レース展望

第72回日本選手権競輪が平塚競輪場で開催される。3月のウィナーズカップで準優勝ながら武田豊樹と見事にワンツーフィニッシュを決めた輪界最強の自在型・平原康多を中心に推すが、ウィナーズカップではまさかの準決敗退となったスピードスター・新田祐大の巻き返しや、今年に入って急速に復調してきた昨年覇者の三谷竜生の連覇にも注目が集まる。地元開催のウィナーズカップで4人が決勝進出と勢いに乗った中四国勢も侮れず、待ちに待った地元開催に闘志を燃やす南関東勢の頑張りにも大いに期待したい。
平原康多が最強の自在戦法で初優勝を狙う
 復調なった三谷竜生の連覇達成に期待
平原康多選手
平原康多 埼玉 87期
3月のウィナーズカップは平原康多と武田豊樹の黄金コンビのワンツーフィニッシュで幕を閉じた。平原は勝ち上がり段階では勝ち星がなく、直前の名古屋記念での落車の影響があったのか体調的には万全とはいえない様子だったが、これまで培ってきた決して後手を踏まない勝ち上がりのテクニックを駆使して決勝へコマを進めた。決勝も前団がもつれていただけにもう少し仕掛けを遅らせれば平原の優勝があったかもしれないが、平原らしい早めの巻き返しで武田とワンツーフィニッシュをしており、今大会も最強の自在型の称号にふさわしい攻めの走りで日本選手権初制覇を狙ってくるだろう。
吉田拓矢選手
吉田拓矢 茨城 107期
関東では吉田拓矢が復調気配だ。昨年6月の高松宮記念杯でGI初優出を決めたあとは壁にぶち当たってしまった印象があり、今年2月の全日本選抜も二次予選で敗れている。それでも、4走のうち3走で主導権取りと吉田らしい積極的な走りが戻ってきており、次場所の静岡記念の準決でも平原康多を連れてのカマシ先行でワンツーを決めている。ウィナーズカップも決勝進出はならなかったが、準決では結果として、平原康多の勝ち上がりに貢献している。今が伸び盛りの若手選手だけに、昨年の三谷竜生のように、吉田も大化けの可能性は十分にありそうだ。
三谷竜生選手
三谷竜生 奈良 101期
三谷竜生は昨年の大会でGI初制覇を飾ったが、その後はダービー王の称号のプレッシャーに押しつぶされて不振に陥った。しかし、今年は2月の全日本選抜こそは二次予選敗退に終わったが、2月の高知、奈良、3月の玉野と記念3連覇を達成、ウィナーズカップも無傷の3連勝で決勝進出と急速に復調してきた。とりわけ初日の特別選抜予選ではいったんは平原康多に捲られながらゴール前で差し返して1着と、昨年の決勝を彷彿とさせる勝負強さを見せつけており、昨年以上にパワーアップした三谷の日本選手権連覇が期待できるだろう。
古性優作選手
古性優作 大阪 100期
近畿では古性優作が快進撃を続けている。2月の全日本選抜の二次予選では4番手を取っての追い込みで2着、古性追走の稲垣裕之が1着の近畿ワンツー、準決では逃げる吉澤純平の番手に飛びついての2着で2度目のGI優出を決めた。続く静岡記念の決勝では吉田拓矢ー平原康多ー神山拓弥の強力関東ラインを相手におはこを奪う中団取りに成功、最終2角から捲ると番手追走の村上義弘の猛追を振り切って4度目の記念優勝を達成した。村上義弘や稲垣裕之に前を任されているのは近畿勢の中でも強さを認められている証拠であり、今大会でも大暴れがありそうだ。
新田祐大が本領発揮のスピードで巻き返す
 南関東勢が今年こそはグランプリ出場を目指す
新田祐大選手
新田祐大 福島 90期
3月のウィナーズカップで大きな注目を集めたのは新田祐大らナショナルチーム組の思わぬ不振だ。4日間天候に恵まれずバンクが重かったせいもあるが、新田祐大や深谷知広らはウィナーズカップが今年初出走でレース勘が鈍っていたのが大きな原因だろう。今は東京五輪を目指し、カーボンフレームで大ギアをブン回しながらハードトレーニングに取り組んでいるだけに、いきなりの競輪フレームではどうしても力を発揮しきれない部分があるのかもしれない。ガールズコレクションを制した小林優香が「ギアがスカスカで……」と、優勝インタビューで話していたのが印象的だった。今大会も自転車競技組の動向には注意が必要だろう。
それでも、潜在的なスピード値では新田祐大が間違いなくナンバーワンだ。2月の全日本選抜決勝では最終3角8番手から仕掛け、古性優作-村上義弘-村上博幸の強力2段駆けラインを粉砕している。ウィナーズカップも決勝進出は逃したが、二次予選は最終ホーム8番手から仕掛け、雨走路の中でもきれいに捲りきって上がりは11秒2、4日目特別優秀では脇本雄太の逃げを3番手から捲り切っており、やはり新田の強さは別格だ。今大会もウィナーズカップ以来の出走となるが、必ずやファンの期待を裏切らない走りを見せてくれることだろう。
郡司浩平選手
郡司浩平 神奈川 99期
地元開催のGIに闘志を燃やすのが南関東勢だ。同じく平塚で開催された年末のグランプリには南関東の選手の名前はなかったが、今年のグランプリも静岡で開催されるので今年こそは気持ちが強いはずだ。中でも郡司浩平は昨年最後の最後までグランプリの出場権争いを演じていただけに、今大会では南関東の若きエースとしての活躍が期待できるだろう。郡司は今年も1月の名古屋FI、3月の岸和田FIと落車が続いてなかなか波に乗り切れないが、3月の小松島GIIIの準決では得意の捲りで番手追走の神山拓弥とワンツーを決めており調子は悪くない。
山中秀将選手
山中秀将 千葉 95期
山中秀将の捲りも強烈だ。山中は昨年11月の競輪祭でGI初優出を決めてワンランクアップの強さと自信を手に入れた。今年2月の全日本選抜では優出こそならなかったが、一次予選は捲りで渡邉晴智とワンツー、二次予選も三谷竜生の先行を捲って和田健太郎とワンツーと、その破壊力ある捲りはGI上位でもしっかり通用している。3月のウィナーズカップも二次予選で敗れはしたが、一次予選は新山響平の逃げを7番手から捲って1着、3日目選抜も7番手から捲って1着と2勝を挙げている。
浅井康太が平塚バンクで再び頂点に立つ
 好機到来、原田研太朗がタイトル奪取に挑む
浅井康太選手
浅井康太 三重 90期
浅井康太は昨年平塚で開催されたグランプリの覇者だ。もちろん平塚バンクとの相性は抜群で、GI最高峰の日本選手権で再び頂点を取りにいく。浅井はホームバンクで開催された2月の全日本選抜では二次予選敗退で途中欠場と地元ファンの期待を裏切ってしまった。しかし、3月の名古屋記念決勝では番手捲りの村上義弘と壮絶なもがき合いを演じ、自身は6着に沈んだが吉田敏洋を2度目の地元優勝に導いてファンの喝采を浴びている。続くウィナーズカップも優勝こそならなかったが、1、2、1着の勝ち上がりとグランプリ覇者にふさわしい走りを見せており調子は万全だ。
松山で開催されたウィナーズカップでは準決3個レースで取鳥雄吾、小川真太郎、清水裕友の中四国の若手が大逃走を敢行、おかげで地元勢は4人も決勝進出を果たした。決勝は三谷竜生の意表を突いた分断策にあって優勝には手が届かなかったが、中四国勢がいま勢いに乗っているのはまちがいない。今大会も上記の3人以外にもウィナーズカップの勝ち上がり戦で大逃げを打った原田研太朗、太田竜馬、才迫開ら6人の先行選手が出場予定とかつてないほどの充実ぶり見せており、再び中四国勢からの大量優出が大いに期待できるだろう。
原田研太朗選手
原田研太朗 徳島 98期
原田研太朗は昨年後半から不振にあえいでいたが、今年2月の全日本選抜で昨年8月のオールスター以来のGI優出を決めて復活を遂げた。ウィナーズカップも初日特別選抜予選こそは才迫開-小川真太郎-原田研太朗の並びで結束するも平原康多の捲りに粉砕されてしまったが、二次予選は逃げての2着で渡部哲男とワンツー、準決は小川真太郎の先行に乗り、バックからの番手捲りで押し切っている。今や若手機動力型の宝庫となった中四国勢のエースとして、原田はこの好機を逃さずに悲願のタイトル奪取に向かって突き進んでいく。
山田英明選手
山田英明 佐賀 89期
九州勢では山田英明のタイトル奪取に期待が掛かる。山田は昨年の日本選手権でGI初優出を達成しており、日本選手権はゲンのいい大会だ。昨年の後半戦は落車などの影響でやや調子落ちになっていたが、今年2月の全日本選抜では捲りの3連勝で3度目のGI優出を決め、いまやトップクラスが相手のGIでも決して力負けしていないことを証明してみせた。ウィナーズカップは不出場だったが、3月の小松島GIIIでは初日特選が逃げ切り、準決と決勝が捲りの3連勝でGIII初優勝を飾っており、GIタイトル奪取も目前に迫っているといっていいだろう。
思い出のレース
2013年 第66回大会 村上義弘
単騎戦の村上義弘が2度目のダービー制覇
深谷知広、村上義弘の単騎の2人が前受け、5人揃った北日本勢が佐藤友和-菊地圭尚-山崎芳仁-成田和也-佐藤慎太郎の並びで続き、牛山貴広-武田豊樹の茨城コンビが後攻めで周回を重ねる。青板ホームから牛山が上昇して佐藤を押さえると、佐藤は3番手に引く。牛山は青板バック過ぎから誘導を下ろして先頭に立つが、すぐさま佐藤が叩き返して主導権を奪い、打鐘前からハイペースの流れとなる。そのとき、山崎が佐藤の仕掛けに踏み遅れ、茨城コンビが菊地の後ろにはまり、村上が巧みに武田の後ろにスイッチ、深谷は9番手となる。打鐘で牛山が仕掛けるが、菊地に弾かれて後退。縦長の一本棒のまま最終ホームを通過し、2角手前から菊地が番手捲りを打つが、すかさず武田が菊地の上を捲ってバックを先頭で通過する。村上、山崎の順で続き、後方から深谷も迫ってくるが、最後の直線で鋭く抜け出した村上が先頭でゴールイン、大外伸びた深谷が2着、山崎が3着。
ゴール
ゴール
表彰
表彰

標準的な400バンクで先手有利が基本
早めの巻き返しなら捲りも決まりやすい
平塚では年末にグランプリシリーズが開催されたが、3日間全33レースの決まり手を見てみると、1着は逃げが5回、捲りが10回、差しが18回、2着は逃げが3回、捲りが6回、差しが8回、マークが16回となっている。
カントも直線も標準的な400バンクで、走路もクセがなくて走りやすいので戦法的な有利・不利はなく力どおりの決着になるレースが多い。
グランプリシリーズの3日間は好天に恵まれ風も穏やかだったので、全体的に自力選手の活躍が目立っていた。とりわけ28日の初日はガールズグランプリを除く10個レースで逃げ切りが3回、捲りの1着が5回となっており、差しの1着は2回のみだった。
初日の2、7、8Rではともに先行選手が打鐘から仕掛けて最終ホーム前で先頭に立ち、そのままマイペースで駆けて逃げ切っている。コーナーのカントが浅めなので先行は2角からバックにかけて踏み切ってしまえば3角で捲りを止めることができるので、積極性の高い先行選手にとっては走りやすいバンクといえる。
同じく初日の6Rでは伊藤裕貴が7番手になったが、打鐘過ぎから早めに巻き返し、最終2角で捲り切ってそのまま押し切っている。カントが浅くて捲りにくく、捲りは中団取りが絶対条件といわれているが、早め早めの巻き返しならば後方からの逆転も十分可能だ。
一転して2日目は予選を勝ち上がった自力選手同士が準決でぶつかったため、ヤンググランプリを含む11個レースは波乱模様の決着となった。11個レースのうち自力選手の1着は1回だけで、残りはすべて1着の決まり手が差しだった。
2日目5Rは先手の番手の新井秀明が差して1着、7番手から中コースを伸びてきた萩原孝之が2着、8Rは3番手から中コースを追い込んだ松岡貴久が1着、5番手から内コースを伸びた北野武史が2着となっている。直線ではとくに伸びるコースはないが、力のある選手ならどのコースを取ってもゴール前でひと伸びする印象のあるバンクだ。


周長は400m、見なし直線距離は54.2m、最大カントは31度28分37秒。メインスタンドが50年ぶりに建て直されて昨年6月にリニューアルオープン、場内やバンクが見違えるほどきれいに生まれ変わった。軽い走路でタイムも出やすいが、バック側に相模川があり海も近いので、海風が吹きつけると一気にバンクが重くなることもある。
平塚バンク
平塚バンク