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読売新聞社杯全日本選抜競輪直前展望
2021年GIシリーズ 第1弾読売新聞社杯全日本選抜競輪が始まります!
スタートダッシュを決めて2021年の残り10か月をどっしりと構えてグランプリに臨むか、それとも一歩一歩グランプリに近づいていくのか、まずは節目第1弾のGIの頂点の戦いが始まります。どのような結末が待っているのか、良いレース期待のワクワク感がしてきました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大も緊急事態宣言が発出され、どうやら縮小に転じて来ていますが、まだまだ頑張らねばなりません。競輪界も一丸となって、感染拡大防止に努めています。今開催も無観客での開催となりましたが、是非、読売新聞社杯全日本選抜競輪をお楽しみください。
直前注目選手

松浦悠士 広島 98期
正直に言って、凄い。1月ほぼ毎週記念競輪を走って2回優勝し、1回決勝2着。S級S班ってこんなに走るのかと思いました。また結果を出しているのが凄いです。約2週間空いての全日本選抜競輪は、連戦の疲れから戻って来たぐらいなのではと思われます。この辺りは当日のインタビューなど参考に考えたいところです。

平原康多 埼玉 87期
21年に入り記念競輪を2勝し、変わらない高いレベルでのパワーを維持していると思います。また全日本選抜競輪に向け当然調整をして来ているはずなので、万全のはず。またこの大会は過去2回優勝している相性が良い大会なので、スタートダッシュを決めて優勝し、21年を落ち着いてグランプリを目指したいだろうと思います。

北津留翼 福岡 90期
7車立てのレースでは無双的な存在になっている北津留ですが、ここにきて9車立てのレースでも覚醒し始めていると思われます。レースは生き物ですから、結果が出ない時もありますが、高知記念の1着3回はやはり覚醒しているといっても良いのではないか思われます。今回はGIでもあり対戦するメンバーはより強力になりますが、しっかり結果を残してくれるのではないかと期待しています。

岩本俊介 千葉 94期
20年末の千葉記念in松戸の優勝後、落車して欠場していたので印象に薄いですが、直近の成績を見ると戻ってきていると思います。GI競輪では準決勝がネックとなっていますが、地元地区開催の今回は準決勝でも決勝進出に向かって頑張ってくれると思います。先行、捲りと状況に合わせてレースを組み立てる巧さは最近際立っていると思います。
全日本選抜競輪展望
 第36回全日本選抜競輪が56年ぶりのGI開催となる川崎競輪場で開催される。脇本雄太と新田祐大の五輪代表選手2人が不出場のため優勝の行方は予断を許さないが、川崎がホームバンクの郡司浩平率いる南関東に近況勢いがあり中心に推したい。年末のグランプリでは脇本雄太と連係するも5着に敗れた平原康多の巻き返しも注目で、昨年の大会覇者の清水裕友と松浦悠士の中国コンビももちろん優勝候補の一角だ。
南関東の勢いは止まらない
 2021年のタイトル戦線がいよいよ開幕する。脇本雄太と新田祐大の2強は不参加だが、今年の競輪界の流れを占う意味でも決して見逃せない大会となる。昨年は松浦悠士の先行に乗った清水裕友がGI初優勝を達成、その後も3月のウィナーズカッブ、7月のサマーナイトフェスティバル、8月のオールスターで松浦と清水の中国コンビが交互に優勝と昨年前半の競輪界を席巻しており、今年もどの地区のどの選手がスタートダッシュを決めるか注目したい。

郡司浩平 神奈川 99期
 今最も勢いのあるのが地元の南関東だろう。昨年11月の競輪祭で松井宏佑の先行に乗って郡司浩平が念願のGI初優勝を達成、タイトルホルダーとして臨んだ平塚のグランプリは5番手からの捲り不発に終わったが、郡司の後ろから内を突いた和田健太郎が直線鋭く伸びてビッグレース初優勝を輪界最上位のレースで成し遂げた。その前日のヤンググランプリでは松井宏佑が縦長の8番手の展開からあっさり捲り切って優勝、上がりタイム10秒9と圧巻のスピードを見せつけており、今大会も松井-郡司-和田の最強ラインでビッグレース3連覇を狙う。

深谷知広 静岡 96期
 深谷知広の愛知から静岡への移籍も南関東にとっては朗報だ。輪界の勢力図を一気に塗り替えてしまうほどのビッグニュースと言ってもいい。近況の深谷はビッグレースでは準決が壁になっていて19年5月の日本選手権を最後に優出を果たせないでいるが、勝ち上がり戦では徹底先行を貫いている。競輪祭でも予選の3日間先行して2、3、2着の成績で中部、近畿の選手の勝ち上がりに貢献している。となると今大会では深谷を目標に南関東の選手たちの大挙の勝ち上がりが期待できるだろう。

平原康多 埼玉 87期
 平原康多はグランプリでは悩みに悩んだ末に脇本雄太の番手を指名した。狙いどおりに脇本が逃げて番手絶好の展開になったが、清水裕友をブロックして内を空けてしまい5着に終わった。「まっすぐ追い込んでいれば……」という声もあるが、清水に並びかけられて思わず体が反応してしまったのだろう。競輪道を貫いたあのブロックがなければ脇本も2着に残れなかっただろうし、関東の選手たちもあのレースを見れば「平原さんのためならば」ときっと思うはずで、今大会も平原は関東の先行選手をうまくリードして勝ち上がっていくだろう。

吉田拓矢 茨城 107期
 吉田拓矢が昨年12月の佐世保記念で記念初優勝を飾って波に乗っている。初日特選は7番手から仕掛けきれずに8着に終わったが、二次予選は6番手から捲って1着、準決は逃げ切り、決勝は逃げる新山響平の3番手を取って冷静に追い込んで優勝している。続くグランプリシリーズの寺内大吉記念杯では3日間捲って完全優勝だ。関東はかつて一大勢力として輪界に君臨していたが、17年2月の全日本選抜で平原康多が優勝して以来GIの優勝者が出ていないが、今大会では吉田が関東勢を大いに盛り上げてくれるだろう。
松浦悠士が攻めの走りで勝機を掴む

松浦悠士 広島 98期
 松浦悠士はグランプリでは大方の予想に反して清水裕友の前回りを選択、結果は8着だったが、前受けから脇本雄太-平原康多ラインへの飛びつき狙いで戦う走りを見せた。松浦は清水とともに昨年前半の競輪界を席巻、8月のオールスターでは脇本雄太を下して優勝と名実ともに最強の自在選手へと登り詰めた。それでも19年のグランプリでなにもできずに終わってしまった悔しさが心のどこかにあったはずで、それが昨年の戦う走りにつながったにちがいない。今大会も現状に甘んじることなく、清水とともに攻めの走りを見せてくれるだろう。

清水裕友 山口 105期
 清水裕友は昨年の大会でGI初優勝を達成しているが、後半戦に入ってから調子落ちになり、7月のサマーナイトフェスティバルを優勝後はビッグレースでの優出がなくなってしまった。それでも、調子を戻すには実戦で逃げるのが一番とばかりに近況は以前にも増して積極的な走りを見せている。競輪祭でも準決に進めなかったが、4日目二次予選Aでは山田英明ー坂本健太郎の地元勢を連れてためらいなく先行、自身は7着ながら山田の勝ち上がり貢献している。今大会も松浦悠士とともに積極的な走りを見せてくれるだろう。

佐藤慎太郎 福島 78期
 佐藤慎太郎はグランプリでは目標の新田祐大が不発で最終バック8番手の展開となったが、そこからコースを探して3着に突っ込み、佐藤追走の守澤太志も4着とさすがの走りを披露している。今大会は新田不在で苦しい戦いが予想されるが、昨年の大会も新田不在の中、二次予選は新山響平の先行に乗って2着、準決は菅田壱道の捲りに乗って3着で優出している。19年の大会決勝では吉澤純平-武田豊樹の3番手から準優勝と全日本選抜とは相性がよく、今年もベテランらしい技と差し脚をたっぷり見せつけてくれるだろう。

新山響平 青森 107期
 新山響平は競輪祭では準決で5着と敗れたが、関東の諸橋愛を連れて2車の短いラインでも思い切りよく先行、諸橋愛の優出に貢献している。4日目のダイヤモンドレースは松井宏佑-郡司浩平-和田健太郎の南関東ラインを叩けずに9着に終わったが、予選1、2は逃げ切り、6日目特別優秀も逃げ切って佐藤慎太郎とワンツーとすがすがしいほどの逃げっぷりだ。12月の佐世保記念決勝も逃げて準優勝と健闘しており、今大会も北日本勢を連れて逃げまくってくれるだろう。
山田英明が今度こその優勝を狙う

山田英明 佐賀 89期
 山田英明は昨年の大会では1、2、2着で優出、決勝は5番手から捲るも最終4角で三谷竜生の車輪と接触して伸びきれず3着だった。その後も8月のオールスターでは準決を山崎賢人の先行に乗って2着で突破して決勝が6着、9月の共同通信社杯決勝は1着入線も痛恨の失格、10月の寛仁親王牌決勝は7着と、高いレベルで好調を維持していたがビッグレース優勝には手が届かなかった。それでも共同通信社杯では九州勢が4人優出(優勝は中本匠栄)など、九州も少しずつ盛り上がってきているだけに山田も今大会こその気持ちでタイトル奪取に燃えてくるだろう。

山崎賢人 長崎 111期
 今九州を盛り上げているのはまちがいなく山崎賢人だ。先行テクニックは決して高いとは言えないが、がむしゃらに主導権を取りにいく走りは九州の選手にとっては実に頼もしい。昨年は全日本選抜とオールスターの準決で山田英明の優出に貢献、共同通信社杯の決勝では脇本雄太、新田祐大らを相手に主導権を取りきって中本匠栄にビッグレース初優勝をもたらしている。競輪祭は落車欠場明けで予選を突破できなかったが、12月の佐世保記念は3連勝で優出しており、今大会も九州勢をグングン引っ張っていく。

寺崎浩平 福井 117期
 近畿は新鋭・寺崎浩平の走りに注目だ。ビッグレース初出場だったサマーナイトフェスティバルは予選3着で勝ち上がれなかったが、予選は村上義弘、3日目特別優秀では脇本雄太の1着に貢献している。オールスターでは準決進出、共同通信社杯では自動番組のアヤにより二次予選Aで脇本と同乗になってしまい、脇本を連れて逃げて9着に終わっている。競輪祭は一次予選で敗れたが、敗者戦で2勝しており調子は悪くなく、今大会も近畿勢を連れての果敢な逃走劇をきっと見せてくれるだろう。

浅井康太 三重 90期
 中部は深谷知広の移籍が大きな痛手で、浅井康太がそれをどう乗り越えるかが見どころだ。競輪祭では浅井は準決で無念の落車となったが、二次予選Aでは深谷の先行に乗って1着で、深谷が2着、坂口晃輔が3着と中部でワンツースリーを決めている。ただ、浅井自身の調子は上向きで、次場所の別府記念では落車の影響もなく昨年4度目の記念優勝を達成している。決勝は単騎だったが松浦悠士との捲り合戦に勝利しており、今大会も目標不在のレースになれば浅井らしい自在戦で乗り越えてくるだろう。
思い出のレース
2016 年 第31回大会 渡邉一成
北日本4車の結束で渡邉一成がGI初制覇
 新田祐大-渡邉一成-佐藤慎太郎-菊地圭尚の北日本4車が前受け、脇本雄太-稲垣裕之-村上博幸の近畿3車が中団、岩津裕介、近藤隆司の単騎2車が続いて周回を重ねる。青板周回の4コーナーから脇本がカマシ気味に上昇、新田も合わせて踏んで突っ張る構えを見せるが、脇本が強引に押さえ込んで先頭に立つ。岩津が近畿ラインに続き新田は5番手となるが、近藤も追い上げてきて新田は6番手となる。脇本は一旦ペースを落としてから打鐘ともにスパート、同時に新田もカマして反撃に出る。最終ホーム過ぎに新田が並びかけると稲垣がブロック、それでも新田は止まらず稲垣が1コーナーでもう一度ブロックにいくが、雨走路で稲垣がスリップして落車、村上、岩津も巻き込まれて落車してしまう。新田は一旦脇本の番手に入るが、最終バックから番手捲りを打つ。続いた渡邉が最終4コーナーから早くも新田を交わしにかかり、最後の直線で先頭に立ってそのままゴールイン、佐藤が2着に入り、新田は3着。

表彰

ゴール

バンクの特徴
直線は外のコースがよく伸びる
 川崎はオーソドックスな400バンクだが、直線がやや長めでイエローライン付近によく伸びるコースがあり、きつめのカントを使っての直線強襲が決まりやすく、最後の直線での逆転劇がよく見られる。最終バックで後方の展開となっても、カントをうまく使ってコース取りを誤らなければ頭まで突き抜けることも十分に可能だ。
 19年4月に開催された記念の3日目1Rの一般戦では佐々木龍が先行、佐野梅一が6番手、小玉拓真が8番手となり、3コーナーから捲った佐野が直線で先頭に立つが、佐野追走の後藤彰仁が佐野の外から交わしにかかり、さらに4コーナーから仕掛けた小玉が後藤の上のイエローライン上をまっすぐ伸びて1着、後藤が2着、佐野が3着で2車単が3万円、3連単が11万円の大穴になっている。
 ちなみに19年の記念開催の1着、2着の決まり手を見てみると、全48レース(1回の2着同着を含む)の1着は逃げが7回、捲りが11回、差しが30回、2着は逃げが8回、捲りが7回、差しが19回、マークが15回となっている。
 ここで注目したいのは捲りの連対回数だ。400バンクの記念開催でのこの数字はかなり少ないほうだ。直線が長めでカントもきついので捲りごろのバンクに思えるが、とにかく直線がよく伸びるのでジャストタイミングで捲ったつもりでも直線で交わされて2着、3着に落ちるケースが多い。
 逆に直線が長めのわりに健闘しているのが逃げだ。先手ラインの選手が1着なったのは48レースのうち22回だから決して先行有利のバンクとは言えないが、打鐘から一気に仕掛けて最終ホームで先頭に立って一本棒の状態に持ち込めれば、後続は追走一杯となって仕掛けきれずまんまと逃げ切ることが可能だ。今年から静岡に移籍して南関東の機動力型として再スタートを切る深谷知広は、19年の記念開催では決勝進出こそならなかったが逃げ切りが2回、逃げ粘りの2着が1回と川崎バンクとの相性が抜群で全日本選抜での活躍が大いに期待できる。

 周長400m、最大カントは32度10分14秒、見なし直線距離は58.0m。以前は風の影響をあまり受けない開放的なバンクだったが、14年に西スタンドができてからはそこが風の通り道となり、風の強い日はバックが追い風、ホーム側が向かい風となるケースが多く逃げ選手には苦しい。直線は外側がよく伸びるので、番手絶好の展開になっても外コースを巻き返してきた選手にコースを塞がれて抜け出せず終わってしまうことがよくある。

川崎バンク