デュッセルドルフ通信 2005年7月4日
UCIって知ってますか?
UCI
 自転車競技通なら言わずと知れた、国際自転車競技連合。サッカーでいうところのFIFAですね。現会長はオランダのハイン・フェアブルッゲン氏。オリンピック委員会の委員でもある要人です。所在地はスイスのエイグルというフランスとの国境に近い町にあります。以前はスイスのローザンヌにあったのですが、2002年1月にエイグルに移りました。そして、UCIはそこに自転車競技の虎の穴、ワールドサイクリングセンター(WCC)を併設しました。
WCC
 スイスの小さな田舎町エイグルは、UCIそしてWCCができてから"The capital of cycling"と呼ばれるようになりました。UCIの施設のなかには、UCIグッズを売るショップをはじめとして、過去の自転車や自転車競技に関する資料を閲覧できるセンターや最新式の自転車エクイップメントの展示、過去の偉大な選手の写真が飾られた殿堂のようなもの、レストラン等様々な楽しみがあります。
なかでもインドアの木製200mバンクは、非常に美しく存在感があります。そしてこのバンクは一般公開されており、オリンピックを目指すレーサーに混じってアマチュアのオジサンレーサーなんかが汗を流す姿を目にします。WCCには、バンクだけでなく、ジムやフィールドなど様々なクロストレーニングができる施設、そして豪華コーチ陣(例えばトラックのヘッドコーチはフレデリック・マニェ)で明日のオリンピック選手たちを育成する環境が整っています。
 あの強くてかっこいいオランダ、テオ・ボス選手もここの出身です。日本人では永井清史選手、大森慶一選手、北津留翼選手などがここの教育を受けたことがあり、将来が楽しみです。当然、トラックだけでなく、ロード、MTB、BMXなどのフィールドも用意されており、多くの若い才能がしのぎを削っています。ちなみに、WCCが載っている地元の観光案内には「アスリートたちはここで、自転車に関する技術だけでなくスポーツスピリッツやフェアプレーの精神、強固なメンタル、スポーツ選手として必要な語学を学ぶ」とあります。スポーツ選手に必要な語学(きっとオールマイティな英語だろう)が身についたかどうかは、永井選手達に聞いてみてください(笑)
 もし、スイスやフランスに旅行して、近くまで来ることがあったら、自転車競技の「首都」エイグルのUCI&WCCまで足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?自転車好きにはたまらない環境がありますよ。
1kmタイムトライアル
1kmタイムトライアル
 と、ここまで書いて最近のUCIについてもうひとつ書いておかなければいけないことがあるのに気がつきました。
 2008年北京オリンピックの種目のことです。UCIは6月に行われた理事会で、「苦渋の決断」としながらも、BMX競技をオリンピック種目に加える代償として、トラック競技から男子1kmタイムトライアルと女子500mタイムタライアルをはずすことを決めました。
 これについては、様々な議論がありますが、まず前提として北京オリンピックから男子・女子BMXが正式種目になることが既に決まっています。さらに、IOC(国際オリンピック委員会)には、「オリンピックにおける競技種目の数をこれ以上増やさない」という方針があります。
 つまり、2種目増えるのだからどこかで2種目減らさなくては帳尻が合わないわけです。
去る6月の某日、1kmTTおよび500mTTに反対する自転車競技者や愛好者による1万以上の署名(署名した方がこのサイトを見てくださっている方のなかにもいるかも知れませんね)がUCIに届けられました。これを受け取ったUCIの次期会長とみなされているパトリック・マックェイド氏は「署名は非常に力をもったものだ」としながらも、「決定は変えられないだろう」と言っています。
 署名のなかにある意見や、トラック愛好者たちから聞かれる意見からいくつか拾ってみましょう。
「そもそもなんでBMXなんて導入するんだ!そんなもんX-GAMES(スポーツチャンネルESPNが主催するスノーボード、スケートボードなどエクストリームスポーツを集めた大会)でやれよ!」これについては、もっと前に議論されるべきものだったように思います。もう導入が決まってしまっていますからね。
 「1kmがなくなったら、アスリートとしてのポテンシャルを単純に計る競技がなくなってしまう。陸上の100m走や水泳の自由形がなくなるのと一緒だ」うむ、これには納得させられるものがあります。
「トラックの中長距離の選手はロードという選択肢があるが、短距離の選手はどうすればいいんだ?」選択肢としては、チームスプリント、スプリント、ケイリンあたりでしょうか。女子は深刻ですね。500mがなくなったら、スプリントしかありませんから(チームスプリント、ケイリンは女子にはない種目)。ホスト国となる中国のオリンピック委員会は、この決定にたいそうオカンムリだった様子です。500mTTは中国が毎回メダルを取る種目ですからね。といってもこの種目がオリンピック種目に加わったのがシドニーなので過去2回ですが。
 「ロードのタイムトライアルをなくせばよい」トラック側から見ればそうなんですが、ロード側から見ると、ロードは全部で4種目。トラックは全部で現在12種目ということで、この状況でロードからとりあげるのも少し気がひけます。トラックマニアはトラックのことだけ考えればいいのかもしれませんけど…ねぇ。
 「なんで自転車から減らすんだ」おっしゃるとおり。自転車愛好者のあまりにもストレートな意見で微笑ましくなります。
 と、議論は渦巻いています。自転車の総合的未来のためにどれが正しいのか私にはわかりません。ただ、トラック競技を愛する者として、これだけは言えます。「残念だ」と。
 今後、どのように議論が発展していくのか(北京オリンピック後も)予想もつきませんが、今回の決定は、少なくとも私にとっては、自転車競技についてあらためて考えるきっかけになりました。梅雨でジメジメして、なにもする気がしないときは自転車競技種目について「もしもこんな自転車競技がオリンピック種目だったら・・・」(ドリフのコントじゃないんですけど)と考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
今回のコラムは、UCIといったら・・・で、ハタと気がついてからが長かったんですが(すみません。ホント徒然なるままに書いてるのがバレバレですね)いかがでしたか?自転車競技のすべてを統括しているUCI。何億人という自転車競技愛好者の夢を背負っているのですから最後に「ダメダコリャ」とは絶対言わないで欲しいですね。
TrackMania
 
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