日本人選手と韓国人選手による「2013日韓競輪対抗戦」が11月1日からの3日間、韓国の光明(クァンミョン)競輪場で開催される。日本側からは佐藤友和、成田和也らのS級S班を始めとする16名、韓国側からも計3回実施された選抜レースで上位の成績を収めた16名のトップ選手が出場する。昨年3月に伊東温泉競輪場で開催された大会では日本選手が優勝しており、開催地の威信とプライドを賭けた韓国選手の逆襲が最大の見どころになるだろう。
■日本勢展望
佐藤友和と成田和也のSSコンビが中心
後閑信一が“BOSSパワー”を見せつける
日本勢の中心は佐藤友和と成田和也のSSコンビだ。北日本からは伏見俊昭、佐藤慎太郎も出場予定だ。佐藤友和は今年も例年どおりに夏場に入ってから調子を上げて好タイムの捲りを連発、8月の地元・いわき平で開催されたサマーナイトフェスティバルでは連日上がり10秒8の捲りで圧勝して優勝を飾っている。10月の333バンクの防府記念では優勝こそ逃したが、初日特選では上がり9秒3、準決勝では上がり9秒2をマークしており、今大会の舞台となる光明競輪場でも韓国人ファンの前で圧倒的なスピードを見せつけてくれるだろう。
名実共に追い込み日本一の座を揺るぎないものにしているのが成田和也だ。高松宮記念杯で新田祐大の逃げを追い込んで2度目のGI優勝を飾ると、その後のGI、GIIでも連続で決勝戦に進出し安定性は抜群だ。仮に日本勢が不発の展開になっても直線で鋭い差し脚を発揮してくるだろう。
日韓両国の32名の出場選手の中で最年長が後閑信一だ。43歳ながら初心に返り自力に戻してからの活躍ぶりは実に若々しく、8月の立川FI決勝では上がりタイム10秒7のシェーン・パーキンスの捲りを鮮やかに差し切って優勝している。そして迎えた地元・京王閣でのオールスターでは、勝ち上がり戦こそは池田勇人、平原康多らを目標のレースだったが、大一番の決勝は自力勝負を選択し、最終2コーナーから捲って3度目のGI制覇を飾っており、今大会も驚異のオジサンパワーで韓国人ファンの度肝を抜いてくれそうだ。
井上昌己は、昨年、度重なる落車に苦しんだが、5月の平塚記念を捲りで制して復活を遂げた。その後もFIながら3回の優勝があり、全盛期のスピードが戻ってきている。GIでもオールスターは実力を発揮できなかったが、寛仁親王牌の準決勝では藤木裕-村上義弘、新田祐大-成田和也の強力ラインを相手に捲りの1着で突破して決勝進出を果たしている。捲り・追い込みが主戦法だが、10月の防府記念では準優勝と短走路に対しても苦手意識はない。
新田康仁も昨年膝の手術をしてから成績が上昇し、今年1月の地元・静岡記念を優勝して見事に復活を遂げた。決勝進出こそないが、近況はビッグレースでも着実に勝ち星を挙げる活躍を見せており、オールスターの一次予選では捲って1着で今大会に出場予定の勝瀬卓也と南関東ワンツーを決めている。さらに4日目特選では3番手から捲った小嶋敬二の上を捲り切って上がり10秒7のバンクレコードタイをマークしている。
日本出場予定選手
佐藤友和 |
成田和也 |
伏見俊昭 |
佐藤慎太郎 |
神山拓弥 |
後閑信一 |
井上嵩 |
勝瀬卓也 |
新田康仁 |
伊藤健詞 |
東口善朋 |
渡部哲男 |
園田匠 |
田中誠 |
松岡貴久 |
井上昌己 |
■韓国勢展望
スピード1番は新鋭のパク・ヨンボム
大物キラーのキム・ミンチョルの一発も十分
韓国では2013日韓競輪対抗戦の出場選手を決定するトライアル(選抜レース)を計3回実施しているが、1回目と2回目は通常の韓国競輪とは違い今大会と同様の8車立てで行われており、当然ながら母国開催に賭ける意気込みは高く、リベンジに燃えてくるだろう。
7月に行われた第1次選抜戦は決勝が1着同着でキム・ミンチョルとキム・ベヨンの2人が優勝している。とくにキム・ミンチョルは3日間オール1着の完全優勝、8月の第2次選抜戦でも決勝3着と健闘して計3回の総合順位では3位になっている。2010年に選手生命にかかわる大ケガを負いながらも見事に復活を果たしたキム・ミンチョルは韓国では大物キラーと呼ばれており、今回も日本選手を相手に大駆けの一発がありそうだ。
8月に行われた第2次選抜戦を優勝したのはパク・ビョンハだ。主戦法は先行だが、決勝では最終ホームから単独の逃げを打ったキム・ミンチョルの番手を追走、ゴール前で差し切っての優勝でこちらも3日間オール1着の完全優勝を達成している。パク・ビョンハは昨年3月の大会にも出場し成績は芳しくなかったが、2日目予選2では村上義弘に捲られたものの果敢に主導権を取りにいっており、今大会でも積極的な走りが期待できるだろう。
9月に行われた第3次選抜戦ではユ・テポクが後続のもつれを尻目に逃げ切って優勝しているが、注目の選手は決勝3着のイン・チファンだ。イン・チファンは計3回の選抜戦の成績は決して満足のいくものではなかったが、今年はスポーツ朝鮮杯を始めとする重賞競走で優勝が2回、準優勝が1回と急成長を遂げてきた選手だ。年間の勝率も約5割の高い数字をマークし、トップのパク・ビョンハに次いで2位である。
パク・ヨンボムは2011年に競輪訓練院を主席で卒業した新鋭だ。今回出場予定の韓国人選手16名のうちスピードは上位クラスだ。 第1次選抜戦が決勝3着、 第2次選抜戦が2連勝の勝ち上がりで決勝4着となり総合順位は1位だ。また10月に光明競輪場で開催された日刊スポーツ杯では3連勝で完全優勝を達成している。
ファン・スンチョルは捲りを主戦法にしており、日本でいうところの自在性のある選手だ。第2次選抜戦の決勝では優勝したパク・ビョンハを追走しての準優勝、第3次選抜戦では初日特選が捲って1着、準決勝も追い込み1着で決勝は4着と健闘している。今回出場予定の選手のうちでは勝率が高いほうではないが、決して侮れない存在だ。
韓国出場予定選手
パク ヨンボム(朴容範) |
パク ビョンハ(朴柄夏) |
キム ミンチョル(金珉喆) |
ファン スンチョル(黃淳哲) |
イン チファン(印治煥) |
キム ドングァン(金東寬) |
イ ヒョング(李炫求) |
ホン ソッカン(洪錫漢) |
コン ミンウ(孔珉宇) |
チョン ヨンギュ(全永圭) |
キム ベヨン(金培栄) |
イ ウクトン(李昱東) |
ユ テボク(劉泰福) |
イ ヨンヒ(李鏞熙) |
ノ テギョン(盧泰京) |
パク コンビ(朴建飛) |
■2013日韓競輪対抗戦・解説
決戦の舞台は333バンクのドーム競輪場
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8人制で、韓国の競技規則によって実施
決戦の舞台となる光明競輪場は、韓国競輪が始まったときに使用した蚕室(チャムシル)競輪場の代わりに誕生したドーム型競技場で、ソウル市近郊に位置する。愛称はスピードームで、周長は333m。外観や場内の雰囲気は前橋競輪場に似ているが、最大収容人数が2万人の前橋に対して光明は3万人と、自転車競技場としては世界最大級である。
韓国競輪は毎週末の3日間に1日14レース制で開催されるのが一般的で、今回も14レースのうち最後の4レースで日韓競輪対抗戦が実施され、日本人選手16名と韓国人選手16名の計32名が出場する。また韓国競輪は7人制が一般的で、明確なラインもなく、日本のガールズケイリンに似ているが、日韓競輪対抗戦は昨年と同様に8人制で実施される。
勝ち上がり方式はポイントによるトライアル制で、2日間の予選を争い、両国ポイント上位者から4名ずつが決勝に進出する。
韓国の競技規則で実施されるので、競りなどの日本式の動きは制限される。
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■前回大会プレイバック
東日本大震災被災地支援・日韓対抗戦競輪2012
3月30日決勝 伊東温泉競輪場 |
韓国勢の2段駆けを捲った村上義弘が優勝
キム・チボム-チェ・スンヨン-イ・ミョンヒョン-キム・ヨンソプの韓国勢が前団。単騎の神山拓弥が5番手、稲垣裕之-村上義弘-三宅伸が後方待機で周回を重ねる。青板から稲垣が上昇して先頭に並びかけると、キム・チボムは突っ張る構えを見せるが、両者接触して落車転倒、先頭がチェ・スンヨンに代わり、村上が4番手、神山が6番手になる。赤板からチェ・スンヨンが猛然とスパート、残り1周の最終ホームからイ・ミョンヒョンが番手捲りを打つが、最終1コーナーから仕掛けた村上が韓国勢を捲り切って先頭でゴール、2着は神山、イ・ミョンヒョンが3着入線となった。
ゴール
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