特集



脇本雄太論
 「向上心」この言葉を忘れてしまった時に人は強くなれない?
 「目標」が無ければ人は努力することを忘れ強くなれない?
 先日、いわき平のオールスターで、ナショナルチームに所属して世界に目を向けて努力している脇本雄太(福井)選手が、悲願の特別競輪初優勝を達成しました。決勝戦での脇本選手の走りは、逃げる竹内雄作(岐阜)選手ともがき合うような形でカマシきり、しかも後続を引き離しての優勝でした。特別競輪の決勝戦で後続を引き離す程のダッシュ力とスピードは、一緒に走っている選手だけでなく、観ている選手にも衝撃的であったと思う。東京オリンピックを目指しているということは、この先2年は脇本時代になると言っても過言ではない強さを見せつけたレースでした。
 競輪界は一強では面白くなく、先行同志で対抗出来る選手が出てくると面白くなる。そして、この先行を捲れる選手が出てくればさらに面白くなります。先行して強い選手には、華があって盛り上がります。今開催は、落車欠場という残念な結果に終わってしまった新田祐大(福島)選手は、ダントツのスピード、捲り脚が注目されていた選手です。捲りでの勝利は、スピード感があり、勝ち方は鮮やかに観えますが、やはり先行して勝てる選手の方が人気になるのがこの業界の常です。しかし、今の脇本選手の先行を、捲れるのかどうか?と思わせる選手が何人か出てくればワクワク感が高まり、競輪の人気も回復してくるのではないでしょうか?そして、この対決は、特別競輪でしか観ることが出来ないというまさに'特別感'は必要なことだと思います。
 先行にしろ、捲りにしろ、今の脇本選手に対抗するということは、言葉で言うのは簡単です。ですが、そこには「脇本に対抗する」という目標があります。脇本選手に勝たなければ日本一にはなれない。追われるより追う方が楽だということに気づいている人は多いと思いますが、そこに目標があればそこに向かって進むだけです。
 ナショナルチームに所属している選手達は、世界レベルに目を向けて練習しています。世界の強さを知っているからこそ、さらに努力が必要だということを知っています。世界の強さを知らない選手達も、今回、脇本選手の強さを知った人が増えたはずです。その選手に勝つためにはさらに努力が必要だということに気づくことが出来た選手がたくさんいると思います。
 ナショナルチームに所属すると確かに特別競輪のみに参加出来、それ以外の日は練習に集中出来るというメリットはあるのかも知れませんが、国際大会に出てれば移動時間も長く疲れるし、時差の有る国にも行くので体調管理も大変です。そういう意味ではデメリットもいくつかあるんです。ナショナルチームに所属してない選手達も、強くなる方法を見つけ出し、追いつけ追い越せで頑張ってもらい業界を盛り上げていってもらいたいです。頑張ってください!!
山田裕仁(61期 岐阜)
 1968年昭和43年6月18日岐阜県50歳 GI6勝 KEIRINグランプリを3回制覇
 その強さに「帝王」と呼ばれた 61期で同期は神山雄一郎
 2014年3月に日本選手権競輪を最後に引退し現在は競輪評論家として活躍中