ファン投票によって選ばれしスーパースターたちの夢の競演、第56回オールスター競輪(GI)が京王閣競輪場で開催される。2年ぶり3回目のファン投票1位に選ばれた村上義弘は昨年末の当所でのグランプリを制しており、今回も投票してくれたファンへの感謝を込めた熱い走りを見せてくれるだろうが、近況の勢いからいえばファン投票6位の佐藤友和と4位の成田和也の北日本勢も優勢か。もちろんファン投票3位ながらパワー断然の深谷知広の一発も十分で、このところやや元気のない地元・関東勢の巻き返しにも注目が集まる。
グランプリ制覇の地で村上義弘がファンの期待に応える
佐藤友和が成田和也との連係で再度のワンツーを決める
【ドリームレース】
初日11レースに実施されるドリームレースはファン投票で選ばれたベストナインによる文字通りの夢の競演だ。
村上義弘は昨年の当所グランプリを優勝、今年は日本選手権もグランプリと同様に単騎の戦いから優勝と納得のファン投票1位だ。高松宮記念杯や寬仁親王牌では体調不良が原因で、結果は残せなかったが、サマーナイトの初日予選は1着権利の厳しい勝ち上がりもなんのその、正攻法からの突っ張り先行で堂々の逃げ切りと、これぞ村上という走りを見せてくれた。もちろん今大会もファンの期待を決して裏切らない魂の走りでシリーズを盛り上げてくれる。
メンバー的には、8月のサマーナイトフェスティバルで脇本雄太と村上義弘の近畿勢や深谷知広らを相手に見事な地元ワンツーを決めて勢いに乗っている、佐藤友和と成田和也の北日本コンビが優勢と見ていいだろう。佐藤友和はサマーナイトの優勝で獲得賞金順位が10位に浮上して4年連続のグランプリ出場が射程圏内に入ってきた。昨年の当所グランプリでは事故棄権と悔しい思いをしているだけに、その分も含めての力強い走りで成田和也との再度のワンツーを決めてくる。
その成田和也も相変わらずの安定感を披露している。今年ここまでのビッグレースでは、6回中5回の決勝進出を果たしており、輪界一の追い込み型としてさらにレベルアップを図っている。
気になるのはサマーナイトに続いて今大会でも連係が予想される脇本雄太の走りだ。徹底先行が売りの脇本だが、近況はここぞというときに主導権を取れないレースが目立ってきており、サマーナイトの決勝も不発に終わっている。だが、初めてベストナインに選ばれた昨年のドリームレースではしっかり主導権を取って村上義弘の1着に貢献しており、サマーナイトの反省の意味も込めて、今大会ではより一層の積極的な攻めで別線封じを狙ってくるだろう。
深谷知広もサマーナイトの決勝では終始5番手の展開でインに詰まってしまい、流れ込みの5着に終わった。寬仁親王牌決勝では金子貴志を連れての先行で師弟ワンツーと積極性が戻ってきていただけに残念な結果となってしまった。だが、初日予選は最終4コーナー6番手からの直線強襲で1着と破壊力抜群のパワーはもちろん健在で、今大会のドリームレースでは連係実績豊富な浅井康太とのタッグの可能性もあるので、寬仁親王牌の初日・日本競輪選手会理事長杯のときのように深谷が逃げての中部ワンツーが十分に期待できる。
気力充実の岡田征陽が地元戦に向けて準備万端
新田祐大が驚異のスピードで別線を圧倒する
【オリオン賞】
京王閣がホームバンクの岡田征陽は地元開催のGIに向けて準備万端だ。昨年は地元開催のグランプリに初出場を果たしS級S班入りを決めた岡田は、冬場こそは不本意な成績が続いたが、4月の共同通信社杯で決勝進出してからは本来の強さを取り戻した。7月の寬仁親王牌の準決勝では目標の武田豊樹が不発の展開から浅井康太の捲りに巧みに切り替えて2着で決勝進出、続くサマーナイトフェスティバルでは平原康多の捲りをきっちり差して初日予選を突破している。
平原康多も順調に復調している。平原は2月の全日本選抜を制した直後にいきなり低迷状態に陥り、高松宮記念杯では2度の落車に見舞われるなどの苦難が続いたが、7月の小松島記念で見事に復活優勝を遂げた。寬仁親王牌ではまたもや落車に見舞われたが、サマーナイトでは3着、1着と成績をまとめており、今大会でも調子を取り戻すには実戦で積極的に仕掛けるのが一番とばかりに、地元の岡田征陽を連れて攻めの走りを見せてくれるだろう
輪界のスピードキングは新田祐大だ。高松宮記念杯決勝では上がり11秒0の力強い逃げで成田和也とワンツーを決めた新田は、寬仁親王牌では準決で惜しくも4着と敗れたが、7月の松阪FIの準決勝では7番手からの捲りで上がり10秒6をマークしてバンクレコードを塗り替えた。サマーナイトでは初日予選で8番手に置かれて不発に終わり組み立ての甘さに課題を残したが、2日目選抜は上がり10秒7の捲りで圧勝しており、今大会でも自慢のスピードを遺憾なく見せつけてくれるだろう。
金子貴志のGI初制覇が中部の選手たちを奮い立たせる
個性豊かな選手が揃う九州勢が台風の目となるか
金子貴志は寬仁親王牌でおよそ8年ぶりのGI優出を決めると、決勝は弟子の深谷知広の逃げを差し切ってGI初制覇を達成した。次場所の地元・豊橋記念も深谷や浅井康太との連係で無傷で勝ち上がり、決勝はまたもや深谷の逃げを差し切って完全優勝を飾った。今大会でも深谷や浅井との連係があればタイトルホルダー金子の差し脚が光るだろう。いや、金子だけではない。中部の選手にとっては深谷の番手が優勝に最も近い位置であることは自明の理だ。金子の優勝を発奮材料により練習に打ち込んで躍進してくる中部の選手が出てくるかもしれない。深谷にとっても、全日本選抜や日本選手権や共同通信社杯で中部の選手が1人でも乗っていれば、より積極的に仕掛けられただろうし、後手を踏んでの3大会連続準優勝というありがたくない記録は避けられたかもしれない。金子のGI初制覇が中部の選手に投げかけた波紋は想像以上に大きいはずで、ここしばらくは中部勢の動向に注目しておいたほうがいいだろう。
近畿勢は脇本雄太に藤木裕、復活なった稲垣裕之、成長著しい水谷好宏など好調な機動力型が揃っているが、今最も乗れているのは川村晃司だろう。脇本や藤木は近況の決まり手に捲りも多いが、川村はあくまでも得意のカマシ先行を基本としていて安定感が高いし、エース・村上義弘との連係実績も良好だ。寬仁親王牌の二次予選Aでは先行して村上義弘とワンツーを決め、準決勝を3着で突破して決勝進出、サマーナイトフェスティバルの初日予選は深谷知広の大外強襲に屈したが、打鐘からの強引な叩き先行で2着となり、積極性の高さと強靭な粘り脚を改めて見せつけている。
井上昌己は昨年は度重なる落車に苦しんだが、今年に入ってから急速に復調、全盛期を彷彿とさせる切れ味の良い捲りで好成績を維持している。5月の平塚記念では武田豊樹、根田空史らを相手に捲って優勝、寬仁親王牌の準決勝では新田祐大-成田和也、藤木裕-村上義弘の今をときめく強力ラインをまとめて撃破して昨年の高松宮記念杯以来のGI優出を決めている。井上はサマーナイトには不出場だっだが、初日予選では坂本亮馬が兄・坂本健太郎を連れての思い切った先行で兄のビッグ初優出に貢献。中川誠一郎も初日予選は惜しくも2着と敗れたが、2日目順位決定では牛山貴広の先行を捲った松岡貴久の番手から発進して合志正臣とワンツーと、九州勢がそれぞれ見せ場を作っていた。今大会でも個性豊かな選手が揃う九州勢が台風の目と化す可能性は十分にありそうだ。
地元・関東勢の成長株として注目を集めているのが池田勇人だ。6月の久留米記念では佐藤友和、藤木裕らの有力どころが勝ち上がりで次々と脱落して決勝は比較的戦いやすいメンバーになったとはいえ、8番手からあっさり捲り切って記念初優勝を達成するとともに上がり10秒8の好タイムをマークしている。その後も7月の西武園FIと京王閣FIを優勝して勝ち星を重ね、サマーナイトの初日予選では上がり10秒9の捲りで番手追走の長塚智広を振り切って1着となりビッグ初優出を達成。決勝でも脇本雄太や深谷知広を相手にしっかりと主導権を取り切っている。今大会も関東勢をグイグイ引っ張っての大活躍がきっと見られるだう。
オールスター競輪の思い出
第45回大会(熊本)2002年9月23日決勝
優勝:松本整
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中年の星・松本整が43歳4カ月で通算3度目のGI制覇を達成
齋藤登志信-岡部芳幸-新藤敦(現・朝日敦)が前受け、山田裕仁-松本整-池尻浩一が中団、神山雄一郎-高木隆弘-横田努(現・齊藤努)が後方で周回を重ねる。残り2周の赤板から神山が上昇、齋藤を抑えて両者並走のまま打鐘を迎える。打鐘後に齋藤はいったん4番手まで引くが、すぐに巻き返して4コーナーで先頭に立つ。神山は4番手に入り、山田は7番手に置かれるが、最終ホーム過ぎに齋藤がペースを落としたところを山田は見逃さず、最終1コーナーから一気に踏み込んで捲っていく。齋藤も合わせて踏むが、スピードのいい山田が最終バックで齋藤の横を通り過ぎ、4コーナーを先頭で通過する。7番手になった神山は完全に立ち後れ、齋藤の番手から抜け出した岡部も必死に追いかけるが距離は縮まらず、最後の直線では山田ラインの3車の争いとなり、松本が懸命に追い込んで3度目のGI制覇を達成、池尻が2着、山田が3着入線となった。
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第56回オールスター競輪(GI)を読み解く
京王閣バンク400mの特徴
標準的な400バンクで先手ラインが有利
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走路はクセがなく、直線もとくに伸びるコースはない
直線の長さは普通で、走路もクセのない標準的な400バンクだが、バンクがやや重いので、先行選手の逃げ切りは少ない。
昨年暮れに開催されたグランプリシリーズの決まり手を見てみると、全33レースのうち1着は逃げが2回、捲りが13回、差しが18回、2着は逃げが10回、捲りが2回、差しが10回、マークが11回となっている。
逃げ切りはわずか2回だが、それでも逃げ残りの2着が10回と先行選手が健闘しており、基本的には先手ラインの番手の選手が有利だ。先手ラインの選手が1着になったのがほぼ半数の15回で、初日11レースに実施されたガールズグランプリも先行した加瀬加奈子の番手から小林莉子が抜け出して優勝している。
捲りは早めの巻き返しが肝要だ。3コーナーの上り坂が少々きつく、カントも若干甘い感じがあるので外に膨れやすく、遅めの仕掛けでは3コーナーで失速してしまうケースが多い。
遅くとも最終バック前には捲り切っておきたいし、そのためにも悪くても4、5番手の位置がほしい。捲りの選手にとっては3コーナーが鬼門となるので、よほど脚力に差があるか、先行争いなどで前団がもつれたりしない限り、7、8番手からの巻き返しは難しい。
逆に先行選手は別線の早めの巻き返しを許さないように、最終ホーム手前ぐらいからカマシ気味に一気に仕掛けてしまえば、後続を引き離したままペースを掴んで駆けることができるのでラインで上位を独占できる。京王閣は400バンクだが、333バンクのように積極性の高いラインが有利なバンクといえる。
直線ではとくに伸びるコースはなく、交わしの出現率は低い。3、4番手の選手が直線で内を突いたとしても意外と伸びないので、番手の選手は余裕を持って捲りを牽制できるし、前を抜きにいける。
番手の悪い選手は内を突いても伸びないし、中も決まりにくいので、思い切って車を外へ持ち出して踏んでいったほうがよく伸びる。
(京王閣バンクデータ)
周長は400m、最大カントは32度10分34秒、見なし直線距離は51.5m。バックスタンド裏が道路を挟んで多摩川の河川敷なので、風の強い日は2コーナーから4コーナーにかけて川風が吹き込むことがある。方向的にはバック追い風だが、ホーム側に5階建てメインスタンドが建ってからは1コーナー付近が向かい風で2コーナーまでが重くなり、先行選手は踏み出して脚力をロスして直線で捕まってしまうケースが増えている。
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