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 10月22日、取手競輪が1年7カ月ぶりに本場開催を再開しました。昨年3月の東日本大震災の影響は大きく、これまで長い時間をかけて改修・修繕作業が進められてきました。メインスタンドの完成はまだですが、ホーム側に仮の審判棟を設け、本場再開の運びとなりました。今回は開催初日の模様をレポートします。

待ちに待った本場レースがスタート!

1年7カ月ぶりに再開される取手競輪場
 まずは現地の状況から。震災で特に影響が大きかったホーム側のメインスタンドとバック側のスタンド。ホーム側のスタンドは取り壊しが終了しており、そこには仮審判棟が設けられています。スタンドがなくなったことで、ホーム前はややさっぱりとした印象があり、奥には臨時投票所や休憩所、食堂が並んでいます。また、バック側のスタンドは、現在工事中。来年8月には、ここに新メインスタンドが出来る予定となっています。

メインスタンドは取り壊され、現在は仮設審判棟が設けられている。

臨時投票所の周辺の様子。

現在工事中のバック側スタンド。
 この日は本場再開とあって、約3000人という多くのファンが来場いたしました。3~4コーナーのスタンド席は立ち入りできないこともありますが、1レースが始まるときから金網付近には人垣が出来ており、本場開催を心待ちにしていたファンから大きな声援が聞こえてきます。特に最終レースに登場した脇本雄太選手には、発走前からひときわ大きな歓声が起こっていました。場内ではイベントも多く開催されており、かなりの賑わいを見せた初日となりました。なお、次回の取手本場開催は、11月9日からの取手記念(GIII)水戸黄門賞となります。地元が誇る武田豊樹選手、長塚智広選手の両S級S班選手が参戦予定で、こちらも見逃せないですね!今後の取手競輪にご期待下さい。

オープングレースのスタート。

初日は十文字貴信選手と根本雄紀選手の
トークショーが行われた。

約3000人の来場で賑わいを見せるスタンド。

迫力あるレースに、多くの歓声が上がっていた。
■出場した地元選手のコメント
「多くのお客さんの前で走る、選手はそれが一番ありがたいです」
A級特選(6レース)に出場した池澤義文選手(56期・茨城支部副支部長)

「顔見せからたくさんのファンの方が応援してくれて、嬉しかったですね。再開に向けて施行者さん、競技会、僕ら選手会と準備を一杯してきて、やっとここにこぎ着けることができました。9月末に守谷駅前のお祭りがあって、そこで選手会のブースを出店してPRしましたし、10月には取手蛍輪でもPRして、そうしたことがファンの声援に少しでも繋がったのかなという思いがあります。震災のときはスタンドのガラスが割れたので、選手全員で這いつくばって、何度も何度も掃除機かけてやったし、みんなで再開に向けて頑張ってきました。選手としては、お客さんがいるところで走るのが一番ありがたいし、お客さんも生の競輪を地元で見てもらって満足してもらえれば、それが一番ですね。まだまだバックスタンドは改装中ですけど、こういう中でも早期再開してくれた施行の方には感謝したいです。再開に向けて、いろいろ僕も加わった一人ですが、僕は選手ですので、レースで形を付けたいなという気持ちを強く思っていたので、最初の開催で初日に1着を取れたことは、すごく良かったです」


「来月は記念もあります。茨城勢の走りを、本場で見て下さい!」
S級特選(11レース)に出場した大薗宏選手(71期)

「僕はずっとバンクで練習してきたから、本場が再開した最初の開催に呼ばれたことは、すごく嬉しかったです。嬉しかったから、ちょっと気合いれて練習しすぎた部分もあったけど、空回りしないように調整もしてきました。スタンドの直しが始まってからは4月から9月の頭までバンクが使えなくなったんですけど、僕はバンク練習ばっかりだったから、ちょっと調整が狂ってリズムが変わったんですけど、9月からはまた使えるようになったので、調整も今は出来るようになって良かったと思います。初日はいつも以上に気合いが入っていましたけど、結果はダメでした。1着を取ってコメント出したいなと思ったんですけどね(苦笑)。でもこれからも頑張って、地元のアピールをしたいと思います。僕は出ないですけど、来月には記念開催があるので、よりいっそう茨城勢を盛り上げるためにも、頑張りたいなと言う気持ちはあります。今日のレースも金網越しは満員で応援も凄かったので、嬉しかったですね。これからも精一杯頑張るので、よりいっそう本場に来ていただいて、茨城勢の走りを見てもらえればと思います!」
■本場再開前のまでの道のり
「来年9月のリニューアルオープンを目指して頑張っていきます」
茨城県自転車競技事務所・安部隆雄主任に聞く

-震災当時の損壊状況はどういったものだったのでしょうか?
「あのときは経験したことがないくらい強い揺れを感じました。メインスタンドとバックスタンドは昭和40年代の建物なので、耐震工事を22年の4月から進めていたところだったんですよ。でも、まだあのときは両スタンドともまだ手を付けていなかったので、職員が手分けして状況を把握しにいったら、その2つのスタンドは天井と壁がはがれ落ちて、柱や壁に亀裂が入っていて…。一番酷かったのが、バック側の特別観覧席で、走路側のガラスが全面割れたような感じで、散らばって、足の踏み場もないくらい真っ白になっていました。バンクにも飛散した状況でしたね」

-震災時は、選手宿舎に被災者の方の受け入れもされていましたよね。
「取手市さんが中心になって動いていたんですよ。南相馬市さんと災害協定を結んでおり、取手市さんも年に何回か施行権を持っていて開催しているので、そういう関係もあって選手宿舎を使えないかと打診がありました。宿舎は比較的新しい建物だったので、影響はなかったので、多いときは120名くらいの被災者の方が入っていましたね。5月一杯まで受け入れていましたが、選手会の方でもバンク試走などのイベントを企画していただいたりとか、気分転換になればとご協力いただいたしました。少しは役に立てて良かったのかなと、みんなそういう思いはありますよね」

-そこから復興までのステップとしては?
「まずは場外発売を再開しようと。その時点で開けられる投票所が第一特別投票所だけで、耐震補強工事の一年目。1コーナーから2コーナーにかけてのスタンドの工事はメドが立っていたので、そこを使って場外をまず再開しようという形でした。それが震災から3カ月ちょっとでしたね。そのあとは本場再開に向けて、メインスタンドを取り壊す工事、その跡地に仮設の審判棟、そして元々メインの裏手にあった東レストランを改修して臨時投票所に改修しました」

-本場開催までにはどういった苦労がありましたか?
「震災直後は、資材が入りにくい状況で、具体的にいつ再開できるのかというのがまったく見えなかったんです。そのあたりは不安でしたね。工事が進むにつれて、スケジュールが決まって、落ち着いていけたと思いますが、あまりに被害が大きかったので、想定していなかった問題も出てきて、本当にその場その場で判断をしながらやってきました。でも、本場開催が出来ないと、お客さんもそうですけど、職員もちょっと盛り上がりに欠けるというか、寂しい思いがありまして。実況の方も、1年7カ月やっていなかったから『大丈夫かな』なんて話をされていましたし、審判の方も我々も本場の業務から離れていたので、開催前の10月10日には選手会にも協力していただき、選手20人に1から10レースまで競走していただいた開催リハーサルをして、なんとか再開という感じでした」

-最後に今後の展望を教えて下さい。
「今はバックスタンドを新メインスタンドに改修していて、それが来年の8月に完成予定で、9月にリニューアルオープンというスケジュールで動いているので、そこに向けて、工事を進めています。本場開催も開始したので、工事しながらレースをやっていく形ですね。9月の時点では現在のホームとバックを入れ替えた形でリニューアルいたします。とにかく長い間お待たせして申し訳ございませんでしたが、新メインのオープンに向けて、これからも頑張っていくので、ファンの方にも本当によろしくお願いしますという気持ちが強いですね。まだ完全に設備が整っていない状況での開催が続きますが、新スタンドが出来ましたら、今まで以上にゴール前の迫力ある場所が出来ますし、屋内で快適に投票できるスペースも増えますので、ぜひご来場いただければと思います」