第66回日本選手権競輪(GI)が立川競輪場で開催される。完全復活の平原康多と武田豊樹の2人を擁する地元・関東が絶対的な中心となるが、強さの戻った深谷知広や若手機動力型の成長が著しい北日本や近畿の反撃にも注目が集まる。
地元・関東の牙城は揺るがない!
快速・深谷知広が関東コンビの切り崩しを狙う
平原康多が2年8カ月ぶり4回目のGI制覇を飾った。この2年余りは度重なる落車の影響で不振にあえいでいたが、新春の地元・大宮記念を優勝して復調の手応えを掴むと、全日本選抜では特選予選、準決勝を力強い走りで1着で突破、武田豊樹に前を任せた決勝では鈴木謙太郎-成田和也の福島コンビを牽制して武田をアシストするとともに、最後の直線では武田に当たりながら直線強襲と、優勝への並々ならぬ執念を見せつけた。
GI決勝の大舞台で、誰よりも積極気な立ち回りでレースの流れを支配していた武田の走りも素晴らしかった。最終的には平原の好アシストによってカマしてきた鈴木謙太郎の番手にはまる形となったが、勝負どころで先行を考えていた結果であり、39歳になっても若手自力型に対して真っ向勝負を挑んでいく姿は、まさに輪界の王者の名にふさわしい。
武田と平原の2人が牽引する地元・関東があまりにも強力で、この関東の牙城に対して他地区の選手たちがいかに切り崩しを狙っていくかが今大会の最大の見どころになる。関東の難敵になるのは強さの戻った深谷知広だろう。昨年後半はオールスター、競輪祭と落車が続いてやや低調だったが、全日本選抜の特選予選は冬場の冷えきったバンクを逃げ切って上がり11秒1の驚異のタイムをマーク。スタールビー賞と準決勝も連勝で勝ち上がり、決勝は大外を捲り追い込んで2着に突っ込んだ。立川では10年にヤンググランプリを優勝、11年、12年の記念ではともに逃げ切りで連覇を達成とバンクとの相性が抜群なのも好材料だ。
充実の機動力で打倒・関東を狙う!
安定感ある成田和也の連覇に期待がかかる
GP覇者の村上義弘を中心に結束する近畿がライン的には強力で、機動力では武田豊樹と平原康多の関東コンビに十分対抗できるパワーを秘めている。
村上は全日本選抜では4日間未勝利に終わったが、特選予選は脇本雄太を目標に2着、準決勝は藤木裕を目標に2着で決勝進出、白のチャンピオンユニホームの重責をしっかり果たした。藤木、脇本以外にも川村晃司、稲垣裕之と機動力が揃っているので村上は勝ち上がり戦で目標に事欠くことなく、もちろん自力戦でも着実に決勝進出を果たしてくる。
藤木裕は全日本選抜決勝では無念の落車となったが、昨年の競輪祭に続いてのGI優出となった。1月の伊東温泉FIを完全優勝、和歌山記念が決勝9着、静岡記念が決勝4着と波に乗っており、全日本選抜の二次予選ではS級S班の佐藤友和の先行を捲って1着、準決勝では先行した小嶋敬二の番手をインから奪って3着と巧い走りを見せた。今大会も果敢な攻めで、S級S班を始めとする上位陣を脅かす存在となるだろう。
北日本もS級S班3人を筆頭に渡邉一成、新田祐大、鈴木謙太郎らの先行型も好調で層が厚い。近畿の村上義弘と同様に、勝ち上がり戦では成田和也が展開有利にレースを進めて全日本選抜に続いての決勝進出を決めてくるだろう。成田は全日本選抜の決勝では失格に終わってしまったが、準決勝は新田祐大の先行を目標に2着、二次予選では目標の渡邉一成が後手を踏まされて最終バック9番手の最悪の展開となったが、直線に入ってからの中割り強襲で3着とさすがの底力を見せつけている。仮に今大会でも勝ち上がり戦で目標不発や目標不在の展開があったとしても、成田の直線強襲が決して侮れず、昨年に続いての日本選手権連覇に期待がかかる。
全日本選抜の4日間で積極性が最も光っていたのは鈴木謙太郎だろう。一次予選は逃げ切り、二次予選は吉田敏洋の先行を早めに捲っての2着で山崎芳仁とワンツー、準決勝は深谷知広を相手に先行して2着。決勝は6着に終わったが最終ホームから一気にカマして4日間バックを取っており、レース内容は上等だ。鈴木は11年に名古屋で開催された日本選手権でも4日間バックを取り、二次予選と準決勝を逃げ切ってGI初優出を決めており、今大会でも連日のバック取りを狙ってくる。
新田祐大がいよいよ本格化してきた。ロンドン五輪後に渡邉一成が世界レベルのスピードを武器にビッグレースで大活躍、中川誠一郎も得意の捲りで勝ち星を量産と快進撃を続ける中、新田だけが取り残されていた印象があった。しかし、今年は新春のいわき平と京都向日町のFIを連覇すると、2月の四日市記念では深谷知広の先行を捲って記念初優勝を達成、全日本選抜では準決勝で敗れたが、鈴木謙太郎と同様に4日間主導権を取り切って先行力を強烈にアピールした。
ハイスピードの捲りで海老根恵太が復活優勝を狙う
能力的にはヒケを取らない九州勢の巻き返しに期待
海老根恵太がいよいよ復調してきた。GIの決勝戦からはしばらく遠ざかっていたが、バンクレコードを持つ松山の全日本選抜では一次予選を上がり11秒1の捲りで快勝して健在ぶりをアピール、二次予選と準決勝をともに3着で突破した。決勝は勝負どころで成田和也と絡んで脚を使ってしまい、ゴール前で伸びを欠いて3着に終わったが、関東コンビを追走しての組み立ては間違いではなかった。今大会も持ち味のレース勘と組み立ての巧さを武器にチャンスを掴んでくるだろう。
南関東では全日本選抜で4日間逃げまくり、上位陣相手に善戦を見せた田中晴基にも注目してみたい。一次予選は神山拓弥に捲られながらも逃げ粘りの2着、二次予選は同県の海老根の勝ち上がりに貢献して7着に沈んだが、特筆すべきは最終日の特選レースだ。渡邉一成-山崎芳仁の強力福島コンビを叩いて先行、田中自身は8着に沈んだが、番手発進の桐山敬太郎-林雄一の神奈川コンビがワンツーを決め、福島コンビを不発に終わらせている。今大会でも積極果敢な走りで上位陣を苦しめ、南関東を盛り上げてくれるに違いない。
九州は近況やや元気がなく、全日本選抜では中川誠一郎、井上昌己、小野俊之の3人が準決勝まで進んだが、結局3人とも準決勝の壁を突破することができなかった。準決勝の中川は最終バックで9番手になって7着、井上-小野も最終バックで8番手となって5着と6着と完全な展開負けだった。それでも中川は最終日特選で8番手から捲って3着、井上も最終日特別優秀で5番手からの捲り追い込みで3着、小野は二次予選と最終日特別優秀で2着と状態的には決して悪くはなかった。中川と井上は捲りが主戦法なだけにどうしても展開に注文がつくが、立川は直線が長いので最後方からの捲り追い込みでも十分に可能性があるし、小野にとっては04年にグランプリを制覇した思い出のバンクである。九州は選手層が厚いし、能力的にもハイレベルの選手が揃っているので、今大会での巻き返しを大いに期待したい。
日本選手権競輪の思い出
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第41回日本選手権競輪(GI)
昭和63年3月23日決勝(立川)
優勝:滝澤正光
滝澤正光が第37回、第39回に続いて3度目の優勝
号砲とともに勢いよく飛び出した佐古雅俊がスタートを取り、本田晴美-三宅勝彦を受けて中国勢が前受け、中野浩一-井上茂徳-今村保徳の九州勢が中団、後方に滝澤正光-馬場進-山口健治の並びで周回を重ねる。残り3周の青板から滝澤以下がゆっくり上昇して前団を抑えにいくと、本田はあっさり引いて4番手に入る。九州勢には動く気配がなく、滝澤が先頭のままで打鐘を迎えるが、最終ホームから本田が一気にカマす。滝澤は本田を行かせると、番手に飛びついて三宅と競る。1センターで滝澤は三宅に競り勝ち、2コーナーからすかさず番手捲りを放つ。後方からの巻き返しはなく、最後の直線は滝澤と馬場のマッチレースの様相となるが、滝澤が猛追する馬場を振り切り、日本選手権史上初の3度目の優勝を飾る。馬場が2分の1車輪差で2着、山口が3着に流れ込んだ。
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第66回日本選手権競輪を占う 立川400バンクの特徴
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直線の長い先行選手泣かせのバンク
昨年の全面改修工事でバンクがリニューアル
立川バンクは昨年9月から3カ月かけて全面改修が行われた。明色ウォークトップという素材で色鮮やかな走路となり、走路内の人工芝も張り替えられて、きれいで爽やかな競輪場に生まれ変わった。もともとクセのあるバンクではなかったが、全面改修で3コーナーと2センターにあったでこぼこもなくなり、軽くて走りやすい走路になったと選手間での評判はいい。
だが、バンクの形状そのものは以前と同じで、400バンクの中では直線距離が最も長いので、先行選手泣かせのバンクであることには変わりはない。
02年に開催された日本選手権では全66レースのうち逃げ切りは6回だけ、同じく06年に開催された日本選手権でも逃げ切りは6回だけだった。同型の仕掛けが遅くなりがちなので、積極性の高い先行選手なら主導権を取りやすいし、マイペースで駆けることができるという面もあるが、直線があまりにも長いので、2度、3度と踏み直しができるスピードタイプでないと苦しい。
捲りは中団をキープしながら、3コーナーから上バンクにコースを取り、カントを使って捲り追い込み気味に仕掛けると直線でよく伸びる。
立川バンクデータ
バック向かい風の強い日が多い
周長は400m、最大カントは31度13分6秒、見なし直線距離は58.0m。冬から春頃までは風が強く、バック向かい風の日が多い。とくに風の強い日は2コーナーで風が回り、追い込み選手が横風を受けて自力選手の踏み出しに遅れることもある。風の影響でインが重くなるので、競りも1センターまでに決着をつけないとイン側が不利になる。
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