レース直前展望
別府八湯というほど別府の町は温泉であふれています。高台から別府の町をみると温泉の湯けむりがそこかしこから吹き上がっているのが見えるのです。その別府の町で第34回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)が行われます。
2019年の始めのGI王者そして、平成最後のGI王者が決まる。
と堅っ苦しい事はおいて、時間が取れればぜひ、別府のお湯と美味しいものを別府で楽しみましょう。海の幸は無論、別府冷麺、焼肉がうまいですよ!
浅井康太 三重 90期
グランプリは逃したものの、変わらず好調なのが浅井康太だろう。直前の松阪記念でも、負けたものの動きは非常に良かった。番手は無論、自力で動いた時の浅井の強さは目を見張るものがある。今開催も動きは良さそうなので、注目していきたい。
平原康多 埼玉 87期
2018年は肉体改造に力を入れた1年であった。ナショナルチーム対策と思われるので、そのパワーをいかんなく発揮して2019年の平原は大暴れしてくれそうだ。当然、ここも優勝候補の一角だろう。過去2回優勝しているこの大会で、3回目の優勝を狙ってくる。
清水裕友 山口 105期
シンデレラボーイは今年も活躍するだろう。本物になるのか。これで終わるのかというところで、立川記念で優勝を決めているので、今年もやってくれるでしょう。度胸の据わった競走スタイルは、ファンを熱くさせてくれるはず。ここも大いに賑わしてほしい。
太田竜馬 徳島 109期
今年に入りFI2回優勝しているのが太田だ。ヤンググランプリを優勝し、波に乗った形。今、中国、四国が大型若手選手を大量に排出し、勢力をこれまでにないぐらい伸ばしている。この機に乗って一気にブレイクするのが太田だ。四国のトップに立つことができるのかここが試金石となる。
今年最初のGI・第34回全日本選抜競輪が大分県の別府競輪場で開催される。昨年の競輪界を席巻した先行日本一の脇本雄太と昨年の大会覇者の新田祐大の両雄が不在となっただけに、今大会は波乱含みのシリーズとなりそうだ。グランプリ覇者の三谷竜生が昨年の近畿旋風をキープして貫禄を見せつけられるか、関東のエース・平原康多の反撃はどうかが一番の見どころだろう。もちろんグランプリ準優勝の浅井康太の競輪祭に続いてのGI連覇も十分で、清水裕友、太田竜馬、山崎賢人らのヤングパワーの台頭にも注目が集まる。
三谷竜生が王者の走りで近畿ラインを先導する
巻き返しを誓う平原康多の走りに大注目
昨年は近畿旋風が競輪界に吹き荒れた1年だった。6大会のGIのうち三谷竜生と脇本雄太がともに2個ずつタイトルを獲得、年末のグランプリも脇本の先行に乗った三谷が初優勝を決めて1年を締めくくった。今年も近畿旋風が続いていくのか、それとも平原康多率いる関東や浅井康太率いる中部が近畿に待ったをかけることができるかどうかが今年前半のタイトル戦線の見どころになるだろう。
そしてもう一つの大きな流れはヤングパワーの台頭だ。昨年後半から清水裕友、山崎賢人、太田竜馬らがビッグレースでも優勝争いに食い込んでくるほどに急成長、今大会の結果次第では世代交代が一気に加速する可能性も十分だ。
三谷竜生 奈良 101期
三谷竜生は昨年は日本選手権、高松宮記念杯、そしてグランプリを制し、初の賞金王に輝くと同時に年間獲得額の記録を更新した。3タイトルとも脇本雄太の先行に乗っての優勝だったが、先行日本一の脇本の番手は最も優勝に近い位置であると同時最も狙われやすい位置でもあり、賞金王への道のりは決して生易しいものではなかったはずだ。脇本の番手をしっかり守りきり差し切った走りはやはり新王者の名にふさわしいものだった。今大会は脇本が不在だが、S級S班に返り咲いた義弘と博幸の村上兄弟の援護を受けながら三谷が近畿ラインをしっかり先導して王者の貫禄を見せつけるだろう。
平原康多 埼玉 87期
平原康多は昨年はスピード競輪に対応すべく試行錯誤を繰り返した1年となり、3年ぶりにGIタイトルゼロに終わってしまった。それでも、9月の共同通信社杯では台頭するヤングパワーを蹴散らして優勝とさすがの底力を見せていた。果たして今年の平原はどう出るのか。スピード競輪に負けないようにさらなる脚力アップを図るのか、それとも類まれなる自在戦法にますますの磨きをかけていくのか。今年の初のGIである今大会での平原の走りは大きな注目となるだろうし、その結果次第では今後の競輪競走の行方が決定されるといっても過言ではないだろう。
武田豊樹 茨城 88期
武田豊樹は昨年は3月のウィナーズカップで久しぶりのビッグレース優勝を飾ったが、後半戦に入ってからは4回の落車に見舞われて思うように調子が上がらず、グランプリも6着に終わってしまった。しかし、武田も平原と同様に今後の競輪界を占う上でのキーマンの1人であることはまちがいない。近況の調子から今大会もあまり多くは望めないかもしれないが、武田がこのままずるずると後退していくとは考えにくく、復活を目指しての力強い走りを期待してみたい。
浅井康太が得意の自在戦でGI連覇を狙う
山田英明が競輪祭の悔しさをバネに奮起する
浅井康太 三重 90期
浅井康太は競輪祭では脇本雄太ラインの3番手からインを突き、ゴール前では逃げ粘る脇本を差し切って実に7年ぶりのGI優勝を成し遂げた。グランプリでは平原康多-武田豊樹の関東コンビの後ろから競走となり結果的には最終バック8番手の展開となってしまったが、そこから捲り追い込んで2着と引き続きの調子の良さを印象づけた。関東コンビがもう1車前にいれば、あわやと思わせるような力強い走りだった。浅井は周回中はなるべく脚を使わず、一瞬のチャンスに全パワーを爆発させる走りが多く、それが現在のスピード競輪に対応する一つの解答なのかもしれない。今大会も浅井らしい自在な走りで勝機を見出してくるだろう。
山崎賢人 長崎 111期
九州勢にとってはここは絶対に負けられないシリーズだ。昨年の競輪祭では九州からの優出者がゼロに終わっているだけに、引き続きの地元戦で同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。幸い山崎賢人という超新星が出現してきただけにチャンスは十分で、地元ファンの熱い声援を受けながら優勝を目指して突き進んでいくだろう。山崎は新鋭らしく組み立ての甘さが出てここぞというときに大敗するケースもあるが、別府がホームバンクの大塚健一郎を始めとする九州の名マーカーたちがしっかり山崎を援護・誘導していけば、ラインで揃っての決勝進出が期待できるはずだ。
山田英明 佐賀 89期
九州のもうひとりの注目選手は山田英明だろう。昨年は全日本選抜、高松宮記念杯、共同通信社杯で優出、タイトルに最も近い男の1人との評価を受けているが、後半戦に入ってから徐々に調子が下降線をたどり結局はビッグレース優勝に手が届かなかった。競輪祭の準決では山崎賢人の番手で三谷竜生との競りになり、なんとか競り勝って番手を守りきったがそこで力尽きて5着と悔しい思いをしているだけに、今大会はなにがなんでも負けられない奮起戦となる。体調的にはまだ万全とはいえないかもしれないが、競輪祭での悔しさをバネに決勝進出を目指してくる。
新山響平 青森 107期
北日本は昨年大会の覇者である新田祐大が不在だが、清水裕友、山崎賢人、太田竜馬らの台頭で目が覚めたのか、新山響平が近況は初心に返って大逃走を繰り返しており、渡邉一成や山崎芳仁らにも決勝進出のチャンスが十分に巡ってきそうだ。新山は競輪祭は準決で5着と敗れたが、平原康多、清水裕友らを相手に打鐘からの堂々の逃げっぷりは高く評価されてもいいだろう。12月の佐世保記念決勝では五十嵐力との2車のラインながら、やはり打鐘から迷いなく先行して五十嵐の優勝に貢献しており、今大会でも新山の大逃走劇がシリーズを盛り上げてくれそうだ。
清水裕友がS級S班の名に恥じない走りを見せる
中村浩士を始めとする南関東勢の一発が侮れない
今最も盛り上がっている地区は中・四国だろう。清水裕友が競輪祭決勝で3着に入りグランプリ初出場を果たす大出世、太田竜馬がヤンググランプリを優勝とムードは最高だ。
清水裕友 山口 105期
清水裕友は10月の共同通信社杯でビッグ初優出を決めて準優勝と大健闘、その後も寬仁親王牌、競輪祭で連続優出と乗りに乗っている。さすがにグランプリではトップレーサーたちとの力の差を感じずにはいられなかったが、その差は決して大きくはなさそうだ。それが証拠に新年一発目の立川記念決勝では竹内雄作-浅井康太の中部コンビの後ろを追走、直線で鋭く追い込んで浅井を抜き去り今年初優勝を決めている。まるで浅井のお株を奪うようなクレバーな走りと勝負強さは今後の活躍を大いに期待させてくれるし、今大会もS級S班の名に恥じない走りを見せてくれるだろう。
太田竜馬 徳島 109期
太田竜馬は昨年の共同通信社杯でビッグレース初優出を決めた。結果は残念ながら斜行による失格に終わり、その後もやや調子落ちになってしまったが、競輪祭の準決では8番手からの大捲りを決めて上がりタイムは11秒1、マークの香川雄介ともに決勝進出を果たす強い走りを見せた。そしてヤンググランプリでは勝負どころで8番手の展開となってしまったが、そこから冷静にコースを見極めて捲り追い込み見事に昨年のリベンジを果たしている。新年一発目の武雄F1では堂々の完全優勝と完全に上昇気流に乗っており、今大会も四国勢を連れて勝ち上がっていくだろう。
中村浩士 千葉 79期
南関東勢は個々の選手の力は他地区の選手たちに決して引けを取るものではないが、ビッグレースとなるとライン的にやや劣勢の印象がつきまとい苦戦が続いている。それでも昨年は山中秀将が日本選手権で優出、中村浩土がオールスターとサマーナイトフェスティバルで優出、郡司浩平が共同通信社杯で優出しており決して侮れない。とりわけ中村浩士は40歳のベテランながら南関東地区の競走得点第1位で今大会に選抜されており、中村らしい手堅い走りで活躍してくれそうだ。
郡司浩平 神奈川 99期
自力選手ではやはり郡司浩平が狙い目だ。競輪祭では勝ち上がりに失敗したが、直前の防府記念では3連勝の勝ち上がりで準優勝、12月の伊東温泉記念も3連勝で勝ち上がり、決勝は地元の渡邉雄太を連れて赤板先行を敢行し渡邉を優勝に導いている。一時期の低迷を完全に脱して急上昇中といっていい。以前は思い切りの悪さからポカをするケースがよく見られたが、現在は勝負どころで迷いなく仕掛けており、今大会でもトップレーサーたちを相手にアッと驚くような大駆けが見られるだろう。
思い出のレース 2014年 第29回大会 村上博幸
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インを突いた村上博幸が直線鋭く伸びて優勝
高松競輪場で2月に開催された第29回大会は降雪のために初日が順延となり、勝ち上がり戦でも上位陣が次々と脱落していく波乱のシリーズとなり、決勝戦も大量落車のアクシデントに見舞われたが、落車を避けて直線鋭く追い込んだ村上博幸が優勝している。レースは新田祐大-齋藤登志信の北日本コンビが前受け、3番手以降は平原康多-神山雄一郎、浅井康太-山賀雅仁、脇本雄太-松岡健介-村上博幸の並びで周回を重ねる。レースが動いたのは赤板過ぎからで、車間を切ってタイミングをはかっていた脇本が一気に踏み上げて2コーナーで先頭に立つ。新田も合わせて踏んでいたが、打鐘を迎えて引けなくなると脇本の番手のインで粘る。新田は2センターで番手を取りきり、松岡が3番手、村上が4番手となる。すかさず最終ホーム5番手から平原が捲りを打って前団に迫り、合わせて番手から発進した新田と両者のもがき合いとなる。しかし、4コーナーで新田が平原を押し上げると、平原、神山、浅井の3人が落車、そこで空いたインに村上が突っ込んで先頭でゴール、2着入線の新田は失格となり、松岡が2着、齋藤が3着に繰り上がる。
表彰
ゴール
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バンクの特徴 海が近く、とくに冬場は風の影響が強い
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直線は長めだが、自力選手がやや有利
別府は直線がやや長めの400バンクで、走路もこれといったクセのない平均的なバンクだ。ただ、バックストレッチ側が道路を挟んで海に面しているので風の影響が強いのが一番の特徴となっている。
季節を問わず風が吹くが、とくに冬場は風が強くタイムが上がらない。風の影響が強いと追い込み選手が有利の印象があるが、別府はとくに伸びるコースはないし、勝負どころで隊列が乱れると追い込み選手がもろに風を受けるので必ずしも追い込み有利とはならない。
17年12月に開催された記念の最終日は天候は曇のち晴れで風速は3メートルだったが、12レースのうち上がりタイムが12秒台が8個、13秒台が3個で、唯一11秒台の上がりを記録したのが特別レースのエボリューションだけだった。
しかも追い込みの1着は1個だけで、4Rでは佐藤友和が13秒2の上がりで逃げ切っているし、決勝は田中晴基が4番手から捲って優勝しているが上がりは12秒5だ。5Rでは中川誠一郎が唯一追い込みで勝っているが、これも上がりが13秒4とガールズ並のタイムだった。あの中川にしてこのタイムなのだから、風の影響が想像以上に強いことがわかるだろう。
今回の全日本選抜も冬場の2月開催なので、走る選手も車券を買うファンも風の影響には十分注意が必要だ。
ちなみに4日間全47レース(エボリューション1個レースを除く)の決まり手を見てみると、1着は逃げが11回、捲りが19回、差しが17回、2着は逃げが8回、捲りが10回、差しが9回、マークが20回となっている。
直線の長いバンクだが決して追い込み有利となっていない。1着の差しの回数が捲りの回数より少ないのは全国の競輪場の中でもかなり珍しいケースだ。しかも前述のとおり13秒台の上がりタイムでも逃げ切れるので、逃げの決まり手が目立っている。
ラインの選手同士で決まるスジ決着が多いのも特徴で、半数以上の29レースがスジで決着していた。
別府競輪場
周長は400m、最大カントは33度41分24秒、見なし直線距離は59.9m。別府は日本一の規模を誇る温泉街として有名だが、競輪場の駐車場の真ん中にも温泉施設がある。直線は長めだが、とくに伸びるコースはないのでゴール前での逆転劇が少なく、逃げ選手はペースをつかんで駆ければしっかり粘り込める。捲りはもちろん中団が理想だが、全体のペースが上がらないので力のある選手ならば7、8番手からでも捲り切れる。
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