レース展望

第23回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが弥彦競輪場で開催される。昨年の大会で愛弟子の深谷知広を目標に悲願のGI初優勝を飾った金子貴志が今年も深谷や浅井康太らとの好連係を決めて連覇に燃えるが、高松宮記念杯を制した稲川翔や近況乗れている南修二が脇本雄太、松岡健介らの機動力を目標に天下取りを狙う近畿勢の逆転も十分だ。中川誠一郎、井上昌己などの個性派レーサーが揃う九州勢や岩津裕介、小倉竜二などのレース巧者が揃う中四国勢の一発も侮れず、復活となった後閑信一を中心に結束する地元・関東勢の動向にも注目が集まる。
涙のGI初優勝から1年、金子貴志が連覇を狙う
 復活となった後閑信一が自力勝負で再び頂点を目指す
金子貴志選手
 金子貴志が思い出のバンクに帰ってくる。涙のGI初優勝から1年、今やグランプリ覇者の称号も手に入れてすっかり王者の風格だ。今年前半のビッグレースでは思うような結果を残せていなかったが、5月の松阪記念では7番手からの捲りで優勝、上がりタイムが11秒0と自慢のスプリント力は健在だ。今年も愛弟子の深谷知広との連係があれば、連覇の可能性は十分に高い。
 深谷知広は2月の全日本選抜では準決で敗れたが、3月の日本選手権、4月共同通信社杯では勝ち上がり戦で圧倒的なパフォーマンスを披露して決勝進出、5月の平塚記念では8番手からの捲りで優勝と強さを見せつけている。その後は練習中の落車で1カ月の欠場を余儀なくされたが、今大会までにしっかり立て直し、輪界随一の豪脚でファンの期待に応えてくれるはずだ。
 中部勢では竹内雄作が上り調子だ。竹内はデビュー以来の徹底先行を貫いていて成績が安定しなかったが、今年に入ってから徐々に勝ち星が増えてきて日本選手権では準決まで勝ち上がっている。そして5月の全プロ記念で2連勝を決めると、全プロ選手権の1キロTTを初優勝、今大会の「理事長杯」シードを獲得した。シード権獲得は竹内にとっては意義が大きく、初日からエンジン全開で弥彦バンクを駆け抜けてくれるだろう。
後閑信一選手
 迎え撃つ地元・関東勢ではS級S班の後閑信一がようやく復調してきた。後閑は昨年の冬場から長いスランプに陥っていたが、5月の別府記念の初日特選は松岡健介を相手に先行して堂々の逃げ切りと本来の後閑らしい走りを披露、それで吹っ切れたのか準決、決勝は捲りを連発して優勝を飾っている。昨年のオールスターを捲りで制覇して華麗な復活を遂げた後閑、今大会も自らの信念を貫いた自力勝負で頂点を目指してくる。
 関東勢の先導役は池田勇人だ。ビッグレースではまだまだ上位陣を相手に苦戦のレースが続いているが、日本選手権では後閑信一とワンツーを決めて1勝、共同通信社杯では2連対と着実にパワーアップしてきている。近況は捲りでの勝ち星も増えてきて成績も安定してきているが、もちろん後閑信一や関東の総大将・神山雄一郎らに前を任されれば、ケレン味のない先行で盛り上げてくれるだろう。
 
厳しい位置とりと鋭い捲りで稲川翔の快進撃が続く
 近況好調な自力型が揃う北日本勢の一発が侮れない
 近畿勢は脇本雄太に先行力が戻って急激な盛り上がりを見せており、脇本の復調に引っ張られるようにして松岡健介や山田久徳らの機動力型だけでなく、自在型の稲川翔や追い込み型の南修二らもぐんぐん調子を上げてきている。今大会でも近畿の選手たちは、岸和田で開催されるグランプリ出場という大きな目標に向かって連日熱い走りをみせてくれるだろう。
稲川翔選手
 稲川翔は日本選手権と共同通信社杯で連続優出、4月の地元・岸和田FI、そして第65回高松宮記念杯競輪(GI)を優勝と乗りに乗っており、厳しく位置を取ってからの捲り追い込みという勝利のパターンを確立している。5月の川崎記念でも二次予選はイン粘りから4番手を奪取しての1着、準決は外からの追い上げで4番手を奪取しての1着と強さを見せており、この勢いは年末まで止まりそうにない。
 稲川翔と同様に厳しい捌きと鋭い差し脚で好成績を挙げているのが南修二だ。南は優出こそならなかったが日本選手権と共同通信社杯でともに準決まで勝ち上がっており、全プロ選手権のケイリン決勝では松岡健介、稲川翔、南修二、三谷政史の近畿4車の結束から優勝して「理事長杯」のシード権を獲得している。そして6月の福井FIでは、連日驚異のタイムで逃げ切る脇本雄太を決勝では見事に差し切って優勝している。
 北日本勢は今大会もライン的に手薄で苦しい戦いを余儀なくされそうだが、菊地圭尚、飯野祐太、小松崎大地、高橋陽介らが好調をキープしており、GIでも一発を狙える力を秘めている。
菊地圭尚選手
 菊地圭尚はまさに自在型と呼ぶにふさわしく、対戦相手や展開に応じて多彩な戦法を使い分けられるのが強みで、日本選手権では準決まで勝ち上がり、共同通信社杯は一次予選で敗れたが負け戦で2勝している。5月の別府記念も優勝はならなかったが、二次予選は4番手からの捲り追い込みで1着、準決はインを突いての3番手奪取で1着と巧さを見せている。
 飯野祐太も自在な立ち回りで近況は勝ち星を増やしており、FI戦ながら5月の京王閣と6月の松阪を連覇している。昨年4月の共同通信社杯でビッグ初優出、今年の日本選手権では2勝を挙げており、そろそろGIでの大活躍が期待できそうだ。
 
中川誠一郎が日本一のスプリント力を発揮する
 快調・岩津裕介の差し脚にますます磨きがかかる
中川誠一郎選手
 中川誠一郎は全プロ選手権のスプリント決勝で金子貴志を敗って連覇達成、「理事長杯」のシード権を獲得している。昨年の「理事長杯」はなにもできずに8着に沈んでいるだけに、今年は自慢のスプリント力を活かして見せ場をつくりたいところだろう。中川は共同通信社杯では準決まで勝ち上がっているが、一次予選では竹内雄作ー深谷知広の中部2段駆けに対して7番手からの捲りで2着に肉薄しており、日本一のスプリント力を発揮できれば今大会の「理事長杯」でも逆転一発が狙えるはすだ。
 九州勢では吉本卓仁の機動力も好調で、日本選手権では先行、捲りの2連勝で予選を突破して準決にコマを進めている。4月の西武園記念の初日特選と2日目優秀はともに深谷知広に逃げ切られているが、吉本は捲りと追い込みで2日連続で2着に突っ込んでみせた。今大会も持ち味のカマシ、捲りで見せ場をつくってくれるだろう。
そのほか井上昌己、北津留翼、松川高大など、GI戦の上位で戦える機動力型がまだまだ控えており、追い込み堅実な合志正臣や大塚健一郎らがしっかりサポートしていけば、九州勢での久しぶりのGI制覇が十分に狙えそうだ。
 南関東勢は出場予定選手が8人とライン的には最も手薄な地区となってしまったが、根田空史がパワフルな先行、捲りで好成績を続けており決して軽視はできない。
根田空史選手
 根田は日本選手権では一次予選が逃げて3着、二次予選が捲って2着で準決まで勝ち上がり、5月の平塚記念では準決で敗れたが、初日特選と4日目特別優秀で2勝を挙げている。レースの組み立てがやや淡白で力を出し切れずに終わってしまうこともあるが、仕掛けどころを誤らなければ直線の長い弥彦バンクでもしっかり粘り込める脚があり、昨年の大会の4日目優秀でも捲りで迫る渡邉一成を退けて堂々と逃げ切っている。
岩津裕介選手
 中四国勢では岩津裕介の差し脚が快調だ。共同通信社杯の準決では深谷知広の先行を番手からズブリと差し切っての1着で決勝進出、5月の川崎記念では初日特選こそ2着だったが、2日目優秀は5番手からの捲り追い込みで1着、準決は3番手からの直線強襲で1着、決勝も地元ラインを分断しての3番手奪取から直線鋭く伸びて優勝している。中四国勢は他地区と比べると機動力の面で恵まれているとはいえないが、今の岩津ならラインや展開に関係なく、最後の直線だけで一気に頭に突き抜けてくるだろう。
小倉竜二選手
 ハンドル投げの名手・小倉竜二も近況好調だ。共同通信社杯の準決は岩津裕介をマークしての3着で決勝進出、5月の別府記念では勝ち星こそなかったが、準決は最終4角8番手の絶体絶命の展開から絶妙なコース取りで2着に突っ込み、決勝も最終バック7番手の展開から捲って準優勝と、年齢的には大ベテランの小倉だがレース中の動きは実に若々しい。
 弟子の阿竹智史に積極性が戻ってきているのも小倉には心強い。阿竹は一時調子落ちになってバック回数が減っていたが、近況は先行争いも辞さずのスケールの大きな走りが戻ってきている。ビッグレースでは脚力的にあと一歩足りない印象もあるが、前へ前への積極的な仕掛けでマーク選手の勝ち上がりに何度も貢献しており、今大会でも阿竹の踏ん張り次第で中四国勢の一気の台頭が大いに期待できる。