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全プロ記念競輪展望
新型コロナウイルス感染症の影響で5月31日に広島競輪場で開催予定だった「第68回全日本プロ選手権自転車競技大会」は今年も中止となってしまったが、昨年と同様に5月29日と30日の両日に「同大会記念競輪」が実施される。レースの格付けはFIIの短期決戦だが、S級S班を始めとするトップレーサーたちが勢揃いで、今年も見どころ満載の熱きバトルが展開されるだろう。
優秀
郡司浩平と中国コンビの2強対決が見どころ
初日のメインとなるのは優秀競走3個レースで、S級S班の7人に選考期間(令和2年9月~令和3年2月)における平均競走得点上位の20名が出場する。現在の競輪界を牽引する郡司浩平率いる南関東と、清水裕友、松浦悠士の中国コンビの対決が一番の見どころだが、巻き返しを急ぐ平原康多率いる関東の逆転も十分だ。ようやく復調気配が見えてきた浅井康太、近況好レースを続けている古性優作、展開不問で差し脚を伸ばしてくる佐藤慎太郎の一発も侮れない。

郡司浩平 神奈川・99期
郡司浩平は3月のウィナーズカップ決勝では目標の深谷知広が仕掛けきれずに5着に終わったが、4月の川崎記念では松井宏佑の逃げに乗り、清水裕友の捲りに合わせて踏み込んで2月の全日本選抜に続いて地元優勝を飾っている。近況は番手回りのレースが多い郡司だが、川崎記念の二次予選では逃げて松谷秀幸とワンツー、次場所の武雄記念でも決勝は7着に敗れたが、初日特選予選は逃げて2着、二次予選と準決は捲って1着ともちろん自力脚も強力で、今回も和田健太郎、岩本俊介、鈴木裕らと好連係を決めてくるだろう。

清水裕友 山口・105期
清水裕友は昨年後半は調子落ちになっていたが、今年2月の全日本選抜で1年ぶりのGI優出を決めて復活、続くウィナーズカップでは松浦悠士との連係から昨年7月のサマーナイトフェスティバル以来のビッグレース優勝を達成している。松浦もウィナーズカップでは不調を訴え4日間未勝利に終わったが、4月の武雄記念で今年4度目の記念優勝を飾っており調子はまちがいなく上向きだ。昨年の全プロ記念のスーパープロピストレーサー賞では清水の逃げに乗って松浦が優勝しており、今年も中国コンビが好連係を決めれば連覇は十分だ。

平原康多 埼玉・87期
平原康多は全日本選抜決勝8着、ウィナーズカップは準決敗退とビッグレースでは結果を残せていないが、今年は4月までに記念を6場所走って1月の立川記念と大宮記念、3月の大垣記念を優勝、2月の高知記念と4月四日市ナイターGIIIは準優勝と快調に飛ばしている。郡司浩平と同様に近況は若手自力型との連係が多いが、四日市ナイターGIIIの決勝は深谷知広の逃げを3番手から捲って諸橋愛とワンツーと自力脚も健在で、展開次第では先行にもためらいはない。18年の大会では吉澤純平の逃げを目標に優勝しており、今回もオールラウンダーぶりを発揮して優勝を目指してくる。
特選
積極性の増した寺崎浩平が逃げまくる
初日特選の3個レースには選考順位28位から54位の27名が出場するが、各レースで5着までに入った15名が2日目のダイナミックステージに進出する。ここは新鋭・寺崎浩平の走りに注目だが、小川真太郎、原田研太朗、取鳥雄吾らを擁する中四国勢も層が厚い。渡邉一成、吉澤純平、渡邉雄太らの機動力も強力で、昨年ビッグレースを制してステップアップした中本匠栄と山田庸平の九州コンビの一発も侮れない。

寺崎浩平 福井・117期
寺崎浩平は3月のルーキーチャンピオンレースは落車に巻き込まれて棄権と残念な結果に終わったが、次場所のウィナーズカップでは準決に進出、結果は9着ながら吉田拓矢と壮絶な主導権争いを演じて稲川翔の優出に貢献しており、寺崎が117期の出世頭であることに異論はないだろう。ウィナーズカップでは初日特選予選こそは追い込みでの1着だったが、残り3走はしっかりと主導権を取りにいっており積極性も満点で、今回も村上義弘や椎木尾拓哉らの近畿勢を連れての逃走劇を見せてくれるだろう。

渡邉一成 福島・88期
渡邉一成は2月の全日本選抜と3月のウィナーズカップはともに二次予選敗退とビッグレースでは苦戦が続いているが、全日本選抜では一次予選が逃げ切り、3日目選抜も逃げて2着で大槻寛徳とワンツー、4日目特選は捲りの1着で成田和也とワンツーを決めており、このクラスなら機動力は一枚上だ。7車立て3日制のFIでは1月の小田原、2月の奈良、3月の京王閣で優勝と無双しており、9車立てとなるとレース勘にやや不安は残るが、今回も若手相手に衰え知らずの機動力をしっかり発揮してくれるだろう。
選抜
野口裕史が記念初優勝の勢いで突っ走る
初日の選抜6個レースには選考順位55位から108位までの54名が出場するが、各レースで2着までに入った12名が2日目のダイナミックステージに進出する。ここはやはり若手機動力型の走りが見どころとなるだろう。関東の坂井洋、南関東の野口裕史と望月一成、中部の山口拳矢、四国の島川将貴と太田竜馬など各地区にきっぷのいい若手が揃っており叩き合いは必至だ。

野口裕史 千葉・111期
陸上競技のハンマー投げで日本一に輝いたことのある野口浩史は競輪選手としてのデビューが34歳と遅く、今開催時には38歳となっているが、3月のウィナーズカップでは二次予選で敗れたものの4走のうち3走で主導権取りと競走スタイルは実に若々しい。4月の前橋FIでも3日間逃げて優勝、そして次場所の西武園記念では一次予選こそは捲りだったが、二次予選、準決、決勝は逃げて記念初優勝を完全優勝で飾っている。もちろん今回も20代の若手選手たちを相手に主導権を取っての押し切りを狙ってくる。
思い出のレース
スーパープロピストレーサー賞プレイバック
清水裕友の逃げに乗って松浦悠士が優勝
浅井康太―坂口晃輔、清水裕友―松浦悠士、村上博幸、平原康多―諸橋愛―木暮安由、菅田壱道の並びで周回を重ねる。青板4コーナーから平原が上昇開始、関東ラインに菅田も続き、赤板ホーム過ぎに平原が誘導員を下ろして先頭に立つと浅井はすんなり引く。すると今度は清水が1コーナーから仕掛け、平原を叩いたところで打鐘を迎える。中国コンビには村上が続いていたが、諸橋にからまれ、口が空いたところを平原が飛びついて3番手を確保、割り込まれた村上は諸橋をキメにいくが、押し込まれた諸橋が落車してしまう。村上は内をすくって3番手を取り戻し、平原が4番手で最終ホームを通過する。最終バック6番手から菅田が捲り、続いて平原も仕掛けていくが、逃げる清水との車間を空けていた松浦が後方からの巻き返しに合わせて最終4コーナー踏み込んで先頭でゴールイン、2着に平原、3着に木暮が入り、8着入線の村上は押圧で失格となる。