レース展望

第68回高松宮記念杯競輪が2年ぶりに岸和田競輪場で開催される。今大会から準決勝までは東日本地区と西日本地区の選手が分かれて戦う「東西対抗戦」の番組体系が復活、2個レースとなった東西それぞれの準決勝で4着までに入った8名と5着2名のうち二次予選着順上位1名が決勝へ進出する。東日本は平原康多と武田豊樹の関東コンビが中心だが、機動力豊富な北日本や勢いのある南関東勢の一発が侮れない。西日本は先行力の戻った深谷知広率いる中部を軸に推すが、ダービー王・三谷竜生が牽引する近畿の一気の台頭も十分だ。
吉田拓矢を目標に平原康多が強さを見せつける
 好相性の郡司浩平との連係から石井秀治の一発を狙う
平原康多選手
 東日本は北日本、関東、南関東の3地区だが、初日青龍賞は北日本が2名、関東が4名、南関東が3名で、ラインの長い関東が中心だ。東西対抗戦の番組体系の復活に伴い2日目優秀競走が廃止され、青龍賞の選手は全員二次予選回りとなるのでここは関東4名で結束するだろう。
 並びは吉田拓矢-平原康多-武田豊樹-木暮安由と予想されるが、吉田の先行力を目標にできる平原には絶好の展開になりそうだ。
 平原はウィナーズカップ決勝に続いて日本選手権決勝でも組み立てに失敗して優勝を逃したのがやや気になるところだが、日本選手権の特選予選は3番手からの追い込みで1着、準決も3番手からの追い込みで1着と勝ち上がり戦は万全だ。まるで魔法のようにあっさりと3番手を確保してしまうテクニックは他の追従を許さず、総合力では今や輪界一と言ってまちがいない。もちろん今大会も断然の優勝候補の筆頭だ。
石井秀治選手
 南関東は郡司浩平-石井秀治-中村浩士の並びか。2月の取手記念準決では郡司-石井で4番手から捲るも平原-武田のブロックに合って不発に終わったが、4日目特別優秀では郡司の捲りを追い込んだ石井が1着、郡司が2着のワンツーを決めている。
 石井は日本選手権では一次予選で敗れたが、3日目選抜は根田空史の先行に乗って1着、4日目選抜も根田を目標に1着、5日目特選は捲って1着、最終日特選は先行する稲垣裕之の番手を奪って1着と4勝を挙げて絶好調だ。今回も郡司の仕掛け次第では関東ライン撃破が十分に期待できる。
 北日本の並びは微妙だ。日本選手権の2日目特選予選では新田祐大-渡邉一成の並びで新田が8番手から捲って2着だったが、ゴールデンレーサー賞では渡邉-新田の並びで先行するも平原-武田に捲られて新田が4着、渡邉が9着に終わっており、今回も雪辱戦とばかりに渡邉が前回りを選択する可能性もある。
 新田は今年は自転車競技に専念して競輪でのレース勘にやや不安が残る。ウィナーズカップに続いて日本選手権でも決勝進出を逃してしまったが、持ち味のトップスピードに関してはまったく問題はなく、今大会に向けてしっかり立て直しを図ってくるだろう。
浅井康太の勝敗にこだわったシビアな攻めに期待
 ダービー王に輝いた若武者・三谷竜生の走りに注目
浅井康太選手
 西日本地区の白虎賞は中部が3名、近畿が3名、中四国が2名、九州が1名の組み合わせだが、先行力の戻った深谷知広率いる中部を軸に推したい。日本選手権では特選予選、準決と先行して決勝進出、決勝も果敢な主導権取りで5着と健闘した。
 中部の並びは深谷知広-金子貴志-浅井康太だろうが、奮起を期待したいのが浅井康太だ。日本選手権の準決では深谷知広の先行を差してワンツーを決めているが、決勝は番手絶好の展開ながらも3番手から追い込んだ三谷竜生に優勝をさらわれ、特別予選も竹内雄作の先行で番手絶好だったが、インから松岡貴久にすくわれて8着に終わっている。ラインを大切にする気持ちも重要だが、勝ち負けにこだわったシビアな攻めがもう少し欲しい。白虎賞は3番手からの競走になるだろうが、ここで浅井らしい自在含みの強さをアピールできれば、二次予選以降の勝ち上がりにも有利になってくるはずだ。
三谷竜生選手
 近畿は三谷竜生-稲垣裕之-村上義弘の並びとなるだろうが、注目はなんといっても日本選手権で100期台で初のタイトルホルダーとなった三谷竜生だ。
 タイトルとともにグランプリの切符も手にした三谷にとっては、年末の大一番に向けて近畿ラインをグイグイ引っ張っていきたい気持ちが強いだろうが、近畿の先輩たちがダービー王の三谷にただ逃げるだけの走りを許すかどうかは疑問だ。もちろん先行力に関してはトップクラスのパワーを持つ三谷だが、今大会では先行か捲りかのジレンマに陥ってつまずく場面がひょっとするとあるかもしれない。
中四国は原田研太朗-岩津裕介の並びで、おそらく九州の園田匠がここを追走していくことになるだろう。
 原田研太朗は日本選手権では二次予選で敗れ、5日目特選での捲って2着が唯一の連絡みと低調だったが、直前の高知記念から導入した新車が合わなかったのが主な原因であり体調自体には問題はない。次場所の松阪FIでは以前の自転車に戻し、優勝こそはならなかったものの初日特選は8番手からの捲りで後続を千切って1着、準決は堂々の逃げ切りと強さを見せており、今回も原田らしい豪快な先行・捲りでの一発が十分に期待できるだろう。
復調なった新山響平が徹底先行を貫いて勝ち上がる
 先行力はトップクラスの竹内雄作が巻き返しを狙う
新山響平選手
 今大会からは準決勝までは東日本地区と西日本地区が分かれて戦う東西対抗戦の番組体系が復活したが、各地区での戦法が逃げの選手のバランスが偏っているため、同地区の選手同士での叩き合いは避けられないだろう。とりわけ東日本地区では北日本に逃げの選手が10名、南関東にも7名と揃っているだけに勝ち上がり戦は激戦が予想される。
 新山響平は日本選手権では一次予選で惜しくも4着と敗れたが、4走して4走とも主導権取りとレース内容は素晴らしく、3日目選抜は3着、4日目特選は2着に粘り込んでおり体調面も大丈夫だ。2月のウィナーズカップでは主導権を取れずの大敗続きだっただけに、着実に立て直しに成功しているのがよくわかる。今大会も持ち味の先行勝負に徹して勝ち上がりを狙ってくるだろう。
吉澤純平選手
 吉澤純平はウィナーズカップで無念の落車、日本選手権が長期欠場後の復帰戦となったが、二次予選で惜しくも4着と敗れているものの一次予選は7番手から力強く捲って1着、5日目特選は捲って3着で番手を回った神山拓也が1着とまずまずの成績を挙げた。昨年の高松宮記念杯は準決まで進出と大会との相性もよく、今大会も活躍が期待できる。
 南関東では徹底先行で売り出し中の渡邊雄太に勢いがある。渡邉は日本選手権では一次予選で敗れているが、一次予選では脇本雄太相手に主導権を奪い、番手回りの和田健太郎の1着に貢献、4日目一般では逃げ切っている。次場所の宇都宮記念では二次予選で逃げ切って通算100勝をマーク、準決を2着で突破すると決勝3着と健闘、まさに走るたびに強くなっていくという印象が強い。
竹内雄作選手
 西日本地区では戦法が逃げの選手が中部に4名、近畿に8名、中四国が2名、九州が2名とやはり近畿の層が厚いが、近畿同士あるいは中部同士の叩き合いで混戦になれば中四国や九州の出番がありそうだ。日本選手権では中国地区から1名、九州地区から2名が決勝進出しているだけに決して侮れない。
 竹内雄作は逃げ切りでGII初制覇を達成した昨年と比べると今年はやや減速気味の印象があるが、先行力はすでにトップクラスの域にあり、思い切りの豪快な仕掛けが魅力的だ。日本選手権では準決で敗れたが、二次予選は7番手からの捲りで後続を千切って1着、特選予選と準決は大きな着を取ったもののしっかり主導権を握っており、今大会ではそろそろの大ヒットが期待できそうだ。
中井俊亮選手
 近畿では中井俊亮が急成長中だ。日本選手権では二次予選で稲垣裕之を連れて逃げて8着に敗れたが、一次予選では4番手で根田空史と併走の展開から捲って1着と若手ながらヨコの動きにも強いのが魅力だ。5日目特選では川村晃司を連れて先行、いったんは河端朋之に捲られながらもそこからもうひと踏みして2着に突っ込み、最終日特選では金子貴志を連れて先行してワンツーを決めている。
 園田匠は日本選手権の準決では目標の中川誠一郎が不発で7番手の苦しい展開となったが、そこから中のコースを伸びて2着に突っ込み決勝進出とさすがの鋭さを見せた。決勝は残念ながら8着に終わったが、特選予選でも4番手から中割りを決めて1着になっており、今大会も直線の長い岸和田バンクが舞台だけに展開不問の差し脚を発揮して決勝進出を狙ってくるだろう。
2011年 第62回大会 深谷知広
平成生まれの深谷知広が史上最速のGI初制覇を達成
 第62回大会は前橋競輪場で開催されたが、平成生まれで弱冠21歳の深谷知広がデビュー最短記録を更新してGI初優勝を決めた。レースは佐藤友和-伏見俊昭、武田豊樹-後閑信一の関東コンビに小倉竜二、深谷知広-山口富生、稲垣裕之-村上義弘の並びで周回を重ねる。残り3周の青板から稲垣が上昇、6番手の外で止まって深谷を抑える。両者の併走はしばらく続くが、赤板前の4コーナーから稲垣が発進して主導権を奪う。前受けから合わせて踏んだ佐藤が3番手、追い上げた深谷が5番手に入り、武田が7番手で打鐘を迎える。深谷は最終ホーム一気に踏み込み、後ろの山口は離れ、単騎で京都コンビに迫る。最終1角で村上がブロックするが深谷のスピードは衰えず、稲垣の番手から踏み込んでいった村上を最終バック手前で飲み込むと、そのまま押し切って先頭でゴールイン、深谷を追った村上が2着、最終4角から内を突いた伏見が3着。
表彰
表彰

ゴール
ゴール
バンクの特徴
捲りは後方からの仕掛けでもよく決まる
直線は長いが、バック追い風を利して先行も粘り込める
 岸和田は標準的な400バンクで、走路はクセがなくて走りやすく、直線も比較的長いので戦法や脚質による有利不利は少ない。
 海岸に近い平地にあるため、大阪湾から浜風と南東の山から吹き下ろす山風のせいで全国でも有数の風の影響を受けやすいバンクとなっている。
 通常はバック追い風が強く、先行はその風に乗って粘り込むことができる。長い直線を利しての2角からの捲りや追い込みも決まりやすい。
 15年6月に開催された高松宮記念杯の決まり手を見てみると、全47レース(ガールズケイリンコレクションを除く)のうち1着は逃げが6回、捲りが17回、差しが24回、2着は逃げが7回、捲りが16回、差しが11回、マークが14回となっている。
 直線は長いが、先行がかなり健闘しており、先手ラインの選手が1着を取った回数も18回となっているが、注目すべきはやはり捲りの決まり手の多さだろう。
 通常のGI戦で捲りを決めるには4、5番手の中団取りが必須と言ってもいいが、岸和田バンクでは後方の7、8番手からの捲りが面白いように決まっている。
 捲りの1着の17回のうち実に10回が7、8番手からの仕掛けである。捲りの2着も16回のうち6回が7、8番からの仕掛けで、中団よりも後方からの捲りのほうがよく決まっている印象だ。
 2日目優秀では深谷知広が先行、先捲りの平原康多は金子貴志のプロックにあって不発となったが、武田豊樹が自力に転じて4番手から捲っていくも、その上を8番手から捲った新田祐大が一気に抜き去って1着、武田が2着と力と力の決着になっている。  捲りだけでなく、脚をためての追い込みもかなり有効だ。3日目2Rでは浦川尊明が最終3角8番手から中コースをするすると伸びて頭に突き抜け、3連単では28万円と開催一の高配当を演出している。
 ちなみに決勝戦は脇本雄太の先行を目標に番手捲りを打った稲垣裕之を、5番手から捲り追い込んだ武田豊樹が直線で一気に抜き去って優勝している。


 周長は400m、最大カントは30度56分00秒、見なし直線距離は56.7m。通称は浪切りバンク。かつては直線が長めで追い込み有利とされていたが、02年のバンク改修で滑り止めのウォークトップを手塗りにしてから軽いスピードバンクに生まれ変わった。最高上がりタイムは14年7月にフランスのフランソワ・ペルビスがマークした10秒3。カントがきつめなので競りは外も内も互角に戦える。直線ではとくに伸びるコースはない。

岸和田競輪場