特集

 2013年11月1日(金)~3日(日)、韓国・光明競輪場において、日韓競輪対抗戦が開催されました。
 日本選手団は、講習会及び競走訓練のため、10月27日(日)に韓国入りし、決戦に備えました。
【10月31日(木)前検日】
 前検日は10月31日(木)。前日に競輪場の宿舎に入った日本選手は、9時に姿を現し、身体検査、自転車検査、入所教育(参加式)、指定練習、200mハロンの測定、共同インタビューと、次々にこなしていきました。
 まず驚いたのは、空港並みのセキュリティーチェック。荷物のX線検査、金属探知器も使用し、最後には指紋認証で選手本人の照合をします。
 韓国選手から始まった車体検査。日本選手は普段のやり方とは違う部分が多く、戸惑いを見せていましたが、韓国選手や関係者に教わりながら無事終了。
 その後、昼食時間を挟み、日本選手数人が韓国メディアの取材に応じました。インタビューの動画配信があるらしく、少し緊張しているように見えました。
 午後2時過ぎからは日本選手の指定練習時間です。事前に講習会と競走訓練で走ったバンクとはいえ、まだまだ感触をつかみきれない選手も多く、口々から「重い」という言葉が出ていました。
 午後4時過ぎから始まった共同インタビューでは、競走訓練の感想やコンディション、意気込みなどを語りました。

韓国・光明競輪場

ドーム内側

検車場の車立てがカラフル

入所時のセキュリティーチェック。右側は荷物のX線検査

金属探知器を用い、徹底的な検査

指紋認識で本人と照合する

車体検査前の本人確認作業

車体検査。普段とやり方の違いに戸惑う日本勢

韓国メディアの取材を受ける

日韓別々での指定練習

何度も自転車の感触を確かめる佐藤友和
共同インタビュー

左から、勝瀬卓也、園田匠、松岡貴久、
神山拓弥、田中誠、渡部哲男

左から、伊藤健詞、井上嵩、新田康仁、
東口善朋、井上昌己

左から、佐藤慎太郎、後閑信一、成田和也、佐藤友和、伏見俊昭

韓国選手団
【11月1日(金)初日】
 日本選手が海外で車券発売を伴うレースに初めて出場する歴史的瞬間を韓国・光明競輪場で迎えました。
 レースは1日1Rから14R行われ、日韓競輪対抗戦は11Rから14R。
 日本と全く違うところがありました。選手が番組を知るのは、出走当日のレースの1時間50分前なのです。それまでは、自分が何レースの何番車なのか? 対戦相手が誰なのか?知ることができません。日本選手は、自分のレース時間を大方予想し、ウォーミングアップを始めました。
 また、日韓競輪対抗戦では競走前にライブインタビューがありました。日本では稀なことです。場内放送で、しかもライブで流れるため、当日の選手のコンディションや様子を知ることができ、放映が始まるとモニターの前には人だかりができました。
 レースは、各レース韓国4名、日本4名ずつ出走します。

 まずは井上昌己、勝瀬卓也、佐藤慎太郎、田中誠が11Rの初戦に出場しました。レースの主導権を握ったのは韓国勢。日本勢は後方に置かれ、最終バックから井上が追い込みを図るが4着。韓国ワン・ツー・スリーで幕を開ける形となりました。
 続いての12Rは、伏見俊昭、井上嵩、新田康仁、伊藤健詞が出走。打鐘から井上が先行体制に入りましたが、韓国勢の鋭い巻き返しが襲来。それでも、伏見が最終回6番手より追い込み、見事1着。場内はどよめきが起こりました。
 この波に乗りたい日本勢。13Rは神山拓弥、後閑信一、成田和也、渡部哲男が出走。先頭に立った成田の番手の後閑が、打鐘で成田、渡部を連れ先行し、8番手にいた神山が、一気に捲りました。このまま1着で逃げ切ると思われましたが、神山の番手を追走したキム・べヨンに差され2着に。3着にはイ・ヒョングが入り、またしても韓国勢に追い込まれました。
 14Rは、園田匠、東口善朋、松岡貴久、佐藤友和が出走。東口を先頭に日本勢が動いたが、打鐘過ぎから韓国勢が先行体制に。後方より佐藤が追い込みをかけましたが、5着に終わり、韓国勢のパワーを見せつけられた形になってしまいました。

 初日は終始韓国勢のペースに飲み込まれた感じで、12R・伏見の1着以外白星をあげることができませんでしたが、各選手が2日目からのレースに向け、戦い方を考えている様子でした。

顔見せの際、セグウェイで先頭を走るフラッグガール

日韓競輪対抗戦ののぼり

場内には、若者向けのお店もあった

場内から見たバンク

マークカード。特別に和訳してもらった

レース前、当日のライブインタビューで汗をかきながら応えていた後閑信一

レース前の選手の様子

ウォーミングアップをする成田和也

徐々に緊張してきたという井上嵩

伏見俊昭が1着になった12Rゴールシーン

園田匠

佐藤友和

東口善朋

レース後倒れこんだ神山拓弥と、レースを振り返る日本勢

1着でゴールした伏見俊昭
【11月2日(土)2日目】
 午前中激しく降っていた雨も午後からは上がり、光明競輪場へは多くのファンが足を運んでいました。土曜日ということもあり、客席も賑わいを見せていました。
 初日は韓国勢のレース展開に翻弄されていた日本勢ですが、2日目の巻き返しに期待したいところ。初日と2日目の着で付与されるポイントの合計により決勝進出者が決定する大事な一番です。
 レース前のウォーミングアップでは、韓国選手と話しリラックスしながらも、リベンジに燃える日本選手。

 2日目の日韓競輪対抗戦初戦11Rは、井上嵩、松岡貴久、成田和也、新田康仁が出場。赤板過ぎから井上が上昇し、打鐘から先行しましたが、すかさずキム・ベヨンを先頭に韓国勢も追い上げました。番手からチョン・ヨンギュが抜け出すと、そのまま捲り切りました。ゴール前でホン・ソッカンがチョン・ヨンギュを差し1着でゴール。3着には追い込んだ松岡が入線。最終4コーナーで井上が落車するハプニングもあり、波乱の幕開けとなりました。
 続く12Rは、田中誠、井上昌己、伊藤健詞、佐藤友和が出走。打鐘過ぎから田中が発進すると、韓国勢も動き出し、最終バックで先頭に立ったユ・テボクにイン・チファンが続きましたが、直線で大外強襲を見せた佐藤が1着でゴール。韓国ファンの大歓声を浴びました。2着イン・チファン、3着ノ・テギョン。
 13Rに出走したのは、東口善朋、伏見俊昭、神山拓弥、勝瀬卓也。赤板から上昇した単騎の神山がイン切りを見せるが打鐘から先行した韓国勢がそのまま直線に入り、1着パク・ヨンボム、2着コン・ミンウでゴール。3着には直線で追い込んだ勝瀬が入り、決勝進出を果たしました。
 2日目の最終レースの14Rは、園田匠、渡部哲男、後閑信一、佐藤慎太郎が出走。先頭誘導員に韓国勢が続くと、赤板から佐藤が韓国勢の番手を奪いに上昇した。先行するファン・スンチョルの番手をキム・ミンチョルから奪取した佐藤だったが、最終3コーナーで外に膨らんだファン・スンチョルのあおりを受け落車。それに続いたパク・ビョンハ、キム・ドングァンも落車となった。後方内側にいた園田が落車を避け、直線追い込んで1着でゴール。2着キム・ミンチョル、3着渡部哲男で入線。

 佐藤慎太郎、パク・ビョンハは落車による負傷で途中欠場となり、失格のファン・スンチョルを含む3名の代わりに、3日目はチェ・スンヨン、イ・ミョンヒョン、イ・スウォンの補充出走が決定しました。

2日目のフラッグガール

ジャン。なんと酸素ボンベを切ってペイントしたもの。
音が一番良かったらしい

2コーナー上からバンクを見た様子

チェッカーフラッグ柄の先頭誘導員

ウォーミングアップをする佐藤慎太郎

気合いを入れた面持ちの東口善朋

精神集中をする渡部哲男

自転車について話す後閑信一(左)と神山拓弥(右)

日韓戦でのホームスタンドの様子

11R最終1コーナー

11Rゴール

12Rで1着になり、ファンの声援に応える佐藤友和

12Rゴール

13R最終バック

13Rゴール

14Rゴール
【11月3日(日)3日目】
 日韓競輪対抗戦最終日、1レース開始前に、決勝進出メンバーによる特別紹介イベントが場内特設ステージで行われました。
 パク・ヨンボムと園田匠がそれぞれアカペラで歌を披露し、ファンが参加した「あっちむいてほい」、キム・ミンチョルと佐藤友和のリフティング対決、撮影会、握手会など、約30分のイベントに、集まったファンは大盛況でした。
 
 決勝メンバーがウォーミングアップを開始した選手管理エリアには、張りつめた空気が漂っていました。日本選手は自分のスタイルで集中し、決勝に向けてボルテージを高めていった様子です。対する韓国勢は、日本勢を気にしながらのアップのように見えました。

 13R決勝。日本勢は誘導以下、佐藤友和、伏見俊昭、勝瀬卓也、園田匠で周回。赤板からコン・ミンユ率いる韓国勢が上昇すると、佐藤は3番手のパク・ヨンボムの内側で粘りました。激しい競りが最終バックまで続きましたが、キム・ミンチョルが番手捲りを放ち、圧倒的な強さを見せつけながら優勝を決めました。2着は佐藤と競ったパク・ヨンボム。佐藤は3着で表彰台に上がりました。
 
 11Rは松岡貴久、井上昌己、後閑信一が出走。打鐘から後閑が先行すると、番手から井上が捲りを放ち、1着でゴール。2着には松岡が入線。3着はチョン・ヨンギュ。
 12Rでは渡部哲男、新田康仁、伊藤健詞、東口善朋が出走。イ・スウォンが先行すると、番手イ・ミュンヒョンの後位を新田が奪取。捲るイ・ミュンヒョンをそのままマークした新田が2着。3着はユ・テボク。
 最終14Rは、井上嵩、神山拓弥、田中誠、成田和也が出走。先行するチェ・スンヨンの番手には神山が入り、神山は最終バックから捲りを放ち1着でゴールを駆け抜けた。神山をマークした成田が2着で入線した。3着はパク・コンビ。

 3日間に渡り繰り広げられた日韓競輪対抗戦。日本とは違う様々な点に翻弄された日本選手団でしたが、「韓国競輪で走った経験を日本の競輪に活かしたい」「また韓国で走りたい」という言葉を残して競輪場を去って行きました。
 今開催中に、韓国競輪が来場したファンのために様々な取り組みを行っていました。最終日に行われた特別紹介イベントや、レース当日のライブインタビューなどは、ファンと選手の距離を縮め、選手の魅力をファンに伝える素晴らしい取り組みでした。いつか日本の競輪でも行われる日が来るかもしれません。

最終日のフラッグガール

特別紹介の様子

「乾杯」を歌い上げた園田匠

「あっちむいてほい」をする勝瀬卓也

キム・ミンチョル選手とリフティング対決をする佐藤友和

ファンとの写真撮影に応じる伏見俊昭

握手会の様子

伏見俊昭

佐藤友和

園田匠

勝瀬卓也
【決勝レース】

場内オーロラビジョンに映された決勝メンバー

決勝戦は、花火の中を通って入場する

スタート

周回

赤板

打鐘

最終ホーム

最終1コーナー

最終バック

最終2センター

ゴール

表彰式。大きなジャンプで
喜びを表現するキム・ミンチョル

記念撮影

落車した伏見以外の決勝メンバーも
表彰式に出席

決めポーズをしてくれたキム・ミンチョル。
「韓国の男前!」とは本人談

決勝戦後に行われたレセプション