来る5月23日に伊東温泉競輪場に於いて競輪選手による純粋な自転車競技の大会「第63回全日本プロ選手権自転車競技大会」が開催されるが、それに先立つ21、22日の両日に「同大会記念競輪」が実施される。グレードレースさながらにS級S班9名を始めとするスター選手やスピード自慢の若手選手たちが333バンクに集結、2日間の短期決戦ながら今年も熱い戦いが繰り広げられるだろう。
深谷知広がパワー先行で上位独占を狙う
平原康多が自在な走りで関東復権を目指す
初日のメインとなるのは優秀競走3個レースで、S級S班の9名に選考期間(平成27年9月~平成28年2月)における平均競走得点上位の18名が出場する。レースの格付けはFII戦だが、GI戦と変わらぬ豪華メンバーによる対決となる。
ここから各レースで3着までに入った9名が2日目のメインとなるスーパープロピストレーサー賞で頂点を目指すことになるが、復調目覚ましい深谷知広が牽引する中部勢を中心に押したい。
現状の深谷知広は第70回日本選手権競輪(GI)決勝でもそうだったが捲りに回されると不発のケースが目立っており、完全復活にはもう少し時間がかかりそうだが、主導権を奪ったときのパワフルな走りと強靭な粘り脚は全盛期とまったく変わらない。その深谷に師匠の金子貴志や浅井康太が続く中部ラインはとてつもなく強力だ。今大会333バンクが舞台だけに主導権さえ奪ってしまえば一本棒の状態に持ち込んで他地区の反撃を許さず、中部勢で上位を独占してしまうだろう。
関東勢の復活の鍵を握るのは平原康多か。平原は3月・名古屋の日本選手権の準決で落車したが、その後の記念開催では落車の不安を一掃する軽快な走りを見せており、体調面ではほぼ問題はなさそうだ。ただ、今年は4月末までに8場所走って優勝がまだなく、ゴール前での攻防で切れ味が鈍っているのは否定できない事実だ。第70回日本選手権競輪(GI)では決勝に進出することができなかった。それでも、レース捌きや位置取りの巧さは相変わらずで、同じく復調途中の武田豊樹とともにそろそろの巻き返しが期待できる。
新田祐大も2冠を達成した昨年の活躍ぶりと比べると、今年はまだエンジンが掛かりきっていない印象がある。もちろんタテ攻撃のスピードは昨年と変わらずに圧倒的だが、勝負どころの仕掛けがワンテンポ遅い印象で、捲り届かずの3着や4着が多くなっている。それでも、3月の玉野記念で今年初優勝を飾ってから徐々に仕掛けのタイミングも調整されてきており、今回も新田らしい爆発的なスピードを見せつけてくれるだろう。
勝率5割の木暮安由に死角はない
吉田敏洋が好調の波に乗ってパワーアップ
初日特選の3個レースには選考順位28位から54位までの27名が出場するが、各レースで5着までに入った15名が2日目のダイナミックステージに進出する。
特選組で今、最も乗れているのは木暮安由だ。今年は4月末まで優勝が3回あり、勝率は軽く5割を超えている。3連対率となると驚きの8割超えで、好位置を確保しての捲りが面白いように決まっており、大崩れはほとんどない。1月の伊東温泉FIでは初日特選は逃げ切り、準決と決勝は捲りで完全優勝とバンクとの相性もいい。今回も決して後手を踏まない自在戦で勝ち星を挙げてくる。
吉田敏洋も好調だ。勝率は3割弱で数字的にはごく普通だが、4月の防府FIと小倉FIを連続優勝してから大波に乗った。とくに小倉FIの決勝は渡邉一成を不発に終わらせる逃走劇で優勝と大金星だった。続く西武園記念の準決では土屋壮登-平原康多の地元2段駆けを5番手からの仕掛けで捲り切って快勝と乗りに乗った。第70回日本選手権競輪(GI)では決勝に進出し好調なのは間違いない。今回も333バンクが舞台なら得意の捲りだけでなく、逃げ切りでの勝ち星も十分だ。
地元期待は渡邉晴智だ。今年はまだ優勝はないが、3月・平塚FIが決勝2着、4月・松戸FIが決勝6着と調子は悪くない。3月の地元・静岡記念は準決で無念の落車に見舞われたが、第70回日本選手権競輪(GI)では決勝に進出し、地元で大活躍を見せた。今回も地元戦での活躍が期待できるだろう。
スーパールーキー・吉田拓矢登場
スピード自慢の若手が集結で見どころが多い
初日の選抜6個レースには選考順位55位から108位までの54名が出場するが、各レースで2着までに入った12名が2日目のダイナミックステージへ進出する。
選抜組の注目選手は107期のスーパールーキー・吉田拓矢だ。吉田は昨年10月にS級2班に特昇、今年1月の静岡FIでS級初優勝を飾ると、4月末までに5回の優勝を重ねている。勝率は6割5分を超えており、現在S級では堂々のトップの数字だ。日毎に包囲網が厳しくなり、思いどおりに仕掛けられないレースも増えてきているが、3月松阪FI決勝では単騎戦の苦しい展開から後続をぶっちぎっての捲りで優勝と桁違いのパワーを見せつけている。
そのほか99期の和田真久留、100期の古性優作、103期の野原雅也、105期の渡邉雄太などスピード自慢の若手が集結して選抜組も見どころは多いが、勝負強さではやはり和田真久留が一番か。
和田は1月の西武園FIの準決で落車、欠場明けの名古屋の日本選手権では連絡みは 2着が1回だけと物足りない成績に終わったが、次場所の平塚FI決勝では深谷知広を撃破して3番手からの捲りで優勝と、相変わらずの大物喰いぶりを発揮している。
2015年全プロ記念スーパープロピスト
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武田豊樹が中を突いての直線強襲
平原康多-武田豊樹、新田祐大-渡邉一成-山崎芳仁-佐藤友和、深谷知広、村上義弘、井上昌己の並びで周回。青板過ぎから村上、深谷、新田の順で次々上昇して前を押さえ、赤板で新田が先頭に立つと追ってきた平原が新田の番手で粘る。さらに打鐘で深谷がカマして主導権を奪い、井上が続く。最終1Cの3番手から新田が仕掛けるが、深谷の掛かりがよく捲れない。それを見た武田が5番手から中を突き、直線強襲して1着、井上が2着、平原が3着。
2015年の全プロ記念競輪 スーパープロピストレーサー賞を優勝した武田豊樹 |
スーパープロピストレーサー賞 ゴール |
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