今年のベストナインが頂点を目指す
輪界の頂点を競う第30回KEIRINグランプリ2014が12月30日に岸和田競輪場で開催される。西日本地区での初めての開催となるだけに村上義弘率いる近畿勢にとっては決して譲れない一戦となるが、近況の勢いからは武田豊樹率いる関東勢が一歩リードか。長期欠場明けとなるが、深谷知広のパワー駆けももちろん侮れない。
◆村上博幸 京都 86期
―全日本選抜を優勝して完全復活―
村上博幸は2月・高松の全日本選抜で2度目のGI優勝を飾るとともに4年ぶりのグランプリ出場を決めた。村上は10年の松戸・日本選手権で兄・義弘との感動的な兄弟ワンツーでGI初制覇を飾ると、その年のグランプリも制覇したが、その後は落車などのケガにより低迷してしまった。しかし、今年は3月の日本選手権でも優出と完全復活も遂げており、グランプリでも兄・義弘の背中を目標に2度目のグランプリ制覇を目指す。
◆村上義弘 京都 73期
―健在の機動力でファンを魅了する―
村上義弘は3月・名古屋の日本選手権で稲垣裕之の先行を目標に、ラインを固めた弟・博幸と稲川翔の援護を受けながら番手捲りで見事に日本選手権連覇を達成した。機動力豊富な近畿地区にあって近況は番手回りの競走が多い村上だが、9月のオールスターのシャイニングスター賞では深谷知広を突っ張り切って主導権を奪い取るなど、ファンを魅了し続ける機動力は健在で、グランプリでも自力勝負で2度目の制覇を狙ってくる。
◆稲川翔 大阪 90期
―地元ファンの声援に応える―
稲川翔は地元の岸和田でグランプリが開催されるとあって、年頭からGI優勝を目標に一戦一戦を戦ってきた。昨年は高松宮記念杯とオールスターで優出、今年も日本選手権、共同通信社杯で優出と着実に実績を積み重ね、6月・宇都宮の高松宮記念杯で脇本雄太の番手を死守してついにGI初制覇を達成した。名実共に一流選手の仲間入りを果たした稲川は、地元ファンの声援に後押しされながら近畿連係から勝機強さを発揮してくる。
◆深谷知広 愛知 96期
―今年も怪物パワーを見せつける―
深谷知広は11年の高松宮記念杯で史上最速のGI初制覇を達成するもその後はなかなか優勝に手が届かなかったが、7月・弥彦の寬仁親王牌でようやく2個目のGIタイトルを獲得して4年連続のグランプリ出場を決めた。9月のオールスターで落車して現在は長期欠場中だが、11月半ばから自転車に乗り始めており、過去3回のグランプリでは連続で主導権を取り切っているだけに、今年も積極的な走りで怪物パワーを見せつけてくれるだろう。
◆武田豊樹 茨城 88期
―圧倒的な脚力で上位独占を狙う―
武田豊樹は昨年は追走義務違反の失格によるあっせん停止処分でグランプリ出場はかなわなかったが、今年は9月・前橋のオールスターで3番手からの捲りで2年ぶり5度目のGI優勝を飾るとともに2年ぶり6回目のグランプリ出場を決めた。11月の競輪祭ではまだグランプリ出場権のなかった平原康多を連れて赤板先行を敢行、2着に粘り込む圧倒的な脚力を見せつけており、グランプリでも関東勢での上位独占を狙ってくる。
◆平原康多 埼玉 87期
―関東ラインの結束力を発揮する―
平原康多は選手会脱会騒動による3カ月の自粛休場があったものの、今年は出場したビッグレースの全てで決勝進出と安定した成績を残してきた。それでも競輪祭開催時にはグランプリ出場に赤信号が灯っていたが、決勝戦では武田豊樹の番手から追い込んで5度目のGI制覇を飾るとともに5回目のグランプリ出場を決めた。グランプリでの武田との前後は未定だが、ますます強まった関東ラインの結束力を遺憾なく発揮してくるだろう。
◆浅井康太 三重 90期
―深谷目標から優勝を獲りにくる―
浅井康太は今年、GIでの優勝こそなかったが、不出場だった日本選手権を除く全てのGIで決勝進出を果たし、獲得賞金額が堂々の4位で4年連続4回目のグランプリ出場を決めた。グランプリでは初出場の11年が3着、12年も3着、13年が2着と常に好成績を残しているのも見逃せないポイントで、7月の寬仁親王牌決勝でワンツーを決めた深谷知広との連係から、今年のグラプリでは今度こその優勝を獲りにくる。
◆神山雄一郎 栃木 61期
―悲願のグランプリ初優勝なるか―
神山雄一郎は2月の全日本選抜決勝で落車してから低迷してしまったが、8月・松戸のサマーナイトフェスティバルで優出して復調、9月のオールスター決勝では武田豊樹とワンツーを決めて賞金を上積みした。その後も11月の高松記念で97回目の記念優勝、競輪祭では決勝3着と健闘して獲得賞金額6位で5年ぶり15回目のグランプリ出場を決めた。46歳を迎えて今なお進化し続ける神山が悲願のグランプリ初優勝を目指してひた走る。
◆岩津祐介 岡山 87期
―絶妙なコース取りで勝機を掴む―
岩津裕介は今年、4月・伊東温泉の共同通信社杯で決勝3着を皮切りに、6月の高松宮記念杯と9月のオールスターでも決勝3着と大活躍、記念でも2月の玉野、5月の川崎、10月の防府と3度の優勝を飾り、獲得賞金額8位で念願のグランプリ初出場を決めた。グランプリでは直接目標にできる機動力型はいないが、レースの流れを的確に読み取る鋭い臭覚とゴール前での絶妙なコース取りで勝機を掴んでくるだろう。
バンクの特徴
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タイムの出やすい高速バンク
バック追い風に乗って捲りが決まりやすい
岸和田は標準的な400バンクで、走路自体もクセがなくて走りやすく、直線も比較的長いので戦法や脚質による有利・不利も少ない。
海に近くて風の影響を受けやすいが、タイムの出やすい高速バンクで、昨年6月に開催された高松宮記念杯では新田祐大、中川誠一郎、佐藤友和らのスピードスターたちが10秒台の上がりタイムを連発したのは記憶に新しいところだ。7月のFIではフランスのフランソワ・ペルビスが上がり10秒3の驚異的な捲りで400バンクの日本新記録を更新している。
ちなみに高松宮記念杯の決まり手を見てみると、全47レースのうち1着は逃げが2回、捲りが20回、差しが25回、2着は逃げが9回、捲りが9回、差しが13回、マークが16回となっている。
直線が長めで捲りが決まりやすいバンクなので、さすがに逃げ切りは難しい。グランプリシリーズは冬場の開催なのでバンクが重くなり、先行選手はますます苦しい戦いになるだろう。
それでも、岸和田の特徴のひとつである浜風を利用してタイミングよく仕掛けられれば、先行も2着や3着に粘り込める。
風は通常、海側に面した1センターから吹き込むのでバックで追い風になり、2コーナーからの捲りや追い込みがよく決まる。同じように先行もバック追い風に乗って踏み直しができれば粘り込めるし、簡単には捲られない。
直線ではコース取りに関係なく、インも中も大外も同じように伸びるので、追い込み選手にとっても走りやすいバンクとなっている。
周長は400m、最大カントは30度56分00秒、見なし直線距離は56.7m。通称は「浪切りバンク」。北西に位置する大阪湾からの浜風と、南東の和泉葛城山からの山風によって風の影響を受けやすい。通常は浜風でバック追い風の日が多いが、天候が崩れて雨が近づいてくると、山風に変わってバック向かい風になることもある。
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プレイバック
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KEIRINグランプリ2013
深谷の先行に乗って金子が初優勝
新田祐大―成田和也が前受け、単騎の村上義弘が3番手、長塚智広―平原康多―後閑信一が中団、深谷知広―金子貴志―浅井康太が後方で周回を重ねる。青板3コーナーから深谷がゆっくり上昇開始、赤板前に誘導を下ろして先頭に立つ。深谷を追った長塚が4番手に入り、村上が関東勢の後ろの7番手に切り替え、新田が8番手まで下げたところで打鐘を迎える。深谷は打鐘の3コーナーから一気にスパート、一本棒の状態で最終ホームを通過する。最終2コーナーから村上が捲っていくが、5番手の横まででいっぱいに。最終2センターからは長塚が追い込みをかけるが、深谷の番手から抜け出した金子が先頭でゴールを駆け抜けGP初優勝、浅井が2着、長塚が3着。
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