レース展望

選ばれし9戦士が今年最後の戦いに臨む
 今年のベストナインが覇を競う競輪界最高峰の戦い、KEIRINグランプリ2012が今年も12月30日に号砲を迎える。今年2冠を飾った武田豊樹率いる関東勢が中心だが、絆の強い北日本勢や中部勢の機動力も侮れず、魂の走りが健在の村上義弘の一発も十分だ。
武田豊樹がグランプリ初優勝を目指す
深谷知広が若さで逆境をはね飛ばす
武田豊樹選手
 武田豊樹は今年も抜群の安定感で競輪界を牽引、GIでは高松宮記念杯と競輪祭で2冠を達成した。38歳と決して若くはないだけに1年を通して好調維持とはいかないが、良いときはもちろん、悪いときにも悪いときなりの走りできっちり結果を残す卓越したテクニックを有しているのでファンの期待を裏切ることは少なく、今年最後の大一番でもさすがは武田という走りを見せてくれるだろう。
長塚智広選手
 長塚智広は今年はビッグレースでの優勝はなかったが、GIでは日本選手権、寬仁親王牌、競輪祭で決勝進出するなど、武田と同様に安定した走りで好成績を積み重ねた。昨年の競輪祭でGI初制覇を飾った長塚は今年は残念ながら連覇とはいかなかったが、昨年同様に武田と茨城ワンツーを決めている。昨年のグランプリでは落車・失格と最悪の結果に終わっているだけに、今年は汚名返上の走りで再度の茨城ワンツーを目指す。
岡田征陽選手
 岡田征陽は東王座戦で準優勝、日本選手権では決勝4着と大健闘、ホームバンクでのグランプリ出場を目標にこの1年は誰よりも熱い走りを続けてきた。後半戦に入るとビッグレースでの決勝進出はなくなり、ラストチャンスの競輪祭も二次予選で敗れたが、最終日には執念の走りで勝ち星を掴み、獲得賞金ランキング8位でグランプリ初出場を決めており、今回も地元ファンの声援に応える走りで見せ場を作ってくれるだろう。
深谷知広選手
 深谷知広は今年は西王座戦を完全優勝して好スタートを切ると、日本選手権、高松宮記念杯、寬仁親王牌で決勝進出、獲得賞金ランキング4位で2年連続のグランプリ出場となった。ファン投票1位のオールスターでは準決勝で無念の落車、競輪祭でも初日に落車と近況は流れが悪く、グランプリでも落車の影響が気になるが、最年少の深谷の最大の武器である若きエネルギーを一気に爆発させて逆境をはね飛ばしてくるだろう。
浅井康太選手
 浅井康太は今年のビッグレースでの決勝進出は西王座戦のみと、S級S班としてはやや物足りない成績が続いてしまったが、11月の松阪記念では地元戦のプレッシャーをはねのけ、上がり10秒8のバンクレコードタイで圧勝し、獲得賞金ランキングを9位に押し上げた。競輪祭でも準決勝で惜しくも4着と敗れたが、残り3走は1着2回、2着1回と急速に復調しており、グランプリでも本来の力強い走りが期待できるだろう。
3冠を制して北日本勢が大復活
村上義弘が強い気持ちで勝機を掴む
成田和也選手
 今年は3大会のGIで北日本勢が優勝と強さを見せつけたが、その先陣を切ったのが成田和也だ。日本選手権決勝では6番手からインを強襲して初のダービー王に輝いた。その後も渡邉一成がビッグ初優勝を果たした共同通信社杯で準優勝、オールスター決勝でも山崎芳仁の復活優勝を援護して準優勝とダービー王の名に恥じない活躍だ。グランプリでも北日本勢をしっかり援護しながら輪界屈指の差し脚を伸ばしてくる。
佐藤友和選手
 佐藤友和は今年前半はやや精彩を欠いていたが、単騎の競走となった7月の小松島記念決勝で今年初優勝を飾ると、続く寬仁親王牌も単騎の競走から2度目のGI優勝を達成、10月には熊本と一宮の記念を連覇と勢いに乗った。その後に人生初のぎっくり腰を患って1カ月の欠場を余儀なくされ、競輪祭では二次予選で敗れてしまったが、3日目選抜と4日目特選を連勝しており、グランプリまでにはしっかりと立て直してくるだろう。
山崎芳仁選手
 山崎芳仁も長らく低迷していたが、日本選手権で決勝へ駒を進めると、5番手からの捲りで準優勝と復調ぶりを力強くアピールした。オールスターの準決勝では同期・武田豊樹との壮絶なもがき合いを制して1着、決勝では渡邉一成の先行に乗り一昨年のオールスター以来のGI優勝を飾った。一昨年のグランプリでは番手絶好の展開から2着と悔し涙を呑んでいるだけに、今度こそはの意気込みで初優勝を狙ってくるだろう。
村上義弘選手
 村上義弘は昨年に続いて近畿勢からただ1人のグランプリ出場となった。今年は日本選手権、高松宮記念杯、オールスターで優出しているが、いずれも稲垣裕之や脇本雄太らの近畿の後輩たちを目標にしての勝ち上がりだっただけに、彼らのこの1年の頑張りに応えるためにも強い気持ちで暮れの大一番に臨んでくる。昨年のグランプリでは最後の直線で落車の不運に見舞われたが、今年は乾坤一擲の走りで勝機を掴んでくるだろう。
KEIRINグランプリ
語り継がれる名勝負
2011年12月30日 平塚競輪場 KEIRINグランプリ2011優勝:山口幸二
43歳の山口幸二が2度目のグランプリ制覇
 佐藤友和-伏見俊昭-成田和也、武田豊樹-長塚智広、村上義弘、深谷知広-浅井康太-山口幸二の並びで周回を重ねる。青板バックから深谷が動いて佐藤を抑えると、続いて武田が上昇して先頭に立つ。村上が武田ラインを追い、佐藤は7番手に引く。4番手に入った深谷は赤板過ぎの1コーナーから再びカマシ気味に仕掛けて主導権を握り、4番手に武田、7番手に佐藤の一本棒の状態で最終ホームを通過する。1コーナー過ぎから浅井が後方を確認しながら車間を空けていき、バックから番手捲りを打つ。武田は4コーナー手前から捲り追い込みをかけるが、浅井の後ろから直線鋭く抜け出した山口が先頭でゴール、13年ぶり2度目の優勝を飾る。武田が2着に入り、浅井が3着。
43歳の山口幸二が2度目のグランプリ制覇
グランプリシリーズを読み解く
京王閣バンクの特徴を知る
軽くて癖のない標準的なバンク
直線に入ってから大外を踏んでいくとよく伸びる
 直線の長さは普通で、走路も癖がなくて走りやすい標準的な400バンクだ。
 ただ、カントが若干緩い感じがあり、捲りは3コーナーにかかると外に膨れやすい。直線では特に伸びるコースはなく、追い込みは番手が絶対的に有利で、交わしの交わしの出現率は低い。
 というのが京王閣バンクの基本的な特徴とされているが、今年初めて実施されるガールズグランプリを除いてオールS級で実施されるグランプリシリーズでは、やはり基本通りとはいかないだろう。
 09年に京王閣で開催されたグランプリシリーズの初日1レースでは、伊藤信の先行で三橋政弘が番手絶好の展開となったが、3番手から中を割った横山邦彦が1着、4番手からイエローラインのやや内側を伸びた島田竜二が2着、三橋が3着とオープニングレースから波乱の決着になっている。
 同じく初日の5レースでは最終4コーナー8番手の亀井宏佳がイエローラインの外側を伸びて2着、さらにその上を9番手から伸びてきた大塚英伸が1着に突っ込んでいる。
 京王閣バンクは直線では特に伸びるコースはないとされているが、それは直線をまっすぐ走った場合で、実は直線に入ってから思い切って大外を踏んでいくとよく伸びる。
 09年の開催でも中団からの大外強襲や遅めの捲り追い込みがよく決まっていたし、全33レースのうち先手ラインの選手が1着になったのは3分の1の11レースだけである。
 ちなみに1着、2着の決まり手を見てみると、1着は逃げが2回、捲りが9回、差しが22回、2着は逃げが4回、捲りが7回、差しが12回、マークが10回となっている。
京王閣競輪場

京王閣競輪場バンクデータ
 直線は400m、最大カントは32度10分34秒、見なし直線距離は51.5m。バックスタンド裏が道路を挟んで多摩川の河川敷のため、冬場は2コーナーから4コーナーにかけて川風が吹くことがよくある。ホーム側では1コーナー付近が向かい風となって2コーナーまでが重くなり、先行選手が踏み出しで脚力をロスして直線で捕まってしまうケースが多い。