デュッセルドルフ通信 2005年8月24日
BMX世界選手権2
BMX連盟会長蒔田さん。
BMX連盟会長蒔田さん。
左はオーストラリアのBMX連盟会長
 大変間があいてしまって申し訳ありません。今回は前回に引き続き、BMXの第2弾です。早速行きましょう!
 この世界選手権の間に全日本BMX連盟の会長、蒔田一さんにお話をうかがうことができました。蒔田さん、失礼ながら結構な年齢だと思うんですが、これがパワフル!情熱的な語り口の蒔田さんとのやりとりを以下に。
-BMXの魅力って何ですか?
「スピード感や様々な障害を攻略する楽しみもあるんだけど、もっと自分がいいなと思っていることがある。たいていは子供時代にBMXをはじめますよね。でもBMXは子供一人でなかなかできない、親の手助けが必要になってくる。たとえばお父さんが子供のメカニシャンをやったり、親子の会話がない時代に、BMXを通じて親子の絆ができるんですよ。子供と相談しながら、試行錯誤しながら、この前はどうだったからギア倍を今度はこうしようとか・・・そういうことを経験しているからか、BMXでは先輩が若い子達の面倒をよく見る。縦のつながりが脈々とあるのがいいんだよね」
-北京からオリンピックの正式種目になりますが?
「オリンピックは確かにいい話題。でも、今のところ、それで競技者が増えているというわけではないんだよね。フリースタイルは多いんだけどね。レースにはなかなか入ってこない。もっとどんどんはいってきてほしいんだけど・・・」
BMXスタートライン
BMXスタートライン
-日本がオリンピックで上位に行くためには?
「一番大切なのはフィールド。フリースタイルは簡単に練習ができるけど、レースはコースがないとなかなか練習にならない。今度、常陸に大きなコースができたんですが、本格的なコースはまだまだ少ない。大会とかで一時的にコースができたりするんだけど、常設でないと意味がない。練習する場所だから。これは北京へ向けて選手強化に絶対必要なことなんですよ。BMXを扱う店も問題。その辺の自転車屋さんにいってもBMXは売っていないしね。専門家が少ないからちゃんと組んでもらったり、調整してもらったりできない。そうそう、他の国との比較で言うと、このパリの近辺にはコースが20や30はあるらしい。環境の違いが大きすぎますよね。
でも常陸海浜公園の常設コースのおかげでかなりかわると思いますよ。常陸海浜公園ではスクールも開催するし、やったことない人も是非試しにやってみてほしいですね。常陸では本格的なコースのとなりに初級者コースを併設しました。初級コースを走っているときにとなりの本格施設でトップの選手が練習しているのが見えるわけですよ。それで、"かっこいいなぁ。あんなふうになりたいなぁ"と思って上を目指してくれることを期待しています。それから、テレビへの露出はやはり大切だと思います。大会やるにしても、テレビ露出も少ないし動員にそんなにお金を使えない。観客もすごく多いわけでもないからスポンサー探しも大変です」
と、後から後からマシンガンのように答えてくれているうちに、選手が呼びに来ました。ナショナルチーム選手の一人が、自転車のIDが競走中に切れてなくなり、バイクをもって会場から出られなくなったと・・・「よし、ちょっと待ってろ。すぐ行くから」
 自分のかわいい子供たちのトラブルをほうってはおけないと、インタビュー場所からあわてて出て行かれた蒔田さんでした。
日本最強BMXレーサー三浦進選手
日本最強BMXレーサー三浦進選手
 さてもう一人の重要な人物。日本チームで唯一エリートチャンピオンシップクラスに出場した三浦進選手、北京オリンピック出場候補ナンバーワンです。今回、決勝進出はならなかったのですが、「運が悪かったっすね」というと「あれが今の実力です」と照れたように笑っていました。でもその笑顔の奥には「まだまだ上へ行ける」という確信が見えました。「本当はアメリカに行ってやりたいんですけどね」VISAの問題もあり、なかなかそうはいかない模様。いろんな話をしたなかで三浦選手は「BMXってギャンブルになりませんかね?」「面白いと思うんですけどね」などと真剣にきいていました。
ダンゴ状の接戦はいつものこと
ダンゴ状の接戦はいつものこと
確かに展開が早いし、競技時間が短い、ハプニングが時々おこることなどもギャンブル向きだと思います。熱くなりすぎる可能性はありますけどね。競馬にも障害レースがあったりするんですから、自転車にあってもいいですよね。また、逆にBMX出身の子達が競輪やったら、タテの脚もさることながらヨコの脚はすごいですよ。あの混戦のなかを何度も走って"競り"にはすごく強くなってますからね。これは前回も書いたとおり、私がBMXとトラックの選手交流、競技交流が面白そうだと思う理由のひとつです。三浦選手にきいた話ですが、今、日本のBMXではオリンピックに出場できるようなトップアスリートでさえも決して金銭的に満足できる状況ではないのが実情です。力のある選手が賞金を稼げるレースにたくさん出たいと思うのは自然でしょうね。
「今後のためにもスクールとかでもっと競技者が増えるといいですね」というと、「僕、個人的にはスクールってどうなんかな?思うんです。自分が本気でやりたい思わん子に教える必要ないわけやし・・・」
 これは「スクールやってます」なんて言わなくても、本当にやりたくなったら、一生懸命教えてくれる人探すでしょ、ということなんでしょうね。「中途半端な気持ちで来て欲しくない。カッコだけの競技じゃないんだよ」という気持ちの現れでしょう。
「今、BMXの選手を目指すのは"僕、将来野球選手になりたい!"というのとはあきらかに違います。こいつらが(ピットで大先輩のアドバイスを待つジュニアの子達を見ながら)将来BMXで食っていくことを考えたとき、どうなるんやろな、と思いますよ」
 現在、自分のおかれた環境を考え、自分の背中を追いかけるジュニア達の心配をする三浦選手。ここは是非オリンピックでよい成績をおさめてもらって、子供たちの夢になってほしいですね。そうなってもらうためにも、三浦選手をサポートしてあげたい!どこか企業の偉い方が見ていらっしゃたら三浦選手のスポンサーになってください!自転車が強いのに加えて、おしゃれだし、いつもなにがカッコイイか、どんなライフスタイルがクールなのか考えている人なので、きっとイメージアップになりますよ!
 今回取材をして、BMXの世界は他の自転車の世界と比べて確かに荒削りでもっと科学的トレーニングなどを取り入れれば、さらに強くなれる気がしました。でも、一方で蒔田さん、蒔田さんの片腕、副会長の藤原さん(この方、コーチもマッサーもできるマルチマン)、そして頼れるアニキ三浦選手を中心にファミリーみたいにまとまったBMX日本代表。この雰囲気のまま強くなってオリンピックでメダルを取り、「仲間の信頼」のパワーがどんなに大切か証明してほしいとも思います。さて、次回はトラックの話題に戻ります!数年後の有望選手青田買い!ジュニアの世界選手権を見てきましたのでその話題をお届けします。お楽しみに!
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