月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
7月の小松島記念からはじまった7車立てのGIII開催。さすがトップ選手たち、あっという間に7車の走りをモノにし、自分たちのスタイルを見い出しはじめています。7車の駆け引きの面白さ、そこに焦点を当てて、7車立てGIIIの面白さについて市田さんに解説していただきました。
やはり自分のレーススタイルをしっかり確立できる選手が強いですね
-7車立てのGIIIについて、市田さんは見ていて、いかがですか?
「9車から7車になって2名減るわけで、6車立てもありますよね、競輪って。7車から6車になるとすごい単調になって、前か後ろか、行くか行かないかくらいの選択肢しかないわけです。極論そういう話かなと思います。
 9車だと3分線、4分線だとその分ラインの思惑があるし、車間距離、先頭から9番手の距離、途中で車間を切れば10車分、11車分の距離になるとゴールまでの距離は遠くなるわけです。でも、7車になるとその分は短くなるわけで、しかも人が少なければ少ないだけ障害も少なくなるわけです。単調という言葉が適切なのか難しいんですけど、ほぼほぼ力通りじゃないか、自力が有利じゃないかって言われますけど、攻略的に本当にそうですかって言うことを聞きたいと思うんですよね。
 例えば、2、2、3のラインができるとすると3車の方が有利に働くし、その次に内枠が有利と言われますね。最初はこぞってスタートを取りたがったんですけど、でも今は、1番車の選手がいるラインは一旦待って真ん中を取りたがるんですよ。最初は手探りだったので、誘導員のスピードもあがるし、前受けから一旦引いて、そこが3車のラインだったら5番手なわけで5番手だったら今までで考えればほぼ中団じゃないかっていうことでカマしに行けば決まるじゃないかっていう考え方だったんですよね。
 今は、一旦待って中団から始めれば、前を抑えてついていかなくても5番手ですよね。ついていっても容易に出やすい、これが3車ならなおのこと。たぶん、外枠の人は前を取りやすいので、そうなるとカマすの? カマさないと? っていうところがまっているんですけど、カマシをくらったところで3番手がありますから、そういうところで内枠の人たちは待つ傾向が出てきました。
 単純に、中団を取った内枠の人がおさえなかったパターンを考えましょう。後方から2車で、前を切ったのに、前受けの人そのまま残して、要するに前受けの人に中団を譲って、2、2、3で、自分が抑えずに5番手を選んだ場合、こういう場合、前受けをした人は不利になるんですよね。前受けをしてしまって、カマシをくらったりという不利な状況から抜け出すには、抑えなかった人を警戒しつつ、一旦抑えた人を泳がせておいて中団を確保しにいくのがいいわけなんですよね。その場合、前の2車を泳がせるだけの自分の加速できるだけの距離を保ちつつ、後方にカマさせない車間を取れれば、距離的に9車の展開と同じなんです。車間を自分から作れるかが攻略ポイントになってくるんですよね。それは結果として、他のラインに有利に働くかもしれない、後ろから抑えているラインが『車間を切ってくれるならゆっくり駆ければいいや』って落ち着かれることもあるけど、でも、3番手なわけですから、ほぼほぼ有利には働けるわけです。もちろん、メンバー構成にかかわるわけですけど、それができる、わかっていて、そうさせないと、中団にいた3車のラインが抑えた場合、突っ張るのか突っ張らないのかっていう判断は、今度は前受けをしてカマすかどうかの判断にかかわってくるわけです。抑えたけど抑えただけで自分たち待ちだと判断できるか、そういう風に判断できるかをレース中に見分けるんですよ。突っ張ってみるとか、そういう仕草が相手に影響を与えるので、攻略方法と言えば、自分たちが単調にしていると思ったいるだけで、単調と思われる中にこそ、色んなアクションを見せておいて、突っ張るのか突っ張らないのか、引くのか引かないのか、ついていくのかついていかないのかの駆け引きができるわけです」
-脇本雄太選手は7車も9車も変わらない。
「脇本雄太選手の走りは、9車でも7車でも変わらない、決まった位置からカマしと。でも、対戦相手は変わってきましたね。僕も番手捲りは好きじゃないんですけど、先行選手が脇本選手に対して、力勝負を挑んだ結果、スピードで上回れたので、仕方なく出て行く。ヨコには動けないので今のルールは、でも、そういうキーワードが外れれば、ヨコにぶつかっていく番手の選手は止めにいくのは見られるでしょうね。そうなれば、もっと面白い。単調にカマしていくだけでは止められると。番手捲りという言葉が適切かどうか別として、スピード勝負で、10秒台の真ん中を出せる人が番手だったら負けるんだとか、そういう話だと7車であっても9車であっても、ほぼほぼ関係ないんですけど。小松島記念から始まり、福井、函館ときていますけど、番手捲りと単調なレースに見えていても、その中に行くか行かないかの駆け引きは生まれてきています。
 自分も解説者なので、面白く伝えようという工夫はしているんですけど、9車と7車の違いも、ここにこういうポイントがありますという説明はしていました。選手から見ると自力が有利、内枠が有利と、あとは2車よりも3車が有利、でも、その2車をどう有利にもっていくかということですね。やっぱり3車内枠が一番有利なんで。先ほどの話なら、5番手があって、打鐘で5番手を選んでカマせばいいっていうパターンもありますし、その場合は中団の選手が車間を切って合わせていく能力をもっていたら負けてしまうわけで。打鐘では遅いって、早めにいって突っ張られることもあるし、そういう判断は、ほぼほぼ2周のところで決まってしまうわけです。そういった駆け引きですね。
 スタートを思いっ切り取りにいったかどうかも見極めなきゃいけないわけです。その時は前受けの作戦なんだとか。内枠なのにスタートで前にいかなかったら後ろからの作戦なんだなとか。そこで作戦はほぼわかってくるので。そこで後ろからということは先行だなっていう情報が確定するわけで、そうなったら自分が不利ならこう動かなきゃいけないと推測のもとレースを組み立てる。9車より7車の方がわかりやすいです。それは自分と同じように相手もわかっていることですから、その先にいくのは色々なことを読まないといけない。皆がわかっていることをやっていたのではいつまでも勝つことはできないので(笑)。その先を考えていかなきゃいけないわけです。自分が勝つには不利な作戦でも立てなきゃいけない。そういうことを考えていくと、練習も身になってくるんですよね。そうやって作り上げた練習の中に、バンクの中で表現するというのが正解ですかね。記念開催といえば、すごいスピードが出てくるので、単純に練習で何秒出ましたというのは通用しないわけです。駆け引きが始まっていますから、駆け引きの中に練習の何たるかが生まれて、練習の何たるかの中に勝負所の駆け引きが生まれるわけです。選手の能力は変わらないのに、勝ち続ける人っていうのは要所、要所で先手を打てている場合というのはありますね」

市田 佳寿浩 (いちだ かずひろ)
福井 76期 2018年12月13日に引退

【通算成績】
2010年寬仁親王牌優勝・2010年西王座戦優勝・2006年サマーナイトフェスティバル優勝
GIII優勝14回 通算優勝数65回
1着451回 2着278回 3着184回
勝率26.8% 2連対率43.4% 3連対率54.3%