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今回は競輪道について私の見解をお話したいと思います。

競輪道とは何か?と聞かれたら私は【勝負師が戦う上での筋道や一貫性とマナー】だと答えます。競輪選手の世界はまるで人生の縮図。走り方ひとつで各選手の生き様や人間性や器量が見えてしまいます。競輪選手は個人事業主です。自分の会社を経営していく上で、年々成績を上げお客様に信頼をして頂き、賞金を稼いで売上げを伸ばして行かなければなりません。仕事をしていく中で常に俺が俺がと目先の損得だけで、人の足下をすくってまでも勝とうとする事ばかりしていたら、同業者からの信用はなくなり、仕事は上手く回りません。人は一人では強くいられません。走っているのはお互い人間ですから時には一肌脱げる仕事も必要で、恩を受けたり、気を使われたら返そうとする人間味だったり、そういう思いやりや気の使い方が人情として人の心を掴み、信頼感を深め、そして絆が生まれラインの強さになって行くのだと思います。

しかし仕事をしていく中でいくつもの矛盾とも向き合わなければならない事も訪れます。競るのは簡単ですが、感情的になったり、負い目のある主張は後に命取りになったりもします。選手の大変な所は、レース後、間もなく明日のレースのメンバーの発表がありますので殆どその場で明日のレースについて戦法や誰の後ろにマークする等、コメント発表しなければなりません。現在の自分の立場や評価を理解して日頃から主張やコメントをしっかりとプランニングして、いつでも正々堂々と戦える様にしておかなければならないのです。だから選手は自分のレースを客観的に見る必要があると同時にいずれ戦うであろう対戦相手のレースを見ておく事も重要になってくるのです。競輪は総合力が伴わないと勝ち抜いては行けません。人間が走るから日頃のトレーニングでの体力づくりや人間性が浮き彫りになります。

振り返ってみると私が競輪道に目覚め始めたのはデビューして間もなくS級に上がり、憧れの神山雄一郎選手の番手を回らせて貰う様になり神山さんの走る背中を見て感じさせてもらった事から始まります。私が40歳を機に自力に変わったきっかけの中にKEIRINグランプリで私が神山さんの前で走りたいと思っていたことも事実です。引退をした今、私はその事ができなかったことが今でも残念で申し訳ないと思っています。そのくらい神山雄一郎選手から頂いた恩は計り知れなく、感謝をしてもしきれない程、御礼の気持ちしかありません。こんな気持ちになれる競輪は本当に素晴らしい職業だと思います。

人も心で動かせる。競輪道とは心・技・体の中でも【心】を重んじた筋道の形容詞だと私は思います。だから競輪は面白いのだと私は思います。