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 浅田真央ちゃん引退! このニュースを聞いてなんだか少し淋しい気分になったのは私だけではなかったのではないでしょうか? アスリートにはいつか引退という時が来ると思いますが、選手の皆様も真央ちゃんのように現役引退を惜しまれるようになってもらいたいです。私には真央ちゃんの引退会見で凄い心に残る言葉がありました。「何かやり残したことは?」という質問に対して、私の心の中では即座にオリンピックの金メダルという言葉が思い浮かんだのですが、真央ちゃんは、「やり残したことが無いから辞めます」と応えていたことです。そうなのです。結果が全てじゃないのです。後悔の無いぐらい努力をしてきたという自信があるから「やり残したことは無い」と言えるんです。選手の皆様もできれば「やり残したことは無い」と言えた競技人生にして欲しいです。

 現在の中部地区の選手に次のタイトルホルダーは誰でしょう? すぐに思い浮かぶ勢いのある選手が残念ながら私のなかでは見つかりません。今の競輪スタイルは、強い自立選手が多い地区が活躍する傾向にあります。 順調にいくとは限りませんが、今の若手の勢いは南関東や中四国地区に明るい未来が見えている感じがします。今の中部地区には先行選手として注目を浴びてS級に上がってくる人がいません。それは自力選手として上位で通用する脚力をつける練習が出来ていないからじゃないでしょうか? 昨今の練習内容は、科学トレーニングという言葉が先行し、身体の使い方や、身体のケア等どんどん研究が進んでいてそれに頼っている部分がほとんどです。だけどそれは基礎が出来ている人が次に繋げる、もう1つ自分のレベルを上げるために手を出すことではないでしょうか? 何事も基礎はしっかり作っておかないと傾いたらなかなか元に戻すことは大変だと思いますよ。基礎トレーニングって昔ながらの練習、泥臭い練習が多いと思います。 私が引退する数年前はもう維持する練習に変わっている時です。それを見ていた若い選手達は、この程度の練習でグランプリ優勝出来るのだと思っていたのじゃないでしょうか。 私が若い頃にどれだけの泥臭い練習をしていたのか見てない選手達が今の練習の中心になっている選手達です。自分がやらない練習を若手にやれと指示することはなかなかやり難い事かもしれませんが、ある意味司令塔と呼ばれる先輩が現れてもいいような気がします。
 競輪学校での練習方法、考え方もどんどん変わってきていると聞きますが、間違っているとは言いませんがそれだけが正解だと思わないでください。私は在校85位です。卒業してからが勝負だということを証明したと思っていますので、「泥臭い練習」それは選手を一日でも長く続けるためにも必要な基礎固めのような気がしています。
 引退の時、「やり残したことは無い」と言える選手生活を是非すべての皆様に送ってもらいたいと願っています。
山田裕仁(61期 岐阜)
 1968年昭和43年6月18日岐阜県48歳 GI6勝 KEIRINグランプリを3回制覇
 その強さに「帝王」と呼ばれた 61期で同期は神山雄一郎
 2014年3月に日本選手権競輪を最後に引退し現在は競輪評論家として活躍中