レース直前展望
小倉競輪祭の季節になると、年の瀬が近づいてきたと感じるのは競輪ファンであることは間違いありません。そして、いよいよKEIRINグランプリの出場選手が決まるのでありました。
2017年最後のGI優勝者は誰なのか? そして、僅差で並ぶ賞金ランキングも大いに気になります。
競輪祭を始めから最後まで楽しんでください!
今年はGI優勝を獲得しておらず、また賞金ランキング(13位)でも圏内から少し遠いところにあり現在KEIRINグランプリ出場が危ぶまれているのが村上です。しかし、この選手のドラマティックなところが、競輪祭でも発揮されると思われます。どのようなドラマが村上を中心に展開されるのか本当に楽しみですね。まずは初日から注目していきましょう。
ウイナーズカップを勝ち、川崎記念を勝って波にのるかと思われた郡司ですが、ちょっと不運に見舞われています。賞金(11位)でKEIRINグランプリが見えている位置にいるので、ここは奮起奮闘してまずは決勝進出を狙ってくるでしょう。こちらも初日の成績から注目していきたい選手です。久々に南関からGP選手が出るのを期待したいですね。
11月の始めはワールドカップに参戦し、チームスプリントの3走を務め、44秒台をマーク、また1kmTTに出場し1分2秒260と好タイムを出しています。このパワーを発揮できれば競輪祭の台風の目になるでしょう。また競輪祭の舞台は小倉ドーム。風が無い分、深谷に有利に働くはずです。長くもがける力がここで爆発するはずです。
ナショナルチームで活躍しているのが河端。今年の彼はここに来て切れています。11月のワールドカップ第1戦男子スプリント200m予選で9秒933をマークし、コンスタントに力を発揮。また2戦では2回戦に進出できませんでしたが、1回戦、敗者復活も僅差勝負。世界の強豪相手にスピード、パワーは負けていません。オリンピックでメダルを目指す河端を応援してください。
今年最後のGI・第59回競輪祭が小倉競輪場で開催される。寬仁親王牌に続いての無風の高速バンクが舞台だけに、寬仁親王牌決勝でラインの3人で上位を独占した新田祐大率いる北日本勢が今大会も大本命となるだろう。対するはパワー満点の先行力が戻った深谷知広率いる中部勢だが、寬仁親王牌で決勝進出を逃した関東勢の巻き返しや地元・九州勢の頑張りにも期待したい。もちろん残り5席となったグランプリの出場権を懸けた賞金争いにも大注目だ。
新田祐大が得意のドームバンクで強さを発揮する
平原康多が相性抜群の競輪祭で復活を目指す
先の寬仁親王牌決勝では新田祐大が最終ホーム3番手から捲ってライン3車できれいに出切り、番手追走の渡邉一成がGI連覇、新田が2着、成田和也が3着と福島トリオで上位を独占して圧倒的な機動力を見せつけた。準決では打鐘前から一気に仕掛けて先頭に立つと、そのまま先行・押し切りで成田和也とワンツーを決めており勝ち上がりも万全だ。昨年の競輪祭も決勝は8着と大敗したが、準決では最終ホーム4番手からの仕掛けで深谷知広を叩いて逃げ切っており、今大会も得意のドームバンクで盤石の走りを披露してくれるだろう。
成田和也は度重なる落車の影響でタイトル争いから遠ざかっていたが、2月の全日本選抜からGI戦に復帰、6月の高松宮記念杯では新田祐大マークから準優勝と復活を遂げた。8月のオールスターではまたもや落車に見舞われたが、寬仁親王牌では今年2度目の表彰台となり獲得賞金ランキングも10位へ上昇、4年ぶりのグランプリ出場が狙える位置に上がってきた。今大会も新田のスーパーダッシュにしっかり食らいついて勝ち上がっていけば、グランプリ出場はもちろん久しぶりタイトル奪取も決して夢ではないだろう。
平原康多は、今年は2月の全日本選抜を優勝、その後も輪界最強の自在型の名をほしいままにしていたが、後半戦に入ってから急ブレーキがかかってしまい、9月の共同通信社杯はからくも準優勝するも寬仁親王牌では初日に落車に見舞われて準決は7着に敗れており、今大会も万全の状態は期待できないかもしれない。それでも、競輪祭は3年連続、決勝で武田豊樹とワンツー(平原が優勝2回、武田が優勝1回)を決めている相性抜群の大会だけに、今大会も平原らしい巧者ぶりを発揮して勝ち上がり、盟友の武田とともに優勝争いに食い込んでくるだろう。
関東で今最も勢いがあるのが諸橋愛だろう。寬仁親王牌では残念ながら準決で落車となってしまったが、7月の弥彦記念で地元記念初優勝を達成すると、共同通信社杯では平原康多の捲りを差し切ってデビュー20年目にして初のビッグレース優勝を飾り、続く松戸記念は完全優勝とまさに破竹の勢いだった。10月15日現在の獲得賞金ランキングでは8位とグランプリ初出場も視界に入ってきており、今大会でもベテランらしい名マーカーぶりを発揮し、年末の平塚へ向かって突き進んでいくだろう。
復活なった深谷知広がパワー先行で粘り込む
三谷竜生が初心にかえって近畿ラインを引っ張る
深谷知広は寬仁親王牌の決勝は組み立ての甘さから8着と敗れたが、勝ち上がり戦では深谷らしいパワー抜群の走りを披露しており先行力に関しては完全に戻っていると見ていいだろう。初日理事長杯は打鐘からの全開スパートで番手に新田祐大が入る苦しい展開になりながらも逃げ粘っての3着、準決も打鐘先行で2着に粘り込んでいる。昨年の競輪祭も準決を3着で突破と、新田祐大と同様にドームバンクとの相性もいい。10月15日現在の賞金獲得ランキングは7位とグランプリ出場が手に届く位置につけており、今大会もパワー先行での粘り込みを狙ってくる。
浅井康太は今年も年間を通して高いレベルでの安定した走りを続け、獲得賞金ランキングは5位とグランプリ出場をほぼ確実なものにしているといっていい。しかし、浅井は15年のグランプリの優勝はあるが、GIの優勝からはながらく遠ざかっているだけに、賞金ではなくGIを優勝してグランプリ出場を決めたい気持ちが強いはずだ。寬仁親王牌の決勝もイン切りから逃される格好になって8着と大敗を喫しているだけに、今大会ではこれまで以上に気合いをいれてタイトル取りに執念を燃やしてくるだろう。
三谷竜生は5月の日本選手権で初タイトルを獲得したあとは落車が続いて調子落ちになってしまい、寬仁親王牌でも初日特選予選こそは捲りで1着を取っているが、準決は絶好の4番手の位置に収まりながらも捲り不発の9着に敗れている。もちろん三谷はグランプリの出場権を手にしているが、近畿勢では稲垣裕之が賞金獲得ランキング12位、脇本雄太が13位、村上義弘が15位とかなり厳しい状況だ。今大会では自身の調子を取り戻すためにも、近畿勢を1人でも多くグランプリに連れていくためにも、初心にかえっての徹底先行を貫いてくれそうだ。
稲垣裕之は今年前半の全日本選抜、ウィナーズカップ、高松宮記念杯で決勝進出、後半戦に入ってからはビッグレースでの決勝進出はなくなったが、共同通信社杯の準決は村上博幸、稲川翔を連れての気迫の先行勝負で4着(村上1着、稲川2着)、寬仁親王牌の準決も目標の脇本雄太が不発の展開から4着と惜しいところで敗れており状態面での不安はまったくない。寬仁親王牌の4日目特別優秀でも村上義弘を連れての先行勝負に出ており、今大会もグランプリ出場を目指しての気迫の走りで近畿勢を盛り上げていくだろう。
平塚グランプリを目標に南関東勢が結束する
中川誠一郎が今度こその意気込みで優出を狙う
郡司浩平は2月のウィナーズカップでビッグレース初優勝を飾ったが、その後は落車などの影響で失速、10月15日現在の獲得賞金ランキングも11位まで下がり地元・平塚でのグランプリ出場に黄信号が灯ってきた。しかし昨年の例でいえば、競輪祭前までは8位だった平原康多と12位だった武田豊樹が決勝でワンツーを決め、土壇場の大逆転で2人ともクランプリ出場を果たしているので、郡司にもまだ望みはある。寬仁親王牌での走りも決して悪くはなかったので、何が何でもの総力戦に期待したい。
競輪祭は各地の記念開催の成績が選考基準のひとつになっているが、今年の記念で活躍が目立っていたのが南関東勢だ。おかげで今大会の特別選抜予選では関東勢の6人に次ぐ5人が南関東勢から選ばれている。中でも寬仁親王牌での好走が光っていたのが根田空史だ。根田は二次予選で敗れているが、4走のうち3走で主導権を取り切り、逃げ粘りの2着が2回と好成績を残している。寬仁親王牌では岡村潤が決勝進出を果たしているが、今大会も根田を先導役にうまく結束すれば、南関東勢からの決勝進出があるだろう。
地元・九州勢では中川誠一郎の頑張りに期待したい。9月・武雄の共同通信社杯では九州勢から中川、山田英明、坂本亮馬の3人が準決に勝ち上がったが3人とも決勝進出を果たせなかっただけに、今度こその意気込みで地元ファンの声援に応えたいところだ。近況の中川は相変わらず1着か9着かの繰り返しで安定性には欠けるが、寬仁親王牌でも中川、山田、坂本の3人で準決進出、二次予選Bと4日目特別優秀では捲りで勝ち星を挙げており、ツボにはまったときの捲りの威力はやはり絶品だ。
近況急上昇中なのが坂本亮馬だ。共同通信社杯は落車による長期欠場明けだったが、二次予選Bでは先手ラインに攻めていって3番手を取り切り、最後は渡邉一成の捲り追い込みに屈したがバックから捲って2着に入り準決進出。寬仁親王牌も準決で敗れたが、一次予選は逃げ粘りの2着、二次予選Aは同期の早坂秀悟を目標に番手捲りで1着、4日目優秀では脇本雄太-三谷竜生の強力コンビを相手に4番手から先捲りで1着と好成績を挙げており、今大会も前へ前への自在戦法で勝ち上がっていくだろう。
原田研太朗は今年は2月のウィナーズカップ、7月のサマーナイトフェスティバル、8月のオールスターで決勝進出、共同通信社杯も決勝進出はならなかったが、2着、1着の勝ち上がりで準決に駒を進めている。寬仁親王牌では二次予選Bでまさかの敗退、4日間連絡みなしで終わったのが気がかりだが、昨年の競輪祭では準決で9着と敗れたものの残り3走は捲りでオール1着と小倉バンクとの相性が抜群だ。今大会も多少調子落ちになっていたとしても切れ味鋭い大捲りでの逆転一発が侮れない。
2013年 第55回大会 金子貴志
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金子貴志が愛弟子の逃げに乗って2度目のGI制覇
金子貴志は13年7月の寬仁親王牌で弟子の深谷知広の逃げに乗ってGI初優勝を飾ったが、同年の競輪祭決勝でも師弟連係が実現、再び金子が深谷の逃げに乗って2度目のGI制覇を達成した。新田祐大-岩津裕介、深谷知広-金子貴志、平原康多-長塚智広-神山雄一郎、藤木裕-大塚健一郎の並びで周回。残り3周の青板から藤木が上昇して新田に並びかけると、藤木を追って平原も上昇し深谷は8番手まで下げるが、前団の併走はしばらく続く。赤板過ぎの1角で新田がよやく3番手に引くと、打鐘とともに5番手から平原が仕掛ける。合わせて新田が踏み込んで先頭に立つが、岩津が遅れて藤木が新田の後ろに入り、平原は藤木にはじかれて後退。すかさず深谷が最終ホームからカマして2角であっさり出切ってしまう。4番手になった藤木がバックから捲るが車が伸びず、番手絶好の金子が逃げ粘る深谷を捕らえて優勝、深谷が2着、藤木後位から直線伸びた大塚が3着。
表彰
決勝ゴール
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無風の高速バンクで先手ライン有利が基本
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カントが立っているので捲りも決まりやすい
グリーンドーム前橋に次ぐ2番目のドーム競輪場として1998年にリニューアルされた小倉バンクは、天候に左右されることなく常にベストに近い状態で戦えるのが最大の特徴だ。走路も軽くて走りやすくタイムの出やすい高速バンクなので、先行でスピードのある選手に向いている。打鐘から全開でスパートしてもスピードに乗ってマイペースに持ち込めれば、2着、3着に粘り込めるので先手ライン有利が基本となっている。
ただ競輪祭の場合は、開催年によって先手ラインと捲りのラインの有利・不利の比率が変わってくるので注意が必要だ。
15年の大会では先手ラインの選手が1着を取ったのがほぼ半数の23回だったが、昨年の大会では16回と捲りのラインのほうが優勢だった。
ちなみに昨年の決まり手を見てみると、全47レースのうち1着は逃げが6回、捲りが18回、差しが23回、2着は逃げが9回、捲りが10回、差しが16回、マークが12回となっている。
15年の大会では捲りの1着が10回しかなく、まさに基本どおりの先手ライン有利の流れだったが、昨年は捲りごろの展開が多かったのがわかる。
その要因のひとつが追い込み選手たちの頑張りだ。昨年の大会では位置がなかったり後方に追いやられた追い込み選手が、先手ラインの番手に攻めにいったり内に切り込んでいったりしてもつれるレースが多く、結果的には捲りごろの展開になってしまうレースが多かった。
また、競輪祭はラインの選手同士でワンツーが決まるスジ決着が多いのが特徴で、15年の大会では全体の3分の2の31レースがスジで決まっていたが、昨年の大会では勝負どころでもつれるレースが多かったせいか、スジで決着したのはわずかに15回だった。
追い込み選手同士で決着する差し-差しの決着も昨年の大会ではよく出ており、今年も追い込み選手たちの頑張り次第では波乱含みの4日間となるかもしれない。
周長は400m、最大カントは34度01分48秒、見なし直線距離は56.9m。400バンクの中では最もきついカントを有している超高速バンクで、コーナー部分もスムーズに踏み切れるように設計されているので、力のある選手なら7、8番手からでも十分に逆転が可能だ。
小倉競輪場
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