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今年も早二人目のグランプリ出場候補者が決定しました。久留米での全日本選抜競輪の優勝者は同県の新田祐大選手の先行に乗った番手の渡邉一成選手でした。名古屋での日本選手権競輪の優勝者は、名古屋バンクとの相性抜群の村上義弘選手。三谷竜生選手の残り二周の赤板発進という先行から残り一周で番手捲りに出た川村晃司選手を抜いて日本選手権競輪優勝回数4回という素晴らしい記録を残す結果で終わりました。競輪選手は毎日毎日かなりハードに練習をこなしているので「優勝」という結果のご褒美は大変嬉しいことなのです。

各開催に参加するそれぞれの選手がレースで勝つ為に練習していると思いますが、最近の決勝戦は誰か発進役がいるラインから優勝者を出すという形のレースがかなり多くなっているような気がします。ラインの絆を考えればそれがすべて悪い事だとは思いませんが、自分の力で優勝をもぎ取れる強い選手が出てくることが競輪レースを面白くもし、そのスーパースターに付いてくるファンも増えてくるのではないでしょうか?
競輪を推理するためには人間関係や個々の性格を知ることも必要なことですが、やはり昔の滝澤正光さんや、吉岡稔真君、今も現役の神山雄一郎選手といったような力で相手をねじ伏せて勝てる選手を育てることが今後の競輪発展には必要だと思います。展開に恵まれて勝てたのではなく勝てる選手が戦い合う素晴らしいレースを観ることが出来るようになるとさらなる業界の発展につながると思います。
競輪がライン戦であることに何ら不満はありませんし、ライン同士の駆け引きがとても楽しい競技だと思います。また圧倒的に強い選手を倒す為にラインの結束力で対抗するというスタイルも面白みがあります。ただラインの在り方を間違えた走り方をしているとファンの方には飽きられる競走になっていくようで心配でなりません。
ラグビー界では五郎丸歩選手、競馬界では藤田菜七子騎手の人気で各地方競馬場での入場者数や売り上げ増になっていることが話題になっています。やはりいつの時代もスーパースターを欲しているのでしょう。レジェンドという言葉も素晴らしいことだとは思いますが、やはり今の競輪界には新しいスーパースターが必要だと思います。対抗ラインを力でねじ伏せて勝てるスーパースターです。
世間の注目は、先ずは獲得賞金ではないのです。スーパースターを観たいだけなのです。その次に獲得賞金額が注目されるだけなのです。私自身滝澤正光さんの生涯獲得賞金額を抜いて引退しましたが知名度は格段に滝澤正光さんの方が上だし、お客様が観たい選手でありまた観たいレースが出来る人でした。中野浩一さんや滝澤正光さんのようにお客様を呼べるスーパースターがいれば観客数や売り上げも増えるはずです。
スーパースターを作るには、才能を発掘するため門戸を広げ多くの人に競輪選手にチャレンジしてもらうことが必要だと思います。そして勝てた選手ではなく勝てる選手をきっちりと育成していくことだと思います。
今後の競輪界発展のためにもスーパースターの出現を待望します。
山田裕仁(61期 岐阜)
 1968年昭和43年6月18日岐阜県47歳 GI6勝 KEIRINグランプリを3回制覇
 その強さに「帝王」と呼ばれた 61期で同期は神山雄一郎
 2014年3月に日本選手権競輪を最後に引退し現在は競輪評論家として活躍中