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温故知新
2019年の競輪界を占う!
競輪解説者の重鎮・山口健治氏、坂本勉氏の新春座談会
解説者として活躍する山口健治氏と坂本勉氏に2018年を振り返り、2019年の活躍しそうな選手を予想していただきました。
昨年の座談会では、坂本氏が脇本雄太選手の活躍を的中させました。今回の座談会ではどんな予想が飛び出すでしょうか?
お楽しみください!


-2018年を振り返って、印象的だった選手やレースを教えてください。

山口健治氏
山口健治(以下・山口) 「正直言って、2018年は近畿勢でしたね!」

坂本勉氏
坂本勉(以下・坂本) 「そうですね」

2018年活躍目覚ましかった脇本雄太選手
山口 「近畿は、脇本(雄太)がいたし、三谷(竜生)もいて、ほとんど近畿が(GIを)獲っちゃいましたね」
坂本 「逆にいくと、脇本がああいう風に強くなったから、その後ろを回ったら誰でもチャンスがあるということで近畿のマーク勢がより一層気持ちが強くなったというか、やる気になって、近畿勢が盛り上がっている感じがしますね」
-特別競輪の決勝戦で印象の深かったレースをあげるとしたら?
坂本 「GIでは、宮杯ですね。ダービーで三谷が獲って、また同じく三谷と脇本が乗って、脇本が勝つ競走をするかと思ったら、脇本がまたドーンって行って、それを三谷が抜きました。抜いた三谷もすごいけど、脇本のあの早めに行くという姿勢、自分が勝てるところから行けば獲れるんだけどラインを引き出すような、いつもながらのレースをする脇本のレースを見た時に、脇本は、こういう一本棒にして逃げ切らなければオリンピックではメダルは獲れないだろうっていう、GIの優勝よりもオリンピックのメダルの方が意識が強いのかなと、すごいなって思っていました。グランプリもそうでしたけど、ラインを引き出すような早い仕掛けでしたね」
山口 「もう先行一車みたいに近いんですよね。でも、早めに行ってしまいますからね」
坂本 「ダービーからほとんど脇本の先行一車みたいな感じでしたね。親王牌はたまたま行かれたからカマシになったけども、そうじゃなきゃ前々に踏んでいただろうし、もう獲ろうと思えば4個くらい獲っていてもおかしくないくらいだったけど、それもラインを引き出すようにドーンって行って、すごいなって思いました。もうこういうレースをして優勝してこそ、メダルを獲れるんだ!って思っているんじゃないかと思うんですよね」
山口 「脇本のオールスターの優勝も、親王牌の優勝も、見ていて近畿勢は強いですね。もう簡単には崩せないかなと思います。あれだけ脇本が一気に先行すると、なかなか飛びつけないですから。難しいと思いますよ。いくなら最初からいくしかないですからね」
坂本 「そうですね。飛びつくのに前々に脚を踏んだら、もうそれで終わってしまうくらい強いですからね」
山口 「それぐらいガーンって脇本は行っちゃいますからね。今の脇本に対抗できる先行選手はちょっと見当たらないです」
坂本 「えぇ、見当たらないですね」
山口 「深谷(知広)がどのくらい強くなって出てくるのか、新田がどこから捲ってくるのかもそれも楽しみですね。それから、四国勢の若手も強くなってきているので、それがどこまで強くなっていくかですね。でも、まだまだちょっと脇本の強さは違いますね」
-四国の若手選手、清水裕友選手、山崎賢人選手ら、若手もたくさん出てきましたが、いかがですか?
山口 「もちろん注目しています」
坂本 「若手は、昨年ああやって清水がGIの決勝に乗ってから自信もついたしね、いい勢いで競輪祭の表彰に乗って、グランプリに乗ったということで、また一つ、これから若手が育っていくきっかけになったと思います。太田(竜馬)も決勝に乗ってきているから。今活躍している若手はスピードある捲りや先行選手で、ますます競輪がスピード化してきましたね」
山口 「そう」
坂本 「昔のドンから競りは、それはそれで醍醐味だったんだけど、そうじゃなくて、もう勝負どころで一発やるとか、そういうレースになってきたと思います。マーク屋選手がいなくなってきたというか、みんな自力があって、自在性のある選手が強いっていうか」
山口 「そうそう、自在性の選手がほとんど決勝に進んでますからね。自分らみたいなマーク屋はもう時代遅れ、置いていかれちゃう(笑)。競輪も変わってきたし、脚質も変わりました」
-ちょっと寂しいですか?
山口 「寂しいかもしれないけど、それが時代の流れですからね。スピード競輪ですね」
坂本 「なので、今の流れからいくと、単騎とか細切れが多いですね。だから、予想する側からは難しくなります(笑)。やっぱりタテ脚があって、位置を取れる自在な選手が勝ち上がっていける仕組みになってきましたね。その中で、若手が脇本みたいに何が何でも先行で押し通して粘っていく選手がどれだけ育っていくか。自力選手が多くなっていくでしょうね」
-2019年の活躍しそうな選手は?

新山響平選手
坂本 「贔屓目じゃないですけど、うちの新山響平ですね。人気を背負いプレッシャーもあって、昨年の前半は自分のレースをしているんですけども、皆さんが期待しているところまではいってなかったんですけど、今は、太田君や清水君、山崎君が育ってきて、ちょっと自分から他の人に目がいっていて、気持ち的にちょっと楽になってきていると思うし、今がチャンスというか頑張ってきてくれると思います。けっこういい競走をしているので、ここでもう一回GIの決勝に乗ってほしいですね」
山口 「新山君はスランプもあったけど、それを打ち破って、今の新山君がいるわけですけど、今の方がバック本数も多いし、それだけ自信がついているんでしょうね。仕掛けが早いですから、ああいう先行選手のいる地区っていうのは追い込み型が伸びてくるんですよね」

清水裕友選手
坂本 「新山の後ろはいいんですよね。佐世保記念でも、五十嵐力君が新山の後ろから優勝していますから。後ろが誰でも関係なく、2車でもドーンって行きますからね。脇本君みたいなスタイルで、次にくるのは新山かなと思います。スピードあるタイプでは清水君ですね。自在性もありますからね」

平原康多選手
山口 「関東にも新山と同期の吉田(拓矢)と鈴木竜士がいますけど、この前のレースを見ていたけど、今の吉田の方が少しは積極性が出てきたかなと思います。見た感じ、みんな素質のある感じだから、ちょっと努力すればトップクラスまであがれるでしょうから。でも、ちょっと今は関東勢が苦戦していますね。平原康多、武田豊樹という看板がいるんだから、若手ももっと出てきてほしいです。そうすればもっと平原も伸びると思います」
坂本 「平原はまだまだ今のスタイルで頑張っていったらいいと思うし、自力を出していると力も衰えないですからね。平原君のいいところはタテ脚があって、自在性で、何をするかわからないところだと思うので、まだまだそのスタイルで頑張ってくれると思うし、また、関東で若手が育ってくるともっと面白いですよね」
山口 「関東は層が厚いから選手数も多いし、どこからか出てくると思うし、そうしたら平原は使えるからいいんじゃないですかね」
-GIIIの新しい概定番組はいかがですか?
山口 「初日の特選が1レースになり、2日目の優秀競走がなくなって二次予選A、Bになりました」
坂本 「ファンからすれば買いやすくなったと思います。人気サイドで決まっているような傾向だと思いますね」
山口 「初日なんかは特に9名しか特選に乗れなくて、今までは27人が特選スタートでしたからね。選手は大変そうだけど(笑)。前だったら特選スタートだった選手が、1レース、2レーススタートで『うわっ、早いな~』とかっていうのはありますよね(笑)。でも、立川記念を見ていても、人気サイドで決まっている感じでしたね」
坂本 「二次予選もAになれば、5着、もしくは6着で勝ち上がれるから、そこまでガツガツしてないというかある程度の位置があれば5着に入れますからね。だから、落車が少なければ少ないでいいことだと思います」
山口 「その通りだね。ただ、二次予選Bは厳しいですよ。でも、そうなったらそうなったでその中で選手は走りますから」
-2019年のグランプリに乗ってきそうな選手は?
坂本 「僕としては、若手は絶対に伸びていくと思うんですよ。自分もそうだったし山口さんもそうだったと思うんですけど、グランプリを1回経験すると、すごい雰囲気でまたここで走りたいって気持ちが強くなると思うので、清水はまだ伸びしろもある年齢ですから、絶対にきそうな気がしますね。新しい脇本に対抗する自力選手として育ってきてほしいと思って注目していますね」
-清水選手がグランプリに乗ったことによって、若手選手たちにも刺激になるものですか?
坂本 「そうですね、刺激になって若手が育ってくる、先頭を走るような感じがしますね。清水はただグランプリを走っただけでなく、ちゃんと自分のレースをして、いい走りをしましたからね。本人も自信になったと思いますね」

山崎賢人選手
山口 「山崎賢人はまだヤンググランプリ?」
坂本 「そうですね、もう1年ヤンググランプリです。でもGIを獲ってしまったらグランプリになりますね」

浅井康太選手
山口 「山崎はそれくらい勢いがあるんじゃないかな。山崎の調子が上がると、また九州がよくなってくるから。九州勢の山崎への期待は大きいんじゃないですかね。あとは、やっぱり浅井康太は強いです! 安定感がありますね。安心して見てられる。捲りもいいし、目標にした選手を上手く連携していて、今年もグランプリは乗ってくるでしょうね。昨年は前半はよくなかったんだけど、後半はグーってよくなってきた。その勢いが今も続いていますからね」
-最後にファンにメッセージをお願いします。
坂本 「今、競輪はスピード化しているような感じで、それがますます進んでくると思うし、なので、それに対応できるような選手となれば、自力があって自在性のある選手が上位を占めていくんじゃないのかなと思います。清水君のような若手がこれからも出てくるんじゃないかと思います」
山口 「若手が今年は出てくるような気がします。なぜかというと上位にいるベテラン勢が武田、村上義弘君といますが、若手の力は未知ですから、今年はベテランも頑張らないと厳しい一年になると思います」
坂本 「そういう入れ替えの年になるかもしれないですね」
山口 「なので、ベテラン勢も頑張ってほしいです。ファンは応援していますからね」