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今回は高知競輪場で開催された第34回共同通信社杯競輪を振り返りたいと思います。この大会は私も2度、優勝した経験がある思い出深い大会です。最初に優勝したのは25歳の時です。小雪交じりの名古屋競輪場で同期の吉岡稔真選手からやっとの思いで勝ち取った1つ目のG2タイトルです。私もこの大会を手にしてからG1タイトルへの道が開けるきっかけとなった大会で、正に若手の登竜門といえる大会です。

今回の決勝戦進出9選手の中から気になった選手は長崎県・山崎賢人選手です。8月に行われたオールスター競輪でも決勝戦進出を果たし、迎えた今大会。どのような走りをするのかが気になりました。一次予選は長い高知の500バンクを打鐘過ぎ8番手からカマシて堂々と逃げ切り。2コーナーからの踏み上げる力と最終4コーナーからゴールまでしっかりと踏み切る脚力は本格化の兆しを感じました。二次予選、準決勝とカマシ気味の鋭い捲りで決勝進出を決めました。

もう1人気になっていた選手は、山口県・清水裕友選手です。去年、私がまだ現役で自力選手として走っていた時に何度か同じレースで戦った事があります。久留米記念で売り出し中だった清水選手との対戦でした。私は清水選手に挑み先行勝負をしました。勝ちにこだわった清水選手はあっさりと敗退してしまいました。勿体なく感じた私は清水選手に、「仕掛けどころと、今はアピールする時期だから勝ちに行っても勝てるほど競輪は甘くないし勝っても続きはしない!現に20歳以上も年上の俺に見せ場を作られて負けていては勿体ない。どこに居たのか分からないレースはしない方がいい。」とアドバイスしました。
清水選手は私の話をしっかりと最後まで聞いてくれて「ありがとうございます。頑張ります!」と言ってくれました。 清水選手を応援しながらも私も負けずに頑張っていた思い出が甦ります。
その後、彼は先行に徹して2周から仕掛けるレースを繰り返し、確実に脚力を付けて行きました。私が引退をしてからも解説等で競輪場へ行った際もよく話しかけてきてくれて、体の事や気になっている事を質問に来たりと高い向上心が伺えます。横の捌きも器用にこなせる清水選手は何だか行けそうな気がしています。

そして迎えた共同通信社杯決勝戦!注目の山崎賢人選手は佐賀県の山田英明選手の前で自力勝負!一方清水選手は二次予選で同乗しワンツーを決めた徳島県・太田竜馬選手に前を任せての走りとなりました。任された太田選手は打鐘前に山崎選手を内側に押さえ込み、主導権を奪いたいという気持ちが表れていましたが、最終HSで内側に進路を取り、村上義弘選手を落車させてしまい、自らも車体故障を起こしてしまいました。目標を失った清水選手の意表を突いて山崎選手が鋭く捲りを仕掛けました。その3番手に切り替えた清水選手は冷静に立ち回り山田英明選手が外帯線を外した内側からこじ開け中に突っ込みました。ゴール前は粘る山崎選手、それをかばう山田選手、突っ込む清水選手と長い高知の直線は最後まで手に汗握る展開となりましたが、最後はそれらを冷静に対処したS級S班埼玉県・平原康多選手が鋭く捲り追い込んで貫禄の違いを見せつけた見応えのある決勝戦となりました。
ガムシャラに挑んだ若者達に百戦練磨の超一流・平原康多選手の力と技のぶつかり合いでした。

山崎選手にはこのまま行って欲しいし、もっと活躍を見てみたいと思います。
太田選手には彼の様なタイプがこの先、内側に目をやるようではトップ選手にはなれない。行ききれない時は外併走でも回復させる能力を身に付ければタイトルは見えてくると思います。

若手の3選手(山崎選手、太田選手、清水選手)に言いたいことは、名前を見ただけでレースのイメージがすぐに出てくる選手になって欲しいです。そしてこれから歩む競輪人生(自分)という商品をしっかりとプロデュースして、いつまでもお客様から注目をされ、期待され車券を購入してもらえる競輪レーサーになって欲しいと思います。

若手の勢いが目立った第34回共同通信杯競輪は、これからの競輪の光が見えたシリーズとなりました。