特集



いつも月刊競輪ウェブをお楽しみの皆様こんにちは。加藤慎平です。
えっ?あの加藤慎平かって?
そうです。あの加藤慎平です笑

僕は去年の12月(2018年)、20年に渡る現役生活に別れを告げ引退を発表させて頂きました。あらためまして現役時代は沢山の叱咤激励を頂きましてありがとうございました。
そして幸運なことに、月刊競輪ウェブさんからこのようなコラムのオファーを頂き今後担当させて頂くことになりました。

その名も…
『慎平の・・・。』
まぁようするに僕の競輪人生の中で深く交流のあった選手や、影響を受けた選手をファンの皆様が知らないようなエピソードなどをまじえ、深く掘り下げ紹介していこうという感じですかね。けど方向性に関しては現状まだフワフワしています笑
確実に言えることは後閑信一さんのコラムとは対極に位置することは間違いありませんので緩い感じでお付き合い下さい笑

そして栄えある第一回目の選手は…
【合志正臣】さんです。
熊本県所属の81期。現在41歳。
そうです、僕と同期ですね。
僕と出身地も近くなければ年齢も違う。さらには競輪学校時代の生活班(集団生活の中でいくつかの班に分けられる)も違う。
でもなぜか一緒に行動するようになり、20年以上経った今でも仲良くさせて頂いているライバルであり腐れ縁であり親友です。

合志さんのインパクトは競輪学校入学式までさかのぼります。屈強な体格揃いの集団の中にひときわ目立つ小柄な身体。身長180cm超えが珍しくないこの世界において合志さんの身長は自称162cm。自称162cmですがいつも一緒に居た僕から言わせれば無いと思います。二人で東京タワーに行ったとき、色んな物の高さを表すボードがあってキリンの赤ちゃんの身長が160cmだったのですが合志さんは1cmくらい低かった覚えがありますから。
まぁそんなことはさておき、合志さんが同期と一列に整列する姿は言うなればNASA。NASAに捕まった宇宙人そのものでした。(画像をご存じ無い方は"NASA宇宙人"でご検索ください)
余談ですがそのインパクトが強すぎたこともあり合志さんのあだ名は入学早々NASAになりました。
ところがどっこい合志さんの経歴は凄いんです。
野球の神様、川上哲治さんをはじめ元祖天才、前田智徳さんなどを輩出した名門、熊本工業高校野球部出身。レギュラー二塁手として甲子園ベスト16にも進出したエリート中のエリートなのである。
しかも熊本工業野球部と言えば毎年のように甲子園に出場し部員が100人を超える超名門校。
公立高校とはいえ暗黙の了解は存在し、やはり中学有力選手が特待生扱いで入学しレギュラーポジションを埋めるあの時代。合志さんはなんと一般入試で入学しレギュラーを勝ち取った生粋の叩き上げ野球人なのだ。
なお一般入試組がレギュラーを勝ち取ることを熊本工業では『根性枠』と言うらしい。
実に的得た表現である。
ある時僕が
『ゴール前の中割りが苦手なんですけどコツってありますか?』
と聞いたときのアンサーが、
『あえて間がまったく空いてない所に突っ込めば良いばい。閉まってる所は次には開くしかないばい』
と頭のネジが一本飛んでいるようなアドバイスをくれた合志さんらしいピッタリの表現です。さらに合志さんの同級生には元中日ドラゴンズの荒木雅博選手が居て打順も1番2番、さらには二遊間を固めて荒木さんの現役時代は何度も二人で自主トレをやっているほどの間柄。
『シンペー、アライバコンビって日本野球界を席巻したばい?けど荒木とのコンビは俺が元祖ばい。元祖は"ゴーアラコンビ"ばい』
と言われた時、さすがに生粋のドラゴンズファンの僕は若干カチンときたのは内緒です。しかもなぜアラよりも自分の名前のゴーを前に持ってきたのか…
そんなこんなで我々二人はプロ競輪選手としてデビュー。
二十代の頃は毎年のように合志さんの実家に泊まらせてもらい合宿をしていました。
熊本の繁華街は岐阜の次に詳しくなったのも合志さんのおかげです。
お互い順調にクラスを上げ、GIレースを優勝した時期もほぼ一緒。
スポーツをするのに体系的なハンデが存在するこの世界で身長162cmと小柄な体型ながら持ち前のダッシュとテクニック、そしてなにより高校時代からお墨付きの『根性』でタイトルを2本獲得。小柄な新人選手に目標とする選手を聞くとよく名前が出てくる。それが合志正臣さんですね。

そして僕は自転車を降りましたが合志さんはまだ現役バリバリのS級選手。
長きにわたり競輪界で活躍し続けて今に至るのは本当に尊敬します。
そういえば僕が引退の報告を事前にした数少ない選手です。
五人くらいしか居ないと思います。その一人が合志正臣さん。
そういえば何か迷ったり悩んだりしたときに相談するのも合志さんだったな…
間違いなく特別な存在です。
そして今後は僕の分まで競輪選手として頑張ってもらいます。
お互い40歳を超えましたが
『合志さんがまだ現役で頑張っているから僕も頑張る』
という刺激を与え続けてください。
僕は僕のステージで誠実に生きていきます。

追伸:競輪学校に入学して2週間ほど経ったある日、合志さんが僕に相談をしてきました。
『シンペー…俺のNASAってあだ名嫌ばい!』と。
正直なところ、NASAはかわいそうだと若干思っていたので僕は提案したんです。
『じゃ、"ミートくん"はどうっすか??』と。
そうしたら合志さん、
『良いばい(ニヤリ)』って!
まんざらじゃなかったですよね!?
詳しくは追及しませんでしたがめっちゃ気に入ってましたよね?
あれ、なぜだか僕には未だに理解できないです。