レース展望

今年のベストナインが輪界の頂点を狙う
 輪界の真の王者を決するKEIRINグランプリ2013(GP)が今年も12月30日に立川競輪場で実施される。深谷知広と金子貴志の最強師弟コンビがレースの軸になりそうだが、スピード勝負なら新田祐大も負けてはいない。復活なった平原康多のレース巧者ぶりも見逃せず、昨年同様に単騎戦となりそうな村上義弘の連覇も十分だ。
快速パワーで別線をねじふせる
深谷知広選手
 深谷知広は今年のGI戦では無冠に終わってしまったが、4大会で準優勝と輪界のニューリーダーにふさわしい活躍を見せた。競輪祭では二次予選が捲って上がり10秒7、準決勝が逃げて上がり11秒2、師匠の金子貴志と今年8回目のワンツーを決めた決勝も打鐘4コーナー過ぎからの仕掛けで1周もがき抜いて上がり11秒1の快速ぶり、グランプリへ向けての仕上がり具合は万全だ。グランプリでも最強の師弟コンビが別線を力でねじ伏せてくるだろう。
狙うはワンツーフィニッシュだ
金子貴志選手
 金子貴志は寛仁親王牌でのGI初優勝に続き、競輪祭でも深谷知広の逃げを差し切って今年2度目のGI優勝を飾った。最高の弟子に恵まれた幸運だけではなく、金子自身にも深谷の快速先行から決して離れることのない超一流のダッシュ力が備わっているからこその快挙だ。最高の弟子とグランプリという最高の舞台を走れることで金子のモチベーションはいやが上にも高まるばかりだろうし、もちろん狙うは深谷とのワンツーフィニッシュだ。
飽くなき執念の走りで勝機を掴む
浅井康太選手
 浅井康太は獲得賞金額第9位でグランプリ出場の最後の切符を手にした。過去2回のグランプリは深谷の番手回りで共に3着だったが、今年は愛知勢との連係となるのだろうか。本来は自力型の浅井だけに自力はもちろんのこと、連係でも力を発揮できそうだし、10年の立川記念では競り落とされて最後方に下がりながら奇跡の逆転優勝を演じたことがあり、バンクとの相性も抜群だ。連係したとして深谷が不発の万が一の展開になったとしても、勝利への飽くなき執念で勝機を掴んでくるだろう。
全身全霊の走りで連覇に挑む
村上義弘選手
 村上義弘は昨年のグランプリは単騎戦で、直前の練習中に落車するアクシデントにも見舞われてまさに満身創痍の状態だったが、3番手から渾身の捲りを放って初優勝を飾った。3月立川の日本選手権決勝でも単騎戦を選択、武田豊樹の捲りを追い、直線差し切って優勝している。近況の状態は落車の影響などで決して成績的にも良好とはいえないが、今年のグランプリも単騎戦を余儀なくされそうだが、いつもどおりの全身全霊の走りで逆境をはね飛ばしグランプリ連覇の偉業に挑む。
本領発揮のスピードを見せつける
新田祐大選手
 今年が飛躍の年となった新田祐大は獲得賞金額第5位でグランプリ初出場を決めた。高松宮記念杯とオールスターで準優勝、競輪祭は決勝4着に終わったが、特選予選では2着に6車身の差をつける捲りで圧勝、上がりタイムは10秒8と強烈なダッシュ力とスピードは今や輪界ナンバーワンだ。課題はレースの組み立ての甘さだが、グランプリでは成田和也の心強い援護を受けられるだけに本領発揮のスピード勝負で初タイトルへの期待が高まる。
昨年2着のリベンジを果たす
成田和也選手
 成田和也は高松宮記念杯で新田祐大の先行を差し切って優勝、3年連続のグランプリ出場となった。競輪祭では勝ち上がりに失敗したが、今年は5大会のGIで決勝進出とハイレベルな安定度をキープしてきた。昨年のグランプリでは山崎芳仁の捲りにスピードをもらい、最後の直線で中割り強襲を決めるもタイヤ差の2着と悔し涙を呑んでいるだけに、今年は新田を巧みにリードしながらゴール前では自慢の差し脚でリベンジを狙ってくる。
強さと上手さが戻って完全復活
平原康多選手
 平原康多は全日本選抜を優勝してグランプリ1番乗りを決めたが、その後は落車などが続いて失速、GIでの決勝進出はなくなった。しかし、11月の大垣記念を優勝して復活、競輪祭の準決勝では巧みに3番手を奪取してからの上がり10秒9の捲りで1着突破を果たした。グランプリはスピード自慢の強敵揃いだが、レース運びの上手さは平原が1番で、9着に敗れた競輪祭決勝の失敗を反省材料にグランプリでは強さと上手さを改めて見せつけてくれるだろう。
記念5場所優勝の勢いを持続
長塚智広選手
 長塚智広の今年前半は共同通信社杯優勝の他には目立った活躍がなかったが、後半に入ると記念5場所を立て続けに優勝、獲得賞金額第6位で3年連続のグランプリ出場を決めた。競輪祭でも勢いは止まらず、2着、1着、1着で決勝進出を果たしている。グランプリでの関東3車の並びは未定だが、仮に長塚が3番手回りや単騎戦になっても、持ち味のダッシュ力を生かした強烈な捲りや差し脚でゴール前での優勝争いに絡んでくるだろう。
自力に戻した43歳が頂点を目指す
後閑信一選手
 後閑信一はオールスターで7年ぶり3度目のGI優勝を飾った。43歳の後閑は初心に返って自力に戻すことを決意、決勝は新田祐大の先行を見事に捲っての地元優勝だった。11月に体調を崩したのが尾を引いて競輪祭では奮わなかったが、グランプリまでにはしっかり立て直してくるはずだ。グランプリでは埼京ラインで平原の番手を主張しそうで、平原をしっかり援護しながら、いざとなれば奥の手の自力発動で地元ファンの声援に応えてくれるだろう。
語り継がれるグランプリ名勝負
KEIRINグランプリ2012(京王閣) 優勝:村上義弘 京都・73期
単騎戦の村上義弘がグランプリ初優勝
 佐藤友和―山崎芳仁―成田和也、深谷知広―浅井康太、村上義弘、武田豊樹―長塚智広―岡田征陽の並びで周回。赤板手前から武田が上昇して佐藤の横に並ぶと、佐藤も誘導員の外に差して抵抗するが、赤板1コーナーで佐藤が車体故障を起こし戦線離脱、先頭に立った武田はペースを落とす。深谷は4番手に下がってきた山崎の外で並走していたが、打鐘の3コーナーから一気に仕掛けて武田を叩き切る。中部コンビを追った村上がそのまま3番手から仕掛けていき、4コーナー手前で深谷を捲り切る。浅井が村上後位にスイッチするが、ゴール前では山崎の仕掛けに乗って伸びてきた成田に中を割られて外に膨らみ、村上が迫る成田をタイヤ差振り切って優勝、成田が2着、浅井が3着入線となった。
KEIRINグランプリ2013シリーズを読み解く
立川400mバンクの特徴を知る
先行は苦しく、捲りのライン有利
直線が長いのでバック9番手でも勝負になる
 立川バンクは昨年9月から3カ月かけて全面改修が行われた。元々これといったクセのあるバンクではなかったが、全面改修で2センターと3コ ーナーにあったでこぼこがなくなり、以前よりも軽くて走りやすいバンクとなった。しかし、400バンクの中では最も長い直線は以前のとおりで、先行選手泣かせのバンクであることに変わりはない。
 今年3月に開催された日本選手権の決まり手を見てみると、全66レース(1着同着1回、2着同着1回を含む)のうち1着は逃げが10回、捲りが22回、差しが35回、2着は逃げが7回、捲りが14回、差しが21回、マークが24回となっている。
 やはり先行は苦しく、先手ラインの選手が1着になったレースは25回しかない。捲りや遅めの捲り追い込みに回ったラインのほうが有利だ。先行は後方待機から打鐘過ぎの4コーナーでカントを使って山降ろし気味にカマし、最終ホームすぎに前団を交わしていく勢いで仕掛けるのが理想だが、それでも直線があまりにも長いので2度、3度と踏み直しが効くスピード型でないと粘り込めない。
 捲りは4、5番手の中団をキープして3コーナーから上バンクにコースを取り、カントを使って外を追い込んでいくよく伸びる。直線ではイエローラインのやや内側がよく伸びるので、コース取りさえ誤らなければバック9番手の展開になっても逆転のチャンスは十分にある。同じように目標の選手が捲り不発の展開になっても、 捲りの勢いをもらった番手の選手が直線だけで一気に突っ込んでくるケースも多い。

立川競輪場バンク
立川競輪場バンクデータ
 周長は400m、最大カントは31度13分6秒。見なし直線距離は58.0m。一般的な競輪場よりもコーナー部分のカーブが急で直線に入ってから外側へ膨らむ傾向があり、後方待機の選手が空いたコースを突っ込みやすい。冬から春頃まではバック向かい風が強い日が多く、風の強い日はイン側が重くなるので競りは外側でも不利はない。