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第36回共同通信社杯競輪(GII)直前展望
2020年は様々な意味合いで大きな転機になった年となりそうですね。
新型コロナウイルスの世界的なパンデミック、水害、首相の交代、猛暑等。残り4ヶ月は何事もなく穏やかに過ぎてほしいと本当に願っています。
さて、第36回共同通信社杯競輪(GII)が伊東温泉競輪場で9月18日から4日間行われます。暑い秋ではなく過ごしやすい季節となって、競輪日和になっていることを信じています。
伊東温泉競輪場は333mバンク。最終バックで後方にいたら力がない限り勝負にならないのは明白で、かなり出入りの激しいレースになるのではないか思います。
最近の7車立てレースでは、人数が少ない分、番手選手の動きが大きくなっていることもあり、9車立てのレースの時のその感覚がそのまま持ち込まれている感じがあります。となると先行ラインが後方を大きくけん制してくると思われるので有利となって来るのは明白で、まずは捲るラインよりも先行するラインから考え、3番手の突き抜けや3番手が2着といった車券が面白そうですね。
また、グランプリ出場を考えると、ここの優勝賞金の上積みは大きなものになってくるでしょう。
是が非でもグランプリ出場を目指している選手たちも狙い目となると思います。
注目選手

新田祐大 福島 90期
グランプリ出場を狙うには賞金の上積みかGIタイトル獲得だが、2020年はどちらもうまく行っていないのが新田。オールスター競輪準決勝のようなアクシデントもあるので狙った通りに行かないのも競輪です。残りの親王牌、競輪祭でタイトル獲得もあるが、まずはここでしっかりと優勝を決めておきたいところでしょう。また周長が短いバンクもナショナル組には有利に働くはず。新田らしい先行捲りを見せてくれるでしょう。

脇本雄太 福井 94期
オールスター決勝でラインの力に敗れた脇本は、ここはリベンジをしてくるはず。豪快な先行力を発揮し先行逃げ切りで押し切ってくるでしょう。脇本といえども、ラインの総力戦には苦戦を強いられるので早めに動いて主導権を取ってくると思います。また、寺崎浩平が勝ち上がってくれば、ワンツーも見られると思います。

原田研太朗 徳島 98期
オールスター競輪決勝は鮮烈でした。中四国連携で一番前となった原田が先行勝負。番手の松浦悠士が脇本を牽制してその優勝の原動力となった先行力に注目したいですね。そればかりではなく、大きな舞台で猛然と先行できる心意気が良いと思います。今回も肝の据わった勝負で魅せてくれること間違いないでしょう。そして、松浦と同じ番組になったら今度はどちらが前を回るのかそのあたりにも注目したいですね。また今回徳島勢の布陣が分厚いんです!この辺りに期待です。

寺崎浩平 福井 117期
ゴールデンルーキーの寺崎は強いですね。やはりその活躍に目を見張るものがあります。特にFIでは無類の強さを発揮しています。グレードレースでも一次予選、二次予選では実力発揮と「なっていますが、準決勝が少し壁となっている感じがあります。しかし、経験を積んでくればここも突破していける実力はあると感じますので、そろそろGIIで大活躍を期待したいですね。負けた経験が生かせるかどうかがポイントでしょう。
第36回共同通信社杯展望
 第36回共同通信社杯競輪が伊東温泉競輪場で開催される。格付けはGIIながら今大会もS級S班9名が揃い踏みで、脇本雄太、新田祐大の東京五輪代表選手の2人がレースの中心となるだろう。また共同通信社杯は「若手の登竜門」と呼ばれる大会で昨年は99期の郡司浩平が2度目のGII制覇を達成しており、今年もヤングパワーの活躍に期待が集まる。
脇本雄太が連日の先行押し切りを狙う
 共同通信社杯は比較的若い選手たちに出場枠が確保されているのが特徴で、「若手の登竜門」と位置付けされている。18年の松阪大会の決勝では最後はベテランの平原康多が優勝をさらっていったが、郡司浩平が逃げ、それを山崎賢人が捲り、その後ろから清水裕友が追い込んで準優勝とまさにヤングパワー爆発のレースだった。昨年の高知大会も山崎賢人が逃げ、郡司浩平が単騎で捲って優勝しており、今年も脇本雄太と新田祐大の2人が優勝争いの中心となるのはまちがいないが、未知なるパワーを秘めた若手選手たちの走りに大いに注目したい。

脇本雄太 福井 94期
 優勝候補の筆頭はやはり脇本雄太だろう。今年初戦となった6月の高松宮記念杯では無傷の4連勝で4度目のGI制覇と圧巻の走りを披露した。7月のサマーナイトフェスティバルではまさかの準決敗退となったが、次場所の地元・福井記念では完全優勝と調子に不安はない。福井記念では初日特選こそは捲りだったが、残り3走は逃げ切りで、上がりタイムは10秒9、10秒9、11秒0とスピードも健在だ。今大会も短走路が舞台だけに後手に回されると不発の恐れもあるが、サマーナイトでの失敗を教訓に連日の先行押切りを狙ってくる。

寺崎浩平 福井 117期
 脇本雄太の高校の後輩である超大型新人・寺崎浩平の走りにも注目だ。117期の寺崎は早期卒業制度により同期よりも半年早く今年1月にデビューすると破竹の18連勝で3月にはS級特別昇級を決め、4月の小田原FIではデビューから79日目の史上最速記録でS級初優勝を達成している。ビッグレース初出場となったサマーナイトフェスティバルでは初日予選が逃げて3着、2日目特選が捲ってビッグ初勝利、3日目特別優秀では脇本との連係が実現、脇本を連れて逃げて脇本の勝利に貢献しており、今大会も大活躍が期待できる。

新田祐大 福島 90期
 新田祐大は今年初戦の高松宮記念杯の決勝では脇本雄太の逃げに屈して8着に終わったが、サマーナイトフェスティバルの決勝では優勝こそはならなかったが新田らしい爆発的な捲りで準優勝と強さを見せつけた。捲りきったあとの直線でまっすぐ走っていれば勝てたのではないかという声もあったが、踏んで踏んでの新田のパワーを競輪用のクロモリフレームがうまく受け止められずどうしてもバランスを崩しがちになるのは仕方がないところだ。それだけ新田のパワーは桁違いであり、今大会もファンの度肝を抜くハイパワー捲りを見せつけてくれるだろう。

高橋晋也 福島 115期
 北日本期待の新鋭は115期の高橋晋也だ。3月のウィナーズカップでは連日逃げて3、3、3着で決勝進出、大槻寛徳、佐々木雄一らの先輩たちの勝利に貢献すると同時に決勝では3着と健闘した。サマーナイトフェスティバルでも決勝進出はならなかったが、準決では新田祐大、佐藤慎太郎を連れて先行、最終4角までしっかりと先頭で粘りきり、先輩2人の優出に貢献している。2月の伊東温泉FIでは2連勝で勝ち上がり決勝3着とバンクとの相性も悪くなく、今大会も北日本の先輩たちを引っ張っていくだろう。
南関東のエース・郡司浩平が連覇を目指す

郡司浩平 神奈川 99期
 地元・南関東のエース・郡司浩平は大会連覇を目指す。昨年の決勝は単騎戦で逃げる山崎賢人-稲川翔の3番手を確保、4番手には平原康多と決して楽な展開ではなかったが、最終バックから平原より先に仕掛けて2度目のGII制覇を達成している。18年の大会では1、1、2着で勝ち上がり決勝は先行して5着と共同通信社杯との相性はいい。今年は2月の全日本選抜で決勝5着、7月のサマーナイトフェスティバルも決勝は7着に終わったが、準決では平原康多、松浦悠士、深谷知広らを相手に逃げて押し切りと度胸ある走りを見せており、今大会も地元地区のファンの期待に応える走りを披露してくれるだろう。

松井宏佑 神奈川 113期
 松井宏佑は6月の高松宮記念杯の2日目に落車に見舞われ途中欠場となり、サマーナイトフェスティバルでは落車の影響もあって初日予選は8着に敗れている。それでも2日目選抜は南関東勢を連れてしっかり主導権を取りきって7着、4日目一般では野原雅也と壮絶な先行争いを演じて5着と積極性は相変わらずだ。3月のウィナーズカップでは二次予選で逃げ切り、準決も逃げて5着と健闘しており、今大会も先行勝負での勝ち上がりはもちろんビッグレース初優出も十分に期待できるだろう。

清水裕友 山口 105期
 清水裕友と松浦悠士の中国コンビは今年前半の競輪界を席巻してきたが、高松宮記念杯では脇本雄太のハイスピード先行に完敗、中国コンビの栄華もこれまでかと思われたが、サマーナイトフェスティバル決勝では新田祐大の爆発的な捲りを清水裕友がきっちり追い込んで優勝しており、中国コンビの勢いはまだまだ止まりそうにない。とりわけ清水は昨年の共同通信社杯では勝ち上がりに失敗したが、18年の大会で準優勝したのをきっかけにトップスターへの階段を駆けのぼることとなった思い入れの強い大会だけに、今大会も脇本雄太や新田祐大らの強敵を相手に清水らしい巧みな走りで勝機を掴んでくるだろう。

松本貴治 愛媛 111期
 サマーナイトフェスティバルで一躍その名を高めたのが111期の松本貴治だ。3日間の成績は9、9、7と着はよくなかったが、初日予選は松浦悠士と清水裕友の中国コンビを連れて先行、中国コンビのワンツー決着に貢献するとともに脇本雄太を不発に終わらせた。準決も清水裕友と岩津祐介を連れて脇本雄太を相手に先行、結果的には脇本に捲られたが、精一杯脇本に抵抗したことで脇本は末脚を欠いて4着に沈み、清水と岩津が2着と3着で優出を決めている。今大会でも中四国勢を連れての松本の先行に注目してみたい。
平原康多の2年ぶりのビッグ優勝に期待

平原康多 埼玉 87期
 平原康多はこの2年間ビッグレースの優勝から遠ざかっているが、18年の共同通信社杯では郡司浩平、山崎賢人、太田竜馬、清水裕友ら若手選手たちのスピード合戦を最後はベテランの技で追い込んで優勝している。近況は落車の影響などでなかなか波に乗り切れない平原だが、輪界随一のオールラウンダーの名にふさわしい技の走りで復活優勝を期待したい。7月のサマーナイトフェスティバルは準決で4着と敗れたが、次場所の弥彦記念では2、1、1、1着で優勝と調子は悪くない。とりわけ準決は根田空史の先行で終始5番手と苦しい展開だったが、最後の直線だけで鋭く追い込んで勝利を掴んでいる。

吉澤純平 茨城 101期
 関東勢は101期の吉澤純平、107期の吉田拓矢、113期の森田優弥、115期の坂井洋らの若手機動力型が充実しているのも平原康多には好材料だ。吉澤純平は近況バック回数が減っているのがやや気になるが、サマーナイトフェスティバルの初日予選では目標の坂井洋が仕掛けきれずに8番手の苦しい展開となったが、そこから大捲りを打って2着と自力脚は健在だ。準決は高橋晋也-新田祐大-佐藤慎太郎の鉄壁の北日本ラインを相手に最後の直線で気力を振り絞って3着に突っ込み優出を果たしており、今大会も勝ち上がりを期待したい。

山崎賢人 長崎 111期
 九州勢ではようやく復活の兆しが見えてきた山崎賢人に期待だ。山崎は18年の共同通信社杯では3連勝で勝ち上がって決勝は4着ながら郡司浩平の逃げを捲ってしっかり見せ場をつくっている。昨年の大会も2、3、1着で勝ち上がり決勝では先行して8着と本大会との相性は抜群だ。今年5月の宇都宮記念では二次予選で敗れたが、初日予選は捲って3着で番手追走の松岡貴久が1着、3日目特選は捲って1着、4日目特別優秀は逃げての3着で松岡貴久が再び1着。7月の小松島記念では準決で敗れたが、初日予選は捲って1着、二次予選は逃げて2着と急速に調子を上げてきている。

浅井康太 三重 90期
 中部勢は今年のビッグレースでは苦しい戦いが続いており、ここまでのビッグレースでの決勝進出は3月のウィナーズカップでの吉田敏洋ただひとりと寂しい状況だ。浅井康太は今年前半に記念を3連覇して気を吐いたが、高松宮記念杯では準決敗退、サマーナイトフェスティバルでは予選敗退と波に乗り切れずに終わっている。中部勢は今大会もS級1班の出場予定選手が6人のみとライン的にも手薄だが、地元・名古屋でのオールスターに続いての大会となるだけに、オールスターの結果次第では勢いに乗っての一気の台頭も十分にありそうで、浅井康太、深谷知広の二枚看板の奮起を期待したい。
思い出のレース
2014年 第30回大会 新田祐大
新田祐大が大捲りでGII初優勝
 深谷知広に岩津祐介-小倉竜二の中四国コンビが付けて前受け、稲垣裕之-村上義弘-稲川翔の近畿トリオが中団、単騎の平原康多が続き、新田祐大ー成田和也の福島コンビが後攻めで周回を重ねる。青板周回の1コーナーから新田が上昇、3コーナーで誘導員を交わして先頭に立つが、稲垣が一気に叩いて赤板と同時に先行態勢に入る。平原が近畿トリオを追って4番手、その後ろは外に深谷、内に新田で併走となる。打鐘とともに深谷がスパートして前を叩きにいくが、最終ホーム過ぎに村上にブロックされて深谷は後退、すかさず岩津が内に切り込んで稲垣の番手に入り、3番手は村上、小倉、平原の3車で併走と大きくもつれる。その機を逃さずに新田が1コーナーから捲り発進、3コーナーで前団を捲りきり、俊敏に切り替えた岩津が3番手を追走する。4コーナーを回っても新田のスピードは衰えずそのまま先頭でゴールイン、懸命に追いすがった成田が2着で福島ワンツー、岩津が3着に入る。

ゴール前

優勝した新田祐大

バンクの特徴
小回りバンクだが直線は長い
 伊東温泉は周長が333mの小回りバンクだが、国内の小回りバンクの中では前橋競輪場に次いで2番目に直線が長く、どんな戦法の選手でも力を発揮できる。
 333バンクは先手ライン有利が基本だが、直線の長い伊東温泉は400バンクの感覚に近いという選手が多く、とりわけS級上位の選手が集うビッグレースでは基本どおりとはいかない。
 17年に開催されたサマーナイトフェスティバルの決まり手を見てみると、全27レースのうち1着は逃げが2回、捲りが11回、差しが14回、2着は逃げが6回、捲りが9回、差しが2回、マークが10回となっている。
 小回りバンクだけあって逃げ選手がかなり粘り込んでいるものの、1着はやはり捲りのほうが優勢だ。先手ラインの選手が1着を取った回数も7回しかない。
 先行は現在の競走形態からもカマシが有効だ。後方待機から打鐘とともに仕掛け、最終ホームで前団を叩く勢いでスパートして一本棒に持ち込めればゴールまで粘り込める。
 サマーナイトフェスティバルでは根田空史と三谷竜生の2人が逃げ切っているが。もちろん2人ともカマシ先行だ。とくに初日9Rの根田は番手の和田健太郎が離れてしまうほどのハイスピードのカマシで後続をぶっちぎり、2着に5車身の差をつけたままゴールイン、3連単で18万円の大会一の高配当を叩き出している。
 今回の共同通信社杯は若手選手の出場が多いのが特徴だが、意気盛んな若手が先行態勢に入ったところを百戦錬磨のベテランにカマされて後退というシーンが多く見られるだろう。小回りバンクは自力選手が有利ではあるが、先行も捲りもスピードだけでなくそれなりのテクニックを持ち合わせていないと勝ちきれない。
 捲りは2コーナーから仕掛けてバックで出切ってしまうのが理想だ。ただし2コーナーと4コーナーで外に膨らみやすく、そこで合わされると不発になりやすいので、後方からの大捲りは決まりにくい。4、5番手の中団からの仕掛けが絶対条件となる。

伊東温泉バンク
 周長は333m、最大カントは34度41分09秒、見なし直線距離は46.6m。山の中腹にあって周囲を丘に囲まれているので海や山からの風の影響はほとんどない。小回りバンクだが直線が長くて400バンクに近い印象で追い込み選手も十分に力を発揮できる。競りは内、外ともに互角に戦え、叩かれた先行選手のイン粘りや飛びつきがよく見られる。最高上がりタイムは14年の共同通信社杯の準決で新田祐大がマークした9秒0。