レース展望

レース直前展望
10年ぶりに富山競輪場でのビッグレースが帰ってきました。
ふるさとダービー富山が開催されたのが2006年8月でしたね。この時優勝したのが平原康多選手でした。この時、平原選手は24歳。本格的な平原選手の活躍はそれから数年後となるわけですが、この優勝は非常に大きいものだったと思います。今回の共同通信社杯は、当時の平原選手のように若い選手の活躍を期待したいですね。
三谷竜生選手
近況、非常に上がってきていますよね。9月に入ってからまさに絶好調という感じが見えます。直近の防府FIは3連勝で優勝していますし、8月末の豊橋記念では3連勝で決勝進出。決勝は3着でしたが、パワーでは負けていませんでした。特に、333の防府バンクで優勝しているポイントがいいと思います。富山も333ですし、存分に能力を発揮し暴れることは間違い無いでしょう。
山本伸一選手
今年に入りブレイクしているのが山本伸一選手です。今年からGII、GI戦線に登場し、特に8月に行われた松戸オールスター競輪では、一次予選、二次予選を1着で勝ち上がり準決勝に進出しています。先行してもよし、捲ってもよしの山本選手は、今開催でも近畿ラインの先頭でパワーを発揮していくと思います。お忘れなく!
新山響平選手
有望選手が多い107期ですが、その中でも特に注目したいのが新山響平選手です。7月は函館記念を先行逃げ切りで優勝、8月の西武園FIは全て先行逃げ切り3連勝で優勝しています。先行パワーが存分に発揮されていますよね。どこまで大きくなっていくのか期待したい選手です。また、ビッグレースはこれが初登場になります。その活躍に期待しましょう!
脇本雄太選手
リオオリンピックでは、敗者復活戦で惜しくも2着で2回戦には進めませんでしたが、帰国して参加した豊橋エボリューションレースでのパフォーマンスは凄かったですね!残り1周で最後方。そこから一気に捲って、2着以下をぶっちぎって優勝。なんと上がりタイムが10秒2!バンクレコードは通常のフレームの場合のみらしいので認定はされませんが、このスピードを発揮したら軽く優勝!と思います。その走りに注目です!
第32回共同通信社杯が富山競輪場で開催される。3月の日本選手権。6月の高松宮記念杯につづいて今年3度目の中部地区でのビッグレース開催だけに、浅井康太を中心に今度こそはの意気込みで力を結集する地元・中部勢を主軸に推すが、絶対的なスピードを誇る新田祐大の逆転一発や、ようやく復調気配の見えてきた武田豊樹率いる関東勢の反撃も侮れない。また共同通信社杯は未来のスター選手候補たちの登竜門的な位置づけの大会となっており、吉田拓矢、新山響平、鈴木竜士と3人揃った107期生の走りにも注目が集まる。
浅井康太が今度こその意気込みで勝利を掴みとる
 新田祐大が展開無用の圧巻のスピードを見せつける
浅井康太選手
 地元・中部勢にとっては絶対に負けられないシリーズだ。3月・名古屋の日本選手権では中部勢は3人が決勝進出を果たしたが、村上義弘に優勝を奪われた。5月・名古屋の高松宮記念も3人が決勝進出を果たしたが、新田祐大に優勝を奪われており、3度目の地元地区でのビッグレースとなる今大会こそは絶対に地元ファンの期待を裏切るわけにはいかない。
 現在の中部勢はグランプリ覇者の浅井康太を筆頭に、輪界を代表する先行型の深谷知広と竹内雄作の2人に加え、ベテラン健在ぶりを見せつけている吉田敏洋に金子貴志とメンバー的にはかつてないほどの充実ぶりを誇っており、他地区と比べてもパワー的には決して遜色はない。
 とりわけ充実ぶりが際立っているのが浅井康太だ。浅井は今年まだGIでの優勝こそないが、8月8日現在の勝ち星が33勝とS級ではトップを独走しており、7月のサマーナイトフェスティバルでは吉田敏洋の先行を目標に番手捲りで優勝を飾っている。さらに8月の弥彦記念ではなんと逃げ切って優勝と、文字どおりのオールラウンダーぶりを見せつけている。
 今大会の舞台となる富山バンクは333の短走路なので展開が勝敗の流れを大きく左右するが、深谷知広や竹内雄作を目標にできる浅井には展開もきっと味方してくれるはずだ。深谷も竹内も近況は決して万全の状態とは言えないところがあるが、出切ってしまえば強靭な先行力を発揮するので、彼らを目標にできる浅井が優勝に最も近い位置にいると言っていいだろう。
新田祐大選手
 中部勢の前に大きく立ちはだかるのはスピードスターの新田祐大だ。6月の高松宮記念杯は浅井康太らの中部ライン、平原康多らの関東ラインを豪快に捲って圧勝している。7月のサマーナイトフェスティバルでは準決で4着と敗れているが、今年のGI戦線ではまだ1度も優出を逃しておらず、安定感も抜群だ。あえて死角を探すとすれば、近況は仕掛けのタイミングが遅めで勝負どころで7、8番手に置かれてしまうケースが多いところか。戦法的には決して短走路向きとは言えないが、今の新田ならば展開無用の圧倒的な捲りのスピードでライバルたちを蹴散らしていくだろう。
武田豊樹にようやく本来の力強い走りが戻る
 村上義弘が一戦入魂の走りで近畿勢を引っ張る
武田豊樹選手
 武田豊樹がようやく復調してきた。今年前半は落車の影響で低迷していたが、5月の全プロ記念のスーパープロピストレーサー賞では平原康多の逃げをきっちり追い込んで今年初優勝を飾っている。その優勝をきっかけに武田は見事に復活を果たし、次場所の6月の別府記念では決勝こそは7着と敗れているが、勝ち上がり戦は3連勝と完璧な走りを披露している。
 とりわけ復活を力強くアピールしたのが、7月のサマーナイトフェスティバルの決勝戦だ。結果は準優勝だったが、目標の平原が不発で最終バックでは8番手の最悪の展開に追い込まれながらもそこからコースを探って2着に突っ込んでおり、今大会でも本来の武田らしい走りをしっかりと見せつけてくれるだろう。
 一方の平原康多も前半戦は落車に苦しめられたが、6月の高松宮記念杯で決勝進出を果たして復活をアピールした。状態的にはまだ完調とは言えないが、位置取りの巧さは相変わらずで、今大会でも武田豊樹との連係から縦に横にと変化自在の捌きを見せて勝機を掴んでくるだろう。
村上義弘選手
 輪界一の結束力で台頭を狙うのが近畿勢だ。村上義弘、稲垣裕之のS級S班の2人に加え、リオ五輪帰りの脇本雄太の参戦も予定されているだけに、層の厚さでも他地区に決して引けはとらない。
 そのほか3月・名古屋の日本選手権でGI初優出を果たした三谷竜生、自在戦に活路を見出して勝負強さが増してきた古性優作、ビッグレース出場は今大会が2度目ながら先行主体の競走で勝ち星を量産している山本伸一などなど、近畿勢もここへきて期待の若手が続々と登場してきており、総大将の村上義弘を大いに盛り上げて近畿躍進の力強い原動力となるだろう。
 村上義弘は3月・名古屋の日本選手権を制覇、その後も4月の高知記念を優勝、6月の高松宮記念杯、7月のサマーナイトフェスティバルで決勝進出と安定した走りを見せている。体調的には決して万全の状態とは言えないはずだが、一戦入魂の走りは決して変わることなく、ファンの心を常に揺さぶり続けるその走りは輪界の宝といってもいいほどだ。今大会でもファンの期待を決して裏切らない熱い走りで、近畿勢を引っ張っていくだろう。
スーパールーキーの107期トリオが大会を盛り上げる
 リオ五輪帰りの脇本雄太がビッグレース初優勝に挑戦
吉田拓矢選手
 共同通信社杯は未来のスター選手候補たちの登竜門的な位置づけの大会と見なされていて、通常のビッグレースよりも若手選手が多く出場できるような選抜方式を取っており、毎回ケレン味のない走りを見せる新鋭たちが大会を大いに盛り上げてきた。
 そして今回は話題の107期トリオの吉田拓矢、新山響平、鈴木竜士が揃い踏みだけに、例年以上の盛り上がりを見せることはまちがいない。
 吉田拓矢は6月の高松宮記念杯でGIデビューを飾ったが、一次予選は逃げて2着、二次予選は捲って2着で準決まで勝ち上がり、期待どおりの超新星ぶりを披露した。続いて7月のサマーナイトフェスティバルにも登場、当たり前のように予選を捲りの1着で通過すると、準決では平原康多と諸橋愛を連れてきっぷよく逃げ、自身は9着ながら平原と諸橋の決勝進出にしっかり貢献した。そして今大会が3度目のビッグレース出場となるが、関東勢を連れての大逃走劇はもちろん、短走路の富山バンクが舞台だけに自身初のビッグ優出も十分に期待できるはずだ。
新山響平選手
 新山響平は今大会がビッグレース初出登場となるが、近況の勢いでは吉田拓矢に負けてはいない。7月の函館記念では一次予選こそは4着だったが、二次予選は逃げ切り、準決も逃げ切り、そして決勝も堂々と逃げ切っての3連勝で記念初優勝も飾っている。それも竹内雄作、近藤隆司、木暮安由らの骨っぽいメンバーを不発に終わらせての逃げ切り優勝だから、まさにスーパールーキーの名にふさわしい大金星だ。4月に高知で開催された107期のルーキーチャンピオンレースでは鈴木竜士-吉田拓矢の茨城2段駆けを捲って優勝と勝負強さも抜群だ。
鈴木竜士選手
 鈴木竜士は7月のサマーナイトフェスティバルでビッグレース初出場、初日予選こそは7着と敗れたが、2日目選抜では最終ホームで8番手の展開から単騎で一気に踏み上げると、あれよあれよというまに前団に接近し、逃げ粘る早坂秀悟を捕らえて1着でゴールイン、3連単では30万円を超える大波乱を演出した。鈴木は2月の京王閣F1でS級初優勝を飾っているが、そのときも最終ホーム9番手の展開から単騎で捲り上げて優勝しており、その爆発的としか言いようのない瞬発力は魅力的で、今大会も必ずどこかで大駆けの一発がありそうだ。
脇本雄太選手
 今大会ではリオ五輪出場を終えた渡邉一成、中川誠一郎、脇本雄太の3人も出場予定となっており、五輪の大舞台で世界のトップアスリートたちと戦ってきた彼らの走りにも注目が集まる。
 12年のロンドン五輪直後のオールスターでは渡邉一成が決勝進出して山崎芳仁の優勝に貢献、08年の北京五輪直後のオールスターでは伏見俊昭が優勝と、五輪帰りの選手は必ずと言っていいほど国内の競輪でも活躍している。今をときめくスピードスターの新田祐大も、ロンドン五輪出場を契機に大きく飛躍したのは誰もが認めるところだろう。
 3人のうち渡邉一成は2月の全日本選抜でGI初優勝を達成、中川誠一郎も4月の日本選手権でGI初優勝を飾っており、次に期待がかかるのは脇本雄太のビッグレース初優勝だ。以前からタイトルに最も近い男のひとりと言われ続けてきた脇本だが、念願のオリンピック出場を果たし、一回りも二回りも大きく成長した走りで大暴れしてくれるだろう。
共同通信社杯の思い出
渡邉一成が2度目の五輪出場前にビッグレース初優勝
 今からちょうど4年前の4月、渡邉一成は2度目の五輪出場を目指して自転車競技に邁進していたが、本業の競輪においても名古屋競輪場で開催された共同通信社杯で見事にビッグレース初優勝を飾った。決勝は脇本雄太-稲垣裕之-南修二-柴崎俊光、鈴木裕-望月永悟、佐藤友和-渡邉一成-成田和也並びで周回を重ねるが、青板周回でアクシデントが発生する。別線の出方を確認しようとした脇本が誘導員と接触して落車、そのまま誘導員も退避してしまう。目標を失った稲垣が先頭になってしまうが、まだ残り2周半のため稲垣は後方を警戒しながら仕掛けのタイミングを伺う。そこを佐藤がすかさず叩いて赤板から早々と先行態勢に入り、稲垣が4番手、鈴木が7番手の一列棒状のまま、打鐘、最終ホームと通過、最終2角から満を持した渡邉が番手捲りを打ち、後方からの巻き返しを完全に封じて先頭でゴールイン、2着に成田、3着に中割強襲の南が入る。
2012年 第28回大会 渡邉一成
2012年 第28回大会 渡邉一成
2012年 第28回大会 渡邉一成
2012年 第28回大会 渡邉一成
バンクの特徴
直線が長めでカントも立っており捲りが決まりやすい
印象は400バンクに近く、戦法的な不利は少ない
 8月の松戸オールスターにつづいて今大会も333バンクでのビッグレース開催となるが、同じ333バンクでも松戸と富山ではその特性はかなり違う。
 松戸は333バンクの中でも直線が有数の短さで、カントも緩めなので後方からの巻き返しが効きにくく先手ラインが断然有利とされているバンクだ。
 しかし、富山は他の333バンクと比べると直線が長く、カントも立っているので後方からでも仕掛けるチャンスがあり、どちらかというと400バンクに近い印象がある。
 それでも短走路なので自力選手が有利ではあるが、クセもなく走りやすいバンクなので、どんな戦法の選手でも十分に力を発揮できるバンクとなっている。
 昨年8月の記念開催の決まり手を見てみると、全47レースのうち1着は逃げが5回、捲りが21回、差しが21回、2着は逃げが7回、捲り5回、差し13回、マーク22回となっている。
 やはり333バンクといえどもS級のトップレーサーたちが集うグレードレースでは捲りのほうが圧倒的に優勢である。
 それでも松戸バンクの場合逃げ切りや逃げ粘りの2着の出現率が高かったが、富山バンクでは松戸バンクと比べると逃げた選手はかなり苦戦を強いられている。先手を取ったラインの選手が1着になったレースも15回しかなかった。
 松戸バンクはカントが緩いので早め早めの仕掛けが肝心だが、富山バンクでは7、8番手からでも巻き返しが効くし、最終2角から仕掛けても十分に間に合うので捲りが決まりやすくなっている。
 比較的直線が長いので、追い込み選手も3番手から突き抜けることができるし、最終4角で4、5番手の位置にいてもうまくコースを探していけば連絡みが可能だ。
 直線では外のコースはあまり伸びないが、最終4角から内へ突っ込んでいったり、中割りを狙っていくとよく伸びる。昨年の記念開催でも2着に4、5番からスジ違いの選手が突っ込んできて好配当というケースが多かった。

 周長は333m、最大カントは33度41分24秒、見なし直線距離は43.0m。走路はクセがなくて走りやすいが、ウォークトップが厚めに塗られているためにやや重い。バックスタンド裏が岩瀬浜と繋がった運河となっており、吹き込む風に注意が必要で、風向きは日によって違うし、バンク内を風が回ることもある。とくに夏場は南風が吹くことが多く、南風が吹くとバック、ホームとも追い風となって好タイムが出やすくなる。