第29回共同通信社杯(GII)が福井競輪場で開催される。3月の日本選手権で2度目のダービー王に輝いた村上義弘を中心に固い絆で結束する地元・近畿勢がシリーズをリードしていくが、日本選手権の準決勝で立川のバンクレコードを更新する圧巻の走りを見せた深谷知広の逆転も十分だ。層の厚さで他地区を圧倒する北日本勢や総合力一番の武田豊樹の巻き返しにも期待がかかる。
村上義弘を中心に結束する近畿勢が必勝を期す
復活なった深谷知広が怪物パワーを見せつける
日本選手権で近畿勢からただ1人優出した村上義弘は、深谷知広の後位が空いていたが、勝ち上がり戦で自分を引っ張ってくれた藤木裕、川村晃司、脇本雄太ら後輩たちの頑張りに応えるために敢えて単騎戦を選択。3番手確保から仕掛けた武田豊樹を追走しての追い込みで2度目の日本選手権制覇を成し遂げた。村上ならではの競輪道を貫いた熱き思いは後輩たちに十二分に伝わったはずで、より結束力を強めた地元・近畿勢がシリーズをリードしていく。
とりわけ意気に燃えるのが福井がホームの脇本雄太だろう。日本選手権ではインドで開催されたアジア選手権からの帰国直後だったが、それでも準決勝まで勝ち上がっており、今回も近畿勢の援護を受けながら持ち味の徹底先行で地元優勝を狙ってくる。
地元・近畿勢の最大の難敵となるのが完全復活なった深谷知広だろう。深谷は昨年後半は落車の影響で乱調ムードだったが、2月の全日本選抜から状態が一変し、無傷の3連勝で勝ち上がって準優勝と復活の狼煙を上げた。日本選手権でも特選予選は抑え先行で逃げ切り、ゴールデンレーサー賞は4番手からの捲りで圧勝、そして準決勝は絶体絶命の8番手からの捲りで上がり10秒6の驚異的なタイムでバンクレコードを塗り替えた。決勝はまたもや2着に終わったが、今回も怪物パワーを遺憾なく発揮してファンを魅了してくれるだろう。
武田豊樹は全日本選抜で平原康多の復活優勝に貢献するなど、昨年から引き続いて今年も安定感抜群の走りを披露していたが、2月の奈良記念後に持病の座骨神経痛が悪化、3月のいわき平記念を欠場した。それでも日本選手権では二次予選で思い切ったカマシ先行で2着に粘り込み、決勝は弟子の牛山貴広を追走し巧みに3番手を確保と見せ場を作っており、今回も総合力で一歩も二歩もリードする武田が若手選手の挑戦をはねのけて王者の貫禄を見せつけてくれるだろう。
北日本勢が好連係を決めて共同通信社杯連覇を狙う
しぶとさが売りの九州の追い込み勢が侮れない
選手層の厚さで他地区を圧倒しているのが北日本勢だ。日本選手権では山崎芳仁、佐藤友和、成田和也のS級S班の3人に加え、佐藤慎太郎、菊地圭尚の5人が決勝進出、山崎のグランドスラムに向けて結束した。残念ながら武田豊樹にラインを分断されて山崎の全冠達成は来年以降に持ち越しとなってしまったが、今回もエース・山崎を中心に近畿勢にも負けない結束力で巻き返しを狙ってくるだろう。
北日本勢の中でとりわけ好調さが光っていたのが佐藤友和だ。4.25の大ギアをしっかり踏みこなせており、準決勝では脇本雄太の先行で大きく車間の空いた6番手となってしまったが、脇本の番手から抜け出した村上義弘に踏み勝っての1で上がりタイムは10秒9だった。同じく準決勝でバンクレコードを更新した深谷知広の陰に隠れてしまったが、佐藤のスピードのよさも決して忘れてはいけない。昨年の共同通信社杯決勝では佐藤友和-渡邉一成-成田和也で連係、佐藤の先行を目標に渡邉がビッグ初優勝を飾っている。その渡邉以外にも新田祐大、鈴木謙太郎と若手自力型が揃っており、今回も連係がうまく決まれば北日本勢の連覇の可能性は高い。
しぶとい走りが売りの追い込み選手が揃った九州勢も軽視できない存在だ。日本選手権では九州勢からの優出はなかったが、合志正臣が二次予選を中川誠一郎の捲りに乗って1着で突破して準決勝へ駒を進めている。2月の奈良記念の準決勝では松岡孔明-合志の熊本コンビで先手ラインに攻め込み、武田豊樹が捲ってくると牽制しながら前に踏んで2着と、本領発揮のしぶとさで優出している。ビッグレースでの活躍が多い大塚健一郎や小野俊之の勝ち上がりも十分で、鋭い差し脚を発揮してチャンスを掴んでくるだろう。
南関東勢では新田康仁が好調をキープしている。昨年膝の手術をしてから鋭い捲りを連発して勝ち星を重ねている新田だが、1月の静岡記念決勝では神山拓弥の先行を目標に深谷知広を不発に終わらせて地元優勝を飾っている。日本選手権では二次予選で敗れてしまったが、一次予選は小埜正義の先行を目標に1着、5日目特選では平原康多の番手にはまり込んでの追い込みで2勝目を挙げており、今回も鋭い自力脚とレース巧者ぶりを発揮して勝ち上がりが期待できる。
勝ち上がり戦は自動番組編成方式で初日はオール予選
推薦枠で出場の坂本貴史と河端朋之の力走に期待
共同通信社杯の勝ち上がり戦は自動番組編成方式で実施され、初日は全レースが一次予選で番組編成は選考順位によって割り振られる。
2日目の二次予選はAとBの2種類あるが、一次予選で2着までの24名と3着の中で選考順位上位者の3名が二次予選Aへ、3着の残り9名と4着と5着に入った24名と6着の中で選考順位上位者の3名が二次予選Bにやはり自動的に割り振られる。そして二次予選Aの5着までの15名と、二次予選Bの3着までの12名が準決勝へと勝ち上がれる。
昨年の大会では武田豊樹、山崎芳仁、深谷知広、村上義弘らが2日目終了時点で姿を消す波乱続きの4日間になっており、今年も自動番組編成方式によって思わぬ決着が見られるかもしれない。
共同通信社杯では例年、スポンサー(共同通信社)の推薦による出場枠が設けられており、今年も小嶋敬二、坂本貴史、河端朋之の3名が選出されている。
小嶋はこれまでの実績と人気の高さが評価されての選出だが、石川の小嶋にとっては同じ北陸地方の福井バンクは準地元といってもよく、今回も持ち味のパワーあふれる走りを見せつけてくれるだろう。
坂本と河端の2人は競輪だけではなく、自転車競技の世界大会でメダルを獲得するなどの華々しい活躍が評価されての選出だ。昨年、ロンドン五輪に出場した3人が帰国後に競輪でブレイクしたように、世界の舞台で戦っている坂本と河端の2人にもさらなる飛躍が期待される。
共同通信社杯の思い出
08年10月13日決勝(久留米)
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山崎芳仁の番手から佐藤友和が優勝
久留米で行われた第21回共同通信社杯の決勝は、誘導以下、山田裕仁-坂上樹大、山崎芳仁-佐藤友和-伏見俊昭、平原康多-神山雄一郎、海老根恵太-兵藤一也の並びで周回していく。まず赤板手前から海老根が上昇して先頭に立つが、続いた平原が海老根を押さえ、さらにそこを山崎が叩いて主導権を握っていく。5番手になった平原が最終2コーナーから仕掛けると、合わせて佐藤が番手から発進し、平原の猛追を振り切って優勝を果たした。平原が2着、伏見が3着で入線。
山崎芳仁の番手から佐藤友和が優勝
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共同通信社杯を占う
福井400mバンクの特性を知る
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ホーム直線が短かめで、先手ラインがやや有利
標準的なカントの400バンクだが、コーナー部分が長くて直線が短いので先行選手がやや有利とされている。しかし、クセのない軽い走路なので後方からの捲りや外強襲の追い込みも決まりやすく、どんな戦法でも十分に力を発揮できる。
08年に開催されたふるさとダービー福井の決まり手を見みると、全44レースのうち1着は逃げが8回、捲りが10回、差しが26回、2着は逃げが4回、捲りが14回、差しが14回、マークが18回となっている。
たいていのビッグレースでは逃げよりも捲りの決まり手の出現率が圧倒的に高いのが普通だが、福井バンクでは先行選手が健闘しているのがよくわかる。
先行は少々早めに仕掛けても最終コーナーまでもつことが多く、早駆けの先行に乗る追い込み選手が有利となる。捲りはコーナー部分が長いので、3コーナーまで捲り切らない牽制されてしまうケースが多くなる。遅めの捲りなら、3コーナー過ぎから仕掛けて4コーナーまで我慢できれば、直線で外寄りのコースがよく伸びる。
軽くてスピードに乗りやすい高速バンク
福井バンクデータ
周長は400m、最大カントは31度28分37秒、見なし直線距離は52.8m。日本競輪学校の400バンクをモデルにして造られており、選手間でもクセがなくて走りやすいと評価は高い。見なし直線距離は標準的だが、コーナー部分が長めでホーム直線が21mしかなく、全体的に小さく感じられる丸形バンクとなっている。
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