月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
競輪選手を引退してからはや1年11か月が経つ。

その間に本当に色々な事にチャレンジさせてもらった。
レース解説、司会(MC)を中心に予想会やトークショーもそうだ。
そしてその中でも勝利者インタビューと言う仕事があります。

一着を取った選手の喜びの声、率直な気持ちをファンの皆さんに伝えると言う非常にやりがいのある仕事だ。
しかし……

それと同時に難しさを一番感じる仕事でもあるんです。
とにかく選手によってテンション、空気の違いを読まなければ大事故が起きる(笑)
よく喋る選手なのか、寡黙な選手なのか、
そしてその選手がラインで上位を独占したのか自分だけ届いたのか……

一着を取ってから勝利者インタビューまでの数分で僕はそれを判断する。
空気感が噛み合った時のインタビューはもう気持ちの高揚が抑えられない。
インタビューが終わった後もその余韻で白飯大盛3杯は食える。

そんなこんなで経験を積み、自信も付いて順風満帆だった。
ある日の開催までは!!
佐賀に荒井崇博というベテランS級選手がいる。
GIIタイトルも優勝している一流選手だ。
僕とは1期違いで歳は同級生。
ほぼ同じ時期にデビューし、同じようなスピードで出世していった。
だから自然に親交が深まり、特に仲の良い選手になっていった。
プライベートでもよく遊びに行き亀田興殻の世界戦も一緒に見に行った。
判定に納得いかず一緒にヤジも飛ばした仲だ。

そして実はその荒井、
無骨で口数少ないキャラで、日本全国のインタビュアーの自信を喪失させる人物として名を馳せていたのである。
そしてそんな荒井が僕の勝利者インタビューに来たのだ。
正直………
心の中でガッツポーズです。
僕と喋る時の荒井は口数も多くテンションも高い。
ワチャワチャトークで話題にも事欠かないからだ。
僕の気持ちは一つ。
(今まで荒井に葬り去られてきたインタビュアーの度肝を抜いてやるぜ!)でした。

シンペ  「見事一着の荒井選手です!!今のお気持ちを!!」
荒    「あり…す…」
シンペ  「見事な伸び脚でしたね!!」
荒    「普通です……」
シンペ  「絶好調ですね!!」
荒    「普通です……」
シンペ  「…………………」
荒    「…………………」
シンペ  「ありがとうございました……………」
その日僕は涙で枕を濡らしながら床に就いたことは言うまでもありません。
開催終了後に荒井からLINEが入っていました。

「いやぁ~(キラキラ)シンペーがインタビュアーだったから一着取れて良かったよ\(^o^)/またよろしくな!!」
と絵文字と顔文字がたっぷり散りばめられたLINEです。
彼はいったい…………

僕のインタビュー道はまだまだ続きそうです。