レース展望

競輪祭直前展望
今年も競輪祭の季節となりましたね。1年があっという間に感じる方は、大人という説もあります。時間の流れが早いそうですよ大人は。
さて、競輪祭。タイトルを獲得してグランプリ出場に望みをつなげたい選手も当然いますし、賞金でなんとかクリアしたい選手もいます。
そのせめぎ合いが一つの見どころ、考えどころとなっていく訳ですが、まずピックアップしたい選手が、タイトル獲得でグランプリ出場を目指したい選手でしょう。
そして、ボーダーラインにいる選手達となります。
いずれにせよ、決勝には勝ち上がらないとグランプリ出場に手が届かなくなると思われます。
その辺りから選手を今回は見ていきたいと思います。
深谷知広 愛知 96期(現在賞金ランキング18位)
深谷知広
今年は落車の影響か、なかなか上位に食い込んでくることができませんでしたが、ここに来て復活の兆しが見えつつあります。
10月末の大垣記念決勝では単騎戦で優勝を飾り、この調子がキープできていれば優勝戦線に絡んでくることは間違いないでしょう。
競輪祭初日の出来が一つの方向性が見えるのではないかと思われます。
強い深谷を是非見せて欲しいですね。

村上義弘 京都 73期(現在賞金ランキング8位)
村上義弘
一見、安泰そうに見えますが、確実にグランプリ出場を決めるには賞金の積み重ねが必要でしょう。確実に決勝に進出しなければならないと思います。分厚い近畿勢の援護があれば決勝進出は望めるはず。気になるのは自力で動くシーンがどの場面でくるのか?というところでしょう。函館記念決勝で山田義彦を叩ききれず不発に終わっているのが気にかかります。
しかし、神がかり的なパワーを発揮するのも村上の魅力の一つ。そのパワーに期待をしたいですね。

竹内雄作 岐阜 99期(現在賞金ランキング19位)
竹内雄作
非常に気になります。11月上旬の富山FIを全て先行逃げ切り完全優勝。仕上がりを感じますね。ポンポンと決勝に進出してきそうな勢いがあります。
風の無いドームでは先行が有利。一発逆転劇があってもおかしくない調子の良さを是非小倉で見せて欲しいですね。
オールスター競輪のように決勝まで全て1着で勝ち上がってくれば場内を大いに沸かすと思います。

岩津裕介 岡山 87期(現在賞金ランキング10位)
岩津裕介
グランプリ出場を懸けて一番の注目は岩津でしょう。
賞金ランキング9位には寬仁親王牌を優勝している園田匠がいます。最低8位に入らないとグランプリ出場ができなくなります。8位には村上義弘がいて賞金差約780万円。非常にスリリングですね。確実に決勝に乗ってこないとひっくり返すことが難しいと思われます。初日からの一戦一戦が大切になってくるのでその競走は絶対チェックしましょう!

 第57回朝日新聞社杯競輪祭が小倉競輪場で開催される。日本選手権、オールスターの2大Gを制して輪界の頂点へと駆けのぼった新田祐大が今大会も優勝候補の筆頭だが、オールスターでは本調子を欠いていた武田豊樹と平原康多の関東コンビの巻き返しや、ハイスピードの捲りを武器に自在戦に磨きをかける浅井康太、今度こそのタイトル奪取に執念を燃やす稲垣裕之らの活躍も楽しみで、グランプリの出場権を懸けた賞金争いにも注目が集まる。
高速バンクの小倉ドームで新田祐大がますます加速する
 関東トリオがいつも通りの結束力で巻き返しを狙う
新田祐大選手
 もう誰も新田祐大の進撃を止めることはできないのか?オールスター決勝では残り2周の赤板で新田が3番手に入った時点で早くも勝負あり、最終2角から新田が捲っていくと後ろはどんどん離れていくばかりで、2着に3車身差をつけての完勝だった。
 次場所の京都向日町記念決勝も赤板から稲垣裕之-村上義弘の地元勢を始めとする6車が2列併走状態、やはり最終2角から楽々仕掛け後ろをぶっち切り優勝している。
 逃げてよし捲ってよしの新快速ぶりに、今や誰もがお手上げ状態と言ってもいいほどだ。そして今大会が新田向きの高速バンクが舞台となれば、GI連覇の可能性は限りなく濃厚で、このまま年末のグランプリまで新田の快進撃は続いていくだろう。
武田豊樹選手
 オールスターでの関東勢は神山雄一郎が準優勝と健闘したが、武田豊樹は準決敗退、平原康多も長期欠場明けの2場所目で準決敗退とやや精彩を欠いていた。
 しかし、高松宮記念杯を優勝している武田は当然ながら、10月16日時点の獲得賞金で3位につけている神山雄一郎、5位につけている平原康多もグランプリ出場はほぼ確定的と言ってよく、この精神的な余裕からくるアドバンテージは大きい。武田は10月の熊本記念も決して万全の状態ではなかったが、平原の番手からしっかり優勝をもぎとっており、今大会も関東トリオがいつもどおりの結束力を見せてくれば、やはり他地区の選手たちにはとっては脅威の存在となるだろう。
 2月の全日本選抜で復活優勝を遂げた山崎芳仁も優勝候補の1人だ。山崎は全日本選抜以降はGIでの決勝進出はないが、競輪祭は過去に2度優勝と小倉バンクとの相性はよく、今年は10月までに記念優勝が2回ある。とりわけ9月の岐阜記念決勝は武田豊樹、浅井康太に今もときめく新鋭・竹内雄作と豪華メンバーが揃い踏みだったが、武田との捲り合戦を制して先頭でゴールを駆け抜けている。
 オールスターの二次予選では新田祐大の強烈捲りにしっかり食らいついてワンツーを決めているのも高評価だ。踏み出しにやや難があると思われている山崎だが、今大会でも新田との好連係から勝機を掴んでくるシーンがきっとあるだろう。
浅井康太が中部の強力先行を目標に勝機を掴む
 稲垣裕之が今度こそのタイトル奪取に気合いを込める
浅井康太選手
 今年の浅井康太は全日本選抜で決勝3着、日本選手権も決勝3着と健闘、その後はGIでの決勝進出はなくなったが、前半戦の活躍と記念優勝4回で賞金獲得ランキングでは4位につけており、年末のグランプリ出場をほぼ確定的にしている。
 もちろん賞金ではなく、タイトルを取ってのグランプリ出場が選手に取っては最高の栄誉だけに、ラストチャンスの今大会では2011年8月のオールスター以来のタイトル奪取に意欲を燃やしてくるだろう。完全復活にはまだ遠いが怪物パワーが徐々に戻ってきている深谷知広や、いよいよ本格化してきた竹内雄作の存在が浅井にとって心強く、自身の必殺の捲りにもさらに磨きをかけて競輪祭に臨んでくるだろう。
稲垣裕之選手
 稲垣裕之にとっては今大会が正念場と言っていいだろう。オールスターでは9回目のGI優出となったが、またもや悲願のタイトル奪取はならなかった。それでも、最悪の8番手の展開から渾身の捲りを打って3着まで届いており、体調面は引き続き良好だ。10月16日現在の獲得賞金ランキングでは6位とグランプリ初出場が狙える位置につけているだけに、ますますの気合いを込めてくるだろう。
 競輪祭は2011年と2014年に決勝進出を果たしており、小倉バンクとの相性がいいのも好材料だ。オールスター直後の京都向日町記念決勝では結果は8着ながら、新田祐大の番手で粘るという意表を突いた走りを見せており、今大会も総力戦で優勝を目指してくる。
 村上義弘は今年は記念優勝は2回あるが、体調面で苦しい戦いが続いておりGIでの決勝進出は高松宮記念杯のみとなっている。獲得賞金ランキングも8位とグランプリ出場のボーダーライン上にいるだけに今大会での走りが大いに注目される。
 オールスターでは準決で4着に敗れたが、先行した稲垣裕之の番手で車間を空けてかばいにかばった結果であり、体調面では苦しみ抜いた今年前半よりはだいぶ上向いてきていると見ていいだろう。次場所の京都向日町記念でも初日特選と準決で2勝を挙げ、決勝も終始内に詰まった苦しい展開から最後は気力を振り絞っての捲りで3着に突っ込んでおり、今大会も村上らしい熱い走りが期待できる。
グランプリの出場権をかけた賞金争いも見どころだ
 大ブレイクの竹内雄作が今大会も徹底的に逃げまくる
岩津裕介選手
 今年も岩津裕介にとっては胃をきりきりと締めつけられるような苦闘の日々がやってきた。昨年は最後の最後まで熾烈な賞金争いを演じ、競輪祭では準決で敗れたものの9番目の枠でグランプリ初出場を果たした。今年も10月16日現在の獲得賞金ランキングでは11位とぎりぎりのところにつけているが、まだまだグランプリ出場の可能性は十分にある。岩津はオールスター準決で敗れたが、次場所の京都向日町記念は決勝4着と調子は悪くなく、今大会も一戦一戦で気迫溢れる走りを見せてくれるだろう。
 岩津裕介と接戦の賞金を争いをしているのが金子貴志だ。獲得賞金ランキングは10位で、岩津との差は10万円。8位の村上義弘との差は800万円で、これも十分に逆転がありうる。金子は落車の影響でオールスターを欠場せざるを得なかったのが痛かったが、復帰戦の熊本記念では捲りも出ており体調的には心配はなさそうだ。愛弟子の深谷知広や竹内雄作を目標にできるのが大きなアドバンテージだし、今大会ではグランプリを見すえて浅井康太が金子をぐんぐん引っ張っていくシーンもあるかもしれない。
中川誠一郎選手
 地元期待は中川誠一郎だ。GIでの決勝進出がまだ1回しかないのが不満だが、スピードに関しては新田祐大にも引けをとらないものを持っているのは周知の事実だ。オールスターでも準決の壁を突破できなかったが、オリオン賞は3番手から直線鋭く追い込んで1着、シャイニングスター賞も稲垣裕之の逃げを捲った平原康多のさらに上を捲って1着と抜群の出来だった。10月の熊本記念も準決は4着に敗れたが、残り3走で3勝を挙げており、今大会での一気のタイトル取りも決してないとは言えないだろう。
竹内雄作選手
 中部期待の新鋭・竹内雄作がオールスターで初のG優出を決めた。しかも333バンクの松戸が舞台だったとはいえ逃げ切りの3連勝での勝ち上がりというのだから恐れ入るし、準決では平原康多-武田豊樹の関東コンビを不発に終わらせる大金星を挙げている。初の大舞台となった決勝はさすがに冷静さを欠いてフカしすぎてしまったが、しっかりと主導権を取りにいったのはりっぱだ。今大会でも竹内の堂々たる逃げっぷりがファンを大いに沸かせてくれるにちがいない。
脇本雄太選手
 徹底先行といえば脇本雄太も忘れてはいけない。オールスターでは二次予選で敗れてしまったが、最終日選抜では2着に9車身の差をつけて圧勝と体調自体は問題なさそうだ。近況は包囲網が厳しくて捲りにまわされるケースが多く、知らず知らずに踏める距離が短くなってしまったのが敗因だったと思われる。脇本もそれは自覚しているようだし、竹内雄作の活躍に刺激を受けているはずで、今大会では再び脇本らしい逃げが見られるだろう。
 波乱を呼ぶのはやはり南関東勢だ。オールスターの準決では深谷知広、浅井康太、渡邉一成らの格上相手に桐山敬太郎が前へ前へと積極的に仕掛けていき、見事に南関東ラインの3人で上位を独占してしまった。先行も辞さずの捨て身の覚悟で攻めていったのが大金星につながったと言えるだろう。南関東勢は他地区と比べると機動力の面でどうしても見劣りする部分があるが、単純に脚力どおりの結果には収まらないところが競輪の面白さであり、今大会でも展開次第では南関東勢の一発が十分に期待できる。
長塚智広が武田豊樹マークからタイヤ差交わしてG初制覇
 第53回朝日新聞社杯競輪祭決勝は村上義弘を先頭に結束力で制覇を狙う近畿勢と無傷の3連勝で勝ち上がってきた武田豊樹の激突となった。スタートで飛び出した佐藤友和に大塚健一郎が続いて前受け、以下は武田豊樹-長塚智広、海老根恵太、村上義弘-稲垣裕之-市田佳寿浩-南修二の並びで周回を重ねる。残り1周の赤板から村上が一気に仕掛けて先頭に立つと、佐藤が3番手の市田に飛びついて両者で激しい競り合いとなるが、市田が競り勝って3番手を死守し、佐藤は5番手まで下がる。すると、今度は武田が最終ホームからスパート、最終1角で武田が稲垣に並びかけると、稲垣が武田を張りながら番手捲りを打つ。武田はブロックを受けて一瞬スピードが緩むが、2角から踏み直し、稲垣の上を乗り越えて先頭に躍り出る。長塚と単騎の海老根がきっちり追走して最後の直線では武田と長塚の一騎打ちとなり、長塚がタイヤ差交わしてGI初制覇、武田が2着、海老根が3着。

無風の高速バンクで先手ライン有利が基本
捲りもよく決まるが、遅めの仕掛けは不発になりやすい
 グリーンドーム前橋に次ぐ2番目のドーム競輪場として1998年に誕生した小倉バンクは、全国の競輪場のデータを基に「走りやすさ」を追求して設計された国内でも有数の高速バンクだ。
 天候に左右されることなく、常にベストに近い状態で走れるのが最大の特徴で、走路も軽くてタイムが出やすいので、スピードのある先行選手に向いている。打鐘から全開でスパートしても、スピードに乗ってマイペースに持ち込めれば2着、3着に粘り込めるので、先手ライン有利が基本のバンクである。
 全国からトップクラスの選手たちが集うビッグレースでは先行より捲りのほうが有利な印象があるが、昨年の競輪祭の結果を見てみると、全47レースのうち半数以上の28レースで先手ラインの選手が1着を取っている。最大の激戦区である準決でも、3個レースすべてで先手ラインの選手が1着になっている。
 ちなみに全47レースの1着、2着の決まり手は次のとおりだ。1着は逃げが7回、捲りが18回、差しが22回、2着は逃げが11回、捲りが10回、差しが9回、マークが22回となっている。
 400バンクの中では最もきついカントを有しており、緩和曲線(コーナーから直線に移るつなぎ部分)を長くとってスムーズに踏み切れるように設計されているので、力のある選手なら7、8番手からの逆転も可能だが、前の先行が掛かるので、勝負どころで一瞬でも踏み遅れてしまうと、仕掛け切れずに終わってしまうケースが多い。
 捲りといえども前へ前へと積極的に踏んでいって、遅くとも最終ホームあたりからスパートしていかないと前を捕えきれないし、遅めの捲り追い込みは決まりにくい。自力選手が有利な高速バンクだが、戦法や体調によって得手、不得手がはっきりしやすいバンクともいえる。
 追い込みは3番手以内が絶対条件で、よほど前がもつれて混戦にならないかぎりは4、5番手からの突き抜けは難しい。昨年の大会でも半数以上の28レースが並びどおりのスジで決着している。


 周長は400m、最大カントは34度01分48秒、見なし直線距離は56.9m。直線は外帯線から1、2mのところを、外に膨れないように締めて回って追い込むとよく伸びる。ゴール前での中割りも有効だ。競りはインが有利だが、コーナーから直線へ向かうと内側が登りになるので、インは押し込まれないように早めに競り勝つことが条件となる。最高上がりタイムは06年にスペインのホセ・アントニオ・エスクレドが叩きだした10秒5。