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読売新聞社杯全日本選抜競輪直前展望
2020年がやってきましたね。東京オリンピックの年。そして6か月前となりました。競輪選手たちがしっかりとメダルを獲得するところを見ていきましょう!
さて今年もGIは読売新聞社杯全日本選抜競輪からスタートです。
ここを勝てば、2020年の残り10か月ちょっと気持ち的にリラックスして走れる重要なレースです。冬場の重いバンクをパワーで押し切る選手たちに注目したいと思います。
地区的には若手先行からベテラン追い込み選手までラインが厚い中四国地区が席巻しそうですが、グランプリ王者佐藤慎太郎を擁する北日本地区の活性化などにも注目したいですね。
また昨年の寬仁親王牌で失格し、この全日本選抜競輪が出場停止明けの開催となる山崎賢人にも注目したいですね。ナショナルBチーム入りし、伊豆に拠点を移した成果をここで存分にみせてほしいと思います。
注目選手

清水裕友 山口 105期
2020年初っ端の立川記念競輪を勝ったのが清水裕友。この立川記念を優勝するとその年は大活躍するというジンクスがあったと思います。とは関係なく、決勝は良いタイミングの捲り発進でした。そのあとのいわき平記念の準決勝でのレース内容が気になりますが、前が出切れないことには苦しい展開になりますよね。しかし中国の2枚看板の一人としてこの全日本選抜競輪では大活躍の期待大です。

平原康多 埼玉 87期
立川記念決勝では、4番手から動けずでしたが、大宮記念では、うまく動いて3番手確保からの追い込みで優勝しましたね。平原らしいレースだったと思います。今大会だと関東の先行選手との連携となると思いますが、自力で動く場面がありそうですね。他地区の強力先行を相手にするときに、どのようなレースを見せるのか、そこがポイントになってくるでしょう。平原らしいクレバーなレースを見せてほしいですね。

松浦悠士 広島 98期
波に乗っていますね。和歌山記念決勝の豪快な捲りは、タイミングが良かったとはいえ、けん制されないように外々回って伸びて1着ですから、強いです。今、清水裕友と連携したら本当に強さを発揮するのではないかと思います。決勝での中国ラインのワンツーが実現できるかどうか見たいところですね。また、捲るだけではなく、自在戦にも期待したいと思います。色々な戦法を駆使しての勝利を見たいですね。

松井宏佑 神奈川 113期
ワールドカップ2019-2020シーズンで唯一の男子ケイリンメダリストの松井に期待したいと思います。ヤンググランプリの3着はよく3着に届いたなというパワフルなものでした。また1月に行われたワールドカップ・カナダ大会決勝5位はセンスを感じるものでした。日本の競輪はライン戦でもあるため、難しいところもあるとは思いますが、持ち味の巧さ、パワーを活かした競走で上位進出をぜひ見せてほしいですね。
第35回全日本選抜競輪(GI)展望
今年最初のビッグレース・第35回全日本選抜競輪が愛知県の豊橋競輪場で開催される。脇本雄太、新田祐大らのナショナルチームが不在で各地区の機動力はほぼ互角と見てよく、各地区の精鋭たちががっぷり四つに組んでの激戦が展開されるだろう。舞台となる豊橋は立川よりも直線が長くカントが立っているので追い込み有利であり、年末のグランプリを制した佐藤慎太郎に刺激を受けたベテラン勢の頑張りも大いに期待できる。
佐藤慎太郎が円熟の技で競輪の醍醐味を披露する
清水裕友がタイトル奪取に向かって突っ走る
 昨年末のグランプリはメンバー中最年長の佐藤慎太郎が初優勝を決めた。圧倒的な先行力で脇本雄太が主導権を握ると、新田祐大が鋭いダッシュ力で番手に飛びつくという、まさに現在の競輪界を象徴するようなハイレベルのスピードバトルとなったが、最後に勝利の女神が微笑んだのは脇本と新田の中を割った佐藤だった。スピードだけでは勝てないという競輪の醍醐味を改めて全国のファンに知らしめた名勝負だった。今大会の舞台となる豊橋は見なし直線距離が立川以上に長くて追い込み有利のバンクであり、43歳の佐藤慎太郎の優勝に刺激されたベテラン勢の活躍が数多く見られることになるだろう。

佐藤慎太郎 福島 78期
 佐藤慎太郎は昨年の全日本選抜決勝では北日本からただ1人の勝ち上がりだったが、吉澤純平-武田豊樹の茨城コンビの3番手を選択、逃げる中川誠一郎を追った茨城コンビの後ろから直線で中川と吉澤の中を割って2着(優勝は中川)に突っ込みベテランの技と鋭さを見せつけている。今大会は新田祐大が不在だが、北日本には新山響平、小松崎大地、菅田壱道、渡邉一成らの頼れる自力選手が揃っているし、仮に北日本の目標が不在のレースになったとしても、昨年同様にベテランの臭覚で好位置を確保して直線強襲を披露してくれるだろう。

清水裕友 山口 105期
 全日本選抜は各都道府県の成績上位者から出場選手が選抜されるシステムだが、今最も勢いがあるのが中・四国地区だろう。昨年の競輪祭決勝でワンツーを決めた清水裕友と松浦悠士の2人がS級S班入り、年末のヤンググランプリでは前年の太田竜馬に続いて松本貴治が優勝と勢いが止まらない。清水裕友はグランプリでは勝負どころで佐藤慎太郎から絶妙な牽制を受け仕掛け遅れて5着に終わったが、年明けの立川記念決勝では佐々木豪の先行を目標に番手捲りで連覇を達成と引き続き好調だ。2年連続のS級S班入りで今や新世代の旗手となった清水が悲願のタイトル奪取に向けて今大会もアクセル全開で突っ走る。

松浦悠士 広島 98期
 松浦悠士は昨年の全日本選抜でGI初優出決める3月・ウィナーズカップ、5月・日本選手権、7月・サマーナイトフェスティバルで優出とビッグレースで実績を重ね、11月・競輪祭決勝では清水裕友の捲りを差して初タイトルと昨年1年間で驚異的な成長を遂げた。もちろんその原動力は同地区に清水裕友という強い若手が現れたことだ。清水に離れず、清水を差すことを念頭に練習を積み重ねてきた成果が競輪祭の優勝だったと言っていいだろう。さすがの強心臓の松浦も初出場のグランプリでは見せ場なく終わってしまったが、今大会では再び清水との好タッグを見せてくれるだろう。
地元戦に強い柴崎淳が中部を牽引する
平原康多がGPの悔しさをバネに巻き返す

柴崎 淳 三重 91期
 地元中部は昨年ビッグレースで他地区の攻勢に押され気味の印象が強かった。エース格の浅井康太も11月・別府記念の落車の影響で長期欠場中。体調面に不安が残る状態だ。その代わりと言ったら語弊があるかもしれないが、ここへきて成績が急上昇しているのが柴崎淳だ。昨年はGIでの優出こそなかったが9月・松阪の共同通信社杯で優出、10月・寬仁親王牌は準決で敗れたが予選は捲りの2連勝、11月のホームバンクの四日市記念では2、1、1、1着の準パーフェクトで優勝、続く競輪祭も準決で敗れたが予選は捲りの3連勝だ。地元戦にはめっぽう強い柴崎が今大会も鋭い捲りを連発して中部復活の狼煙を上げる。

金子貴志 愛知 75期
 豊橋のエースは44歳になった現在も健在ぶりを見せている金子貴志だ。9月・共同通信社杯では一次予選は吉田敏洋の7番手捲りを差して1着、二次予選Aは山崎賢人の先行を差して1着、準決も山崎賢人目標から2着に入って決勝進出を決めている。7月のいわき平FI決勝では山崎芳仁との捲くり合戦で準優勝と自力もまだまだ衰えていない。ちなみに金子は上がりタイム10秒5の豊橋のバンクレコード保持者だ。もちろん43歳の佐藤慎太郎のグランプリ優勝に大きな刺激を受けているはずで、今大会では地元ファンの熱い声援に後押しされながら決勝進出を目指してくる。

平原康多 埼玉 87期
 平原康多はグランプリでは勝負どころで8番手に置かれてしまったが、そこから死力を尽くしての大捲りを打って3着とさすがの底力を見せた。しかし「もうちょっと直線があれば……」と、いつもは冷静な平原らしからぬタラレバのコメントを残しており、その悔しさはファンが想像する以上のものがあったようだ。その悔しさをバネに今年は必ずやの巻き返しを図ってくるだろう。昨年はスピード競輪に対応すべく試行錯誤を繰り返して自分らしさを見失っていた印象があるが、昨年の競輪祭からこれぞ平原という走りが戻ってきており、今大会では3度目の全日本選抜制覇が十分に期待できる。

吉田拓矢 茨城 107期
 関東では吉田拓矢が本格化してきた。11月・競輪祭では予選1、2は捲りで連勝、4日目のダイヤモンドレースからは本来の徹底先行へと戻り、準決、決勝も先行して3着、3着、8着の成績。決勝は番手の平原康多が清水裕友に捌かれ、清水に番手捲りを打たれたために大敗となってしまったが、6日間を通して「関東に吉田拓矢あり」を全国のファンに強烈にアピールできたことはまちがいない。競輪祭では吉澤純平も優出こそなかったが準決で先行して平原康多の勝ち上がりに貢献しており、今大会でも関東復活のためにしっかりと結束力を固めてくるだろう。
村上博幸が近畿の結束力で再び頂点を目指す
郡司浩平が地元グランプリに向けて疾走する

村上博幸 京都 86期
 村上博幸はグランプリでは脇本雄太の番手を捌かれて9着に終わったが、昨年はGI、GIIを1回ずつ、GIIIを2回優勝しており、年間を通して年齢を感じさせないハイレベルの戦いを演じてきた。10月・寬仁親王牌では4日間三谷竜生と連携、決勝では三谷の逃げをズブリと差して5年ぶり3度目のGIタイトルを獲得、グランプリ制覇の佐藤慎太郎と同様にこれぞ競輪という気迫溢れる走りを見せた。今大会もS級S班の誇りを胸に、三谷竜生ら近畿の自力型との連携から追い込み型復権の最高のパフォーマンスを演じてくれるだろう。

三谷竜生 奈良 101期
 三谷竜生は昨年の前半は度重なる落車の影響で低調だったが、10月・松戸で記念優勝を飾ってから急上昇、松戸が2日間順延となったために中2日の強行スケジュールで参戦した寬仁親王牌では見事に優出、決勝では思い切りよく先行して村上博幸とワンツーを決め復活を力強くアピールした。11月・競輪祭では準決で5着に敗れてグランプリ出場はかなわなかったが、12月・伊東温泉記念決勝では捲りで村上義弘とワンツーを決め2度目の優勝を飾っており、今大会も村上兄弟らとの連携から近畿の最大の強みである結束力の強さを再び見せつけてくれるだろう。

郡司浩平 神奈川 99期
 郡司浩平は昨年落車に悩まされ続けた1年だったが、復帰するたびに以前より強さを増して復活、9月・共同通信社杯で2度目のGII優勝を達成したのが功を奏して念願のグランプリ初出場を果たした。グランプリは5着に終わったが、1月・立川記念では初日特選が平原康多、清水裕友らを破って追い込みで1着、二次予選は捲りで福田知也とワンツーを決めて2着と強さを見せた。残念ながら準決でまたもや落車してしまったが、今年は地元平塚でグランプリが開催されるのでここで立ち止まっているわけにはいかず、今大会でも再び強い走りを見せてくれるだろう。

中川誠一郎 熊本 85期
 中川誠一郎は昨年の全日本選抜の覇者だ。決勝は単騎戦だったが一気のカマシ先行で驚異の逃げ切り優勝を決めている。その後も6月・高松宮記念杯を優勝、7月・サマーナイトフェスティバル、8月・オールスター、10月・寬仁親王牌で優出と大活躍だった。ただ中川は自分でレースをつくるのが苦手で展開待ちの競走になることが多いのが唯一の欠点で、グランプリも見せ場なく8着に終わっている。それでも直線の長い豊橋は中川向きのバンクと言ってよく、昨年同様に思い切のよささえ出せれば連覇が十分に可能だろう。
思い出のレース
2015年 第30回大会 山崎芳仁
 大ギア規制でも山崎芳仁が大捲りで優勝
 15年の開催からギア倍数は4倍未満という規制が入り、大ギアの先駆者である山崎芳仁の苦戦が予想されたが、規制後の初のGIである全日本選抜で山崎は鮮やかな捲りで優勝を飾った。レースは平原康多-武田豊樹-岡田征陽、稲垣裕之-大塚健一郎、浅井康太、山崎芳仁-菊地圭尚、桐山敬太郎の並びで周回。青板4コーナーから山崎が動いて関東勢を押さえると、続いた桐山がさらに切って先頭に立つ。すると今度は稲垣が上昇して先頭に立ったところで誘導が退避、そこへ7番手に引いていた平原が一気に巻き返してきて打鐘とともに主導権を握る。稲垣が4番手、5番手の大塚の内で桐山が粘り、浅井が7番手、山崎が8番手で最終ホームを通過する。1コーナーから武田は車間を切って反撃に備えるが、2コーナーからすかさず稲垣が捲って両者のもがき合いとなり、そこへ浅井の捲りが襲いかかる。浅井は最後の直線に入ったところで捲り切って先頭に立つが、3コーナー8番手から捲った山崎が大外を伸びてきて1着でゴール、菊池が2着に続き、浅井が3着。

ゴール

表彰

バンクの特徴
直線は長めだがクセがなくて走りやすい
 追い込み有利だがスジ決着が多い
 400バンクの長手は直線が長めでカントもややきついが、基本的にはどんな脚質の選手でも十分に力を発揮できるクセのないバンクとなっており、選手間でも走りやすいとの評価が高い。
 18年10月に開催された記念の決まり手を見てみると、全47レース(プロックセブン1個レースを除く)のうち1着は逃げが7回、捲りが17回、差しが23回、2着は逃げが3回、捲りが16回、差しが11回、マークが17回となっている。
 やはり直線が長くてカントが立っているので捲りが決まりやすく、先手ラインの選手が1着になったのは16回のみである。捲りの2着も含めると、全体の7割近くのレースで捲りの選手が連絡みしていることがわかる。
 ただ直線があまりにも長いので、捲りもゴール前で番手の選手に交わされてしまうケースが多い。捲りーマークの決まり手が12回、差しー捲りが11回とほぼ同等で、ジャストタイミングで仕掛けても五分五分の確率で交わされる可能性があると見たほうがいい。
 捲りは400バンクの定石どおりに最終2角からの仕掛けが理想だが、直線が長いので力さえあれば遅めの3角捲りも有効だし、先捲りの上を捲っての逆転劇もよく見られる。
 もうひとつ特徴的なのは、直線は長いけれどもラインの選手同士で決まるスジ決着が多いことだ。18年の記念開催ではスジ決着が29回、スジ違いの決着が18回となっている。
 コーナーはカントが立っていて曲がりやすく外に膨らむようなクセもないので、最終4角をスピードを殺さずにきれいに回れればそのままラインで押し切れてしまう。直線に入ってから後方の選手たちが殺到してゴール前で横に大きく広がるというケースはほとんど見られない。
 先行もうまくリードをたもって最終4角を回れればそのまま逃げ切れてしまう。テクニックで逃げる選手よりもカマシ気味にパワーで押し切る選手のほうが向いており、18年の記念開催では千葉・111期の重戦車・野口裕史が3度逃げ切っている。


 周長は400m、最大カントは33度50分22秒、みなし直線距離は60.3m。昭和24年の開設時は333バンクだったが、昭和42年に400バンクに回収され、その名残でカントが若干きつい。2月の冬場はバック向かい風の強い日が多く先行選手は苦しい。風の強い日は内が重くなるのでイン粘りの成功率も低くなる。最高上がりタイムは13年7月に金子貴志がマークした10.5秒。

豊橋競輪場