1回戦、小林は、3着ゴールだったが2着で入線した香港のジェシカ・リーが降格となり準々決勝へ進出。太田は、ステファニーモートンをマークし2着入線で準々決勝へ進出となった。
準々決勝。小林は、何もできずに5着となり敗退。太田は、ロリーヌファンリーセンをマークし番手戦に。しかし内にマダリン・ゴドビー、外にロリアンヌ・ジェネストとアンコにされて、後退し6着敗退となった。総合成績は小林13位、太田16位となった。


準々決勝の小林

準々決勝の太田
小林優香
「予選はちょっと危なかったというか、冷静じゃなかったかなと思います。
 準々決勝は、決勝戦みたいなメンバーだったので、その中でしっかり勝ち上がらないといけない、脚がなくてはいけない、という思いはありました。身体と思いがマッチしてなかったなというのはあります。作戦は立てなく、動いた選手に反応したり、自分で動いたりしましたが、見過ぎたりだとか相手に頼り過ぎた部分があったのかなと思います。…残念です。なんで自分の力を信じないんだって言われるましたが…、自分でもわからないので…、周りが自分を信じてくれるのに自分は信じることができないので、そこが課題と思います」

太田りゆ
太田りゆ
「今回の結果を含めて、成長したシーズンだったなと思います。一回戦で私が注目していたのはモートンとバソバで、くじ順もよく、いつも通りついていきました。あれはけっこう腹をくくらないとできないんですが、かなり腹をくくってついていきました。モートンは強いし、千切れたら大惨事なんですけど、私はリー・ケイシにもつけるんだって自信をもって、ついていきました。今日は冷静でした。
2回戦は、ロリーヌが先行、もしくはゴッドビー。ニッキー、私、ヘジンが競輪で言うところのマーク屋だなって思っていました。前の人がすぽってはまるタイプの先行をする人なので、そうすると番手にはまれない確率はすごいあるなとか色々考えてしまいました。そもそも前に出る作戦がなかったので、そこを考えると、スローな展開になってしまったら、腹をくくって、私も前に出てペースを作るようにすればよかったです。そこができないところだと思うし、「前に出てレース頑張ろうね」ってブノワとは話していました。
 あと1年あるので、課題を解決し頑張っていきたいです」
ブノワコーチ 総評
「個々によって課題は違うので、一概には言えないですが、全ての面で強くしていきたいです。「ここまででいいよ」というレベルではまだないので、また全ての側面をよくしていきたいです。ここに来る前にも言っていたんですけど、ここで成績がよくてもよくなくても私たちの目標は変わらないし、東京オリンピックでいい結果を出すためにも私たちがやらなければいけない仕事は変わらないです」
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