競輪学校物語

 夏帰省明けすぐの9月3日、4日の2日間に渡り、107回生、108回生の第1回記録会が行われた。3日の午前中に200mフライングダッシュ(以下200mFD)、400mフライングダッシュ(以下400mFD)、午後から1000mタイムトライアル(以下1000mTT)、4日に2000mタイムトライアル(以下2000mTT)と3000mタイムトライアル(以下3000mTT)の順で走った。

<初日>

 3日は好天に恵まれ、風もなく、絶好の記録会日和になった。特に午後から行われた1000mTTでは、107回生のほとんどが1分10秒台を切る奮闘を見せた。
 また、107回生の新山響平生徒と108回生の尾崎睦生徒は、試走記録会の時と同じように好成績を上げた。
 さらに吉田拓矢生徒が前回よりもタイムを上げ、記録会初日を終えて、新山、吉田の2人が2日目の3000mTTの結果次第でゴールデンキャップ(男子の基準タイムは200mFDが11秒30以内、400mFDが23秒30以内、1000mTTが1分8秒50以内、3000mTTが3分45秒50以内)を狙える位置につけた。
史上初の男子2生徒同時ゴールデンキャップ誕生に期待がかかった。

107回生

【200mフライングダッシュ】

1位 新山響平

2位 吉田拓矢

3位 取鳥雄吾
【400mフライングダッシュ】

1位 新山響平

2位 吉田拓矢

3位 大関祐也
【1000mタイムトライアル】

1位 吉田拓矢

2位 田村風起

3位 新山響平



108回生

【200mフライングダッシュ】

1位 尾崎睦

2位 板根茜弥

2位 細田愛未
【400mフライングダッシュ】

1位 児玉碧衣

2位 尾崎睦

3位 佐藤亜貴子
【1000mタイムトライアル】

1位 尾崎睦

2位 板根茜弥

3位 児玉碧衣

107回生

■200mFD・1位(11秒17)、400mFD・1位(22秒96)、1000mTT・3位(1分8秒39)

新山響平(青森・20歳)
「200mFDと400mFDはトップタイムでしたが、目標としていたタイムを切れてないので悔しいです。1000mTTは1分5秒を目標にしていましたが、皆がすごく調子が良くて、7秒台も出ていたので、僕もいつも7秒台、6秒台を出せるようにしたいですね。5秒が出れば納得するけど、出るまでは納得できないです。夏帰省は、師匠も見てくれたので、良い練習が出来たと思います」
■200mFD・2位(11秒25)、400mFD・2位(23秒02)、1000mTT・1位(1分7秒52)

吉田拓矢(茨城・19歳)
「200mFDは試走記録会よりもタイムは悪かったけど、2番になれたことは良かったと思います。400mFDは記録会の前に練習で計った時に22秒が出ていたので、今回も22秒台を出したかったのですが、23秒だったのが残念です。2種目とも新山さんに負けていたので、自信のある1000mTTでは絶対に1位タイムを出したいと思っており、この結果は自信に繋がりますね。
 夏帰省はバンクで長い距離をもがいたり、バイク誘導をしてもらったり、充実した練習が出来ました。この記録会のために練習してきました」
■200mFD・3位(11秒39)

鳥取雄吾(岡山・19歳)
「色々とダメでしたね。新山さんに勝ちたいと思ったけど勝てなかったし、タイムも前回よりも良くなかったですし、これからですね。1000mTTが一番心残りでしたね。今日は48×14にしてみましたが、まだまだ自分には踏めないギアだったので、もっとイチから練習して頑張ろうと思います。
 夏帰省中は、父と弟としっかり練習してきたつもりだったけど、これが結果なので、もう少し出来ればよかったけど残念です」
■400mFD・3位(23秒29)

大関祐也(千葉・19歳)
「朝、アップの時から身体が軽かったので、しっかり狙っていこうと思って頑張りました。ダッシュには前から自信があったので、3位に入れて嬉しいですね。200mFDはちょっと思うようなタイムが出なかったけど、1000mTTは学校でのベストが出たので良かったです。またこれから伸ばしていけるように頑張りたいと思います。
 夏帰省は、師匠や練習グループの人と一緒に毎日練習してきたので、練習はかなり出来たと思います。師匠は小埜正義(千葉・88期)さんです。小埜さんは練習する時はしっかりして、的確なアドバイスをくれるので、勉強になります」
■1000mTT・2位(1分8秒24)

田村風起(滋賀・19歳)
「吉田君には絶対に勝ちたいと思っていたので悔しいです。7秒台を出したかったので、すごく悔しかったです。200mFDは最低限の目指としていたタイムは突破できたけど、でも、これから戦っていく上では弱いかと思います。前に出る力がないので、そこが今の課題です」

108回生

■200mFD・1位(12秒51)、400mFD・2位(26秒01)、1000mTT・1位(1分15秒37)

尾崎睦(神奈川・29歳)
「200mFDはちょっと力んじゃいました。目標のタイムからは遠かったです。400mFDは、前日の練習で良かったので、もっといけるかと思ったけどダメでした。1000mTTはベストタイムが出たのでそれは良かったけど、でも14秒台、13秒台を狙っているので、そこに届いてないのは悔しいですね。短距離は、地元でも良いタイムが出ていたのでもっと出せるかと思っていました。その辺はまだ経験がないところでもあるので、経験のある子たちよりも乗ることが大事なのかなと思います。
 夏帰省は、地元のバンクで男子選手と一緒にもがかせてもらって、競走訓練を見据えてやってきました。デビュー後もしっかり見据えて、師匠が考えてくれたので、色んな選手と一緒に走ってきました。(目標とするスタイルは)奥井迪選手のような走りですね。そのためには、やっぱり脚が必要なので、自信を持って先行できるように、もっと脚をつけていきたいです」
■200mFD・2位(12秒74)、1000mTT・2位(1分17秒86)

板根茜弥(東京・25歳)
「200mFDは朝練習の時にメニューを決めていて、軽いギアをものすごいスピードで回して、脚を軽くしていこうと臨んでみたんですけど、そうしたら脚が軽くて重いギアも回せたので、それは自分でものにしたなと思いました。400mFDも自己新ですし、脚が回って追い込めたと思います。1000mTTは最後にタレてしまいましたが、終わってみれば17秒4だと聞いてびっくりしました」
■200mFD・2位(12秒74)

細田愛未(埼玉・19歳)
「全体的にはあまり良くなかったと思うけど、自分では出し切れたので良かったと思います。200mFDは12秒前半を狙っていましたが、思っていた程出なくて悔しいです。
 夏帰省はバンクで練習していました。師匠は太田真一(埼玉・75期)さんです。太田グループと一緒に練習させてもらっています。馬場和広(埼玉・98期)さんや、106期の高橋梨香さんらと一緒に練習しました。2000mTTは2分50秒を切れるように頑張りたいと思います」
■400mFD・1位(25秒65)、1000mTT・3位(1分17秒67)

児玉碧衣(福岡・19歳)
「1000mTTの17秒という記録が悔しかったですね。怪我をしたことが一番後悔というか、悔しいです…。納得いかなかったですし、ただ悔しいですね。
 夏帰省はバイク誘導を中心にやってきました。少しずつタイムは出ていたのに、それを今日出せなかったのは悔しいです…」
■400mFD・3位(26秒26)

佐藤亜貴子(神奈川・32歳)
「もうちょっと200mFDと400mFDで早いタイムを出したかったけど、出てないのでちょっと練習不足だなと思います。3位に入ったけど、目標のタイムは26秒を切ることだったので、もう1歩、2歩足らなかったので悔しいです。夏帰省は師匠(柴田健・神奈川・71期)の下で練習して、短距離の踏み出しが苦手だったので、そこを強化する練習をしましたが、それが活かせてなかったかなと思います」
 初日のインタビューで印象的だったのは、上位3位に入っているほとんどが自分のタイムに納得はしていなかったことだ。特に前日に落車して怪我をした児玉は悔いても悔い切れない様子だった。

<2日目>

 4日の午前中に108回生の2000mTTが行われ、ほとんどが3分を切り、試走記録会よりもタイムを縮めていた。
 午後に行われた107回生の3000mTTでは、ゴールデンキャップ獲得の期待が掛かる注目の新山が2組目、吉田が3組目に出走した。
 彼らの出走時には他生徒も自然と応援に力が入った。
 先に走った新山は中盤のタイムを落としたため、後半に巻き返しを狙ったが3分46秒80とわずか及ばなかった…。そのすぐ後に走った吉田は上手くペース配分したこともあり、3分44秒19を出し、競輪学校史上12人目のゴールデンキャップを獲得した。

107回生

【3000mタイムトライアル】

1位 吉田拓矢

2位 新山響平

3位 簗田一輝

108回生

【2000mタイムトライアル】

1位 三宅玲奈

2位 今川小雪

3位 細田愛未

107回生

■3000mTT・1位(3分44秒19)ゴールデンキャップ獲得

吉田拓矢
「嬉しいですね! 教官に24秒台で走れば、このタイムを出せるって言われたので、このタイムを狙って走りました。終始ずっと苦しかったですけど、同期の仲間たちの声が聞こえたので、それが後を押してくれたと思います。(今後注目されることは)プレッシャーではあると思うけど、それに負けないように、強い選手になりたいと思います。次に第2回記録会でもゴールデンキャップが取れるように、しっかり訓練に臨んでいきたいと思います」
■同・2位(3分46秒80)

新山響平
「悔しいです…。中盤のスピードが足らなかったのかなと思います。25秒5が出てきてしまって、ちょっと落としすぎたかなと思って、後半は思い通りに上げられたので、前半をもっと上げればよかったです。ゴールデンキャップを意識していたので…、先に取られたのは悔しいです。また第2回記録会で頑張ります!」
■同・3位(3分50秒09)

簗田一輝(静岡・18歳)
「自分のベストが出なかったので悔しいです。昨日調子が良かったので、ギアを1枚上げてみましたが失敗しました。目標を達成できたのは1000mTTだけでした。自分もゴールデンキャップを狙っているので、仲間が取ったのは嬉しいけど、負けたのは悔しいですね。競走訓練は、自分は先行でいきたいと思います。競輪学校で先行するにはダッシュが必要なので、ダッシュをつけないといけないですね。今の課題は、同級生の吉田に勝ちたいです」

108回生

■2000mTT・1位(2分45秒98)

三宅玲奈(岡山・18歳)
「(自分は最後だったので)皆がどんどん自己ベストを出していたから、緊張する面もあったんですけど、今の自分の力を出し切れて良かったです。自己ベストが出せました。でも、全然練習は足りてないので、次の機会ではもっと上のタイムを狙いたいと思っています。競走訓練は、安全な走りをしていきたいと思います。そして、自分で動いていけるような選手になりたいので、もっと練習していきたいと思います」
■同・2位(2分47秒02)

今川小雪(群馬・19歳)
「200mFDと400mFDがあまり良くなかったので、今日は良いタイムを出したいと思っていたので、この結果が出て良かったです。教官からも赤帽がかかっているから頑張れって言われていたし、自分でも狙っていたので良かったです。次は白帽を狙いたいと思います」
■同・3位(2分48秒02)

細田愛未
「目標の50秒が切れて良かったです。学校でけっこう乗り込んでいたので、持久力系でちょっとは自信があったので結果が出て良かったです。競争訓練では、どこからでも1着を取れるように、色々と考えていきたいです」
 惜しくも寸でのところでゴールデンキャップを逃した新山は悔しさに肩を落としていた。しかし、107回生を引っ張る存在として、この悔しさをバネにさらに強くなることを期待したい。
 また、ここでゴールデンキャップを取った吉田には、ここで満足することなく男子生徒初になる連続ゴールデンキャップ獲得を狙って欲しい。
 訓練面では、競走訓練が始まっている。デビューを見据え、己が目標に向けて、ここからが正念場になるだろう。