インタビュー

 私、立川志らべ、落語家です。競輪、好きですね~。現在、夕刊フジのナイター競輪面で不定期に予想のコラムを書かせてもらったりしております。
 私は落語家なのに(落語家だから?)、大変に人見知りの激しいところがあって、会ったばかりの人と急に親しく喋るということはあまりないのですが、会ったばかり人が「競輪好き」というだけでやたらと距離が縮まった感覚になります。まあ、それだけ競輪大好きな人に会うのが珍しいという現実もあるのですが…。だから、普段はネットで1人孤独に投票することが多いのですが、競輪の好きな人たちとああだこうだと喋りながら予想する、これがやっぱり楽しい。まあ、その中の1人が大勝ちした時の気まずさもあるんですがね…。
 よく、落語の世界では「俺は志ん生を生で見たよ」なんて年配の方がいると、ただそれだけで「羨ましいな~」と思ったりします。競輪の世界では誰でしょうね?「俺は滝澤正光の全盛期を見てたんだ」と言われるとやっぱり「いいな~」と思ったりします。以前、夕刊フジの記者の方に同行して、まだ現役だった滝澤先生にインタビューしたことあったのですが、その魅力たるや!!! 男が惚れてしまう男。「滝澤さんは、"馬"と呼ばれたりしてましたけど、それについて自分ではどう思ってたんですか?」と聞くと、「やっぱり、顔なんですかね?」とニッコリ笑った顔は、きっと女性でもメロメロになるんじゃないか? と思ったものです。(後に奥様にお会いしたら、その綺麗なこと!)
 あー、この人がバリバリに逃げていた時代、中野浩一、井上茂徳としのぎを削った時代を自分も体感したかったなあと激しく思ったものです。
 でも、私の時代には村上義弘がいるじゃないか!いくつも印象に残るレースありますが、私が度肝を抜かれたのが、2008年5月31日の高松宮記念杯競輪初日選抜戦。村上選手と言ったらやっぱり先行。先行日本一。でも、年齢とともに以前と同じような先行はできなくなっていく。そこにちょっと寂しさも感じていた頃。逃げる稲垣裕之選手の番手に付く村上選手。そんな村上選手の位置に競る大塚健一郎選手。マーク型ではない村上選手には圧倒的不利。正直「あー…」と思いました。でも、村上選手は気合いで競り勝つ。そして安心する間もなくまくってきた別線の紫原政文選手を完全にブロックし、果てはゴール前で稲垣選手を差しきるという芸当。あんなに身震いするレースはないです!あれを見たら、技術って精神力で乗り越えられるんだなあって思いました。そして番手が競りでも果敢に逃げる稲垣選手、3番手を固めていた山口幸二選手の仕事っぷりも忘れてはならぬのです。私がアラブの石油王のだったら、3人に1着の賞金以上の祝儀を差し上げたいところ。(残念ながら私、富豪ではなかった…)
 村上選手、何があってもあなたについて行きます! その気持ちは確固たるものになりましたね。
 以前、競輪場イベントの仕事をしていたら、百戦錬磨の競輪大好きおじさんがいまして、「競輪で勝つなら、選手を好きになっちゃだめだよ」と言われました。それはすっごくよく分かります。間違いないと思う。でもね、私は好きな選手を買いたいんですなあ。だって、好きな選手で勝った時の喜びほど気持ちいいものはないんですから!